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エルフの森
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私は荷物の整理をしていた。
悪魔が襲撃してきたせいで、荷物があっちこっちに散乱していて集めるのがかなりめんどくさい。
なぜそんなことをするかというと、エルフの森を出るからである。
私の居場所はどうやらあるようだが、それでも家族を探さねばならないのだ。
ひとまずの目標はフォーマ。
私より強いし、彼女の長距離に渡る視覚能力は家族を探す上でも優秀だ。
「ねえ、ベアトリス。本当にいいの?」
「もちろん、ここにいても家族が見つかるわけじゃないし」
一緒に荷物を集めてくれているのはレオ君だ。
レオ君も私も私物は少ないため、すぐに終わるだろう。
あとは国王からもらった便利な道具とかも整理している。
「ベアトリスがいいならいいけど……」
シュンとしているレオ君。
表情こそ見えないが、尻尾が垂れているので、落ち込んでいるのだろう。
四つん這いで落ちている荷物を集めていたが、一旦立ち上がってレオ君の方に向かう。
なんとなくで、尻尾を引っ張った。
「ひゃ!?」
「ほれ、坊主!な~に落ち込んでんだ!元気だしな!」
食堂にいそうなおばちゃん並みに声を張り上げた。
私は落ち込んでいる人を慰める方法なんて知らないから、こういうことしかできない。
「う、うん。ありがと」
「わかればよろしい!」
「あ、あと……尻尾は触らないで」
「?」
なぜかレオ君の顔が赤くなっていた。
私の握っていた尻尾の先だけがピクピク動いている。
(え?なんかやっちゃった!?)
嫌がられているようなので、素直に離した。
それと同時に、
「人間!森から出るのか!?」
「うわ!ノックくらいしてよー!」
バタンと開いた扉から入ってきたのはトレイル。
寝起きなのか知らないが、髪の毛がボサボサだ。
「うん、そうだよ」
「へ、へー……」
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
そう言って、顔を背けられた。
その間に、私たちも落ちていた荷物を全て拾い上げて、準備が整った。
「そういえば、ユーリはどこに?」
「確か、お父様の元にいたわ」
「ああ~やっぱりね。レオ君、行くよ」
もらった荷物を合わせると、そこそこな量になった。
新しい替えの服がもらえたのは重畳だ。
トレイルと三人で国王がいそうなあの謁見の場所まで向かう。
長い道のり……なーんてことはなく、すぐにその場所についた。
扉を開けて中を見れば、二人の人の姿。
案の定、ここにいたようだ。
ユーリの方は私たちに背中を向けているから、なにをしているのか見えない。
私たちが足音を立てて近づくにつれ、二人も私たちの方に気づく。
「あ、ご主人様!」
そう言って、駆けてくるユーリを抱きとめる。
「其方も行ってしまうのか」
「はい」
少し残念そうにしている国王がいた。
国王の目に気力はあったが、それ以上に疲れていそうだった。
「其方がここに残ってくれたらどれだけ良かったか」
「それはできません。家族を探しに行きたいので」
私の目的を変えることはできない。
どんなにお願いされようと、これだけは譲らない。
「そうか、其方の決意はわかった。ならば、また……遊びにでもきなさい」
自分の子供たちを旅立たせるかのように……悲しそうな目をしながらも、私たちを応援してくれた。
「それと……ユーリ」
「!」
「達者でな」
「……そっちもね」
♦︎♢♦︎♢♦︎
「よし、着いた」
私たちが訪れたのは、精霊がいる洞窟。
この洞窟の中に三人で足を踏み入れる。
すでに、トレイルとは別れ、エルフの森を後にしていた。
中に入れば、出迎えてくれる精霊が約一名。
「待っていましたよ、ベアトリス様」
「精霊さんに様付けで呼ばれるの、なんか恥ずかしいな……」
「あら、そんなことありませんよ?尊敬する方に敬語をつけるのは当たり前のことですので」
私たちは精霊に近づき本題から聞いた。
「それで私の家族の居場所は……」
「ああ……そのことですか」
精霊の表情が陰った。
「家族に何かあったの!?」
「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ、申し訳ないなと」
「申し訳ない?」
「実は……本当は、あなたの家族がどこにいるかわからないんです」
「ええ!?」
予想外の答えに驚く。
怒りもあったがそれより先に、精霊が言い訳を話した。
「ですが、悪魔にあなたが見つかったことによって、ひとまずは悪魔たちの意識をあなたという存在にそらすことができたでしょう。つまり、あなたのご家族の生存率は少なからず上がったのです」
「まあ、そうなる……の?」
「それに、彼ら彼女らの性格を考えれば自然と分かりますよ」
「なにが?」
「どこにいるかです!」
いや、ドヤ顔すんなし。
「精霊さんはどこにいると思っているの?」
「あの後、公爵領は燃えて、悪魔たちがやってきました。生きている人間を回収し何処かへと運ぼうとしていたのです」
「ちょ!それ無事なの!?」
家族が連れて行かれていたなら、かなりやばい!
