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自然の力
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ターニャからの熱い声援を受けたところで、私は悪魔の元へと突っ込んでいく。
「みんな無事!?」
「それは誰に言ってるの!」
近くで飛んでいるナターシャが反応する。槍で薙ぎ払う程度で悪魔は面白いくらいに吹き飛んでいくのを見ると、余裕そうなので心配する必要はなさそうだ。
と言っても、一振りで数匹が限度。そんなんじゃ悪魔の軍勢は倒しきれない。というよりも、多すぎてどんどん戦場が下へ下へと下がってきている。
このまま悪魔たちが地上に近づいていけば、そのうち龍族や鬼族たちに被害が出る。せっかく、無傷で終わったのに死人が出たらたまったもんじゃない。
嫌がらせにしては酷すぎる。私のせいで死人が出るっていうのは絶対に許せない。
「どこにもいなくない?」
中心にまで到達し、悪魔たちが私へと向かって攻撃を仕掛けてくる。その中には上位悪魔の姿はなく、そもそも女性個体の悪魔すらいないではないか!
シル様の当てが外れた?
いや、そういうわけではないと思う。
実際この数を動かすには、真ん中にいた方が操作しやすいだろう。
でも、私の元へ向かってくる悪魔たちを薙ぎ払おうと、粉砕しようと上位悪魔の姿は見えてこない。
エルフの里を襲ってきたあの脳筋悪魔とは違う。あの悪魔は単体で強者たり得ていたが、今回の上位悪魔はそれに加えて頭を使ってくる。
大丈夫、頭の使い方は貴族社会で学んできた。
森の中に身を潜めた場合、どんなに隠蔽しようと漏れ出る魔力で居場所をあぶり出せる。つまり、悪魔たちの中にいるのは確定。
下から見た時に族長もシル様も……
「ん?」
下から見た時……。
「なんで気づかなかったんだろう?」
視野狭窄とはまさにこのこと。
「下から見た時、上空には隠れる場所がない……わけじゃない」
そう、別に悪魔たちの中に混ざっている必要はないのだ。むしろ、運悪く見つかってしまう可能性を考慮しても、この中に隠れようとするわけない。
つまり、
「上!」
悪魔の軍勢のさらに上……雲の上だ。
「ちょっと、どこにいくの!」
「あとは任せた!」
「はぁ?」
若干キレかけているナターシャのことは置いておいて……。
雲の上へと向かって、私は飛翔する。
目指すは悪魔たちの中心部分に位置する雲の中。
「入った!」
雲の中へと飛び込む。そこは、霧がかかってしまったかのように、何も見えない。
「ずいぶん早いですね」
「っ……どこ!」
雲の隙間のどこからか女性の声がする。
「ご安心ください。私はここです」
「……そっちから姿を現すなんて舐められたものね」
目の前に現れたのは確かにあの上位悪魔だった。
「さっさと負けてもらうわよ?」
「ご冗談を、姿は見せましたが簡単に負けるつもりはありません」
「そんなこと言ってるのも今のうちよ!」
雲をかき分けて悪魔へと触れようとするが、触れる直前の姿が掻き消える。まるで、そこには何もなかったかのように……。
なのにも関わらず声はする。
「あなたは龍族でもなければ鬼族でもない……ただの人間。ただの人間が、空の上で一体何分息が続くのでしょう?そして、魔力も……」
「いやらしい性格してるわね、あんた」
要は空気の薄い上空へと私を誘い込んだわけだ。そして、しっかりと魔力の残量も確認されている。
魔力の自然回復はあってないようなものなので、あてにしたらこっちが負ける。
「あなたの得意分野は魔法……その魔法を使えば自分の首を絞めてしまうことになる。そんな状況で私を捕まえるのは不可能です」
私の残りの魔力で維持できる翼はせいぜい十分程度。そして、酸素は残り数分で枯渇すると思う。
まあ、残り数分以内に見つけ出せばいいだけのこと。
「私を舐めてもらっちゃ困るよ」
「……警戒しているからこそ、ここまで追わせたのですが?」
「そういうことじゃないのよね、ここはあなたにとって最悪の戦場ってことよ」
「どういう意味でしょう?」
私は貴族育ちのお嬢様なのだ。その分、将来役に立たない無駄な雑学知識は大量に頭の中に詰まっている。
雲は一体何でできているのか?
火山噴出物、塵埃などの微粒子が混ざり、窒素、酸素、二酸化炭素などが溶解している……そんな雲だが、その中で最も大量に含んでいる成分がある。
水だ。
「少し魔力はある。そして、あなたは雷属性が苦手ね?」
魔法の耐性も高いはずの上位悪魔がグラートの小さな雷でも痺れるなんておかしい。決してグラートの魔法が弱いと言っているわけではないが、それを上回る耐性があるはずなのに攻撃を喰らった。
それが指し示すのは、苦手属性。悪魔にも得て不得手があるのだ。
だが、残った魔力量では大魔法を放つことはできない。
だったら、自然の力を借りればいい!
