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三章 遂に禍の神にまで昇華される
勝手に命を捨てるなど、俺にそれを遣るだなんて言うな。 その事を、その声を、あの時何度も聴いた。
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ご覧頂きありがとうございます。
*文章のおかしなところを訂正しました。
───────────
結局、なし崩し的にこの時のヒートの後から監禁生活を受け入れてしまった。
花笠の起こした事件の後から、百合と朱点の住む宮のセキュリティレベルが一気に上がった事もあったしね。
《だろうねぇ。》
リスも完全にベッドルームかあいつの部屋に監禁されることになった。
一応は許可を貰って、庭や自分の部屋などには行けたけれど、以前とは大違いに自由は無くなったかなぁ。
傅かれる生活に慣れていたし、リスは言うほど不自由を感じてなかったけれどね。
《昔の姫君などはそうだとしても、現代人である我々は痛ましく思うよ。》
《お子様である黒様の【華】、amour en cage…それが示すようにシュテン様の愛は重く熱いですな。》
セバスティアン、…予告だったのかもしれないよ、『孕ませ縛り付ける』って宣言してたから。
こちらに生まれ落ちて吃驚したことは沢山あったけど、背筋がゾクッとして冷や汗が止まらなかったのは、その名前を知った時だね。
あいつは魂の色だけでなく、【華】まで好き勝手に出来るから余計にね…
もうね…『神』様のデタラメでワガママでとんでもないところに恐怖したよ。
そんなふうにして始まった生活だけど、生まれてからずっと軟禁生活をしてきたリスに、あいつも従者たちも呆れるほど過保護だった。
ちょうど良いしこれについても少し話すね。
それまでは予め許しを与えていたものは、フリーパスに近かったけれど、事件後は原則的にふたりの家族だけしか自由に訪問が出来なくなった。
黒に義父母、姉の緋などだね。
リスかあいつの【華】を持つ者である従者たちもそれに含まれた。
宮で働く者たちもゲンジに統一されたり、古株のものはあいつの【華】を持つようになった。
……何かあれば【華】を枯らしたりして、いつでも始末できるようにしたんだ。
それ以外の者たちは毎度あいつが許しを与えて、宮に入れることになった。
《それはまた以前とは大幅に警戒レベルが上がりましたね。》
《まぁ…大切な妻を害しに心臓部にまで敵に乗り込んで来られたから焦ったんだろう。》
それからリスの従者たちもあいつが【華】と血を与えて共同で支配するようになった。
眷属の強化にもなって良かったのだけれど、それまで頑なに拒んだ事を受け入れたんだ。
《シュテンがリスの従者…ゲンジたちを共同で支配した理由はどうしてかな?》
これはアルファの独占欲から来るものらしくてね。
眷属は主人から血などを貰わなければ、【華】は枯れてしまい死を迎えるって話したよね?
だから眷属には定期的に血や唾液や精液などの主人の体液を与えるものなんだ。
《ずっと言っている『【愛】を与える』ですわね!》
うん。主人も好ましいものをそれはもう溺愛するから。
……それで話を戻すけれど、元々ヒトであったものが大多数のリスの従者は、定期的に与える血なども微量で本当に少なかったが、それでも我慢できなくなったそうだ。
血も一滴ほどだけど、双子を妊娠して血や肉を大量に摂取していても追いつかないからそれはダメ。
ディープキスなんかでも事足りるんだけど、リスも好まないうえに『それはならぬ』って言われてね。
まぁ…数もすごく多いしね。
《ハハハ、最愛の妻がそんな行為をするのは確かに不愉快だね。》
リスと結ばれる前の自分は従者を抱いてそれをしていたくせに、そんな狭量なことを言ったんだよ?
