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性別チェック!

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「お掃除タイムと洒落込もうじゃねーか!」

「お嬢様、掃除を何かと勘違いなさってませんか?」

「キュイキューイ!」

 ってなわけで、私の部屋までやってきましたとさ。
 存外に掃除ってやったことなかったから、案外楽しみだったりする。

 服もちゃんと、いらない服にしたし、汚れても問題ない。
 それにこっちには手慣れたミサリーがいるのだ。

 失敗することなんてないだろう。
 掃除に失敗とかあるのかはわからないけどね。

「で、これどこから掃除すればいいの?」

「ふっふっふ、お嬢様。まずは掃除の前に“片付け“からですよ」

「片付け?」

「掃除をする前に、邪魔なものはしまっておかないとですよね。ほんとだったら、もうちょっとやりたいこともあるんですが、大変そうなので割愛です」

 さすがプロだ。
 熟知していらっしゃるようで……。

 お手並み拝見といこうじゃないか!

「とりあえず、掃除に邪魔なものは片してしまいましょう!」

 散乱しているものはそんなにないが、それでも邪魔になるんだろうな。
 大人しくいうことに従って、物を片していく。

「次はどうするの?」

「どうすると思います?」

「えっと、普通に掃除するんじゃない?」

「大体あってますね。正解はゴミを集める、でした!」

「ゴミを集めるの?」

「適当に掃除をしていたら、掃除残しが出てしまうんですよ。だから、ゴミを真ん中に集めるんです。上から下、奥から手前にって」

 おお。
 なんかそれっぽく聞こえる。

「というわけで早速始めましょう!」

「了解!」

「キュイ!」

 まあ、貴族に掃除する機会なんてそんなにないだろうし、私には関係ない。
 だけど、こういうのを楽しむ人ってたまにいるよね。

 前世でも掃除が好きな変わった子爵家の子がいた。
 って、私の知り合いって大体私に媚びてくる奴しかいなかったから、知り合いの範囲が狭すぎる。

 もしかしたら、それを楽しむのが普通なのかもしれない。
 ま、たまにはミサリーを手伝うのも悪くはないなっていうことだよ!

 その瞬間ーー

 ガタンという音が鳴り、何かが倒れる。

「きゃ!」

「大丈夫ですか、お嬢様!?」

 ミサリーが心配そうに近寄ってくる。

「何が倒れたの?」

「えっと、タンスですね。倒したのはいうまでもなく……」

「キュイィ~……」

 あ、ユーリですね。
 納得したわ。

 まあ、ユーリってそもそも、掃除向きな体じゃないしね。
 掃除向きな体ってなんだ?

 自分で言ってて思うが、正直動物に掃除をさせようとした私が悪いんだよね。
 ノリで言ったけど、完全に私が悪い——

「こら!ユーリちゃん!お嬢様に怪我でもあったらどうするんですか?」

 ミサリー!
 怒らんといてあげて!

「キュイ……」

「そんなんだと、お嬢様に見捨てられますよ!」

「キュ?」

 めちゃめちゃ人生……狐生に絶望したような表情でこっちを見てくるユーリ。
 やめて!

 捨てたりしないらそんな目で見ないで!

「とにかく、今後は気をつけるようにしてくださいね」

「キュイ」

「わかったならよろしい!というわけで掃除を再開——」

 そこで再び悲劇は起こる。
 ガシャンという音を立てて、ミサリーにぶつかった何かが落ちる。

「「あ」」

「キュイ?」

 まあ、結論から言えば、ミサリーの肘に当たった花瓶が落ちたんだよね。

「や……」

「や?」

「やらかしたああああぁぁぁ!」

 ミサリーが後ろに下がってくる。
 運命の女神はどうやら私たちを見捨てたようで……………倒れたタンスにミサリーが足を引っ掛ける。

「「あ(二回目)」」

 ミサリーがそのままタンスの方に倒れ、支えがないか手をついたのがまた別の隣にあったタンスなわけで……。

「「あ(三回目)」」

 まあ、それも倒れますよね。

 そんなわけで——

「ミサリー?」

「あ、は、はい」

「本当にメイド?」

「うぐっ!」

「とりあえず、ここの掃除は任せるね。やっぱりミサリーは一人の方が気楽そうだし!それに、私もユーリも結構埃かぶっちゃったからさー誰かのせいで」

「ぐはっ!」

「んじゃまあ、私たちちょうどいいし、お風呂掃除でも手伝うからさ。そっちは任せたよ」

「はひ……」

 ちょっとかわいそうな気もするけど、三分の二はミサリーのせいなのでね、しょうがない。

 ユーリはミサリーの説教でちゃんと反省してるっぽいし、許してしんぜよう!

