上 下
44 / 504

バレた?

しおりを挟む

 なんとか初戦が終了し、残りの試合も同じように木刀もしくは木剣を折りまくった。

 これでなんとか全試合を引き分けで終わらすことができましたとさ。
 いや、何回戦えばいいの?

 私、六歳だよ?
 なんで、この中で一番戦わなくちゃいけないの?

 全く大人気ないでしょ。
 こんなのいじめだいじめ!

 でもまあ、一応全試合が終わったということで、なんとか生きている。
 そして、ようやく帰れると思っていたんですがーー

「おーい!今度は宮廷魔術師から呼ばれているぞー!」

 父様が訓練場までやってきて、全員に聞こえるように……もちろん私にも聞こえるように言い放つ。

(今度は何!?)

 そんなことを思いながらも私は試合を切り上げて父様の方に向かっていく。


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


「この部屋で待っていてくれ、だそうだ」

「はい」

 と言って、父様は部屋から出ていく。
 父様は一体何をしにきたんだ?

 私を呼びにきただけなら、完全に雑用係やん。

 まあ、そんなことはいいんだ。
 早く帰らせてくれ!

 なんでだよ!
 謁見はもう終わってでしょ!

 なんでここでも訓練しなくちゃいけないんだよ!
 騎士達と戦った後に、また何かやんなきゃいけないの!?

 魔術師ってなんなんだよ!
 何をしろっていうんだよ!

 っていうか、なんで呼ばれたんだ?
 私何もしてないよね!?

 結局、面倒ごとになるのか………。
 まあ、半分は自業自得でもあるんだけどね。

 だって、そもそも謁見に呼ばれたのが、私のせいだったわけだし、きっとあの国王(悪魔)のことだから、魔法の実力も測ろうとか思っちゃってるんだろう。

 だから、ここに呼ばれたんだ!
 そう予想を立てる。

 ここまできてしまったからには帰るわけにもいかないため、私は部屋の中で待つことにする。

 だが、待っているだけじゃ暇なので周囲にある物を眺める。

(なんか色々なアイテムがあるけど………)

 ここって、待合室じゃないの?

 まあ、なんでもいいけど。

 そのアイテムを手に取ってみる。

(これってポーション?)

 ポーション

 それは簡単に言えば傷薬みたいなものである。
 ただ、傷薬と簡単に言えないのも特徴の一つだ。

 これは下位のポーションっぽいので、そこまで大した傷は直せないだろう。
 せいぜい、かすり傷や擦り傷、裂傷とか深くなければギリいける。

 中位のものになれば、多少の融通が効くようになる。
 大怪我ではない限り大抵の傷は治せる。

 そして一番重要なのは上位のもの、上級ポーションである。
 これはそもそも市場に出回らない。

 なぜなら貴族どもが全て買い取っているからだ。
 みんな死にたくないのである。

 だから、大怪我した時のために、金をはたいて上級ポーションを買っているわけだ。

 正直私は死ぬことより拷問の方が辛かったけど?
 拷問は死なない程度に痛めつけられるからね。

 死ぬのは大体の場合一瞬じゃん。
 処刑だったら時たまにミスって痛みとともい延命させられてしまうこともあるが、それはたまになのでノーカンである。

 つまりは、みんな死にたくないからポーションを買うのである。
 そんなわけで、ここにもポーションがあるわけだがーー

「よし!作ってみよう!」

 普段の私ならば武器くらいなら創造可能なのだ。
 ちなみに、ここは結果外の別宮であるため、私も魔法が使いたい放題なのだ!

 というわけで、早速作ってみましょい!

「『物質創造クリエイトポーション』」

 手の持つは下級のポーション。
 それをイメージしながら、魔力を大量に流し、形を作る。

 魔力のモヤが取れてきて、その姿があらわになってきた。

「やった!でき——」

「お見事です」

 いきなり拍手の音が響く。
 そこにいたのはーー

「どちら様でしょうか?」

「おっと失礼いたしました。私、宮廷魔術師のクラウル・ロイヤーと申します。以後お見知り置きを」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 長身の男、改めクラウルさんの格好をよく見ればそうだった。

 左目についた、なんていうんだろう。
 教授とかがつけていそうなめがねと、黒色の髪が長く綺麗なのが特徴的だ。

「えっと、みていましたか?」

「はい!ガッツリと」

 いい笑顔で告げてくるクラウルさん。

「あの、このことは秘密に——」

「もちろんですとも」

 ならいいや。

 私は安堵して会話を続ける。

「私のことを呼んだのはクラウルさんですか?」

「ええ、そうなりますね」

「なんで、私を呼んだのでしょうか?」

 そう、これである。
 なんで私は呼ばれたのか。

「ふむ、強いていうなら確認ですね」

「確認ですか?」

「はい、そうなんです。実はですね。本日未明、王宮内での魔法のしようができなくなったんですよね」

 ギクゥッ!?

「それで、原因が何か調べてみたわけなんですけど、どうやらそれは結界によって守られている範囲のみ魔法の使用ができなくなっていたようなんですよね」

 ………。

「それで結界を調査したのですがね?なんということでしょう、結界が二枚も張られているではありませんか!」

 両手を広げて、天を仰いでいるクラウルさん。

「その結界の効力を調べようとしたら、弾かれてしまったのですヨ!」

「………は、はぁ」

「ですが、弾かれたことから大体の予想を立てることができたわけです!あれは遮断の魔法!発動主と同等以上の実力者じゃなければ必ず遮断を受けることになる!つまり、発動主は我々宮廷魔術師以上の実力をお持ちとのことであるんです!」

「へ、へぇ。そうなんですねぇ」

「そこで!なんで急に結界が張られてしまったのか!ここが一番重要です!要はこの近くに結果を張った張本人がやってきたと思った次第でして」

(あ、なんかやばそうな展開)

「今現在、王宮内にやってきているのは数名!その中でも魔法が使えそうな人物は二人!そして、そのうちの一人は“神童“と呼ばれているそうではありませんか!」

(あ、やばい)

 逃げましょ逃げましょ!

「お待ちください“神童“様」

「………拒否権は——」

「そのようなものはございません」

 いい笑顔で告げてくる。

 クッソ!

 第二の悪魔め!

 私はこの時、初めて憎しみという感情を覚えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...