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日ノ本のとある一家(???視点)

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 家々は材料に木材を使用して建てられており、金属類や石レンガの類は使われていなかった。それが、燃え移る火を加速させていたのだろう。

 一般市民にはことの顛末が知らされる前に、内乱が発生した。その内容はどこにでもあるような軍事クーデターである。

 ただ、いくつか違う点を挙げるとすれば、一般人も積極的に殺害されなおかつ、軍事クーデターを起こした張本人は温和で争いを好まない性格としていたとの噂だ。

 なのにどうして、こうなったのか?

 東の島国であるここ日ノ本では、占い師と陰陽師が力を合わせて事態の収束を図ろうとしていた。だが、相手は異国の武器を持ち出してきたため、争いは止まることを知らない。

 そして、その火の手はとある一家まで巻き添えにしていた。

「お嬢!早く逃げるでござる!」

 着物というものは非常に動きにくく、そこに病弱に少女の肉体が合わさることで、さらに鈍足になっていた。

 明けの明星前後に突如として屋敷は襲撃を喰らった。そこそこ名のある家紋だったため、警護に勤めているものがそれに対抗している。

 そのうちに早く屋敷に住む一家を逃さなければならなかった。

 ピンクの着物に花柄の模様と黒い髪をしているお嬢は、まだ眠たそうにしている。

「ちょっと!起きてくださいお嬢!?」

「うーん、眠いのよ。少し寝かせて……」

「いくらなんでもマイペースがすぎるでござるよ!?」

 この家族はなんでこうもマイペースで自由人が多いんだ。お嬢の夫となった方もマイペースな方だし。

 なんで拙者はこんな家に侍として仕えてしまったのか……。まあ、後悔はしていないからこそ、今必死に頑張ってるわけなのだが。

「いたぞ!」

「げっ!中にまで入るんでござるか!」

 流石に燃えている家屋に入ってくるような度胸があるとは思っていなかったため、少し戸惑ったが、ここでお嬢と一緒に逃げていては追いつかれてしまう。

「お嬢!ここは拙者が足止め致すので、早く逃げてください!」

「えー」

「えーじゃないでござる!さっさと回れ右!」

 なんて空気が読めない……まあいい。侵入してきたのはたった五人のようだから、拙者だけでも倒し切れるかも……。

「火の札を投げろ!」

 その声が聞こえた次の瞬間には他四人が紙切れを投げつけてきた。それが何か知っているからこそ、避けることができたが、知らなかったら炎の球に形を変えた紙切れによって焦げて死んでいたことだろう。

「終わったー?」

「な!?まだいたでござるか!早くに行くでござるよ!」

「大丈夫よ……旦那は水の魔法使えるし」

 そういう問題じゃないでしょー!

「もらった!」

「あっ!」

 集中力が切れて、相手を見ていなかった。振り向いた瞬間には目の前に刀を振り上げる侵入者の姿があった。

「くっ!」

 ギリギリでその刀を弾くが、その衝撃で刀は吹き飛ばされてしまった。

「次で終わりだ!」

 二回目の振り上げ。どうする?

 そう考えていた時、

「危ないものを振り回すのはやめておくれ」

「旦那様!?」

 後ろから聞こえてきた若い男性の声。それはこの屋敷の現当主の旦那様だった。

 後ろから伸びてきた手が、刀を優しく摘む。

「なんだと!?」

「お返し」

 その言葉とともに、刀を振るってきた男の顔が水で覆い尽くされた。

「!」

 呼吸ができないようで、刀を捨て、もがき苦しんでいた。

「他の奴らは……」

 ひっ!と悲鳴をあげて逃げ出そうとする四人に対して、ふぅ、と吐息を吐く音が聞こえた。その域は白い煙となり、四人の元まで飛んでいく。

 成人男性の全力疾走に追いつく吐息とは?そう思った束の間、突如四人が倒れた。

「睡眠薬混ぜた吐息だよ」

「なんでござるかそれ!?」

「ついでに炎も消しちゃおう」

 そう呟くと、空から雨が降ってくる音が聞こえた。天候を変えたというのだろうか?

「どんなに優秀な陰陽師だってそんなことできるはずが……」

 そのうち、雨の力で家屋の中の火もだんだんと弱くなっていき、次第に消えてしまった。

 そして、後ろを見れば高身長な金髪の髪を生やした男性が立っていた。眠そうな眼でこちらを見つめてくる。

「えーっと……琳丸?」

「蘭丸でござる!いい加減名前を覚えて欲しいでござるよ……」

「すまない蘭丸、興味がないことは覚えられない」

「せめて心を抉るのはやめてほしいでござる」

 そして、旦那様にベタベタとくっつき始めるお嬢を尻目に、この惨状を眺める。

「それにしても、どうしてこんなことになったんでござるかね……」

 その独り言に旦那様が答えてくれた。

「さあ、それはわからないけど、もうすぐ他国から調査に入るスパイが来るはずだよ」

「なんで知ってるでござるか?」

「貿易国はいきなりの輸出ストップに困惑するだろうからね。それに、王国は条約も結んでいる。すぐに飛んでくるさ」

 そういえば、旦那様は王国出身だった。それもかなりの名家だったそうな。

「蘭丸蘭丸」

「なんですかお嬢?」

 旦那様の背後から顔を出してきたお嬢。

「怪我してない?」

「してないでござる。旦那様に助けてもらったから心配無用でござるよ」

「そう……あと、旦那様って呼んでいいのは私だけだから。あなたは当主様、ね?」

「あっ……お嬢がそう呼んでいたからつい……」

「私の旦那様だから蘭丸には渡さないからね」

「い、いらないでござるよ」

 そんな雑談で気分が和らいできたところに奉行所の人物がやってきて、この騒動は一旦幕を閉じるのだった。
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