 え?

 ミサリーも許してやれって?

 ……………考えとく。


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


「ってなわけで、お風呂掃除をするんだけど、ユーリはそこで見ていてね」

「キュイ………」

 動物(+ミサリー)に掃除をさせるとろくなことがなさそうなので、こればっかりは許して欲しい。

「というわけで、掃除しますか!」

 ただ、私の掃除は一味違う。

 必殺技たる魔法を使用するのだ。
 その名も生活魔法なりー!

 生活魔法とは、たいていの魔力持ち習得している魔法の種類である。
 生活魔法とはその名の通り、生活を豊かにすることを目的に作られた魔法である。

 その中に掃除も含まれているのだ。

 ミサリーは魔法が使えないのかな?
 っていうか、そもそも魔力を持っている人自体が貴重なんだよね。

 魔力を持っているだけで人生勝ち組みたいなところがあるんだ。
 ちなみに、貴族家には魔力持ちが多いため、特別すごーい!と、褒められることは滅多にない。

 私もそうだったし、多分父様はもっとそうだったと思う。
 王族の一人だからねで済ませられそう。

 そんなわけで、魔法を使える人自体がそんなにないので、使えなかったとしてもさほど不思議ではないのである。

 つまり、ミサリーはあれが普通なのか?
 冒険者組合で男の人は末でぶっ飛ばしたのって自力か?

 ……こわ。

「まあ、いいや。『洗浄クリーン』」

 適当に範囲を指定せずに、魔法を発動させる。
 別に掃除されすぎて困るということは一切ないだろう?

 ってなわけで、お掃除完了!

 だが——

「キュイ!」

「う~ん、生き物にはこれ効果なさそうだね」

 所詮は生活魔法。
 プリーストが使う本物の生活魔法だったら、効果倍増するんだろうけど、私の職業(予定)はそんな凄そうな職業ではないんだな~。

「じゃ、ついでにユーリも洗おっか」

「キュイ?」

 ちょうど、今きれいになったばかりのお風呂に入れるんだ。
 感謝するがいい!

「そろそろ、洗ってあげないとなーとは思ってたんだよねー」

 にしし、と笑いながら近づく私に嫌な予感でも覚えたのか、若干後ずさるユーリ。

 だが、もう遅いなり!

「捕まえた!」

「キュイ!?」

「はいはい、きれいにしましょうねー!」

 こればっかりは誰かが洗わないといけない。
 ユーリは魔法なんて使えないしね。

 というわけで、やっていきましょうか!

「あ、こら動かない!」

「キュイ!」

 暴れるユーリだが、私の力の前では無力なのだよ!
 なんせ、『身体強化』も使っているんだ。

 逆にこれで逃げられたら、ユーリが出たら目に強いということになる。
 それはそれですごいけどね。

「シャンプー飛ぶんだけど?」

「キュイ!キュイ!」

 お構いなしですか。
 汚れてもいい服着ておいてよかった~。

「ちょ、まだ洗えてないからもうちょい待って!」

 さすがに、暴れられている状態だと、こっちもやりづらい。

 だったら、必殺技を使うしかない!

 第二の必殺技!

「ふ~ん、暴れるんだったら性別確認しちゃおうかな~?」

「!?」

「嫌だったら大人しく……」

「キュゥゥ……」

 急に大人しくなってしまうユーリ。この変わりようには私も笑いを堪えるのに必死である。

 はい、完璧~!
 やっぱユーリはこれに弱いんだな~。

 魔法の言葉!
 魔法は使ってないけど、このセリフを言うだけでたいていユーリは大人しくなる。

 これを必殺技たらしめるためにも、私は性別を確かめてないわけだけどね!

 ……………今、セコいと思った人は、一人ずつ魔法をぶつけます。

 っていうかさ、ほんっと今更なんだけど……。

(ユーリ、私のしゃべったセリフわかってるっぽいよね……)

 それが結構、自分の中では疑問なのだが、今は気にしないでおこう。
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