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実践授業①(ナナ視点)
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「たく、なんで俺がお前らと組まなくちゃいけないんだよ」
「しょうがないでしょトラオ。私だってヤンキーとうまく連携できるか不安なんだし」
「ってめー……」
ベアトリス先生から告げられたのは四人チームを組んで、魔物を討伐して来いという簡単なものだった。今まで強い敵と当たったことがないからの油断かもしれないけど、それはそれでありたいことだった。
初めて異世界に来たということを実感したのは、学院をかこっている柵の外にいる狼が魔物であると知った時だ。もっと詳しく言うと、「可愛いな」と思い、近づいてケガをしたからだ。
でも、ここらの周りには弱い魔物しかいないらしいし、私たちは十分努力してきたからきっと大丈夫!
チームのメンバーは、私ことナナとトラオ(ヤンキー)、それに転移する前から根暗だった根本久良さんと学級委員長の佐久間良平くんの四人である。
「まあまあ、トラオ。落ち着こうよ、僕らで最高スコア取ろうぜ!」
「はっ!当たり前だ!あのガキに一泡吹かせてやらねえと……」
「決まりだな」
なんだかんだ言ってリョウヘイくんとヤンキーは仲が良い。ベアトリス先生が前の授業でそこまで見抜いてたかどうかはさておき、チームバランスもかなりいいだろう。
私が後衛火力担当……サブアタッカー、ヤンキーがタンクでリョウヘイくんがアタッカー、そしてクラさんがサポートである。
「よし、クラさんも頑張ろうね!」
「ひぇ!?は、はい!頑張りましゅ!」
噛んだ……。
普段話したことない子だったけど、悪い子じゃなさそうだ。
(案外このチームだったら先生が言ってた人影も捕まえられるかも?)
先生が出してきたお題の中に謎の人影というものがあった。
私たち以外のくらすで不気味がっている生徒がいる……それだけの理由なはずなのに、なぜだかベアトリス先生から「絶対に捕まえろ」という圧を感じたのは気のせいだったのだろうか……。
そう考えていると、
「ナナさん」
「リョウヘイくん?どうしたの?」
「やっぱり、ベアトリス先生の言ってたこと気になる?」
「えっ!?なんでわかって……って、そういえばそうだったね。スキルだっけ、それ」
「そ!」
この世界では職業に応じて対応した専用スキルが貰える。異世界転移してきた私たちはこの世界の人たちじゃ想像もつかないようなチートスキルをたくさん手にしていた。
しかも、それぞれ別々の能力だ。
そして、リョウヘイくんの職業は『話術師』
一見すると、戦闘では役に立たなさそうな職業だが、スキルがとてつもなく強力だ。
相手の弱点を見抜く『看破』
相手を分析する『解析』
アイテムを分析する『鑑定』
そして、何よりも心を読む『読心』だ。
喋ることが出来ない魔物が相手であっても、頭の中で考えていることを、読み取ることが出来る。
それすなわち、次の行動を相手が頭で考えていれば、先読みすることが可能なのだ。
一種の未来予知である。
(うん……私なんかよりもぜんっぜん!チートだわ……)
だから、先ほど私が考えていたことも分かったわけだ。
「ただ、生徒たちが怖がっているだけなのであれば、わざわざ確定で勝利させてくれるとは思えないよね」
「せいぜい他の魔物よりも多くポイントがもらえるくらいだよね……」
「ってことは、それよりももっとヤバいことになってるんじゃない?」
あごに手を当てて考えるリョウヘイくん。
彼は、転移前の普通に高校生活を送っていた時から学年屈指の成績優秀者であった。
単純に頭がいいのではなく、IQが高いのだ。
勉強以外にも何でもできちゃうという印象である。
そして、何か思いついたのか、リョウヘイくんが顔を上げる。