《それだけ愛が深いってことだろう。》
そんな事もあってあいつも自分の力を受け入れようとしたんだ。
強い【予知】の力や視る力、聴く力。
他にもあいつだけが識っていること。
生まれ落ちた時から持つそれらを厭んでいたが、私を…リスや子どもたちを守るために使うことにしたんだ。
それが『アレ』の策略とは思わずにね。
双子を新しく家族に迎えるだけではなく、あいつが亜神から神になり、二つ名も得る事になって行く事をこれから話すよ。
◇◇◇
【指切りげんまん】の誓いをして朱天との間に新たな縛りが増えた僕は、短い監禁生活から解放された。
───この時には気づいていなかったが、本当なら双子を妊娠したことにより精を大量に胎に受けないと体に支障が生じたり、恐ろしいほどの渇きを覚えているはずだった。
受胎後すぐでも強い力を持つ子ならそれくらい負担がかかる。
それを抱き潰して、滅茶苦茶飲ませ食べさせて、絶対に気づかせないようにしていた。
だけど僕が本当に嫌なことは絶対にしない。
監禁して体を慾るけれど、僕が悦ぶイジワルな責めをして、蕩かす様に抱いて甘やかして、好物の菓子もせっせと貢いで僕を溺愛した。
子どものことも強引だったし、悩みもあったけれど本当は欲していた。
発情期で強引に了承させて、流れなくなるまで意図的にそれを隠す。
重大な秘密を打ち明けるときは逃げれないように僕を孕ましている。
そんなワガママを毎度してくれちゃってるけど…
あれ?なんだか嫌なことをしないんじゃなくて、拒否できなくしてる気もするな。
それでも…本当は良くないと分かっていても、出逢った当初のように務めを休み、蜜月を過ごすかのように常には無いほど自分の側に居てくれる。
そんなことを嬉しく思っていたりもした───
午睡から目覚めた僕は今、約束だったこいつの髪の手入れをしている。
「お前の腕の中で寝ちゃってごめん…」
体を慾られ続けたことによる疲労から、こいつの腕の中で寝入ってしまった事を謝る。
「構わぬ。」
「僕が起きるまで抱えてて疲れなかったか?」
「お姫様の重さなど俺には些末なものだ。」
こいつは起こさないように抱きしめた状態でずっと居てくれたらしい。
僕の髪を手入れした後に数刻、寝入った僕を抱えその寝姿を見て楽しんだなどとも言われ、顔から火が出そうになる。
手入れの為にこいつの背後に居て、赤くなったそれを見られずに済んで良かったと胸をなでおろす。
「美しい銀糸の様な髪を玩び、口づけをしようとしたら起きたお前に拒まれ、残念だ。」
目が覚めた時に目の前にこいつの顔があって、それが口づけをしようとしているからと分かったときは、驚いて変な声が出た。
『ファーーーーーッ?!』って。
見慣れたとはいえ、こいつの顔は心臓に悪いくらいのとんでもない美貌だ。
実のところ最近は顔だけじゃなく、こいつの匂いに体にそしてちんちんにまで…全てにドキドキしている。
(ダメだ!淫乱なのは本当に良くない。さっきまでも散々してただろ!)
発情期の疼きや濡れる感じではないのだが、何故かこいつの側にいると僕の胎はきゅうんとしてる。
つまり、こいつの雄が精が堪らなく欲しくなる。
『飢餓』の感覚、お腹が空いた感じにも似ていて物凄く不思議だ。
それでちょっと洒落にならない頻度でそれを求めてしまい、結果あの監禁行為も許してしまった感がある。
(いくらエロいお姫様でも節度は必要だ。)
邪念を振り払い、鮮やかな朱い髪に両手に馴染ませた香油を手櫛で馴染ませ伸ばしていく。
既に湯から出て数刻も経ち乾いてしまっているので、香油を付けてから丁寧に梳り、整えるくらいだ。
それでもこういう手入れを許され、整えてやるのは楽しい。
「お前の赤毛ってやっぱり鮮やかで綺麗だよなぁ。
黒の艶のある漆黒の髪も良いけど、姉様やお前みたいな色にも憧れるな。」
「俺はお前や母上の色を美しく思い、好むが?」
義母や僕、それから黒などにしかこいつは頭を触らせない。
僕が手入れを買って出る前は義母がするか、茨木が物凄く宥めて宥めて漸く手入れを許していたらしい。
黒が小さい頃に何度も叱ったが、鬼の急所の一つである角が生えている頭に触れられるのを、αは特に嫌がるそうだ。
義母によるとこいつは肉が好きすぎたり、そういうところで昔からα寄りになりそうな兆しはあったという。
Ωである僕はそこまでの忌避感がないのでよく分からないが、基本的に頭を撫でたりなどの行為は親に番や伴侶、子どもなどの身内にしか許されないものらしい。
場合によってはそれすらも受け付けない者もいるそうだ。
その代わり僕らΩは【華】がαよりも弱く、ちょっとした衝撃でも激痛がする。
だからこいつが僕に良くする睦み合う時のあの行為は本当にありえない。
(そういう行為をするやつをドS野郎って言うらしいぞ?)