だが、私の心配を払拭するように精霊が言った。
「私は動物の目を通して見ていました。悪魔に抵抗して、うまく逃げ出したものがいたことを」
「それって!」
「あなたの家族は頭がいいんですね、うまく逃れてましたよ」
「!」
安堵のため息をつく。
ひとまず、一番の不安要素は消滅したわけだ。
「そこで、私は考えました。頭がいいあなたの家族のことです、きっとこう考えるのでは?」
「……………」
「あなたのお父君ですが、きっと国を離れていることでしょう。メイドのミサリーさん……でしたっけ……は、国内に……アレン君はレイという少女と一緒に転移で逃げているかと」
「根拠は?」
「あなたのお父君は、あなたが生きていると確信しています。なので自分の身を危険にさらしてまで、探さずとも、そのうち会えると考えるでしょう。それだけ、あなたが信用されているんです。そして、ミサリーさんですが、あなたを探して、国外へ離れることはないと思いました。あなたをずっと国内で探しているものだと思います」
根拠もしっかりとしていた。
確かに父様は、私のことを信じ切っている節目がある。
それにミサリーも、彼女の性格上あり得ない話ではない。
「ふーん、まあいいわ。とにかくその可能性が高いのね」
アレンはレイに回収された?というのも少し疑問だが。
精霊が言ってるのだ。
二人は辺境伯領にいるのだろうな。
これで目処がたった。
が、
「フォーマは?」
「……すみません、私では把握しきでませんでした」
「……まあしょうがないか」
そこまで期待していたわけではない。
なので別にいい。
すぐに私たちの力で見つければいいだけの話だから。
「それじゃ、私たちは行くわ」
そう言って精霊の洞窟を後にする。
朝の日差しが洞窟の中にまで入ってきていた。
「行こっか」
二人の方を振り返って見れば、笑顔で二人が頷いてくれた。
それを嬉しく感じながら、私が一歩踏み出そうとした時、
「人間!」
「え?」
森の方から声がした。
姿がはっきりと見えた。
トレイルだ。
「どうした——」
「なにも言わないで!一つだけ聞いて!」
そう言われて、私は黙ってしまった。
トレイルが息切れしている。
走ってここまできたんだろう。
決してエルフの森から、ここは近くないというのに。
深呼吸をし、大きく声を張り上げる動作をした。
「さっさと家族見つけて、帰ってきなさいよ!」
森中に響くその声。
私は唖然として、なにもいえなかった。
「か、勘違いしないでよね!お父様がかわいそうだからよ!……とにかく!早く帰るのよ!」
そう言って私に指を指した。
ふふっと笑い、私はそれに無言でうなずいた。
分かりやすく喜んでいるトレイル。
だが、途中で恥ずかしくなったのか、
「じゃ、じゃあね!ベアトリス!」
私の名前を呼んで、反対方向に走っていくのだった。
悪魔が襲撃してきたせいで、荷物があっちこっちに散乱していて集めるのがかなりめんどくさい。
なぜそんなことをするかというと、エルフの森を出るからである。
私の居場所はどうやらあるようだが、それでも家族を探さねばならないのだ。
ひとまずの目標はフォーマ。
私より強いし、彼女の長距離に渡る視覚能力は家族を探す上でも優秀だ。
「ねえ、ベアトリス。本当にいいの?」
「もちろん、ここにいても家族が見つかるわけじゃないし」
一緒に荷物を集めてくれているのはレオ君だ。
レオ君も私も私物は少ないため、すぐに終わるだろう。
あとは国王からもらった便利な道具とかも整理している。
「ベアトリスがいいならいいけど……」
シュンとしているレオ君。
表情こそ見えないが、尻尾が垂れているので、落ち込んでいるのだろう。
四つん這いで落ちている荷物を集めていたが、一旦立ち上がってレオ君の方に向かう。
なんとなくで、尻尾を引っ張った。
「ひゃ!?」
「ほれ、坊主!な~に落ち込んでんだ!元気だしな!」
