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どういうノリ?
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「今のご時世、獣王国内部はかなり荒れてるんだ」
今の時代。
私が生まれた辺りから、獣王国も情勢が徐々に変化していったそうだ。
「鬼人っていう種族がいなくなったのが事の発端だよ」
曰く、鬼人というのは亜人種の一種で、獣王国に属していたらしい。
だが、ある日を境にその鬼人が忽然と姿を消したのだ。
「しかも、みんな鬼人のことをすっかり忘れちゃってたんだよね」
不可解にも、鬼人を嫌っていたということを忘れ何事もなかったかのように獣人たちは日常生活に戻る。
そのはずだった。
鬼人がいた頃は、内政は荒れに荒れまくっていた。
横暴な態度は当たり前で、その上に腕っ節も強かった。
竜人族という、これまたすごく強い種族と肩を並べるほどだったって。
扱いは正反対だったみたい。
とにかく獣人たちからとことん嫌われていた鬼人。
鬼人の子供なんかはいじめを受けるのもざらではなかった。
子供は弱いから……。
そうして、いじめられながら育った鬼人は強くなり、復讐する。
そんな負の連鎖が生まれる。
その鬼人がある日を境にいなくなったのだ。
人々は喜ぶ。
だが、そんな単純な話ではない。
鬼人というのは獣人たちにとっての抑止力だった。
鬼人、竜人族がいるから下手に犯罪に手を染めるものもいなかった。
それが、竜人族だけとなった今、そこまで恐れる必要はなくなった。
何が言いたいのかと言えば、犯罪の増加。
悪質な犯罪も増えていき、国王至上主義の者や、自由気ままな生活をモットーとする者たちと二分した。
言ってしまえば、国王に基づく秩序を守ろうとする“理性派“と、己の欲求を満たそうとする“野生派“に別れたというわけだ。
「野生派には獣に近い獣人が多いんだ」
獣人君のような全身から綺麗な毛並みが生えている者が野生派に多く所属している。
そして、ターニャのような人間に近しい見た目をしている者たちの多くが理性派。
だが、全員が全員そうというわけではないらしい。
「自分の欲求を自制できる人なら少なからずいるし、必ずしも野生派にはこの類が……理性派にはこういう人がっていうわけじゃないんだよね」
「なんだか荒れてるわね」
「仕方ないよ、国王にも問題があるんだから」
「どういうこと?」
国王を支持する者もいれば、支持しない者もいる。
その原因は国王が人族と友好的に接するからだ。
元来、獣人と人間はそれほど仲の良い種族ではなかった。
聖戦時、たまたま共通の敵がいたからって、人族にペコペコするのはどうなんだ?という、意見が貴族内で生まれる。
それが発端となり、派閥が生まれて争いが生じ始めたのだ。
「つまり、獣人君は私が守らねば……!」
「どういうこと!?」
「だってぇ~こんなか弱い男の子が醜い争いに巻き込まれるなんて見てられないもの~!」
「か弱くないし!」
「おいらも、子供を巻き込むなとは思うけど、どうしようもないよね」
結局は子供。
なんの権力も持たない、被支配者。
それを一番痛感しているのはターニャだろうな。
そんなことを考えていると、
「とりあえず、おいらん家いこ?ここだと、誰に聞かれてるかわからないし」
私も行ったことがあるので、道も大体は覚えている。
妥当な判断だ。
「よし、いこっか」
♦︎♢♦︎♢♦︎
相変わらずにシンプル味な部屋。
そんな部屋も悪くはない。
広いスペースがあるので、獣人君含め、三人いても窮屈しない。
「お、お邪魔します……」
緊張しながら、入ってくる獣人君。
私なんてずかずか入り込んでしまった……。
貴族の部屋に入るのは初めてだからか、もしくは異性の部屋だから緊張しているのかは知らないが、獣人君のことだし、どうせどっちもだろう。
「さて!そんな面白くない話をするのもあれだしなー」
確かに、私が聞いた内容はとてもいい話とは言えない。
そこのところを申し訳なく感じながら話題を逸らす。
「じゃあ、自分の得意なことを言い合うのはどう?」
「おいら得意なことあんまないぞ?」
「あ、僕も……」
「嘘つけ二人とも!ターニャは貴族なんだから、人並みだって勘違いしているだけよ多分!獣人君に関しては身体能力お化けだからね!?」
この二匹ときたら、謙遜しやがって……。
私だったら速攻自慢するよ?