こいつは色々と自分のことに関しては適当にするところがあり、放っておいたらざんばら髪になったりするらしく、従者たちも苦慮していたらしい。
目に余るほど長くなってきたり、祭祀などの儀式や宴なんかの時には本当に大変だったそうだ。
そういう時は大抵、義母の出番だったそうで、僕が手入れするようになった事を義母はすごく喜んでいた。
(お前、ほんとうにマザコンが過ぎるからな?)
物凄くツッコみたいが「お前はいくつだ?歳を考えろ!」なんて聞いたりしたら、きっと「百から数えておらん。」って素で返ってくる。
(そうに違わない。絶対にそうだ。)
容易に想像できたので言わないでおくことにした。
香油も髪に馴染んだので、梳る事にする。
櫛を通し整えていくと次第にこいつの鮮やかな髪が、美しい艶を出すようになり嬉しくなる。
僕の手の中でサラサラと流れるこいつの髪。
「好みだと思うけど、こういう鮮やかな色は見ていてホントに綺麗で僕は好きだ。」
もとより抜きん出て美しいこいつが僕の手で更に美しくなる。
そんなこの瞬間が僕は結構好きだ。
それに大きな背中を見つめていると愛しい気持ちになり、抱きつきたくなる。
本当ならもっと怒るところの監禁行為をあっさりと受け入れたり、旦那が妙に可愛く美しく見えたり、発情期が明けても今回は妙に頭が湧いていて困る。
(やっぱりそのことはちゃんと叱らないといけないな。)
朱い髪が絹の様な滑らかさと光沢を放つようになってきた。
「この髪が…お前が動く度に躍る様が美しいんだよ。」
「そうか。」
「うん、僕はそれが好きなんだ。」
「それならこの色も良いと思えるな。」
どことなく嬉しそうな声に安心する。
僕の手入れをこいつは雑だと度々文句をつけてくる。
義母はなかなかに器用な方だし、永く生きておられるので、色々と手慰みに身に着けられた事も多い。
僕もお茶をしながら色々と教えて頂いたが、本当に多趣味であられ、どれも熟練の腕前だ。
そんな方と僕を比べるなと怒りたい。
(今のところは特に不満はないみたいだ。)
放っておいたらお前は適当にしてるだろうにと言いたくなるが、この辺のワガママ具合がなんとも可愛く思える僕は末期だと思う。
綺麗な光の輪が髪に浮き上がって満足いく仕上がりになる。
「よし!終わったぞ」と声を掛けると、それを聞いたこいつはすぐに僕の方へ向き直り、真剣な顔をして僕の両肩に手を置いてきた。
(なんだか僕を宥めるみたいな態度だ。)
「お姫様、俺の事は自分で適当に出来る。くれぐれも無理はしてくれるな。」
「何言ってんだよこのくらいのことで。」
こいつはなにかにつけて妙に嫌がって僕に何もさせないようにする。
そのことを不思議に思い問いただしたら『お前はお姫様育ちが過ぎる。』と言われ、出逢った当初は着替えすら出来なかったことを指摘された。
こいつにとっては衝撃的だったらしい、番にされ角が生えているのを見て怒り狂った後『で、小間使いは?』と、聞いたことを度々引き合いに出されている。
(全く、あの頃はともかくちゃんと着替えも出来るようになった。
今みたいにお前の髪の手入れもしてるだろ?)