食堂にいそうなおばちゃん並みに声を張り上げた。
私は落ち込んでいる人を慰める方法なんて知らないから、こういうことしかできない。
「う、うん。ありがと」
「わかればよろしい!」
「あ、あと……尻尾は触らないで」
「?」
なぜかレオ君の顔が赤くなっていた。
私の握っていた尻尾の先だけがピクピク動いている。
(え?なんかやっちゃった!?)
嫌がられているようなので、素直に離した。
それと同時に、
「人間!森から出るのか!?」
「うわ!ノックくらいしてよー!」
バタンと開いた扉から入ってきたのはトレイル。
寝起きなのか知らないが、髪の毛がボサボサだ。
「うん、そうだよ」
「へ、へー……」
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
そう言って、顔を背けられた。
その間に、私たちも落ちていた荷物を全て拾い上げて、準備が整った。
「そういえば、ユーリはどこに?」
「確か、お父様の元にいたわ」
「ああ~やっぱりね。レオ君、行くよ」
もらった荷物を合わせると、そこそこな量になった。
新しい替えの服がもらえたのは重畳だ。
トレイルと三人で国王がいそうなあの謁見の場所まで向かう。
長い道のり……なーんてことはなく、すぐにその場所についた。
扉を開けて中を見れば、二人の人の姿。
案の定、ここにいたようだ。
ユーリの方は私たちに背中を向けているから、なにをしているのか見えない。
私たちが足音を立てて近づくにつれ、二人も私たちの方に気づく。
「あ、ご主人様!」
そう言って、駆けてくるユーリを抱きとめる。
「其方も行ってしまうのか」
「はい」
少し残念そうにしている国王がいた。
国王の目に気力はあったが、それ以上に疲れていそうだった。
「其方がここに残ってくれたらどれだけ良かったか」
「それはできません。家族を探しに行きたいので」
私の目的を変えることはできない。
どんなにお願いされようと、これだけは譲らない。
「そうか、其方の決意はわかった。ならば、また……遊びにでもきなさい」
自分の子供たちを旅立たせるかのように……悲しそうな目をしながらも、私たちを応援してくれた。
「それと……ユーリ」
「!」
「達者でな」
「……そっちもね」
♦︎♢♦︎♢♦︎
「よし、着いた」
私たちが訪れたのは、精霊がいる洞窟。
この洞窟の中に三人で足を踏み入れる。
すでに、トレイルとは別れ、エルフの森を後にしていた。
中に入れば、出迎えてくれる精霊が約一名。
「待っていましたよ、ベアトリス様」
「精霊さんに様付けで呼ばれるの、なんか恥ずかしいな……」
「あら、そんなことありませんよ?尊敬する方に敬語をつけるのは当たり前のことですので」
私たちは精霊に近づき本題から聞いた。
「それで私の家族の居場所は……」
「ああ……そのことですか」
精霊の表情が陰った。
「家族に何かあったの!?」
「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ、申し訳ないなと」
「申し訳ない?」
「実は……本当は、あなたの家族がどこにいるかわからないんです」
「ええ!?」
予想外の答えに驚く。
怒りもあったがそれより先に、精霊が言い訳を話した。
「ですが、悪魔にあなたが見つかったことによって、ひとまずは悪魔たちの意識をあなたという存在にそらすことができたでしょう。つまり、あなたのご家族の生存率は少なからず上がったのです」
「まあ、そうなる……の?」
「それに、彼ら彼女らの性格を考えれば自然と分かりますよ」
「なにが?」
「どこにいるかです!」
いや、ドヤ顔すんなし。
「精霊さんはどこにいると思っているの?」
「あの後、公爵領は燃えて、悪魔たちがやってきました。生きている人間を回収し何処かへと運ぼうとしていたのです」
「ちょ!それ無事なの!?」
家族が連れて行かれていたなら、かなりやばい!