「『避雷針』」
突如として空が曇り始める。白い雲の中からでも、そのさらに上に集まる黒い雲がハッキリと見えた。
「私も少し痺れると思うけど……あんたを巻き込めるんだったら何発でも打ってあげる!」
「まさか……!」
今気づいてももう遅い。
自然の力で集まった雷は既に私の頭上に集結しているのだから……。
「みんな無事!?」
「それは誰に言ってるの!」
近くで飛んでいるナターシャが反応する。槍で薙ぎ払う程度で悪魔は面白いくらいに吹き飛んでいくのを見ると、余裕そうなので心配する必要はなさそうだ。
と言っても、一振りで数匹が限度。そんなんじゃ悪魔の軍勢は倒しきれない。というよりも、多すぎてどんどん戦場が下へ下へと下がってきている。
このまま悪魔たちが地上に近づいていけば、そのうち龍族や鬼族たちに被害が出る。せっかく、無傷で終わったのに死人が出たらたまったもんじゃない。
嫌がらせにしては酷すぎる。私のせいで死人が出るっていうのは絶対に許せない。
「どこにもいなくない?」
中心にまで到達し、悪魔たちが私へと向かって攻撃を仕掛けてくる。その中には上位悪魔の姿はなく、そもそも女性個体の悪魔すらいないではないか!
シル様の当てが外れた?
いや、そういうわけではないと思う。
実際この数を動かすには、真ん中にいた方が操作しやすいだろう。
でも、私の元へ向かってくる悪魔たちを薙ぎ払おうと、粉砕しようと上位悪魔の姿は見えてこない。
エルフの里を襲ってきたあの脳筋悪魔とは違う。あの悪魔は単体で強者たり得ていたが、今回の上位悪魔はそれに加えて頭を使ってくる。
大丈夫、頭の使い方は貴族社会で学んできた。
森の中に身を潜めた場合、どんなに隠蔽しようと漏れ出る魔力で居場所をあぶり出せる。つまり、悪魔たちの中にいるのは確定。
下から見た時に族長もシル様も……
「ん?」
下から見た時……。
「なんで気づかなかったんだろう?」
視野狭窄とはまさにこのこと。
「下から見た時、上空には隠れる場所がない……わけじゃない」
そう、別に悪魔たちの中に混ざっている必要はないのだ。むしろ、運悪く見つかってしまう可能性を考慮しても、この中に隠れようとするわけない。
つまり、
「上!」
悪魔の軍勢のさらに上……雲の上だ。
「ちょっと、どこにいくの!」
「あとは任せた!」
「はぁ?」
若干キレかけているナターシャのことは置いておいて……。
雲の上へと向かって、私は飛翔する。
目指すは悪魔たちの中心部分に位置する雲の中。
「入った!」
雲の中へと飛び込む。そこは、霧がかかってしまったかのように、何も見えない。
「ずいぶん早いですね」
「っ……どこ!」
雲の隙間のどこからか女性の声がする。
「ご安心ください。私はここです」
「……そっちから姿を現すなんて舐められたものね」
目の前に現れたのは確かにあの上位悪魔だった。
「さっさと負けてもらうわよ?」
「ご冗談を、姿は見せましたが簡単に負けるつもりはありません」
「そんなこと言ってるのも今のうちよ!」
雲をかき分けて悪魔へと触れようとするが、触れる直前の姿が掻き消える。まるで、そこには何もなかったかのように……。
なのにも関わらず声はする。
「あなたは龍族でもなければ鬼族でもない……ただの人間。ただの人間が、空の上で一体何分息が続くのでしょう?そして、魔力も……」
「いやらしい性格してるわね、あんた」
要は空気の薄い上空へと私を誘い込んだわけだ。そして、しっかりと魔力の残量も確認されている。
魔力の自然回復はあってないようなものなので、あてにしたらこっちが負ける。
「あなたの得意分野は魔法……その魔法を使えば自分の首を絞めてしまうことになる。そんな状況で私を捕まえるのは不可能です」
私の残りの魔力で維持できる翼はせいぜい十分程度。そして、酸素は残り数分で枯渇すると思う。
まあ、残り数分以内に見つけ出せばいいだけのこと。
「私を舐めてもらっちゃ困るよ」
「……警戒しているからこそ、ここまで追わせたのですが?」
「そういうことじゃないのよね、ここはあなたにとって最悪の戦場ってことよ」
「どういう意味でしょう?」
私は貴族育ちのお嬢様なのだ。その分、将来役に立たない無駄な雑学知識は大量に頭の中に詰まっている。
雲は一体何でできているのか?
火山噴出物、塵埃などの微粒子が混ざり、窒素、酸素、二酸化炭素などが溶解している……そんな雲だが、その中で最も大量に含んでいる成分がある。
水だ。
「少し魔力はある。そして、あなたは雷属性が苦手ね?」
魔法の耐性も高いはずの上位悪魔がグラートの小さな雷でも痺れるなんておかしい。決してグラートの魔法が弱いと言っているわけではないが、それを上回る耐性があるはずなのに攻撃を喰らった。
それが指し示すのは、苦手属性。悪魔にも得て不得手があるのだ。
だが、残った魔力量では大魔法を放つことはできない。
だったら、自然の力を借りればいい!
「『避雷針』」
突如として空が曇り始める。白い雲の中からでも、そのさらに上に集まる黒い雲がハッキリと見えた。
「私も少し痺れると思うけど……あんたを巻き込めるんだったら何発でも打ってあげる!」
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今気づいてももう遅い。
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