確かに色々と問題のある育て方ではあったが、ある意味では父や姉から溺愛されて育てられてもいた。
箸より重いものを持ったことがないわけではないがそれに近かった。
(出逢った頃とは違うのにほんとうに失礼するな!)
そんな僕の考えを読んだのか、こいつはふるふると頭を横に振って否定する。
「未だ手付きなどが時に危うく、心配になる。」
僕の両手をふわりと包むように触り、心底気遣わし気な表情をした。
「お前のこの真っ白な手が傷つく事は許さん。
それにお前の肌を傷つけてよいのは俺だけだろう?」
金と銀の色違いの瞳に欲が宿り、優しく撫でるこいつの手指が僕の熱を起こしそうだ。
いつもの様に色を含んだ言葉や、どことなく艶のある仕草に降伏してしまいそうになる。
だがここは踏ん張り、本気で心配してくれていることを感謝しつつも、やんわりと断りを入れる。
「大丈夫だって!
お前ほどじゃないけど、僕の体はΩにしてはめちゃくちゃ頑丈なんだから気にすんな。」
「お姫様、肌理が細かく触り心地の良い肌を損なってくれるな。」
「もう!髪も切ったりしてやりたいのに…」
僕のその発言を聞いたこいつの目がスッと細くなる。
「【ならん】。」
放たれた言葉は絶対に許さないという強い強い意志をさらに呪いで強化されていた。
負けじと深呼吸をして『【否】』と小さく呟き、それを破る。
片眉が少し上がりさらに視線は厳しくなる。
「鋏くらいは大丈夫だって!
僕の爪なんかはお前が手入れしてるから、小刀すら使ったことがないんだぞ。」
対する僕もむくれながらそれを主張する。
「無論だ。なぜ必要がある?」
(相変わらず「何故?」って書いてそうなそんな不思議そうな顔すんな!)
こいつは過保護が過ぎて、【血吸】を物にする為に綱に剣術を仕込まれるのも、ものすごーく渋った。
義父母から『危険すぎるから制御出来る様にしろ(意訳)』と煩く何度も言われ、凄まじい父子喧嘩を何度かした後にやっと認めた。
今でも定期的に稽古をつけてもらうがそれも不服そうにしている。
本当は刀などの物質を介して発現する方が楽なんだが、あまりに渋るので僕は刃物を持たせてもらったことがない。
未だにこんなふうにして刃物を使う必要のある、髪を切り揃えることなどは断固として拒む。
蓬髪とまではいかなくても、あまりの状態を見兼ねた茨木や綱などが懇願し、やっとそれを受け入れているような状態だ。
今度こそと意気込んでいるのだが、こいつも含め皆一様に渋い顔をして絶対にやらせてくれない。
僕のお姫様育ちを知るからか?こいつが怖いのか?はたまた影響されたのか?
従者たちからも散々な態度をされており、それにも腹が立つ。
そもそも貴い身分に生まれているのに、世話を焼かれることを極端に嫌がるこいつのほうが例外だ。
「僕が!お前を!手入れしてやりたいの!!わかれよ!!!」
(少し拗ねてやろうかな。いや、その前に話し合いだな。)
◇
手入れも終わり、その感謝とご褒美だと言ってあいつは菓子を取りに行っている。
最近また四童子が新しいものを見つけたり、厨の者が作ってくれるものも美味しく、楽しみだ。
帰りを待つ間、話し合う事をまとめておくことにする。
このところ僕も不安で情緒が安定しなかったが、あいつも少しばかり様子がおかしかった。
怒りや喜び、悲しみなどを出逢った当初よりも出すようにはなったが、その起伏は激しい。
義父の様に昂りを覚えないように、適当に感情を殺して暮らす方が楽であるそうだが、あいつ自身がそれを望まない。
『神』として生を受けたが僕と「ずっと仲良く暮らしたい」なら『ヒト』を理解しなくてはいけない。
黒が生まれてからあいつはそう思ったそうだ。
僕や息子を大切に思い、そんな努力をしてくれていることを嬉しく思う。
そんなあいつに対して僕が出来る事……
体を重ねて愛を与え合うこと。
互いに分かり合えるまでちゃんと話しをする。
他にも秘密や隠し事が全くないと言う訳にはいかないけれど、嘘をつかないことも心掛けている。
前から思っていたことだが、あいつも僕と同じ様に何かを恐れている。
まだ話せないと言われた秘密もある。
今回の事件が起こり僕の悩みは思わぬ形でほぼ解決された。
前は僕が悩みを聞いてもらった。
今度は僕があいつの悩みを聞いてやる番だと思う。
◇
ギッと言う床の軋む音と衣擦れの音、そしてあいつの【青薔薇】の薫りがして帰りを知る。
御簾を軽く上げて入ってくるのは僕の番。
鬼族の守護者、朱い鬼の亜神様だ。
金色の皇の双角を生やし、手入れしたばかりの朱い髪は絹糸の様な艶を持ち、美しく波打つ。
僕好みの綺麗な顔とオスの魅力に溢れた大きな体。
首もとに見える僕の【庭白百合】は今日も綺麗に咲いている。
その体を包む衣は僕の紫色に庭白百合が描かれているが、銀糸と金糸で薔薇も入っているのをさっき見つけた。
自分の番の艶麗な姿についうっとりとしてしまう。
「おかえり朱天!」
「戻った。」
朱天はホカホカとした湯気を上げる、揚げたてのお菓子の乗った三方を、両手に幾つも抱えている。
「お姫様の好きな揚げ菓子に糖蜜を絡めたもの(かりんとう)だ。」
「マジで!?朱天、それを早く僕に寄越せ!」
巣籠りしたことによって、取り敢えずの欲求や衝動が多少落ち着いたらしいこいつに、監禁したことや子をしきりに欲しがることなどを問いただすことにした。
軽く深呼吸をして、息を整える。
パンパンと手を叩きながら、僕は力ある言葉を発して、茶を淹れて出してきたこいつにそれを命じる。
「ハイハイ!朱天くん、【 お す わ り ! 】」
姉が考案し、義姉が術式を作った【説教の躾】を久しぶりに使う。
僕の目の前には即座にそれに従い、不思議そうな顔をしたこいつが正座をしている。
「百合?こんな呪いを使い、一体どうしたんだ???」
簡単に破れるからか、力ある言葉…【呪】に逆らわない。
話がしにくくなるので今回は土下座は無しだ。
出来るだけこいつの慾を刺激しないように、流されないように気をつけながら質問をする。
「お前さ、なんで僕を閨に閉じ込めていたワケ?
お前は何を恐れているワケ?
どうしてそんなに子を持つことを急くの?」
不思議そうな顔は一転して、眉根を寄せ不快そうになる。
怒りもあるのか膝の上に乗せた手は強く握りこまれ震えている。
「お前は俺が望んでもいないのに無理やり納得して、勝手にそれを成し、俺から逃げようとした。」
帰ってきたのは予想通りのこと。
今のまま誤解されていても困るし、これ以上監禁されるのも御免なので訂正を入れる。
「そんな訳じゃ」違わぬ!」
僕の言葉を強い口調で遮ぎりこいつは続ける。
「お前は俺に勝手なことをするなと散々怒り叱るが、今回は俺がそれを言わせてもらう。」
(そう言われると何も言えなくなる。)
黙り込んだ僕とそんな僕に対して叱責するこいつ。
いつもの話し合いとは違うピリリとした空気が流れる。
「勝手に命を捨てるなど、俺にそれを遣るだなんて言うな。
その事を、その声を、あの時何度も聴いた。」
軽く伏せられ朱い睫毛に彩られた、僕を見つめる金と銀の眼には薄っすらと涙が溜まっている。
「お前も俺を厭うのか?」
いつもの落ち着き動じない様子は無く、どこか不安げな様に僕が驚いてしまう。
(この頃のこいつは本当に安定しない心を持て余している。)
『ヒト』の心を理解してきたから、それが今までこいつの心に存在しなかった波風を立てている。
(その事自体は悪くはないけれど、今はその事を喜んでいられないな。)
「噛んで番にした。
【華】を与え伴侶にした。
子を孕ませ俺の側に縛り付けた。
呪いを受けたお前を俺の【域】に留置いて尚、お前は逃げようとする。」
(あの時『【俺のところまで堕ちてきて欲しい】。』そう言ったこいつに…
