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意外な一面
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戦いにおいて、心を揺さぶられると言うのは敗北を意味する。どんなに自分が有利な立場にあろうと、動揺してしまえば正確な判断ができずに攻撃を喰らってしまう。
そう、先ほどのアレンのように……。
「って、腕!ベアトリス、腕!」
私が何をしたかといえば、攻撃を喰らった直後に腕を自ら飛ばしたのだ。
何言ってんだこいつって、思われるだろうけど案外やろうと思えばできてしまう。
ある一定の強さまで到達したら、自分の腕を飛ばすくらい躊躇がなくなってきてしまうのが恐ろしいところ。
でも、治るから心配はない。
回復魔法というのは便利なもので、優秀な回復術師であれば、とれた腕も圧倒今に元通りに復元することができる。
そして、私も回復魔法を使うことができるので、腕の一本や二本程度は取れても問題はない。
強いていうなら、痛い。
とにかく痛い。この世のものとは思えないほどの激痛が腕から走るが、私にとっては我慢できないほどのものではない。
前世で首を切られた時の方がよっぽど痛かった。
戦斧は重く、狙いを定めて振り下ろすにはあまり向いていない。下手くそが振るえば、何度も何度も切り付けないと、処刑できなかったりするのだ。
つまり、そういうこと。首の皮を何度も切り付けられるあの痛みに比べれば全然平気。
それ以前に私は拷問も受けてたので、大抵の痛みには耐えられることはお忘れなく……。
(でも、やっぱりグロいから、これは最終手段ね)
そう思って、左腕の方に目をやる。
「あ、あれ?」
通常、腕が切られれば血が滴り落ちてくる。だが、私の腕からは血が一滴も垂れてこなかった。
というよりも、もうすでに傷が塞がり始めて……。
「と、とりあえず治しちゃいましょう」
自分の左腕を拾うという、奇妙な体験をしつつくっつけて回復魔法を使用する。
そうすると……
なんということでしょう!ちぎった腕も元通り!
「は、はは……心配して損したよ……」
青い顔をしていたアレンがその場にフラフラと座り込む。
相当堪えたようだが、負けたくなかったのでしょうがない。
え?
乙女らしくないって?
気にすんな!
それよりも、なんで傷が塞がりかけていたのだろうか?
朝から変に調子が良かったから?
でも、それだけで傷の回復速度が変わるわけないか。
超常的な回復能力
戦士の誰もが憧れる技能だ。もちろん、そんなことができる人・間・は存在しないからこそ、憧れるだけにとどまっているわけだが。
まあいい。デメリットがある訳でもないし、考えてもわからないので気にしたら負けである。
「なあ?試験官に負けたら不合格なんじゃないのか?」
そう聞いてくるアレン。
「普通はそうだけど……今の私は試験官じゃないから、ノーカンだよ」
アネットが私の代わりをやっているので、私は試験官としての役割はないのだ。
よって、この戦いは試験に影響はない!
「アレン君も強くなったね」
「ああ、大切な人たちを守れるようにな!」
いい笑顔でそう返したアレン。成長した我が子を見ているようで、私はとても嬉しくなった。
「さて、試験前に体をほぐしたい人がいたらアレンのように私を練習台にしていいからね!」
そう声を上げたが、
「「「絶対やだ!」」」
つれない受験生たちである。
「そして、あなたたちはそろそろ反省した?」
重力魔法は今もなお健在で、抜け出せずにいる四人は今も汗を垂らして潰されないように耐えている。
「助け……」
今にも死にそうな誰かの声が聞こえた気がしたので、重力魔法を解除する。
「し、死ぬかと思った……」
「いや、本気で殺す気だっただろこのガキ」
「こら!また魔法が飛んでくるよ!」
「……………」
殺す気は一切なかったのですが?
「まあ、反省したのならいいよ。ほら、寮に帰りなさい」
「「「はい……」」」
元気のない返事を返す生徒たちだが、一応場は収まった?ので、よしとしよう。
「ん?どうしたのヤンキー君や」
一人動こうとしないヤンキーを見つめていると、ポツリとつぶやいた。
「お前、躊躇ねえな」
「何が?」
「腕だよ、腕。なんで平然としてんだよ気持ち悪りぃ」
そう言われて、改めて左腕を眺める。傷跡も残ってないし、痛みはもう感じない。
今まで取れていたなんてわからないほどだ。
「慣れだよ慣れ」
「慣れであんなことができる訳ないだろ!」
腕が取れたのにも関わらず攻撃を仕掛けていたことは異世界人にとっては異様な光景だったらしい。
「こっちの世界じゃ日常茶飯事だよ。腕が取れてても、死んだら全身失っちゃうから」
死んだらそこで終わり。異世界人たちみたいに二度目の人生とかはないので、厳しい世の中である。
「……はっ。これだからガキは嫌いなんだよ」
「ちょっと、反省してないの?」
なんとまあ反抗的な生徒だ。
普段の私だったらもう一発魔法を撃ってたかもしれない。だが、それはヤンキーの表情が目に入ったことで押し止まった。
「自分の体を大切にしねぇようなバカが教師なんかやるなよ」
「……トラオ?」
それだけ言い残すと、ヤンキーは歩き去ってしまった。
「なんだか調子狂っちゃうわ」
でも、ヤンキーが他人の心配なんかしたの、初めて見た……。
(体は大切に……ねえ?)
大切にしているつもりだったけど、それでもまだ足りなかったらしい。
「ちょっと、見直した……」
そう、先ほどのアレンのように……。
「って、腕!ベアトリス、腕!」
私が何をしたかといえば、攻撃を喰らった直後に腕を自ら飛ばしたのだ。
何言ってんだこいつって、思われるだろうけど案外やろうと思えばできてしまう。
ある一定の強さまで到達したら、自分の腕を飛ばすくらい躊躇がなくなってきてしまうのが恐ろしいところ。
でも、治るから心配はない。
回復魔法というのは便利なもので、優秀な回復術師であれば、とれた腕も圧倒今に元通りに復元することができる。
そして、私も回復魔法を使うことができるので、腕の一本や二本程度は取れても問題はない。
強いていうなら、痛い。
とにかく痛い。この世のものとは思えないほどの激痛が腕から走るが、私にとっては我慢できないほどのものではない。
前世で首を切られた時の方がよっぽど痛かった。
戦斧は重く、狙いを定めて振り下ろすにはあまり向いていない。下手くそが振るえば、何度も何度も切り付けないと、処刑できなかったりするのだ。
つまり、そういうこと。首の皮を何度も切り付けられるあの痛みに比べれば全然平気。
それ以前に私は拷問も受けてたので、大抵の痛みには耐えられることはお忘れなく……。
(でも、やっぱりグロいから、これは最終手段ね)
そう思って、左腕の方に目をやる。
「あ、あれ?」
通常、腕が切られれば血が滴り落ちてくる。だが、私の腕からは血が一滴も垂れてこなかった。
というよりも、もうすでに傷が塞がり始めて……。
「と、とりあえず治しちゃいましょう」
自分の左腕を拾うという、奇妙な体験をしつつくっつけて回復魔法を使用する。
そうすると……
なんということでしょう!ちぎった腕も元通り!
「は、はは……心配して損したよ……」
青い顔をしていたアレンがその場にフラフラと座り込む。
相当堪えたようだが、負けたくなかったのでしょうがない。
え?
乙女らしくないって?
気にすんな!
それよりも、なんで傷が塞がりかけていたのだろうか?
朝から変に調子が良かったから?
でも、それだけで傷の回復速度が変わるわけないか。
超常的な回復能力
戦士の誰もが憧れる技能だ。もちろん、そんなことができる人・間・は存在しないからこそ、憧れるだけにとどまっているわけだが。
まあいい。デメリットがある訳でもないし、考えてもわからないので気にしたら負けである。
「なあ?試験官に負けたら不合格なんじゃないのか?」
そう聞いてくるアレン。
「普通はそうだけど……今の私は試験官じゃないから、ノーカンだよ」
アネットが私の代わりをやっているので、私は試験官としての役割はないのだ。
よって、この戦いは試験に影響はない!
「アレン君も強くなったね」
「ああ、大切な人たちを守れるようにな!」
いい笑顔でそう返したアレン。成長した我が子を見ているようで、私はとても嬉しくなった。
「さて、試験前に体をほぐしたい人がいたらアレンのように私を練習台にしていいからね!」
そう声を上げたが、
「「「絶対やだ!」」」
つれない受験生たちである。
「そして、あなたたちはそろそろ反省した?」
重力魔法は今もなお健在で、抜け出せずにいる四人は今も汗を垂らして潰されないように耐えている。
「助け……」
今にも死にそうな誰かの声が聞こえた気がしたので、重力魔法を解除する。
「し、死ぬかと思った……」
「いや、本気で殺す気だっただろこのガキ」
「こら!また魔法が飛んでくるよ!」
「……………」
殺す気は一切なかったのですが?
「まあ、反省したのならいいよ。ほら、寮に帰りなさい」
「「「はい……」」」
元気のない返事を返す生徒たちだが、一応場は収まった?ので、よしとしよう。
「ん?どうしたのヤンキー君や」
一人動こうとしないヤンキーを見つめていると、ポツリとつぶやいた。
「お前、躊躇ねえな」
「何が?」
「腕だよ、腕。なんで平然としてんだよ気持ち悪りぃ」
そう言われて、改めて左腕を眺める。傷跡も残ってないし、痛みはもう感じない。
今まで取れていたなんてわからないほどだ。
「慣れだよ慣れ」
「慣れであんなことができる訳ないだろ!」
腕が取れたのにも関わらず攻撃を仕掛けていたことは異世界人にとっては異様な光景だったらしい。
「こっちの世界じゃ日常茶飯事だよ。腕が取れてても、死んだら全身失っちゃうから」
死んだらそこで終わり。異世界人たちみたいに二度目の人生とかはないので、厳しい世の中である。
「……はっ。これだからガキは嫌いなんだよ」
「ちょっと、反省してないの?」
なんとまあ反抗的な生徒だ。
普段の私だったらもう一発魔法を撃ってたかもしれない。だが、それはヤンキーの表情が目に入ったことで押し止まった。
「自分の体を大切にしねぇようなバカが教師なんかやるなよ」
「……トラオ?」
それだけ言い残すと、ヤンキーは歩き去ってしまった。
「なんだか調子狂っちゃうわ」
でも、ヤンキーが他人の心配なんかしたの、初めて見た……。
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大切にしているつもりだったけど、それでもまだ足りなかったらしい。
「ちょっと、見直した……」
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