235 / 504
協力者
しおりを挟む
そこにいたのは、メアルだった。
「メアルさん?憤怒……赤毛の人が入ってきたと思うんですけど……どこに行ったか分かりますか?」
そう質問すると同時に、メアルは立ち上がり、扉を閉めた。
「赤毛の人、ね。彼女なら、出してやったよ」
「出し、て?」
「この封印からね」
「!?」
封印という単語に私が反応してしまったせいか、メアルは薄く笑った。
「あれほど、『強欲』には近寄るなといったのに、忠告を無視するとはね」
「え?いったい、どうなって……」
「どうして、私が封印について知っているか……そりゃあ不思議だな。ここには『憤怒と少女』の意志だけしかないはずなのにな」
「この封印は、憤怒さんと私だけが知ってるはず……」
封印された張本人である憤怒さんと、封印に迷い込んだ私。
それ以外に、封印について知っている人がここにいるわけない。
いたら、おかしい。
(でも、存在を知っている人はいるはず……)
私のように、封印に入り込むことは可能なのだろうか?
他の罪人たちは。
「メアルさん、あなたも罪人の一人なんですか?」
出なければ説明がつかない。
封印の存在を知っているのはそれくらいだからだ。
そして、封印を開けられるのも彼らだけだろう。
「私は……罪人ではない」
そのセリフにはどこか重みを感じた。
「だが、彼らがしてきたことはすべて知っている。ベアトリス、あなたは知らなくていいこと」
「じゃあ、あなたは誰なんですか!」
メアルは私から見てもかなり不自然だった。
会った時から、ここに至るまで。
実際に話したのは少しだけだが、それでも違和感はだいぶあった。
(管理人が貴族の嫌がらせを知っていたのであれば、止めることもできたよね?なんでしなかったの?)
管理人の地位は貴族と比べて、圧倒的に低い。
だが、それよりも上の地位に位置する罪人御用達の施設の管理者ともなれば、貴族だって少しは黙るだろうに……。
そうすれば、私たちがここに来る必要もなかった。
(茶髪に、『メアル』……ほんとに偶然?)
私の母親、メアリは、茶髪だった。
そして、メアルも茶髪だ。
偶然かもしれない。
だけど、こんなことってある?
私の疑いすぎ?
(それに、憤怒さんをここから出した?いったいどうやって?)
封印を解く方法は三つだった。
術者の消滅
封印を受けた者の消滅
そして、封印の破壊だ。
「封印を破壊したんですか!?」
「いや、違う。私は彼女をここから出しただけ」
てことは、二番目か。
それでも所どこと疑問が残るのだが……。
「もし、私を疑うのであれば、ベアトリス。あなたが外に出た後、私に聞くといい。その時はすべてを答えてくれるだろう」
「……わかりました。いや、わからないですけど、納得はします」
「それでいい。この封印はじきに壊れる。彼女が抜け出したからな。ただし、封印の消滅は術者に感知される。気をつけろ」
そう言われた瞬間、空間にひびが入る。
メアルと私の間にあるはずの名にもない空間から、突如裂け目が生まれた。
それはどんどんと広がり、いたるところに出現しだした。
「私の役目はいったんここまでだ。ベアトリスが出てくるまでは、私も楽をできるというもの……」
「ねえ!ちょっと待って!」
「私も暇ではないのだ。術者を倒すなら、さっさとした方がいい。私・も・手・助・け・を・す・る・から」
そう言われた時には、空間の裂け目が私の立つ地面にまで広がり、落ちた。
♦♢♦♢♦
落ちてきたところは、見たことがある風景だった。
「戻った?」
その場所は久しぶりに見た狭苦しい通路だった。
灰色の壁が今では懐かしく感じる。
「待って……今は何年?」
封印の中の時間と、現実の時間の流れは違うものの、着々と時間は進んでいくのだ。
封印の中で何日過ごしたのかはわからないが、相当長い時間がたっているのは明らかだ。
「早く、みんなに会わないと」
長らく顔を出していない。
きっとみんなも心配してるだろう。
こんな城はさっさと抜け出して、ネルネの経営する宿まで向かわないと……。
そう思い、私は転移を発動させようとした。
「逃げるのはやめてほしいな」
「!……『強欲』!?」
「やあ、久しぶりだね。色欲がお怒りだよ?」
コツコツと足音を鳴らして出てきたのは、私を誘拐した張本人だった。
「何の用?私はそろそろ帰りたいんだけど?」
「いや、帰らせるわけにはいかないんだ。今の女王は色欲。彼女の命令は先輩である私でも絶対なんだ。だから、止める」
強欲が視界から消えた。
不意に私の第六感が働き、体の横をガードする。
そして、腕には衝撃が走った。
「っ!」
「あれ?なんでばれたの?」
反撃とばかりに、私は腕の間から手を出し、魔法を放つ。
だが、それは簡単に避けられて、再び消えた。
「上!」
体を動かすには時間が足りなかったため、私は結界を展開する。
結界越しにもその衝撃は伝わってきて、今にも割れてしまいそうだった。
「これも防ぐか。面白いね、何があったの?この一ヶ月で」
「一か月?」
どうやら、私が封印に入り込んでから、一か月が経過していたようだ。
(だったら、なおさら早く会いに行かないと!)
私は、展開していた魔法をすべて解除して、全力を出すことにした。
「メアルさん?憤怒……赤毛の人が入ってきたと思うんですけど……どこに行ったか分かりますか?」
そう質問すると同時に、メアルは立ち上がり、扉を閉めた。
「赤毛の人、ね。彼女なら、出してやったよ」
「出し、て?」
「この封印からね」
「!?」
封印という単語に私が反応してしまったせいか、メアルは薄く笑った。
「あれほど、『強欲』には近寄るなといったのに、忠告を無視するとはね」
「え?いったい、どうなって……」
「どうして、私が封印について知っているか……そりゃあ不思議だな。ここには『憤怒と少女』の意志だけしかないはずなのにな」
「この封印は、憤怒さんと私だけが知ってるはず……」
封印された張本人である憤怒さんと、封印に迷い込んだ私。
それ以外に、封印について知っている人がここにいるわけない。
いたら、おかしい。
(でも、存在を知っている人はいるはず……)
私のように、封印に入り込むことは可能なのだろうか?
他の罪人たちは。
「メアルさん、あなたも罪人の一人なんですか?」
出なければ説明がつかない。
封印の存在を知っているのはそれくらいだからだ。
そして、封印を開けられるのも彼らだけだろう。
「私は……罪人ではない」
そのセリフにはどこか重みを感じた。
「だが、彼らがしてきたことはすべて知っている。ベアトリス、あなたは知らなくていいこと」
「じゃあ、あなたは誰なんですか!」
メアルは私から見てもかなり不自然だった。
会った時から、ここに至るまで。
実際に話したのは少しだけだが、それでも違和感はだいぶあった。
(管理人が貴族の嫌がらせを知っていたのであれば、止めることもできたよね?なんでしなかったの?)
管理人の地位は貴族と比べて、圧倒的に低い。
だが、それよりも上の地位に位置する罪人御用達の施設の管理者ともなれば、貴族だって少しは黙るだろうに……。
そうすれば、私たちがここに来る必要もなかった。
(茶髪に、『メアル』……ほんとに偶然?)
私の母親、メアリは、茶髪だった。
そして、メアルも茶髪だ。
偶然かもしれない。
だけど、こんなことってある?
私の疑いすぎ?
(それに、憤怒さんをここから出した?いったいどうやって?)
封印を解く方法は三つだった。
術者の消滅
封印を受けた者の消滅
そして、封印の破壊だ。
「封印を破壊したんですか!?」
「いや、違う。私は彼女をここから出しただけ」
てことは、二番目か。
それでも所どこと疑問が残るのだが……。
「もし、私を疑うのであれば、ベアトリス。あなたが外に出た後、私に聞くといい。その時はすべてを答えてくれるだろう」
「……わかりました。いや、わからないですけど、納得はします」
「それでいい。この封印はじきに壊れる。彼女が抜け出したからな。ただし、封印の消滅は術者に感知される。気をつけろ」
そう言われた瞬間、空間にひびが入る。
メアルと私の間にあるはずの名にもない空間から、突如裂け目が生まれた。
それはどんどんと広がり、いたるところに出現しだした。
「私の役目はいったんここまでだ。ベアトリスが出てくるまでは、私も楽をできるというもの……」
「ねえ!ちょっと待って!」
「私も暇ではないのだ。術者を倒すなら、さっさとした方がいい。私・も・手・助・け・を・す・る・から」
そう言われた時には、空間の裂け目が私の立つ地面にまで広がり、落ちた。
♦♢♦♢♦
落ちてきたところは、見たことがある風景だった。
「戻った?」
その場所は久しぶりに見た狭苦しい通路だった。
灰色の壁が今では懐かしく感じる。
「待って……今は何年?」
封印の中の時間と、現実の時間の流れは違うものの、着々と時間は進んでいくのだ。
封印の中で何日過ごしたのかはわからないが、相当長い時間がたっているのは明らかだ。
「早く、みんなに会わないと」
長らく顔を出していない。
きっとみんなも心配してるだろう。
こんな城はさっさと抜け出して、ネルネの経営する宿まで向かわないと……。
そう思い、私は転移を発動させようとした。
「逃げるのはやめてほしいな」
「!……『強欲』!?」
「やあ、久しぶりだね。色欲がお怒りだよ?」
コツコツと足音を鳴らして出てきたのは、私を誘拐した張本人だった。
「何の用?私はそろそろ帰りたいんだけど?」
「いや、帰らせるわけにはいかないんだ。今の女王は色欲。彼女の命令は先輩である私でも絶対なんだ。だから、止める」
強欲が視界から消えた。
不意に私の第六感が働き、体の横をガードする。
そして、腕には衝撃が走った。
「っ!」
「あれ?なんでばれたの?」
反撃とばかりに、私は腕の間から手を出し、魔法を放つ。
だが、それは簡単に避けられて、再び消えた。
「上!」
体を動かすには時間が足りなかったため、私は結界を展開する。
結界越しにもその衝撃は伝わってきて、今にも割れてしまいそうだった。
「これも防ぐか。面白いね、何があったの?この一ヶ月で」
「一か月?」
どうやら、私が封印に入り込んでから、一か月が経過していたようだ。
(だったら、なおさら早く会いに行かないと!)
私は、展開していた魔法をすべて解除して、全力を出すことにした。
0
お気に入りに追加
1,596
あなたにおすすめの小説
突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??
シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。
何とかお姉様を救わなくては!
日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする!
小説家になろうで日間総合1位を取れました~
転載防止のためにこちらでも投稿します。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる