252 / 504
魔人
しおりを挟む
「と、とりあえず謁見は終わったんだし、次は森の人影の調査ね」
気づけばすでに時刻は夕方あたりをまわっていて、なんと数時間は雑談で盛り上がっていたのである。
そして、現在はすでに夜中となっていて、教師用の部屋の一室にて、空を眺めながら作戦を考えているところなのだ。
二人には、副教師としての激務を任せていたからか、すぐに寝てしまった。
(ユーリ……そこ私の寝床……)
まあいい。
それよりも人影なんて見つからなかったら、一生解決しないのではないだろうか?
せめて、人影の正体が分かればすぐに探知魔法で見つけられるのだけれど。生きてるのか生きてないのか、実体はあるのかないのかもわからないのに、私が一人で探しに行くのはほぼ不可能。
「ということは協力者が必要ね」
まあ、幽霊に詳しそうな友人もいることだし、あとでその人の元に行ってみようかな。
「あとは、うちの生徒たちも使っちゃお」
実践訓練と称して近場の森を使用すれば、人影とやらも姿を現すかもしれないし。
それで、見つからなければ近くにはいないと報告もできる。
「まさに一石二鳥ね!」
次の授業は明日。
今日で全員の能力を把握したから、それに合った連携のパーティを組んで戦ってもらうとしますか!
それに人影が襲ってきたとして、すぐに死ぬことはないだろうし。
謁見のあと、寝る前に少し調べてみた。
現在は勇者がすでに存在していて、その勇者パーティと呼ばれる人たちも存命中。
なのに、異世界から生徒たちが召喚された。
その理由は単に政治的目的なわけであった。
まあ、帝国は勇者パーティという強力な武器を持っているのに、我が王国は強力な異世界人を誰一人たりとも召喚していなかったので、対抗手段に召喚したわけだ。
要するに、戦争回避のためね。
勇者はすでに存在するから仮に『英雄』ということで、彼らを育成すれば数的に勇者と同等くらいには持っていけるだろう。
どこぞの勇者は数年前ですでに当時の私と互角かそれ以上だったので、同等に持っていけるか少し不安は残るけれど。
「ひとまずは人影調査の続きね!」
♦♢♦♢♦↓とある魔人視点↓
寒い。
夜の森の中は非常に肌寒かった。
私が勝手ながら住処にしている森は、かつて私たちが戦った場所。悪い意味での思い出の場所である。
別にここにとどまる理由はなかったけど、適当にほっつきまわって、捕まったら面倒だし、ここいいるのが安全なんだ。
灯台下暗し……少し違う気もするけど、大体そんなところ。
「ベアトリスか……」
かつての私の上司に当たる人物である狂信嬢様を殺した人。
ただ、そこは戦場だった。死ぬも生きるも実力次第なのである。恨む気持ちはこれっぽっちもないが、私が尊敬しているのは、後にも先にも狂信嬢様ただ一人である。
森の中での生活は一年前から始めた。
私の所属していた組織は、現在ではあまり活動していない。
活動しているのは幹部連中だけで、下っ端は待機。
なんでも、王国がベアトリスの死亡を表明した。だがしかし、絶対にそれは間違っている。
私は知っている。狂信嬢様相手に、互角にやりあって……フードを被った男の子?も合わせて二対一だったとはいえ、狂信嬢様を殺した相手だ。
視界が悪くよく見えなかったが、縛り付けられ白装束が血で赤く染まっていた。
そして、森から消え去る。
転移の魔法だろうけど、少し驚いた。あんな子供が自分でも扱えない魔法を簡単に発動させるのだから。
ベアトリスはまだ生きている。
死亡の発表の一年前からそう思っていた組織は、すぐに捜索を始めた。協力者を名乗る少女の姿はそれ以降見ていない。
何でかは分からないが。
そして、組織はなぜか悪魔と敵対している。利害は一致しているらしいが、事態の収束を計りたい組織と、大事にしてでも目的を果たしたい悪魔とで、争いが起きている。
目的というのはベアトリスの捜索。
見つけ次第、確保もしくは殺せってさ。
だけど、私はその前に組織を抜けたのだ。なぜかって?