「そういうの、よくわかんないけど……やっぱりベアトリスが一番だよね!」
「いきなりどうしたの?」
「だってさ、ベアトリスかっこいいし!」
「いきなりどうしたの(二回目)!?」
褒めても何も出ないぞ!?
と言いつつ、若干嬉しく思う私でしたとさ。
「おいらより強いもん!」
「どういう理由よ……」
「獣人は、自分よりも強い人に惹かれるものなの。ベアトリスは強いって、私の本能が囁いている……!」
なんだから背中がゾクゾクする。
やめろ!
頬を赤らめるな!
私にそういう趣味はないぞ!
「それは僕も思いました!」
話に乗るでないわ少年!
「戦ってる姿凛々しいですし、それに……」
言葉を詰まらせるな!
「ああもう!私のことはいいから自分のことを話しなさい!」
「それはできないなー!今は、ベアトリスに自分の思いを告白するノリでしょ?」
「どういうノリよ!」
そう言えば、ターニャ……前回会った時も変なこと言ってたな……。
「いっそのこと付き合う?」とか言われたときは鳥肌がやばかった……。
「って、いいから二人とも落ち着きなさい!」
「なんで僕まで?」
ガーンという表情でこちらを見てくる獣人君。
その表情を見ているとなんだか私が悪者に見えてくる。
「と、とりあえず頭を冷やしなさいよ。あ、ちょうどいいからお茶でもいれてきましょ」
恥ずかしさに耐えかねた私は、言い訳をする。
そう言って、二人を残して部屋を出た。
今の時代。
私が生まれた辺りから、獣王国も情勢が徐々に変化していったそうだ。
「鬼人っていう種族がいなくなったのが事の発端だよ」
曰く、鬼人というのは亜人種の一種で、獣王国に属していたらしい。
だが、ある日を境にその鬼人が忽然と姿を消したのだ。
「しかも、みんな鬼人のことをすっかり忘れちゃってたんだよね」
不可解にも、鬼人を嫌っていたということを忘れ何事もなかったかのように獣人たちは日常生活に戻る。
そのはずだった。
鬼人がいた頃は、内政は荒れに荒れまくっていた。
横暴な態度は当たり前で、その上に腕っ節も強かった。
竜人族という、これまたすごく強い種族と肩を並べるほどだったって。
扱いは正反対だったみたい。
とにかく獣人たちからとことん嫌われていた鬼人。
鬼人の子供なんかはいじめを受けるのもざらではなかった。
子供は弱いから……。
そうして、いじめられながら育った鬼人は強くなり、復讐する。
そんな負の連鎖が生まれる。
その鬼人がある日を境にいなくなったのだ。
人々は喜ぶ。
だが、そんな単純な話ではない。
鬼人というのは獣人たちにとっての抑止力だった。
鬼人、竜人族がいるから下手に犯罪に手を染めるものもいなかった。
それが、竜人族だけとなった今、そこまで恐れる必要はなくなった。
何が言いたいのかと言えば、犯罪の増加。
悪質な犯罪も増えていき、国王至上主義の者や、自由気ままな生活をモットーとする者たちと二分した。
言ってしまえば、国王に基づく秩序を守ろうとする“理性派“と、己の欲求を満たそうとする“野生派“に別れたというわけだ。
「野生派には獣に近い獣人が多いんだ」
獣人君のような全身から綺麗な毛並みが生えている者が野生派に多く所属している。
そして、ターニャのような人間に近しい見た目をしている者たちの多くが理性派。
だが、全員が全員そうというわけではないらしい。
「自分の欲求を自制できる人なら少なからずいるし、必ずしも野生派にはこの類が……理性派にはこういう人がっていうわけじゃないんだよね」
「なんだか荒れてるわね」
「仕方ないよ、国王にも問題があるんだから」
