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闇の支配者
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「な、なんだ?雰囲気が……」
ピリつき始めた雰囲気に違和感を覚える長老と姫。二人とも、ベアトリスという少女がついに本気になったのだと悟った。
「……いかん!姫様、お下がりください!」
「え?」
長老の声で反応が鈍ったせいか、姫の体に攻撃が直撃する。いや、もし声がなかったとしても姫にこれを避ける手段はなかっただろう。
姫の右胸の辺りがすっぽりとなくなる。腕を前に突き出した風圧で風穴が空いたのだ。
ゆっくりと倒れる姫。心臓には当たっていないことで、かろうじて息はある。龍族はそう簡単には死なないのだ。
「一撃では殺さん……ジワジワと嬲り殺しだ!」
「貴様……」
手にしていた杖をここで初めて構える長老。
「はあ!」
杖を中心に周囲の魔力が集結していく。ここら一帯にある魔力は全て長老が手に持っている杖へと集まる。
「死ね!」
魔力の塊がベアトリスへと射出されるが、それはすぐに消え去った。
手をかざせば、魔力の塊は制御を失ったかのように消失したのだ。
「そんな!?」
「雑魚のくせしてでしゃばるな」
「くっ……」
長老を無視するように、ベアトリスは姫の方へと近づく。
髪の毛を掴んで持ち上げれば、未だ意識を保っている姫が憎々しげにこちらを見つめていた。
「あなた……一体、何者……?」
「あなたが知る必要はないわね」
髪の毛を掴んだまま、姫の体を持ち上げるとそのまま長老へと投げつけた。
「『潰れろ』」
言霊がベアトリスの願いを実現させるべく、二人に強い重力をかける。二人にかかる重力はベアトリスが生徒たちにかけた魔法の何十倍も強力だった。
「い、息が……」
「その状態で何分持つかしらね」
「あ、悪魔……め……」
「悪魔?ま、ある意味正しいかもね」
強力な重力がかかっているのにも関わらず、しゃべることができるのは、長老が強者の部類に入るからだろう。
だがしかし、ベアトリスには遠く及ばなかった。
心の奥底で、無意識にずっと力を加減していたベ・ア・ト・リ・ス・がいなくなり、加減を忘れた本来のベ・ア・ト・リ・ス・今では、それを止めることができるのは神だけのような気さえするほどの強さに勝てるわけがないのだ。
「このまま肉塊になるか、お仲間さんを斬り刻まれるところを見ながら圧死するか、どちらがいい?」
「く……そ」
ブルブルと震える長老の手を踏みつけながらベアトリスは嗤う。
「私の体を傷つけた罪は重いわよ?簡単に死ねると思わないことね」
闇に包まれたこの空間では、まさにベアトリスが闇の支配者。分け与えられた吸血鬼の力と、精霊の加護……そこに加わる残虐な性格と最強の話術。
もはや彼女を止めることはできない。
「ふん、もう飽きたわ」
いくら経っても絶望した顔を見せない長老と姫に軽くガッカリする。
「それじゃあ、そろそろ……『死……」
死ね、と命じようとしたところで別の声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん!」
「……っがぁ!?」
頭の中が痛み出す。それは、『理性のあるベアトリス』が抵抗を見せたことによる反応だった。
「邪魔をするな!」
《もう十分、暴れたでしょ》
頭の中で声が響く。ルーにはまだベアトリスの声も姿も見えてない。
ちょうど良いタイミングで森の方に逃げたルーは闇の魔法と結界の範囲外に出ていたのだ。外から、闇魔法で隠された中を見ることはできないし、声も聞こえない。
だが、向こうからの声は聞こえる。
「あのガキか?あのガキのせいだな!」
ぶっ殺す!
