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お願いしたら何とかなる

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「何かいるって……誰もいないわよ?」

 灯で照らしても、奥には誰一人としていないようにしか見えない。
 それは、レオ君も同じに感じているようで、首を傾げている。

「あ!ユーリ、ちょっと待って!」

 少しずつ前に進んでいくユーリ。
 私とレオ君もそれを後ろから見守る。

 きっと、私たちには分からない何かがあるのだろう。
 根拠はないが、ユーリが言っているのだから多分そうだ。

 そして、ユーリが一番奥まで到着する。
 私たちは、洞窟の真ん中辺りに立って、その様子を見る。

 ユーリはなにやら、壁をいじくっている。
 上から、下へ……何かを探すように。

「あった!」

 それを見つけたユーリは、そこに向かって魔力を流し始める。
 そして、その魔力は壁に流れ始めたと思ったら、一気に光だした。

「!」

 壁に様々な紋様が浮かび上がる。
 それらが青く発光していて、浮かび上がった文字を際立たせる。

「これ、何語?」

 私にはその文字が読めなかった。
 至る所に広がって、つながっている文字。

 しかし、それは私の知らない文字だった。

「これは、古代文字だよ」

「古代?」

 ユーリが教えてくれる。
 古代文字というのが何かはわからないが、私が気にする必要はない。

 なぜなら、ユーリという私よりも長生きしている友達がいるのだ。
 私が知らなくても、ユーリが知っている。

 協力していくだけなのだ。

「ここに……あと一つか」

 何かを探りあて、

「ご主人様!こっちに来て!」

「え、私?」

 よくわからないが、私もその壁に近づく。
 近づくにつれ、眩しく輝きが強くなっているように感じた。

「そっちの反対側……そう、そこに魔力を流して」

「ここ?」

 よく見ると、ユーリが魔力を流したところは、壁の左側、そこに小さな円ができていた。

(反対側も同じようにやれってことね)

 そう思った私は魔力を流し始める。

 すると、再び、壁が発光したかと思うと、私の手の周りに文字が浮かび始めた。

 それは、壁全体にまで行き渡り、やがて、

「開いたよ」

「え?これ、開くの!?」

 壁が真ん中から割れ、扉のように開いた。

「ユーリ、この先に何かあるの?」

「僕の感覚が間違ってなければだけど」

 先に進んでいくユーリを私たちも追いかける。

 そしての、その中に入った瞬間、

「なにここ?」

「綺麗だね」

 同じ森の姿があった。
 しかし、それはただの木々ではなかった。

「これは、精霊樹だよ」

「精霊樹?」

「精霊から加護を受けた木……もしくは……」

 そして、言葉の続きを聞く前にそれは現れた。

「珍しいお客さんね」

 光っている木々の明かりを吸収して、それが現れた。
 光の粒が人の形を型取り、やがてそれは、

「精霊?」

「ええ、人は私たちをそう呼ぶわ」

 精霊の形を取った、それは緑色の髪をしていて、服装もどこか神聖だ。

「やあ、君は新顔かな?」

「ちょっと、ユーリ!」

 いきなりのユーリのセリフに驚いていると、

「うふふ、これはこれは魔王様。お元気そうですね」

 精霊が優しく微笑む。

「え、知り合いなの?」

「魔王様と私に、直接的な関わりはございません。しかし、こちらの魔王様は、長年我々と友好的な関係を築かれてきた方なんです」

「ほへー……」

 感心しつつも、このユーリが?という思考がどうしても回ってきてしまう。

「それで、魔王様。こちらの方々は?」

 私たち二人の方を見てくる精霊。
 その表情は興味本位に満ちていた。

「うん、こっちはレオっていうんだ。僕の友達だよ!」

「……………」

 改めて、目の前で『友達』と言われると、恥ずかしいようでレオ君は黙りこくっている。

「そしてこっちは、ベアトリスって言って、僕のご主人様なんだ!」

「ご主人……?」

 初めて精霊の顔に疑問符が浮かんだ。
 だが、

「ふむ、そうですか」

 それだけいって、にこやかな表情に戻った。

「お三方はなにしにこちらへ?」

「この先には入れないの?」

 どうやら、この空間にはまだまだ先があるらしい。

「すみません、長老会の方々が、拒否されてしまい、新米の私がここに出向かせてもらったのです」

「そう……ならいいや!それで、聞きたいことがあるんだけど……」

 ユーリが私と顔を合わせる。
 それを見て、私はうなずく。

「僕たちの仲間とか、家族がみんなバラバラに散っちゃったんだ」

「ふむ」

「それで、どうにか居場所を教えてもらえないかな?」


 私は精霊について無知だが、できるかもしれない。
 精霊は伝説の生き物だしね。

 誰かの英雄譚に、力を授けたり、魔を滅ぼしたりしていたのを覚えている。

「お願いします!」

「……構いませんよ」

「ほんと!?」

 思わず私が叫んでしまった。

「ただ……条件があります」

「条件?」

 そして、精霊が難しい顔をする。

「最近、エルフの森近辺に発生する魔物の数が急増しています」

「エルフの森……」

 さっきのエルフたちか。
 私たち的にはあんまり好印象じゃないけど……。

「その原因を突き止めて、魔物の急増を食い止めて欲しいのです」

「なるほど……」

 交換条件……だが、その内容は悪いものじゃない。
 私はもう決めていた。

「わかりました」

「そういうだろうと思ったよ……」

「やっぱりご主人様だね!」

 一方は呆れたように、もう一方は元気一杯に私と同じく同意の意思を見せた。

「では、それを突き止めてください。そしたら、あなたたちの欲しい情報を与えてあげましょう」

「あ、ちょっと待ってください!」

「……はい?」

 私は今にも消えそうな精霊を引き留めて、もう一つの小さなお願いをする。

「ここで寝てもいいですか?」

 と……。
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