「どういうこと?」
国王を支持する者もいれば、支持しない者もいる。
その原因は国王が人族と友好的に接するからだ。
元来、獣人と人間はそれほど仲の良い種族ではなかった。
聖戦時、たまたま共通の敵がいたからって、人族にペコペコするのはどうなんだ?という、意見が貴族内で生まれる。
それが発端となり、派閥が生まれて争いが生じ始めたのだ。
「つまり、獣人君は私が守らねば……!」
「どういうこと!?」
「だってぇ~こんなか弱い男の子が醜い争いに巻き込まれるなんて見てられないもの~!」
「か弱くないし!」
「おいらも、子供を巻き込むなとは思うけど、どうしようもないよね」
結局は子供。
なんの権力も持たない、被支配者。
それを一番痛感しているのはターニャだろうな。
そんなことを考えていると、
「とりあえず、おいらん家いこ?ここだと、誰に聞かれてるかわからないし」
私も行ったことがあるので、道も大体は覚えている。
妥当な判断だ。
「よし、いこっか」
♦︎♢♦︎♢♦︎
相変わらずにシンプル味な部屋。
そんな部屋も悪くはない。
広いスペースがあるので、獣人君含め、三人いても窮屈しない。
「お、お邪魔します……」
緊張しながら、入ってくる獣人君。
私なんてずかずか入り込んでしまった……。
貴族の部屋に入るのは初めてだからか、もしくは異性の部屋だから緊張しているのかは知らないが、獣人君のことだし、どうせどっちもだろう。
「さて!そんな面白くない話をするのもあれだしなー」
確かに、私が聞いた内容はとてもいい話とは言えない。
そこのところを申し訳なく感じながら話題を逸らす。
「じゃあ、自分の得意なことを言い合うのはどう?」
「おいら得意なことあんまないぞ?」
「あ、僕も……」
「嘘つけ二人とも!ターニャは貴族なんだから、人並みだって勘違いしているだけよ多分!獣人君に関しては身体能力お化けだからね!?」
この二匹ときたら、謙遜しやがって……。
私だったら速攻自慢するよ?
「そういうの、よくわかんないけど……やっぱりベアトリスが一番だよね!」
「いきなりどうしたの?」
「だってさ、ベアトリスかっこいいし!」
「いきなりどうしたの(二回目)!?」
褒めても何も出ないぞ!?
と言いつつ、若干嬉しく思う私でしたとさ。
「おいらより強いもん!」
「どういう理由よ……」
「獣人は、自分よりも強い人に惹かれるものなの。ベアトリスは強いって、私の本能が囁いている……!」
なんだから背中がゾクゾクする。
やめろ!
頬を赤らめるな!
私にそういう趣味はないぞ!
「それは僕も思いました!」
話に乗るでないわ少年!
「戦ってる姿凛々しいですし、それに……」
言葉を詰まらせるな!
「ああもう!私のことはいいから自分のことを話しなさい!」
「それはできないなー!今は、ベアトリスに自分の思いを告白するノリでしょ?」
「どういうノリよ!」
そう言えば、ターニャ……前回会った時も変なこと言ってたな……。
「いっそのこと付き合う?」とか言われたときは鳥肌がやばかった……。
「って、いいから二人とも落ち着きなさい!」
「なんで僕まで?」
ガーンという表情でこちらを見てくる獣人君。
その表情を見ているとなんだか私が悪者に見えてくる。
「と、とりあえず頭を冷やしなさいよ。あ、ちょうどいいからお茶でもいれてきましょ」
恥ずかしさに耐えかねた私は、言い訳をする。
そう言って、二人を残して部屋を出た。
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