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楽しい追いかけっこ(ミサリー視点)

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 どうもどうもミサリーでございます!
 現在の私は仕事がございません!

 イエーイ!

 仕事がなくなって喜んでいる人なんて絶対にいないとは思いますが、私は嬉しいのです!

 いや、でしたが正しいですね。

 せっかく仕事を速攻で終わらせてきたのに、お嬢様が王都の方まで行ってしまわれるとは思わなかったです。

 一体どうしてなのでしょう?
 どんだけ私は運が悪いんだ………。

 ということで、仕事が終わり、休みとなりました。
 でもすることがありません。

 ということで、私はお話相手が欲しいです。
 なので、同じメイド仲間に会いに行ったんですけど、全員忙しそうで全く相手にしてくれませんでした。

 悲しいです。

 旦那様も王都に行かれ、他の方々も忙しくしておられる。

 つまり、ぼっちである!

 ……………今、それなwとか思ったやつ、後で大事なお話があります。

 それはいいけど、これはどうすればいいのでしょう?
 暇です。

 んで、何をしようかなと考えたわけです!
 それで、私は思い出したのですよ!

 ユーリちゃんをもふもふしたい、と!

 一回も触ったこないどことか、近づいたことすらほぼないユーリちゃん!

 オスなのかメスなのかわからないけど、可愛いからちゃん付けにすることにしました!

 お嬢様もどっちかは知らないらしいです。
 恥ずかしがり屋さんかな?

 そんなことろがキュートなんですけどね!

 私、小動物が大好きなのは知っていますでしょうか?
 いや、まじで可愛いものが好きなんですよ。

 私の過去の影響が大きいのですけどね。
 お嬢様に話したのは途中から、途中までで、ものすごく改変しているので、あれが真実とは限らないと思っていてください。

 って、私は誰に向かって話をしているんでしょう?
 そんなわけでーー!

「失礼します!ユーリ様!」

「キュイ!?」

 いつも通り、お嬢様がいない間はお嬢様のベットで寝っ転がっているユーリちゃん。

 主人大好き系、ご主人様Loveなユーリちゃんをいつも見ているからか、なんとなく悲しくなってくる。

 私だってお嬢様にいいとこ見せたいのに!

「キュイ?」

「あ、なんとおっしゃっているんですか?」

 お話がしたい!
 が、そんなの夢のまた夢だということはわかっているため、気持ちだけ気分を味わっておく。

「というわけで触らせてください!」

「キュイ!?」

 きっとユーリが人間ならば『どうしてそうなった!?』と言っているであろうことだけはわかった。

 案外小動物というのは感情が読み取りやすいのである。
 お嬢様の方が読み取りにくいまであるぞ?

 お嬢様、裏表がわからない以前に、裏表があるのか、それか裏表がどちらが裏でどちらが表なのかすらわからない。

 ポーカーフェイスとしか思えないほど感情が読み取りやすい時と読み取れない時、使い分けているあたりプロだろう。

 って、お嬢様のことはいいんだ!

「さぁ、私の胸に飛び込んでおいでー!」

「キュイ!」

 鳴き声は可愛いが、悲しいかな。
 逆に離れていくなんて………。

「ちょ、待ってくださいよぉ!」

「キュイ!!!」

 再び逃げ出す。
 今度はベットから飛び降りて後ろに回ってくる。

 ひどい。

 いや、ほんと泣いちゃうよ?
 最初会った時から思ったけど、なんで私って小動物、および一部の人種に嫌われるんだろう。

 私ことミサリー、実は人間にも嫌われているのです。
 なんか『見られると鳥肌が立つ』と言われたことがあるくらいだ。

「でも、そんなのは慣れています!少しでいいから近くに居させて!」

 悲痛な叫びに怯んだのか、部屋を抜け出すユーリちゃん!
 追いかけるでしょ?

 一択だよん。

 っていうか、そもそもお嬢様たちが居ない間に暴れられでもしたら、メイド達の掃除を増やし、私が恨まれてしまうため、どうにかして止めなくては。

 ……………その前にモフるけど!