「もしかして、その人影って人じゃないんじゃない?」
「どうして?人影って言ってるんだから人じゃ……」
「この世界じゃ人の形してる生き物なんてそこら中にいるよ。それに、最近は悪魔の動きも活発になってきてる。悪魔は上位の存在だと人の形をしているらしいよ?」
「確かに……そういえばベアトリス先生が失踪したのも悪魔との戦いだったよね……めちゃくちゃ強いってことじゃん!?」
ヤンキーは、このクラスの中で一番俊敏で怪力な人物であった。そのくせ、戦闘ではずる賢く立ち回るのでとても強い。
そのヤンキーが為すすべなしに負け、その負かした相手が負かされた相手……弱くないはずない。
「でも今の僕たちならできるんじゃないかな。だってさ、ベアトリス先生は公爵領民を守りながら数百を相手取ってたんだよ?それなら負けても当然だよ。その中には絶対に上位の悪魔がいたはずなのに先生は生きてる。だったら、僕たちでも一匹くらいなら捕まえられるんじゃないかな?」
「そうだといいけど……」
正直、先生と私たちでは格が違う気がする。
先生がヤンキーと戦ってた時、ほとんどその場から動いてなかったのだ。その上、先生は「手加減」してくれていた。
これが私たちよりも年下……あれが本物の英雄なのだ。
あんなすごい人になれるのだろうか?甚だ疑問だけど、少なくとも私には視えた。
私の職業は『聖騎士』
そのスキルに邪悪な気配……それに類似する気配を見抜くスキルがある。
スキルがベアトリス先生に反応を示した。だが、魔物のような敵意でも殺意でも、邪悪さでもなかった。
スキルの反応の仕方で私は相手がどのような気配を纏っているのかがわかる。
それは『死』だった。
醒め切った気配。生きてるのに死んでる……死んでるのに生きてるみたいな感じだ。
転移してくる前から相手の気配というかなんというか……を察するのはうまかった。
そんな私から言わせてもらえば、先生の心はすでに死んでいる。
でも、あんなに笑顔になってるのはなぜ?
まるで、一度死んだことがあるとでも言いたげなその気配を持ってるのに、なぜ?
わからないけど、少なくともベアトリス先生は悪い人じゃないということだけは言えた。
「おら!早くしろや!」
「わかってるわよ、ヤンキー」
でも、今は授業中だ。そんなこと気にする暇はないのであった。
「しょうがないでしょトラオ。私だってヤンキーとうまく連携できるか不安なんだし」
「ってめー……」
ベアトリス先生から告げられたのは四人チームを組んで、魔物を討伐して来いという簡単なものだった。今まで強い敵と当たったことがないからの油断かもしれないけど、それはそれでありたいことだった。
初めて異世界に来たということを実感したのは、学院をかこっている柵の外にいる狼が魔物であると知った時だ。もっと詳しく言うと、「可愛いな」と思い、近づいてケガをしたからだ。
でも、ここらの周りには弱い魔物しかいないらしいし、私たちは十分努力してきたからきっと大丈夫!
チームのメンバーは、私ことナナとトラオ(ヤンキー)、それに転移する前から根暗だった根本久良さんと学級委員長の佐久間良平くんの四人である。
「まあまあ、トラオ。落ち着こうよ、僕らで最高スコア取ろうぜ!」
「はっ!当たり前だ!あのガキに一泡吹かせてやらねえと……」
「決まりだな」
なんだかんだ言ってリョウヘイくんとヤンキーは仲が良い。ベアトリス先生が前の授業でそこまで見抜いてたかどうかはさておき、チームバランスもかなりいいだろう。
私が後衛火力担当……サブアタッカー、ヤンキーがタンクでリョウヘイくんがアタッカー、そしてクラさんがサポートである。
「よし、クラさんも頑張ろうね!」
「ひぇ!?は、はい!頑張りましゅ!」
噛んだ……。
普段話したことない子だったけど、悪い子じゃなさそうだ。
(案外このチームだったら先生が言ってた人影も捕まえられるかも?)