だが、私の心配を払拭するように精霊が言った。
「私は動物の目を通して見ていました。悪魔に抵抗して、うまく逃げ出したものがいたことを」
「それって!」
「あなたの家族は頭がいいんですね、うまく逃れてましたよ」
「!」
安堵のため息をつく。
ひとまず、一番の不安要素は消滅したわけだ。
「そこで、私は考えました。頭がいいあなたの家族のことです、きっとこう考えるのでは?」
「……………」
「あなたのお父君ですが、きっと国を離れていることでしょう。メイドのミサリーさん……でしたっけ……は、国内に……アレン君はレイという少女と一緒に転移で逃げているかと」
「根拠は?」
「あなたのお父君は、あなたが生きていると確信しています。なので自分の身を危険にさらしてまで、探さずとも、そのうち会えると考えるでしょう。それだけ、あなたが信用されているんです。そして、ミサリーさんですが、あなたを探して、国外へ離れることはないと思いました。あなたをずっと国内で探しているものだと思います」
根拠もしっかりとしていた。
確かに父様は、私のことを信じ切っている節目がある。
それにミサリーも、彼女の性格上あり得ない話ではない。
「ふーん、まあいいわ。とにかくその可能性が高いのね」
アレンはレイに回収された?というのも少し疑問だが。
精霊が言ってるのだ。
二人は辺境伯領にいるのだろうな。
これで目処がたった。
が、
「フォーマは?」
「……すみません、私では把握しきでませんでした」
「……まあしょうがないか」
そこまで期待していたわけではない。
なので別にいい。
すぐに私たちの力で見つければいいだけの話だから。
「それじゃ、私たちは行くわ」
そう言って精霊の洞窟を後にする。
朝の日差しが洞窟の中にまで入ってきていた。
「行こっか」
二人の方を振り返って見れば、笑顔で二人が頷いてくれた。
それを嬉しく感じながら、私が一歩踏み出そうとした時、
「人間!」
「え?」
森の方から声がした。
姿がはっきりと見えた。
トレイルだ。
「どうした——」
「なにも言わないで!一つだけ聞いて!」
そう言われて、私は黙ってしまった。
トレイルが息切れしている。
走ってここまできたんだろう。
決してエルフの森から、ここは近くないというのに。
深呼吸をし、大きく声を張り上げる動作をした。
「さっさと家族見つけて、帰ってきなさいよ!」
森中に響くその声。
私は唖然として、なにもいえなかった。
「か、勘違いしないでよね!お父様がかわいそうだからよ!……とにかく!早く帰るのよ!」
そう言って私に指を指した。
ふふっと笑い、私はそれに無言でうなずいた。
分かりやすく喜んでいるトレイル。
だが、途中で恥ずかしくなったのか、
「じゃ、じゃあね!ベアトリス!」
私の名前を呼んで、反対方向に走っていくのだった。
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