上 下
396 / 504

ネルネの能力

しおりを挟む
「吸血鬼、七大罪の一人『憤怒』……そういえばそんなのもいたわね……」

「そんなのだと?」

「ゴメンナサイ」

「分かればいいさ」

 入った来た女の人は確かに私の知っている人だった。だけど、そこ二人何で一緒にいるのよ!

「あと、私名前を付けたんだ」

「名前?」

「そう、憤怒って名前は不便だろ?だから自分でつけた。今日からラグと呼べ」

 名前を教えてもらい、私も土下座の体勢から切り替えることを許される。

「わかったけど……なんでラグもここにいるの?」

「あ?そこのお子ちゃまについてきただけだけど?」

「お、お子ちゃまじゃないですぅー!」

 案外ラグって優しいのかな……要は心配でついてきたんでしょ?

「悪くないコンビかも」

「なんか言ったか?」

「とりあえず、話は聞けたから今日のところはお暇させてもらうよ」

「なんだ?なんか話してたのか?」

 ことの経緯を簡単にラグに話す。

「なるほどな。それなら、そこにいるネルネの能力が役に立つんじゃないか?」

「ネルネの能力?」

 ネルネの方を見ると恥ずかしそうに頭をかいている。

「私のお母さんから受け継いだ能力らしくて、ラグ姐が見つけてくれたんです」

 ラグ姐……何その呼び方羨ましい。

「その能力が役に立つと?」

「立つかもです!」

「じゃあ、ネルネも一緒に行くかお城に」

「はい!」


 ♦️


 ラグは店員が一人抜けた穴埋めで大忙しになっていると思うが、私はネルネと二人で悠々街を歩いていく。あ、もちろんユーリは首元で寝ている。

 つまらない話で飽きちゃったのだろう。

 でもまあフサフサな毛に覆われている私は幸せなんですけどね……。今でこそ落ち着いたけど、私は獣人が大好きなのだ!

 もう見ているだけで幸せって感じ。なんであんなに可愛いのだろうか?女性獣人の可愛さ&色気はもの凄いし、男性獣人はゴツい人が多いのにも関わらず耳と尻尾がポツンとついていてギャップ萌えだよね。

「……なんだかすごい顔にやけてるけど……」

「な、なんでもないわ!」

 いけないいけない、ニヤニヤしながら歩くて引かれてしまう。ユーリとレオ君に囲まれて生活したから少しは慣れてきたはずなんだけどね。

「このでかい城に役人も住んでるの?」

「さあ、知らないです。けど将軍様はこのお城の近くの別邸に住んでいますよ」

 お城が建設された近くに別邸があるらしく、将軍はそこに住んでいるらしいが、そうなってくると役人たちはまた違う場所なんだろうな。

「ひとまず入り口は見えてきたけど……」

 まあまあ高い塀で城が囲まれており、その目の前には門番と思われる兵士が二人立っていた。

「今こそ私の能力の出番です!」

「行っちゃって!」

 何するか知らんけど。

 意気揚々と門番の方へと歩いていくネルネ。大丈夫かな?殴られたりしないかな?

 もしネルネを殴るような不届き者だったら逆に私が殴り飛ばすけど。分身体でも門番一人殴り○ろすくらい容易なのだ!

 ネルネの存在に気づいた門番二人が槍を地面に突き音を鳴らして威嚇する。

「ここより先は将軍様の膝下なり、なんぴとも通らせん」

 一人が代表してそんなことを言ったが、ネルネはその問いに優しく答える。

 “お二人とも、疲れたでしょう?少し休んだらどうですか?”

 その声が私の耳に入った時、少しだけどっと疲れが増した気がする。それを至近距離で聞いていた二人は、目が虚になった。

「あ……あぁ、確かに疲れたな。少し休もう」

 “私たち、将軍様に用があるんです。入ってもいいですよね?”

「ああ、構わない。通ってくれ」

 そう言って門を開けてくれる門番。私は驚きながらもネルネについて行って中に入った。

「すごい!どうやったの?」

「これは私の母、七大罪の『怠惰』が持つ能力の一つだそうです。私の母はこれを駆使して『戦わずして勝つ』がモットーの人だったらしいですよ」

「へー、ネルネの母ってすごい人だったんだね」

「はい……私が旅に出た理由は母が原因だったんですけど……もうほとんど割り切ってます。それに、便利な能力が遺伝してくれてたまに助かったりしますしね!」

 旅に出た原因って母親だったのか。

 あんまり触れてほしいところではなかったろうに……

「ネルネ、実は私にもねすごい母親がいたのよ」

「すごい母親?」

「私の家族には母様が二人いるの」

「ええ!?どういうことなんですか!?」

「私を産んでくれた母はね、誰も勝てないような……最強の聖騎士だったの」

 なんとなく、気づいたら話していた。

「それはすごいですね、だから娘もそんなに強く……」

「私を育ててくれた母様はね……」

 私が殺したヘレナ母様。現実に向き合いたくなかったけど、もうそろそろ私も腹を括らないとね。

「育ての母様は、誰よりも優しい母様よ」

「……いい人だったんですね」

「ええ、最後まで私の心配をしてくれた……私の自慢の母様なの」

 話し込んでいると、お城の内部に入るための入り口まで到達する。

「さっ、早く行きましょ」

「はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

処理中です...