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燃えてみる?
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誰しもが私たちの方を振り返る。
二階に三人で向かう最中、たくさんの人が私たちの方をガン見していた。
しかも、敵意の視線で……。
え?
なんなの、めちゃ怖いんですけど?
でも、きっとこの人のせいなんだろうな……。
狂気的な笑顔を浮かべていたかと思ったら、実は演技で、素はほぼ真顔をというね。
初めて見たよ、笑顔を手で調節する人。
口角の角度を手で調整してるんだもん。
それが一番怖いことに早く気付いてほしい。
そして、二階の廊下には相変わらず人がいない。
そんで持って、どこか人の目がない場所で話そうかなと思ってここまでやってきたわけだが、
「どっちの部屋で話す——?」
そう言おうとした時、そのナインにフードをいきなり取られてしまった。
避けることができない早業だ。
少し油断していたのもあるが、簡単に剥がされて、素顔が見えてしまった。
「あっ……!」
私は急いでフードを被る。
一応ね、バレてはいけない事情というものがあるので、あまり顔を晒すことができないのだ。
「いきなりなにするの!」
私も少しむかついたので、そう言ったら、ナインはものすごく不思議そうにしていた。
なんで怒られたのかわからないというようだった。
そりゃそうだ。
フードを取っただけで怒ってくるような年下のガキなんて、見るに耐えない。
それとナインは何か納得したようだった。
「……なんでも」
それだけ言って、ナインはなぜか廊下の一番奥の部屋……ではなく、窓に足をかけた。
「え、なにしてるの?」
「来なよ」
そう言って、上へ登って行った。
ネルネと顔を見合わせてから、私たちも上に登った。
ネルネは体力がないようで、登るのも難しそうだった。
手を貸してあげて、ようやくネルネも登れたようだった。
それを見ていたナインは余計に驚いていた。
吸血鬼なのに、体力がないからか?
わからないけど、ナインは不思議な人だというのはわかった。
「こっちの方が、気分がいい」
「って、日中だよ!?燃えるよ!?」
ナインはフードをつけることもなく、堂々と日の元に体を晒していた。
そして、今度は私が驚くことになった。
なんと、ナインの体が燃えないのだ。
「え?」
「燃えないのがなぜかとか思ったでしょう?」
「あ、うん……」
「燃えてるよ」
「!?」
そんなことを言い出すナイン。
なにを根拠に……と言おうとした時、
「ほら」
ナインが指先を見せた。
少し消滅したその指は合計で四本に指を減らしていた。
一本分が消滅していた。
だけど、それはすぐに元に戻る。
よく、ナインの方を観察すると、燃えている。
だが、燃えて消滅した部分はすぐさま再生していた。
「なんで……」
「私は結構凄い人なんだ、だからね」
あやふやだなー……。
……………?
あれ?
そういえば、ネルネもつけてなくない?
急いで私は振り向いた。
そして、また驚いたのだ。
「なんでネルネも!?」
「あ、私代々燃えない家系なんで」
なにそのチート!?
