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同じ瞳

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 広い広い平原に広がるのは無数に敷き詰められていた。平原はかなりの広さだったが、仕留められていた魔物の数がそれを上回っていた。

「よーし、じゃあこれは私たちが解体――」

 腕が鳴る、と肩をまわしながら近づこうとした時、上空から何やら妙な音が。

「どいてー!」

 ズドォン、と何かが上から落ちてきた。

「ああああああ!お肉うううううぅぅぅ!?」

 落ちてきた何かが魔物の死体の上へ落下する。その辺に肉塊が飛び散り、かなり悲惨の状況になっている。

 一部では悲鳴が上がったりしているが、私はその魔力反応に心当たりがあった。

 だから私は、その『二人』が現れるのを待つ。

「いてて……ちょっと飛びすぎたぁ」

「あ、あのレイ?かなり危険な状態のようだが……」

「え?私は無傷よ?」

 違う違うそっちじゃない、とレイの顔を私の方向へ持っていく。すると、みるみる顔が青ざめるレイ。

 どうしたんだろうねぇ?私はこんなにも優しく微笑んでいるのにねぇ?

「レイ~~~~?」

「ひっ!?」

「なにしてくれてんのかしらねぇ~?」

「ご、ごめ――」

「言い訳は聞かん!」

 そこから私の説教が数十分続く……。


 ♦♢♦♢♦


 そして、私たちは歩き出す。

「もう、あなたのせいでご飯抜きになっちゃったじゃない」

「ご、ごめんなさい……」

 食べれる部位のほとんどが吹き飛んでしまったので、生徒たちに食事を分け与えると、残るどころか私の食べるものが無くなってしまった。

 そして、そのせいでお腹は空いたものの、何も考えなくなったことにより案外早く目的地へと到着した。

 目的地付近までくれば、昔そのでかい街を囲んでいた壁が見えてくる。だが、それはもう見る影もなくガラクタであふれていた。

 悲しいかな、そこから覗ける光景は到底二年前までの平穏な街並みではなくなっていた。

「先生?どうしたました?」

「ううん、なんでもないわ」

 だが、今の私ではどうすることもできない。一応私は行方をくらませることに成功している。

 悪魔どもに見つかれば最後だ。

 出入り門はすでに崩壊し、見る影もない。昔ここに立っていた衛兵さんたちの姿はもうない。

「はい、現在ここにはターニャさんと同じ鬼人の方たちが住んでいます。ここからは自由行動ですが、くれぐれも鬼族の方たちに失礼のないようにお願いします」

 はい、といい返事が聞こえたところで、解散するのを見送る。

「ベアトリス」

「うん、わかってる」

 ミサリーはまだここにいるのだろうか?いや、精霊曰くいるらしい。

 二年ぶりに、ミサリーに会いたい……。

「楽しみね」

 心の底から笑顔であふれてくる。

「さあ、私たちも行きましょ」

「うん」

「はーい!」

 中へ入ると、瓦礫により足元が埋まって歩きずらくなっている。そして、

「ベアトリス様!お久しぶりです!」

 鬼族のみんながちらほら歩いている。みんな前よりいい顔をしているではないか。

 切羽詰まったあの表情は完全に消え去り、木の板やらレンガやらを運んでいる。

「ここらでメイドさん見なかった」

「?はい、丘の上にあるお屋敷のてっぺんで黄昏てる人ですね?」

「そう!多分それ!」

「あの人に近づくのはやめた方がいいんじゃ……」

「どうして?」

 近づかない方がいいとは?別に危険な子じゃないけど……。

「あの幽霊みたいな人、ずっとどす黒いオーラを放ってるんですよ。なんか、何かを待ち続けてるみたいですけど、殺意がだだ洩れなんですよ」

 おっと……なんだか嫌な予感がするぞ。

 もしかして、ミサリー怒ってないよね?私がいきなりいなくなって二年の間公爵領を放置して怒っているんじゃないでしょうね?ね?

 とてつもなく、心配だが会わないわけにはいかない。

「ありがとね」

「会いに行くのかい?」

「もちろん、あの子は私が子供のころから一緒に共にした子だもの」

 私にとってミサリーは親のような存在でもあり、妹のような感じでもある。

 前世を合わせれば私は三十代だからね。

 歩き進めていくと、いつの日かこっそり通っていたアレンのおばさんが経営する店へとやってきていた。

 そこにはもちろん何もなく、焦げて腐っている野菜が少し落ちていた。

「……」

 大丈夫、おばさんはきっと逃げたはず。

 アレンは家族について何も言っていなかった。そう言えば、お母さんはどうなったのだろうか?

 嫌の想像が頭をよぎるが、それを追い払うように屋敷へと視線を向ける。そこに見えたのは、小さな人影だった。

 白と黒のメイド服を纏い、虚空を見つめている女性が崩れかけの屋敷の屋根上に座っている。

「あっ!ベアトリス!」

 気が付くと私は走り出していた。少しでも早くミサリーの元まで向かいたくて。

 走っていく先には生徒たちや鬼人がたくさんいたが、そんなの気にせずに私は必死に走っていた。

 丘を登りきると、私は屋敷へ入る。

 それと同時に私は吐き気を覚えた。

「あっ……あぁ……」

 焼けて焦げ付いた血がカーペットにびっしりとついていた。赤色のカーペットの上に血……見分けにくいが、私にははっきりとわかる。

 目の前で母親……ヘレナを刺し、あまつさえヘレナを目の前で殺された。もう、わかってる。

 ヘレナは私をはめようとしていたわけではないと。だけど、それでも……。

 再び走り出す。

 階段を上り、屋根裏へ上るはしごを下すと、屋根裏へ上る。屋根が壊れているため、光がさしている。

「ミサリー!」

 屋根に顔を出すと、ミサリーの名前を呼びかける。

「お嬢様?」

 そこには光が抜け落ちた瞳をしていたミサリーがいた。
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