ずっと地獄で藻掻いている孤独な朱い魂に寄り添いたいと、そう思って同じものを感じれるところにまでは辿り着けた。)
でもまだ僕はそこまで堕ちていないんだろう。
こいつの言うように恐ろしく思うことも怖いと思うこともまだまだある。
愛しているし、大切だけど全てを手放しに肯定して、受け入れることは出来ていない。
まだ話してくれてないことが沢山あることも不満なのかもしれない。
「他と違いすぎる俺はやはり恐く、怖ろしいとお前は困惑する。
だからなのか?」
抑えられた声で絞り出すように語られるそんな苦しい想い。
瞬きをすると涙がぽろりと流れ落ち、それ見て胸が締め付けられた。
「ごめん…そんなつもりじゃなかったんだ。」
「お前の母の様にそれを俺に与え、遺して逝くことを俺は絶対に許さぬ。」
身内のした事による縁坐の罪を償おうとはしたが、それを望んでいるわけではない。
「俺にそれをさせてくれるな。」
いつもみたいな落ち着いた声と調子で静かに告げられたことで分かった。
こいつや黒の迷惑になりたくない。
それだけだった。
でも、こいつを傷つけてしまった。
あんなに後悔して僕に謝り、二度としないと誓っていたことを破らせようとした。
「ごめ゛ん゛!」
そのことを漸く理解すると僕の目からも決壊した川みたいに涙が溢れた。
「お゛、前や゛、くろ゛に゛…め゛い゛、わ、く…かけ…だ、ぐな、くで…ホント、にごめ゛、んッ」
歯を食いしばり嗚咽を飲み込むが、堪えきれずしゃっくりみたいになってきた。
「すまん、俺も強く言い過ぎた。」
「う゛う゛んッぼ…く、も…ヒグッ、わ゛る゛…っ…た、ウッウッ…」
「だが、遺される俺や黒の事を考えてくれ。」
「う゛ッ、ん゛…」
その後も暫くは泣きじゃくり、そんな僕を見ているこいつの目からは、いつの間にか涙が消えていた。
背中を擦ったりして、なかなか泣き止まない僕をなんとか宥めようとしてくれている。
「参ったな…そんなに泣くならもう考えるな。」
「茶は冷めたが揚げ菓子はまだ少し温かいぞ。」
「他の好物の菓子も出してやろうか?」
「俺を飲むか?」
「可愛がってやればよいか?」
「なぁ…どうすれば泣き止む?」
「お姫様…もう、泣くな。」
「致し方あるまい…」
深い溜め息を吐き「やつらに申し訳ないな。」と呟くとこいつは僕の前に跪いた。
そして僕の左手を恭しく手に取り、その薬指の付け根を軽く食んだ後、そこにまた優しい口づけを落とした。
「ぇ?!ん、な…に?」
突然のおかしな行動に驚きすぎて思わず涙が止まった。
「【絶対にするな】。それは約束してくれ。」
再び僕を見つめている二色の綺麗な瞳にはもう、怒りの色も悲しみの色もない。
僕の好きな【天】色の笑顔になってくれた。
それを見るとスッと気持ちが落ち着いていく。
「…うん。」
「全く、俺のお姫様は本当にしようのないやつだ。
そんな泣き虫なところもとても可愛く、愛らしく思うが。」
頬を伝う零れた落ちた涙もこいつが拭い、目尻や頬に軽く口づけをしてくれる。
「【巣】を前にした俺が舞い上がり台無しにしてしまったが、お前が承知してくれたらこれをする予定だった。
折を見て再度申し込もうと思っていたのだがな。」
些か不本意そうにそれを告白する。
最初は自分の失敗で、次は僕を宥める為に、準備していたものを駄目にしてしまい申し訳なく思う。
「既に契りを結び俺のもとに嫁いでくれているが、
お前にちゃんとした求婚の願いをし、誓いを立てろとフレイヤにずっと言われていた。」
「えぇ…?!そんなの初耳だよ!」
姉はなにかにつけて不思議な習慣を教えてくれた。
綱も度々、茨木にしているから『あちら』にはそんな作法があるのだろう。
「メスにとっては大事な事で千年経っても後々言われ続ける事になると。
お前の従者たちも皆一様に同意した。
それでやつらに作法を教えられ、贈り物も用意した。」
(ええぇ?!姉様にゲンジのみんなこいつに何教えてんの…もうッ!)