《お止め、その体はあなたのじゃないの。それにやりすぎよ、そろそろ返してもらうわ!》
「この……!」
頭の中で何かが切り替わった。凄まじい殺気が一瞬にしてベアトリスの中に仕舞い込まれるかのように、その場の雰囲気が再び急変する。
それを感じた長老と姫はさっきまでの現状が、実は夢の中で起こっていたことなのではないかという錯覚まで覚えるほどであった。
「はぁ……はぁ……」
まだ頭痛がする。頭の中がすっきりとしない。
頭の中ではまだ先ほどまでの溢れんばかりの殺気が渦巻いている。何も考えていないはずなのに、「殺す殺す」と声が響く。
「もう……気分最悪」
気を許したのは私だが、もう二度とこういう目にはあいたくないものだ。
闇魔法を解除する。
「お姉ちゃん!」
「ルーちゃん!」
外から入ってきたルーは真っ先にベアトリスを見つける抱きつく。
「お兄ちゃんたちは?」
「あー……多分無事よ!」
「そっか!」
二人とも死んではいないはず。ただ、早く処置しないと危険かもしれない。
そう思って、まずグラートの元へと向かおうとした時だった。
「あ!」
「ぬかったな!」
長老がルーを捕まえ、杖を突き出してた。
「な、なんで……潰れたたはず……」
「ハハハ!重力を弱めのが仇となったな」
死なない程度に重力を加減していた言霊が、人格が変わったことによってその命令を破棄したのだ。
要するに、二人を拘束していた話術が解除されたのだ。
「この醜い娘……私の顔をよくも……!」
「今日のところは撤収しましょう。次こそ万全の体勢で」
そう言って、ルーごと連れて逃げ去ろうとしている様子の二人。
(ダメだ!)
「待って!」
思わず声が出ていた。
ルーみたいな小さな子をこの醜い争いに巻き込めるわけがない。それで、危ない目にあったらドラウとグラートに顔向けができない。
ここでルーを人質に取られたら、私が雷魔法で味方もろとも気絶させた意味がない!だから、私にはここでは一つの選択肢しかないのだ。
「ルーを離して……代わりに、私が人質になるから!」
ピリつき始めた雰囲気に違和感を覚える長老と姫。二人とも、ベアトリスという少女がついに本気になったのだと悟った。
「……いかん!姫様、お下がりください!」
「え?」
長老の声で反応が鈍ったせいか、姫の体に攻撃が直撃する。いや、もし声がなかったとしても姫にこれを避ける手段はなかっただろう。
姫の右胸の辺りがすっぽりとなくなる。腕を前に突き出した風圧で風穴が空いたのだ。
ゆっくりと倒れる姫。心臓には当たっていないことで、かろうじて息はある。龍族はそう簡単には死なないのだ。
「一撃では殺さん……ジワジワと嬲り殺しだ!」
「貴様……」
手にしていた杖をここで初めて構える長老。
「はあ!」
杖を中心に周囲の魔力が集結していく。ここら一帯にある魔力は全て長老が手に持っている杖へと集まる。
「死ね!」
魔力の塊がベアトリスへと射出されるが、それはすぐに消え去った。
手をかざせば、魔力の塊は制御を失ったかのように消失したのだ。
「そんな!?」
「雑魚のくせしてでしゃばるな」
「くっ……」
長老を無視するように、ベアトリスは姫の方へと近づく。
髪の毛を掴んで持ち上げれば、未だ意識を保っている姫が憎々しげにこちらを見つめていた。
「あなた……一体、何者……?」
「あなたが知る必要はないわね」
髪の毛を掴んだまま、姫の体を持ち上げるとそのまま長老へと投げつけた。
「『潰れろ』」
言霊がベアトリスの願いを実現させるべく、二人に強い重力をかける。二人にかかる重力はベアトリスが生徒たちにかけた魔法の何十倍も強力だった。
「い、息が……」
「その状態で何分持つかしらね」
「あ、悪魔……め……」
「悪魔?ま、ある意味正しいかもね」
強力な重力がかかっているのにも関わらず、しゃべることができるのは、長老が強者の部類に入るからだろう。
だがしかし、ベアトリスには遠く及ばなかった。
心の奥底で、無意識にずっと力を加減していたベ・ア・ト・リ・ス・がいなくなり、加減を忘れた本来のベ・ア・ト・リ・ス・今では、それを止めることができるのは神だけのような気さえするほどの強さに勝てるわけがないのだ。
「このまま肉塊になるか、お仲間さんを斬り刻まれるところを見ながら圧死するか、どちらがいい?」
「く……そ」
ブルブルと震える長老の手を踏みつけながらベアトリスは嗤う。
「私の体を傷つけた罪は重いわよ?簡単に死ねると思わないことね」
闇に包まれたこの空間では、まさにベアトリスが闇の支配者。分け与えられた吸血鬼の力と、精霊の加護……そこに加わる残虐な性格と最強の話術。
もはや彼女を止めることはできない。
「ふん、もう飽きたわ」
いくら経っても絶望した顔を見せない長老と姫に軽くガッカリする。
「それじゃあ、そろそろ……『死……」
死ね、と命じようとしたところで別の声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん!」
「……っがぁ!?」
頭の中が痛み出す。それは、『理性のあるベアトリス』が抵抗を見せたことによる反応だった。
「邪魔をするな!」
《もう十分、暴れたでしょ》
頭の中で声が響く。ルーにはまだベアトリスの声も姿も見えてない。
ちょうど良いタイミングで森の方に逃げたルーは闇の魔法と結界の範囲外に出ていたのだ。外から、闇魔法で隠された中を見ることはできないし、声も聞こえない。
だが、向こうからの声は聞こえる。
「あのガキか?あのガキのせいだな!」
ぶっ殺す!
《お止め、その体はあなたのじゃないの。それにやりすぎよ、そろそろ返してもらうわ!》
「この……!」
頭の中で何かが切り替わった。凄まじい殺気が一瞬にしてベアトリスの中に仕舞い込まれるかのように、その場の雰囲気が再び急変する。
それを感じた長老と姫はさっきまでの現状が、実は夢の中で起こっていたことなのではないかという錯覚まで覚えるほどであった。
「はぁ……はぁ……」
まだ頭痛がする。頭の中がすっきりとしない。
頭の中ではまだ先ほどまでの溢れんばかりの殺気が渦巻いている。何も考えていないはずなのに、「殺す殺す」と声が響く。
「もう……気分最悪」
気を許したのは私だが、もう二度とこういう目にはあいたくないものだ。
闇魔法を解除する。
「お姉ちゃん!」
「ルーちゃん!」
外から入ってきたルーは真っ先にベアトリスを見つける抱きつく。
「お兄ちゃんたちは?」
「あー……多分無事よ!」
「そっか!」
二人とも死んではいないはず。ただ、早く処置しないと危険かもしれない。
そう思って、まずグラートの元へと向かおうとした時だった。
「あ!」
「ぬかったな!」
長老がルーを捕まえ、杖を突き出してた。
「な、なんで……潰れたたはず……」
「ハハハ!重力を弱めのが仇となったな」
死なない程度に重力を加減していた言霊が、人格が変わったことによってその命令を破棄したのだ。
要するに、二人を拘束していた話術が解除されたのだ。
「この醜い娘……私の顔をよくも……!」
「今日のところは撤収しましょう。次こそ万全の体勢で」
そう言って、ルーごと連れて逃げ去ろうとしている様子の二人。
(ダメだ!)
「待って!」
思わず声が出ていた。
ルーみたいな小さな子をこの醜い争いに巻き込めるわけがない。それで、危ない目にあったらドラウとグラートに顔向けができない。
ここでルーを人質に取られたら、私が雷魔法で味方もろとも気絶させた意味がない!だから、私にはここでは一つの選択肢しかないのだ。
「ルーを離して……代わりに、私が人質になるから!」
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