同じ下っ端同士で仲間と言えた奴らは死んだし、尊敬する上司も死んだし、訳のわからないことをしている組織にはもう嫌気がさしただけだ。
組織から逃げ出すのは重罪だが、見つからなければ罰せられない。
「お腹すいたな……」
ご飯、あんまり食べてないんだ。
ここで、取れるお肉はごくわずか。生きていくのには申し分ないけど。
「朝ごはん、どうしよ」
もうじき朝日が昇ってくる。
「お隣さんは実践訓練あるのかな?」
大学院の近くにあるこの森は訓練によく使われる。そして、たまに少し勘の鋭いガキが混ざっていることがあるのだ。
気配をわざわざ消して通り過ぎるのを待ってやってるのに、ひどい話だ。勝手にお化けだのなんだの言って逃げていくんだから。
「わたしゃま・だ・死んでないわよ……」
ま、少なくとも何で生きてるかはわかんないけどね。
「寝るか」
星空をずっと眺めていたら、寝られなかった。朝ごはんを作るのも面倒だし、さっさと寝てしまおう。
そう思って、私は横になる。
森の中の澄んだ匂いが、寝心地の良さを引き立てる。
鳥やら虫やらの鳴き声がまたいいBGMになるのだ。
私が、眠りに堕ちようとしたとき、BGMの中にペラペラという音が聞こえた。
「紙?」
目を開けて音の出所を見ると、小さな紙が風に飛ばされて飛んできている。
それは、ちょうど私のほうに向かってきていた。
「なんだろ」
思わず手を伸ばしてそれを手に取る。そして、その内容を読み上げた。
「号外……ベアトリスは生きていた――」
気づけばすでに時刻は夕方あたりをまわっていて、なんと数時間は雑談で盛り上がっていたのである。
そして、現在はすでに夜中となっていて、教師用の部屋の一室にて、空を眺めながら作戦を考えているところなのだ。
二人には、副教師としての激務を任せていたからか、すぐに寝てしまった。
(ユーリ……そこ私の寝床……)
まあいい。
それよりも人影なんて見つからなかったら、一生解決しないのではないだろうか?
せめて、人影の正体が分かればすぐに探知魔法で見つけられるのだけれど。生きてるのか生きてないのか、実体はあるのかないのかもわからないのに、私が一人で探しに行くのはほぼ不可能。
「ということは協力者が必要ね」
まあ、幽霊に詳しそうな友人もいることだし、あとでその人の元に行ってみようかな。
「あとは、うちの生徒たちも使っちゃお」
実践訓練と称して近場の森を使用すれば、人影とやらも姿を現すかもしれないし。
それで、見つからなければ近くにはいないと報告もできる。
「まさに一石二鳥ね!」
次の授業は明日。
今日で全員の能力を把握したから、それに合った連携のパーティを組んで戦ってもらうとしますか!