 ここから屋敷を使った壮絶な追いかけっこは始まる。

 ある時ーー

「ふんふん~ん!」

 機嫌よく、公爵家に仕えるメイドの一人が選択をしていた。

「今日は洗濯日和なのですね!最高です!」

 きれいに洗濯物を並べ、優越感に浸る。
 そこに災害はやってくるーー

「コラー!待ってください!ユーリ様~!」

「キューイ!」

 追いかける知り合いのメイド、追いかけられる公爵家お嬢様のペット。
 なんというシュールな絵ずら。

 そんなことを考えているうちについにはこっちまでやってきてーー

「あ、ちょっとまっーー!」

 メイドの一人が言葉を出し切る前に嵐はさっていく。

「なんなの?」

 去っていった方向を眺めた後、残骸を眺める。

 白かったはずの布切れは瞬く間に茶色い土だらけと化し、もはや洗濯した後だとは到底思えなくなっていた。

「これ、洗い直すの?」

 不満に思うのはただ一つだけだった。

(ふざけんな!ミサリー!)

 ある時ーー

 気分はそんなに優れない。
 だが、私は公爵家で働いているだけで幸せだった。

 今日も今日とて庭掃除。
 これは重要なことである。

 この庭の手入れを怠れば、周囲からの印象はがくんと落ちてしまう。
 言うなれば、公爵家の中で最も重要な場所の一部であると言える。

 さあ、庭の掃除を始めるとしようかしら!

 私が魔法を起動して、草を狩り始めた段階でーー

 悲劇は起きる。

「お願いですから待ってよユーリ様!」

「キュキュイ!」

 追うメイドと、逃げ惑うキツネのコンビが私の気分をさらに悪くさせる。

「あ、そっちに行かないで!」

「キュイ!」

 庭を走り回る“二匹“。
 まるで、私のことなんて眼中にもないように………。

 そして、害悪の権化は消え去る。

 目の前に広がるは荒れ果てた庭。

 庭を掃除するんだから………これくらい………。

 ただ一つ言えるのはーー

(あのメイド!許さねぇー!)

 ある時ーー

 私はここで料理人をしている。
 料理とはいいものだ。

 仕えている主人様達に喜んでいただけるのだから。
 時々料理を習いにくる奥様もいるため、いつも厨房は和やかないい雰囲気に包まれていた。

 だがーー

 今日は違ったようだ。

「絶対にそこだけは入らないで!ユーリ様戻ってきてぇ~!」

 若干ボロボロになった服を着たメイドがユーリ様を追いかけている。
 何があったのか、とても気になるがーー

 ガシャンガシャンと音を立てて、並べてあった用具が地面に叩き落とされる。

 他の使用人達は固まって動けなくなっている。

 ーーそして、“害虫“どもは居なくなる。

 みんなの心は決まっていた。

「あのメイド、後でしばくぞぉー!」

「「「おぉー!」」」


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


「はぁはぁ、もうダメです。走れません」

 本気で疲れた。
 こんなに走ったのはいつぶりだろうか。

 冒険者である私が追いつけないなんて、さすがはお嬢様のペットといったところかしら。

 もう、ほんと追いつけない。

 私の木の横で寝そべる。

(あぁ、できたらせめて近くに入れたらなぁ)

 それだけで私は幸せになれるというのに……………。

 私は木に寄り掛かった状態から、体をおろし、地面に背中を預ける。

「はぁ」

 仲良くなれない………よね。

「わかってはいますよ、どうせ嫌われてるって………」

 でもちょっとくらい。
 そんな希望は私が抱いていいはずがーー

「キュイ」

 耳の横で声がする。
 それは、私が今日一日ずっと聞いていた鳴き声だった。

 その声は、耳の近くから聞こえ、なんとなく呼吸音も聞こえてくるようだった。

「あぁ、ありがとうございます。ユーリさ、ま」

 あはは、初めて動物とこんなに近くに居れた。

 初めて、そう初めて。

 初めて、近くに居てくれる。

「やっぱりお嬢様のペットというのはお利口なんですね」

 うふふと笑いながら、私は疲れと共に眠るのだった。
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