先生が出してきたお題の中に謎の人影というものがあった。
私たち以外のくらすで不気味がっている生徒がいる……それだけの理由なはずなのに、なぜだかベアトリス先生から「絶対に捕まえろ」という圧を感じたのは気のせいだったのだろうか……。
そう考えていると、
「ナナさん」
「リョウヘイくん?どうしたの?」
「やっぱり、ベアトリス先生の言ってたこと気になる?」
「えっ!?なんでわかって……って、そういえばそうだったね。スキルだっけ、それ」
「そ!」
この世界では職業に応じて対応した専用スキルが貰える。異世界転移してきた私たちはこの世界の人たちじゃ想像もつかないようなチートスキルをたくさん手にしていた。
しかも、それぞれ別々の能力だ。
そして、リョウヘイくんの職業は『話術師』
一見すると、戦闘では役に立たなさそうな職業だが、スキルがとてつもなく強力だ。
相手の弱点を見抜く『看破』
相手を分析する『解析』
アイテムを分析する『鑑定』
そして、何よりも心を読む『読心』だ。
喋ることが出来ない魔物が相手であっても、頭の中で考えていることを、読み取ることが出来る。
それすなわち、次の行動を相手が頭で考えていれば、先読みすることが可能なのだ。
一種の未来予知である。
(うん……私なんかよりもぜんっぜん!チートだわ……)
だから、先ほど私が考えていたことも分かったわけだ。
「ただ、生徒たちが怖がっているだけなのであれば、わざわざ確定で勝利させてくれるとは思えないよね」
「せいぜい他の魔物よりも多くポイントがもらえるくらいだよね……」
「ってことは、それよりももっとヤバいことになってるんじゃない?」
あごに手を当てて考えるリョウヘイくん。
彼は、転移前の普通に高校生活を送っていた時から学年屈指の成績優秀者であった。
単純に頭がいいのではなく、IQが高いのだ。
勉強以外にも何でもできちゃうという印象である。
そして、何か思いついたのか、リョウヘイくんが顔を上げる。
「もしかして、その人影って人じゃないんじゃない?」
「どうして?人影って言ってるんだから人じゃ……」
「この世界じゃ人の形してる生き物なんてそこら中にいるよ。それに、最近は悪魔の動きも活発になってきてる。悪魔は上位の存在だと人の形をしているらしいよ?」
「確かに……そういえばベアトリス先生が失踪したのも悪魔との戦いだったよね……めちゃくちゃ強いってことじゃん!?」
ヤンキーは、このクラスの中で一番俊敏で怪力な人物であった。そのくせ、戦闘ではずる賢く立ち回るのでとても強い。
そのヤンキーが為すすべなしに負け、その負かした相手が負かされた相手……弱くないはずない。
「でも今の僕たちならできるんじゃないかな。だってさ、ベアトリス先生は公爵領民を守りながら数百を相手取ってたんだよ?それなら負けても当然だよ。その中には絶対に上位の悪魔がいたはずなのに先生は生きてる。だったら、僕たちでも一匹くらいなら捕まえられるんじゃないかな?」
「そうだといいけど……」
正直、先生と私たちでは格が違う気がする。
先生がヤンキーと戦ってた時、ほとんどその場から動いてなかったのだ。その上、先生は「手加減」してくれていた。
これが私たちよりも年下……あれが本物の英雄なのだ。
あんなすごい人になれるのだろうか?甚だ疑問だけど、少なくとも私には視えた。
私の職業は『聖騎士』
そのスキルに邪悪な気配……それに類似する気配を見抜くスキルがある。
スキルがベアトリス先生に反応を示した。だが、魔物のような敵意でも殺意でも、邪悪さでもなかった。
スキルの反応の仕方で私は相手がどのような気配を纏っているのかがわかる。
それは『死』だった。
醒め切った気配。生きてるのに死んでる……死んでるのに生きてるみたいな感じだ。
転移してくる前から相手の気配というかなんというか……を察するのはうまかった。
そんな私から言わせてもらえば、先生の心はすでに死んでいる。
でも、あんなに笑顔になってるのはなぜ?
まるで、一度死んだことがあるとでも言いたげなその気配を持ってるのに、なぜ?
わからないけど、少なくともベアトリス先生は悪い人じゃないということだけは言えた。
「おら!早くしろや!」
「わかってるわよ、ヤンキー」
でも、今は授業中だ。そんなこと気にする暇はないのであった。
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