それに人影が襲ってきたとして、すぐに死ぬことはないだろうし。
謁見のあと、寝る前に少し調べてみた。
現在は勇者がすでに存在していて、その勇者パーティと呼ばれる人たちも存命中。
なのに、異世界から生徒たちが召喚された。
その理由は単に政治的目的なわけであった。
まあ、帝国は勇者パーティという強力な武器を持っているのに、我が王国は強力な異世界人を誰一人たりとも召喚していなかったので、対抗手段に召喚したわけだ。
要するに、戦争回避のためね。
勇者はすでに存在するから仮に『英雄』ということで、彼らを育成すれば数的に勇者と同等くらいには持っていけるだろう。
どこぞの勇者は数年前ですでに当時の私と互角かそれ以上だったので、同等に持っていけるか少し不安は残るけれど。
「ひとまずは人影調査の続きね!」
♦♢♦♢♦↓とある魔人視点↓
寒い。
夜の森の中は非常に肌寒かった。
私が勝手ながら住処にしている森は、かつて私たちが戦った場所。悪い意味での思い出の場所である。
別にここにとどまる理由はなかったけど、適当にほっつきまわって、捕まったら面倒だし、ここいいるのが安全なんだ。
灯台下暗し……少し違う気もするけど、大体そんなところ。
「ベアトリスか……」
かつての私の上司に当たる人物である狂信嬢様を殺した人。
ただ、そこは戦場だった。死ぬも生きるも実力次第なのである。恨む気持ちはこれっぽっちもないが、私が尊敬しているのは、後にも先にも狂信嬢様ただ一人である。
森の中での生活は一年前から始めた。
私の所属していた組織は、現在ではあまり活動していない。
活動しているのは幹部連中だけで、下っ端は待機。
なんでも、王国がベアトリスの死亡を表明した。だがしかし、絶対にそれは間違っている。
私は知っている。狂信嬢様相手に、互角にやりあって……フードを被った男の子?も合わせて二対一だったとはいえ、狂信嬢様を殺した相手だ。
視界が悪くよく見えなかったが、縛り付けられ白装束が血で赤く染まっていた。
そして、森から消え去る。
転移の魔法だろうけど、少し驚いた。あんな子供が自分でも扱えない魔法を簡単に発動させるのだから。
ベアトリスはまだ生きている。
死亡の発表の一年前からそう思っていた組織は、すぐに捜索を始めた。協力者を名乗る少女の姿はそれ以降見ていない。
何でかは分からないが。
そして、組織はなぜか悪魔と敵対している。利害は一致しているらしいが、事態の収束を計りたい組織と、大事にしてでも目的を果たしたい悪魔とで、争いが起きている。
目的というのはベアトリスの捜索。
見つけ次第、確保もしくは殺せってさ。
だけど、私はその前に組織を抜けたのだ。なぜかって?
同じ下っ端同士で仲間と言えた奴らは死んだし、尊敬する上司も死んだし、訳のわからないことをしている組織にはもう嫌気がさしただけだ。
組織から逃げ出すのは重罪だが、見つからなければ罰せられない。
「お腹すいたな……」
ご飯、あんまり食べてないんだ。
ここで、取れるお肉はごくわずか。生きていくのには申し分ないけど。
「朝ごはん、どうしよ」
もうじき朝日が昇ってくる。
「お隣さんは実践訓練あるのかな?」
大学院の近くにあるこの森は訓練によく使われる。そして、たまに少し勘の鋭いガキが混ざっていることがあるのだ。
気配をわざわざ消して通り過ぎるのを待ってやってるのに、ひどい話だ。勝手にお化けだのなんだの言って逃げていくんだから。
「わたしゃま・だ・死んでないわよ……」
ま、少なくとも何で生きてるかはわかんないけどね。
「寝るか」
星空をずっと眺めていたら、寝られなかった。朝ごはんを作るのも面倒だし、さっさと寝てしまおう。
そう思って、私は横になる。
森の中の澄んだ匂いが、寝心地の良さを引き立てる。
鳥やら虫やらの鳴き声がまたいいBGMになるのだ。
私が、眠りに堕ちようとしたとき、BGMの中にペラペラという音が聞こえた。
「紙?」
目を開けて音の出所を見ると、小さな紙が風に飛ばされて飛んできている。
それは、ちょうど私のほうに向かってきていた。
「なんだろ」
思わず手を伸ばしてそれを手に取る。そして、その内容を読み上げた。
「号外……ベアトリスは生きていた――」
0
お気に入りに追加
1,596
あなたにおすすめの小説
突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??
シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。
何とかお姉様を救わなくては!
日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする!
小説家になろうで日間総合1位を取れました~
転載防止のためにこちらでも投稿します。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる