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使い方次第

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 一番の問題なのはお裁縫の技術をどうやって戦闘に使うかだ。

「裁縫のスキルってまずどんなものがあるの?」

「特別そうなものはないけど、何かを縫い合わせたりするのは得意かな」

 やっぱりそれだけだよね……。

 裁縫は何かを結び合わせてくっつけたりするのが主だと思うけど……。

「うん、まずはそこの考え方から変えていこうかな」

 戦闘の技術に応用したいのであれば手元の中だけという小さなスケールで考えてはいけない。

 例えば私の話術のスキルは、他人を納得させやすくする……欺きやすくさせる程度のスキルでしかなかったが、なぜか知らないが私は私の発した言葉を強制させることが出来るスキルになっている。

 よって、使い方によってはどんな弱スキルも強スキルになるのだ!

「まずは戦闘中に針を扱えるようにならないとね」

「どういう――」

「針と糸は持っている?」

「え、ああ任務中じゃないから持ってるけど……」

 そう言って胸のあたりから針が入った箱を取り出す。これだけ見たら女子力しか感じない。

「そう、まずはゆっくりやろうか」

「なに――を!?」

 私は合図もなく大剣を取り出し、それを振るった。まあ、合図がなかったとしてもかなり……かなーりゆっくり振ったから平助くんも軽く避けられた……よね?

 ビックリしたせいか、少し態勢を崩してしまったようだけど。

「はいはい、次行くよ!」

 実戦あるのみだからね、これくらいは許してほしい。

 手に持っている針をうまく使えれば私の攻撃もそれなりに防ぐことが出来るはずだけど……今の段階ではまだそれはできない。

 まあ、針を戦闘中に使おうと思ったことがないだろうから、使い方がわからないんだろう。

「ほら!手に持ってるそれは飾り!?」

 勢いで誤魔化してはいるものの、大剣の攻撃をこんな小さな針一つでどうしろと言われればそれまでだけど……こればっかりは本人に頑張ってもらわないといけない。

 あとは任せた平助くん!


 ♦↓平助視点↓


 いきなり振りかざされる大剣。普段から鍛えてなかったらあんな早い攻撃を避けることはできなかっただろう。

(あれ、手加減してるの?)

 おそらくかなり緩くしてくれているのだろうが、一撃一撃が素早く喰らったらそのまま叩き潰されそうだ。

(こんな何もできない針一個でどうしろと?)

「ほら!手に持ってるそれは飾り!?」

 そう言いながら振り下ろされる大剣。ベアトリスはこれを使って大剣に対抗しろと言いたいのだろうが、それが簡単にできたから苦労しない。

(どうすれば……)

 そう思っていた時、

「何でも使い方次第なのよ。大丈夫、平助くんなら出来る!」

「……!」

 そう優しく微笑むベアトリス。

(使い方次第か……)

 確かにそうなのかもしれない。いや、ベアトリスが言うなら絶対そうなのだろう。

 自分の中でやる気がみなぎるのを感じる。

 その主な原因はベアトリスの後者の発言のほうだが……。

『大丈夫、平助くんなら出来る!』

 頭が少しくらくらする。

「え、ちょっと大丈夫?」

「大丈夫です!続けてください!」

 はぁ……どうしたんだろうか僕は……。

 でもまあ、やる気があるうちに試すしかないだろう。

 ベアトリスが大剣を振りかざすと同時にスキルを発動させた。

「『裁縫』」

 スキルの力を使って寸分たがわず針を投げる。

「わっ」

 大剣を構えていたベアトリスが少しひるんだ。

「それだけじゃ私には勝て――」

「まだです」

 針に通してあった糸を伝って空中へ飛び上がった。

「おお……」

「最後!」

 先ほどよりも早く、自分のできる限界の速度で針を飛ばしそれを伝って移動した。

「子供にしちゃ早いけど、私はそれじゃ誤魔化されないよ?」

「知ってます。だから、ちょっと『仕込み』を入れました」

「仕込み?」

 ベアトリスが考え事しようとした隙に、僕は手に持っていた糸を引っ張る。

 すると、すべての糸と針を引っ張るように動き、絡まり……そして、

「え……?」

 ベアトリスの大剣だけを巻き取り、空中に浮かせた。

「どうですか?」

 裁縫のスキルは手が器用にある程度の能力しかないと思っていた。だけど、針と糸だけでこんなことだってできるんだ!

「凄っい!ぜんぜんきづかなかった!」

「よかったですか?」

「うん、すっごくビックリしたよ。まさかあの糸たちが一か所に集まってくるとは……」

 からめとられた大剣は糸で包まれて空中に浮いている。ベアトリスは絶対に自分よりも強い人物だ。だから、そんな人物から武器を取り上げる……しかも針と糸だけで為せたのはかなり大きな一歩だった。

(やった!できた!)

 意外と自分はやればできる!

 おじい様が服部家であり、この里の長老であるからこそ……自分の能力が平凡だったのがコンプレックスだった。だけど、この力をうまく使えこなせればきっと、おじい様にも父上にも褒めて貰える……!

 そう思ってガッツポーズをしていると、ベアトリスがゆっくりと近づいてきた。

「ほんとに凄かったよ。やるじゃん」

 そう言って手を伸ばし、それを頭に置いた。

「良い子良い子~」

「あっ……あぅ……」

 全身が熱くなる。頭に置かれた手よりも体の方が熱い感じがする……。

 ホントに僕はどうしたのだろうか?
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