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懐かしさ(ナイン視点)
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罪人の中で一番狂っているのは『色欲』だ。
周りの奴らはそういう。
だが、全員どこかしらの精神がイカレているせいで、大罪人の中にまともな人物など存在しない。
だから一概に、そう民衆が決めつける結論は合っているとは言えないのだ。
そして、罪人たちには特徴がある。
それは、呼ばれる罪の名前と性格が酷似しているということ。
傲慢を冠する罪人ならば、傲慢な性格。
嫉妬なら嫉妬深い。
などが挙げられる。
だが、一人一人がひねくれているため、その罪を背負っているから、そのような性格をしているわけではない。
そのような性格に変貌した理由は彼ら彼女らの過去にある。
そして、時間の流れでさらに変化していった。
聖戦終了時罪、深き者たちのうち、五人が死亡した。
当時、とある聖騎士と、勇者を名乗る人物二人に五人がかりでようやく食い止めることができた彼らを吸血鬼は称賛することなどなかった。
何故なら、死んでしまったから。
罪人の方が弱いではないか。
人々はそう思って、罪人への信仰心を失いつつあった。
その後、七人になった罪人たちのうち、最もまともな精神をしている『強欲』でさえも、感情が薄れていた。
七人は今でも生きている。
強欲は数百年以上、色欲は約百年……それ以外の罪人も色欲と同じくらいを生きている。
怠惰以外は。
彼女を知っている人物はこの世界でも数少ないだろう。
怠惰はここ五十年以内に新たに罪を背負った人物で、七人の中で一番若い。
ただし、七人の中で誰よりも全てを理解していて、誰よりも全てを諦めていた。
だから、彼女は他六人に“お願い“をしたのだ。
「私を殺して」
六人は殺すことはなかった。
何故なら、他人の命に興味はかほどもなかったからだ。
例え、似た境遇を背負う仲間だったとしても、あくまで他人。
お願いを聞く筋合いはないのだ。
だが、そんなある日に『怠惰』は姿を眩ませた。
彼女が暮らしていた部屋はきれいに整頓されていて、必要最低限の荷物だけが消えていた。
彼女がどこへ行ったのか知るのは、今では一人……『強欲』だけだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ナインと呼んでくれ」
私の自己紹介は単調なもの。
何度も繰り返してきたので、もう慣れた。
全員、顔を見合わせて微妙な顔をしていた。
そんなことは私の頭の中ではどうでもいいと片付いていた。
問題は一番小さな少年だ。
(似ているどころの話ではないな)
きっとあいつの……。
そして、ネルネの方を振り返る。
「?」
キョトンとした表情をこちらに向ける。
(やはり、来て良かった)
色々と収穫があった。
白い少年と獣人、ネルネにベアトリス。
(全く、ベアトリスも甘いなぁ)
彼女の性格はだんだんわかってきた。
ただのばか。
この世界で必要なものはなんだ?
力だけ。
警戒すらしないで、私をここに連れてきたのは甘いとしか言いようがない。
そして、どこまでもお人好しのばかは、「すぐに死ぬ」と相場が決まっている。
(私みたいなやつなんていくらでもいる、だが、その前には狩ってやるさ)
私は既に知っている。
ベアトリスが、人間であることも、同僚が探している人物であることも。
情報の共有は必須案件。
特徴を把握しておいても不思議じゃないだろうに。
あの時、フードをめくって顔を見た時点で、私は敵なのだ。
そろそろ行動をうつしても良い頃合い、なんだろう?
『さっさと捕まえて』
同僚は魔法で耳元に囁いてくる。
わかっているさ。
「さて」
軽い自己紹介も終わったのだ。
はじめよう。
はじめに私の動きに気づいたのは、狐の獣人だった。
意外や意外、彼女?は私の手の動きが見えたらしく、目を見開いていた。
敵のアジトに乗り込むのは、基本の戦術だというのに……やはり、ベアトリスの仲間は爪が甘いようだ。
私の手刀はベアトリスの首元を狙う。
「え?」
ゴキっという音がした後にベアトリスはすぐに眠りについた。
「いい子だね」
「な、なにしてるんですか!?」
ネルネが何かを叫んでいる。
言葉を発する前に狐の方が次に動く。
腕に抱え込んだベアトリスに手を伸ばして、私から引き剥がそうとするのを私は片手で弾く。
(計算ミスだね、こっちの方が強いじゃないか)
私の想像とは裏腹にこの場で一番強いのは、この狐だ。
さすが獣人といったところ。
身体能力は凄まじく、私も弾くのが一苦労。
だけど、私はこう見えても『罪人』なのだ。
強欲の名を背負う私に勝てる奴なんていない。
その場にいたもう一人の獣人もようやく動き出して、私は二人に挟まれて攻撃される。
だが、
「私には効かないよ」
おっと、言い忘れていたことだった。
私たち罪人は罪を背負った段階で強力な力を手に入れると言ったことがあっただろうか。
それは、個人の固有の能力とは別の特殊な能力である。
私の『強欲』もそれと同じ。
強欲の権能は私の知る限り、無敵に近い性能をしている。
性能はまだ秘密にしておくとしよう。
「手を離せ!」
依然として外野は何かを騒いでいる。
うるさい。
「だから効かないっていっているでしょ」
「ふざけんな!」
キツネが何かを言っている。
そんなこと言われたって、私は同僚に『命令』されただけだし……。
と、そんなことを考えている間に、もう一人の方が攻撃を仕掛けてきた。
背中を思いっきり強打された。
「っ」
「効いた……?」
「甘いよ」
私は背中から火を吹き出して見せた。
私の大っ嫌いな火。
だけど、相手を殺すのには、最適。
だから使ってしまう。
無論それは避けられた。
だが、部屋は燃え出した。
ついついキツネに意識を飛ばしすぎたな。
だから、もう一人の攻撃を防げなかった。
あ、秘密にしておくんだったね。
今のは忘れてくれ。
「な、ナインさん?」
「ん?」
後ろを振り返れば、怯えている少女の姿がある。
そして、今更な話だったが、
「君は戦わないのかい?」
「え?わ、私は……」
「変わらないな」
「え……?」
ネルネを見ていると、昔の『怠惰』を思い出す。
争うことが大っ嫌いな彼女はいつもおどおどしていた。
「まあ、いいさ」
『早く帰りなさい、強欲』
「わかっているさ」
同僚から指示が飛んできた。
「じゃあね、ネルネ。一日だけだったけど、暇は潰せたよ」
それだけ言い残して、私はベアトリスを抱えて転移した。
周りの奴らはそういう。
だが、全員どこかしらの精神がイカレているせいで、大罪人の中にまともな人物など存在しない。
だから一概に、そう民衆が決めつける結論は合っているとは言えないのだ。
そして、罪人たちには特徴がある。
それは、呼ばれる罪の名前と性格が酷似しているということ。
傲慢を冠する罪人ならば、傲慢な性格。
嫉妬なら嫉妬深い。
などが挙げられる。
だが、一人一人がひねくれているため、その罪を背負っているから、そのような性格をしているわけではない。
そのような性格に変貌した理由は彼ら彼女らの過去にある。
そして、時間の流れでさらに変化していった。
聖戦終了時罪、深き者たちのうち、五人が死亡した。
当時、とある聖騎士と、勇者を名乗る人物二人に五人がかりでようやく食い止めることができた彼らを吸血鬼は称賛することなどなかった。
何故なら、死んでしまったから。
罪人の方が弱いではないか。
人々はそう思って、罪人への信仰心を失いつつあった。
その後、七人になった罪人たちのうち、最もまともな精神をしている『強欲』でさえも、感情が薄れていた。
七人は今でも生きている。
強欲は数百年以上、色欲は約百年……それ以外の罪人も色欲と同じくらいを生きている。
怠惰以外は。
彼女を知っている人物はこの世界でも数少ないだろう。
怠惰はここ五十年以内に新たに罪を背負った人物で、七人の中で一番若い。
ただし、七人の中で誰よりも全てを理解していて、誰よりも全てを諦めていた。
だから、彼女は他六人に“お願い“をしたのだ。
「私を殺して」
六人は殺すことはなかった。
何故なら、他人の命に興味はかほどもなかったからだ。
例え、似た境遇を背負う仲間だったとしても、あくまで他人。
お願いを聞く筋合いはないのだ。
だが、そんなある日に『怠惰』は姿を眩ませた。
彼女が暮らしていた部屋はきれいに整頓されていて、必要最低限の荷物だけが消えていた。
彼女がどこへ行ったのか知るのは、今では一人……『強欲』だけだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ナインと呼んでくれ」
私の自己紹介は単調なもの。
何度も繰り返してきたので、もう慣れた。
全員、顔を見合わせて微妙な顔をしていた。
そんなことは私の頭の中ではどうでもいいと片付いていた。
問題は一番小さな少年だ。
(似ているどころの話ではないな)
きっとあいつの……。
そして、ネルネの方を振り返る。
「?」
キョトンとした表情をこちらに向ける。
(やはり、来て良かった)
色々と収穫があった。
白い少年と獣人、ネルネにベアトリス。
(全く、ベアトリスも甘いなぁ)
彼女の性格はだんだんわかってきた。
ただのばか。
この世界で必要なものはなんだ?
力だけ。
警戒すらしないで、私をここに連れてきたのは甘いとしか言いようがない。
そして、どこまでもお人好しのばかは、「すぐに死ぬ」と相場が決まっている。
(私みたいなやつなんていくらでもいる、だが、その前には狩ってやるさ)
私は既に知っている。
ベアトリスが、人間であることも、同僚が探している人物であることも。
情報の共有は必須案件。
特徴を把握しておいても不思議じゃないだろうに。
あの時、フードをめくって顔を見た時点で、私は敵なのだ。
そろそろ行動をうつしても良い頃合い、なんだろう?
『さっさと捕まえて』
同僚は魔法で耳元に囁いてくる。
わかっているさ。
「さて」
軽い自己紹介も終わったのだ。
はじめよう。
はじめに私の動きに気づいたのは、狐の獣人だった。
意外や意外、彼女?は私の手の動きが見えたらしく、目を見開いていた。
敵のアジトに乗り込むのは、基本の戦術だというのに……やはり、ベアトリスの仲間は爪が甘いようだ。
私の手刀はベアトリスの首元を狙う。
「え?」
ゴキっという音がした後にベアトリスはすぐに眠りについた。
「いい子だね」
「な、なにしてるんですか!?」
ネルネが何かを叫んでいる。
言葉を発する前に狐の方が次に動く。
腕に抱え込んだベアトリスに手を伸ばして、私から引き剥がそうとするのを私は片手で弾く。
(計算ミスだね、こっちの方が強いじゃないか)
私の想像とは裏腹にこの場で一番強いのは、この狐だ。
さすが獣人といったところ。
身体能力は凄まじく、私も弾くのが一苦労。
だけど、私はこう見えても『罪人』なのだ。
強欲の名を背負う私に勝てる奴なんていない。
その場にいたもう一人の獣人もようやく動き出して、私は二人に挟まれて攻撃される。
だが、
「私には効かないよ」
おっと、言い忘れていたことだった。
私たち罪人は罪を背負った段階で強力な力を手に入れると言ったことがあっただろうか。
それは、個人の固有の能力とは別の特殊な能力である。
私の『強欲』もそれと同じ。
強欲の権能は私の知る限り、無敵に近い性能をしている。
性能はまだ秘密にしておくとしよう。
「手を離せ!」
依然として外野は何かを騒いでいる。
うるさい。
「だから効かないっていっているでしょ」
「ふざけんな!」
キツネが何かを言っている。
そんなこと言われたって、私は同僚に『命令』されただけだし……。
と、そんなことを考えている間に、もう一人の方が攻撃を仕掛けてきた。
背中を思いっきり強打された。
「っ」
「効いた……?」
「甘いよ」
私は背中から火を吹き出して見せた。
私の大っ嫌いな火。
だけど、相手を殺すのには、最適。
だから使ってしまう。
無論それは避けられた。
だが、部屋は燃え出した。
ついついキツネに意識を飛ばしすぎたな。
だから、もう一人の攻撃を防げなかった。
あ、秘密にしておくんだったね。
今のは忘れてくれ。
「な、ナインさん?」
「ん?」
後ろを振り返れば、怯えている少女の姿がある。
そして、今更な話だったが、
「君は戦わないのかい?」
「え?わ、私は……」
「変わらないな」
「え……?」
ネルネを見ていると、昔の『怠惰』を思い出す。
争うことが大っ嫌いな彼女はいつもおどおどしていた。
「まあ、いいさ」
『早く帰りなさい、強欲』
「わかっているさ」
同僚から指示が飛んできた。
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