「へー……」
対するナインはものすごく冷静に笑った。
もちろん、それは作り笑いだったが……。
「屋根に登っておいて、なんだけど、別に話すことないよね」
ナインは話を戻した。
「確かにそうだけど……視線が痛かったから、逃げる口実が欲しかっただけというか……」
ぶっちゃけそれ以外に理由はない。
どこか別の場所で話そうという建前で、敵意の視線から逃げたかっただけである。
「じゃあ、私のことはなにも知らないんだ」
「へ?」
「私がなにをしている人なのかとかさ」
もちろんのことながら、そんなことは知らない。
「関わっちゃいけない」というのは知っている。
メアルに教えてもらったこと、あながち間違ってはいないな。
でも、それを伝えることはない。
「なにも知らないですけど」
「そっか」
そう言って、彼女は天を仰いだ。
「私は、この空が好き」
「?」
「だけど、夜は嫌い」
いきなりの話で困惑する。
だが、話は止まらない。
「晴れ渡った明るい空は、私を安心させる。だけど、夜、夜になると気分が晴れない。ねえ、あなたはどう思う?なにが嫌い?」
その質問は私に対してのものではなく、その後ろにいるネルネに対したものだった。
急な質問でネルネもびっくりした様子だった。
「へ!?あ、うーん……強いていうなら、火が嫌いです」
「火ねえ……」
「なんでかはわからないけど、火は怖いんですよねー」
火が嫌いとは初の情報だ。
知ってどうこうするというわけではないけど、驚きである。
それに反応するナインはどこか満足そうだった。
「私も嫌い。だけど……好き」
そう言って、手から火を出した。
単純な魔法……のはずなのに、私にはまた違和感が襲ってきた。
減るはずの魔力が全く減っていない。
なのに、手には物質的に顕現しているのだ、炎が……。
「これは、全てを燃やせる火。あなたも燃えてみる?」
その質問はどうやら私に向けてのものらしい。
「嫌です」
「そう?でも、安心しなよ、殺しはしないから」
物騒なことしか言わないな……。
やっぱ関わるのやめようかな。
「嫌と言ったら嫌です!」
「……そう、残念」
そう言って、私の首に手を回した。
私の短くて細い首はナインの手にすっぽり収まり、少しの力で折れてしまいそうだった。
「じゃあ、その時は——」
私の首に力が入った。
びっくりして、私が足掻こうとすると、彼女はすぐに手を離した。
「私の友達がね、君くらいの歳の子が欲しいって言ってるんだ。彼女、男漁りが趣味なのに、不思議よね」
「……へー、そうなんですね」
「私は、もうなにもいらないけど、彼女は欲深いのよ。気が向いたら、私の元に遊びにおいでなさい。連れてってあげるから」
そう言って、再び作り笑いを浮かべて、屋根を散歩し始めた。
そして、端っこまで行って、昼寝を始めるのだった。
二階に三人で向かう最中、たくさんの人が私たちの方をガン見していた。
しかも、敵意の視線で……。
え?
なんなの、めちゃ怖いんですけど?
でも、きっとこの人のせいなんだろうな……。
狂気的な笑顔を浮かべていたかと思ったら、実は演技で、素はほぼ真顔をというね。
初めて見たよ、笑顔を手で調節する人。
口角の角度を手で調整してるんだもん。
それが一番怖いことに早く気付いてほしい。
そして、二階の廊下には相変わらず人がいない。
そんで持って、どこか人の目がない場所で話そうかなと思ってここまでやってきたわけだが、
「どっちの部屋で話す——?」
そう言おうとした時、そのナインにフードをいきなり取られてしまった。
避けることができない早業だ。
少し油断していたのもあるが、簡単に剥がされて、素顔が見えてしまった。
「あっ……!」
私は急いでフードを被る。
一応ね、バレてはいけない事情というものがあるので、あまり顔を晒すことができないのだ。
「いきなりなにするの!」
私も少しむかついたので、そう言ったら、ナインはものすごく不思議そうにしていた。
なんで怒られたのかわからないというようだった。
そりゃそうだ。
フードを取っただけで怒ってくるような年下のガキなんて、見るに耐えない。
それとナインは何か納得したようだった。
「……なんでも」
それだけ言って、ナインはなぜか廊下の一番奥の部屋……ではなく、窓に足をかけた。
「え、なにしてるの?」
「来なよ」
そう言って、上へ登って行った。
ネルネと顔を見合わせてから、私たちも上に登った。
ネルネは体力がないようで、登るのも難しそうだった。
手を貸してあげて、ようやくネルネも登れたようだった。
それを見ていたナインは余計に驚いていた。
吸血鬼なのに、体力がないからか?
わからないけど、ナインは不思議な人だというのはわかった。
「こっちの方が、気分がいい」
「って、日中だよ!?燃えるよ!?」
ナインはフードをつけることもなく、堂々と日の元に体を晒していた。
そして、今度は私が驚くことになった。
なんと、ナインの体が燃えないのだ。
「え?」
「燃えないのがなぜかとか思ったでしょう?」
「あ、うん……」
「燃えてるよ」
「!?」
そんなことを言い出すナイン。
なにを根拠に……と言おうとした時、
「ほら」
ナインが指先を見せた。
少し消滅したその指は合計で四本に指を減らしていた。
一本分が消滅していた。
だけど、それはすぐに元に戻る。
よく、ナインの方を観察すると、燃えている。
だが、燃えて消滅した部分はすぐさま再生していた。
「なんで……」
「私は結構凄い人なんだ、だからね」
あやふやだなー……。
……………?
あれ?
そういえば、ネルネもつけてなくない?
急いで私は振り向いた。
そして、また驚いたのだ。
「なんでネルネも!?」
「あ、私代々燃えない家系なんで」
なにそのチート!?
「へー……」
対するナインはものすごく冷静に笑った。
もちろん、それは作り笑いだったが……。
「屋根に登っておいて、なんだけど、別に話すことないよね」
ナインは話を戻した。
「確かにそうだけど……視線が痛かったから、逃げる口実が欲しかっただけというか……」
ぶっちゃけそれ以外に理由はない。
どこか別の場所で話そうという建前で、敵意の視線から逃げたかっただけである。
「じゃあ、私のことはなにも知らないんだ」
「へ?」
「私がなにをしている人なのかとかさ」
もちろんのことながら、そんなことは知らない。
「関わっちゃいけない」というのは知っている。
メアルに教えてもらったこと、あながち間違ってはいないな。
でも、それを伝えることはない。
「なにも知らないですけど」
「そっか」
そう言って、彼女は天を仰いだ。
「私は、この空が好き」
「?」
「だけど、夜は嫌い」
いきなりの話で困惑する。
だが、話は止まらない。
「晴れ渡った明るい空は、私を安心させる。だけど、夜、夜になると気分が晴れない。ねえ、あなたはどう思う?なにが嫌い?」
その質問は私に対してのものではなく、その後ろにいるネルネに対したものだった。
急な質問でネルネもびっくりした様子だった。
「へ!?あ、うーん……強いていうなら、火が嫌いです」
「火ねえ……」
「なんでかはわからないけど、火は怖いんですよねー」
火が嫌いとは初の情報だ。
知ってどうこうするというわけではないけど、驚きである。
それに反応するナインはどこか満足そうだった。
「私も嫌い。だけど……好き」
そう言って、手から火を出した。
単純な魔法……のはずなのに、私にはまた違和感が襲ってきた。
減るはずの魔力が全く減っていない。
なのに、手には物質的に顕現しているのだ、炎が……。
「これは、全てを燃やせる火。あなたも燃えてみる?」
その質問はどうやら私に向けてのものらしい。
「嫌です」
「そう?でも、安心しなよ、殺しはしないから」
物騒なことしか言わないな……。
やっぱ関わるのやめようかな。
「嫌と言ったら嫌です!」
「……そう、残念」
そう言って、私の首に手を回した。
私の短くて細い首はナインの手にすっぽり収まり、少しの力で折れてしまいそうだった。
「じゃあ、その時は——」
私の首に力が入った。
びっくりして、私が足掻こうとすると、彼女はすぐに手を離した。
「私の友達がね、君くらいの歳の子が欲しいって言ってるんだ。彼女、男漁りが趣味なのに、不思議よね」
「……へー、そうなんですね」
「私は、もうなにもいらないけど、彼女は欲深いのよ。気が向いたら、私の元に遊びにおいでなさい。連れてってあげるから」
そう言って、再び作り笑いを浮かべて、屋根を散歩し始めた。
そして、端っこまで行って、昼寝を始めるのだった。
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