顔に熱が集まり、嬉しい告白に胸が踊る。
「ぇ?!う、ぇぇ…?!」(だから【お姫様抱っこ】を強請れってあんなに言われたんだ!)
喜びによりまた涙が出てきてしまいそうだ。
「お姫様、まだ喜ばないほうが良い。」
そんな僕の気持ちを見抜いたこいつが水をさす。
「なんでだよ?」
どうしてそんなことを言うんだろうか?
こういうことを言う時には大体において良くない話ばかりされてきた。
嬉しいことと合わせて話すことが多いので、僕の受ける衝撃を考慮しているんだろう。
「俺が【真名】を伝えた時、俺自身がまだ受け入れ難いことがあると話したな?」
「お前が今も頑なに教えてくれない事?」
「元々、俺は此度のお前の発情期に入る前に伝えるつもりだった。
ずっとお前が知りたがっていたお前にはまだ話せない事。
受け入れ難いと話した事を…
それをお前に告げようと思っていた。」
そう前置きをすると一呼吸おいて、スッと遠くを視るような顔になった。
僕を見ているがどこか彼方を見ているようなそんな目をした『神』の姿になった。
どうやらまた重い話になるようだ。
「……亜神とて死なぬ訳ではない。」
「は?」
(いきなり何を言い出すんだ?)
さっきからこいつの言動は意味不明だし、理解不能だ。
「肉体的な死もあるがすぐに復活し、
魂も不滅で伯母上のように記憶と力を持ち転生も出来る。
これは知っているな?」
「うん。」
僕の知識を確認するようなこの質問だが、これは昇神してすぐに教えられたことだ。
こいつに食べられても平気なのは、そんな肉体の再生力や蘇生力の強さがあるからだ。
でも、前置きでわざわざそんな話をする事がよく分からない。
また『神』としての力や在り方の話なんだろうか?
「俺が初めて奪った命は母だった。」
それは今までに聞いたこいつのぶっ飛んだやらかしの中でも、一番最悪で怖ろしいことだった。
あまりの衝撃に絶句してしまい言葉が出ない。
どんな悩みかを想像したことはなかった。
だが、話したくない、受け入れ難いということに納得がいった。
「…父からも奪った。」
続けて何かを話しているこいつの言葉が入ってこない。
心がそれを拒絶する。
恐怖からこいつの手を振り払い、後ずさりしたくなる自分の体を叱咤して、こいつの話をちゃんと聞くように奮い立たせる。
(落ち着け、僕!しっかりしろッ!)
こいつはずっと黙って話したくなかったことをやっと話してくれようとしている。
それも僕が望んでいた事をだ。
(僕の愛しい旦那様のことだろ!)
僕の左手を掴むこいつの手を両手で握ってやる。
不意にこいつが『ヒト』の顔に戻り、僕を見てとても哀しい表情をした。
その顔を見たことにより僕の中の恐怖は無くなる。
滅多に崩れない整いすぎて恐ろしいほどの顔は、悦びで蕩けたり、怒りや哀しみに染まっていたり……
僕の前でだけ感情豊かになってくれる。
ありえないくらいに美しいけど恐ろしく怖い鬼。
みんなからはそう言われていた。
義母や黒はともかく、茨木でさえこいつの心からの笑顔や、子供みたいな泣き顔を見たことはないと聞いた。
喜怒哀楽がほぼ無く、熱さを感じさせない。
そんな抱き方だったとこいつの『囲っていたやつら』にも聞いた。
適当にして感情を殺して生きていて、そんなところは義父とそっくりだったそうだ。
ここのところこいつにはこんな悲しい顔ばかりさせている気がする。
(しきりに嫌なことを強請ってごめん…)
「俺はもう…愛するものを、それを…喰い殺したりしたくない。」
こいつには珍しく言い淀んだ口調。
その内容のあまりの重さに吐き気がしてきそうだ。
「これから話すのは俺自身が産まれ落ちた時に受けた呪いについてだ。
そのことで俺は荒神、荒れすさぶ魂を持つ神になるだろうと…
そう思われていた。」
*文章のおかしなところを訂正しました。
───────────
結局、なし崩し的にこの時のヒートの後から監禁生活を受け入れてしまった。
花笠の起こした事件の後から、百合と朱点の住む宮のセキュリティレベルが一気に上がった事もあったしね。
《だろうねぇ。》
リスも完全にベッドルームかあいつの部屋に監禁されることになった。
一応は許可を貰って、庭や自分の部屋などには行けたけれど、以前とは大違いに自由は無くなったかなぁ。
傅かれる生活に慣れていたし、リスは言うほど不自由を感じてなかったけれどね。
《昔の姫君などはそうだとしても、現代人である我々は痛ましく思うよ。》
《お子様である黒様の【華】、amour en cage…それが示すようにシュテン様の愛は重く熱いですな。》
セバスティアン、…予告だったのかもしれないよ、『孕ませ縛り付ける』って宣言してたから。
こちらに生まれ落ちて吃驚したことは沢山あったけど、背筋がゾクッとして冷や汗が止まらなかったのは、その名前を知った時だね。
あいつは魂の色だけでなく、【華】まで好き勝手に出来るから余計にね…
もうね…『神』様のデタラメでワガママでとんでもないところに恐怖したよ。
そんなふうにして始まった生活だけど、生まれてからずっと軟禁生活をしてきたリスに、あいつも従者たちも呆れるほど過保護だった。
ちょうど良いしこれについても少し話すね。
それまでは予め許しを与えていたものは、フリーパスに近かったけれど、事件後は原則的にふたりの家族だけしか自由に訪問が出来なくなった。
黒に義父母、姉の緋などだね。
リスかあいつの【華】を持つ者である従者たちもそれに含まれた。
宮で働く者たちもゲンジに統一されたり、古株のものはあいつの【華】を持つようになった。
……何かあれば【華】を枯らしたりして、いつでも始末できるようにしたんだ。
それ以外の者たちは毎度あいつが許しを与えて、宮に入れることになった。
《それはまた以前とは大幅に警戒レベルが上がりましたね。》
《まぁ…大切な妻を害しに心臓部にまで敵に乗り込んで来られたから焦ったんだろう。》
それからリスの従者たちもあいつが【華】と血を与えて共同で支配するようになった。
眷属の強化にもなって良かったのだけれど、それまで頑なに拒んだ事を受け入れたんだ。
《シュテンがリスの従者…ゲンジたちを共同で支配した理由はどうしてかな?》
これはアルファの独占欲から来るものらしくてね。
眷属は主人から血などを貰わなければ、【華】は枯れてしまい死を迎えるって話したよね?
だから眷属には定期的に血や唾液や精液などの主人の体液を与えるものなんだ。
《ずっと言っている『【愛】を与える』ですわね!》
うん。主人も好ましいものをそれはもう溺愛するから。
……それで話を戻すけれど、元々ヒトであったものが大多数のリスの従者は、定期的に与える血なども微量で本当に少なかったが、それでも我慢できなくなったそうだ。
血も一滴ほどだけど、双子を妊娠して血や肉を大量に摂取していても追いつかないからそれはダメ。
ディープキスなんかでも事足りるんだけど、リスも好まないうえに『それはならぬ』って言われてね。
まぁ…数もすごく多いしね。
《ハハハ、最愛の妻がそんな行為をするのは確かに不愉快だね。》
リスと結ばれる前の自分は従者を抱いてそれをしていたくせに、そんな狭量なことを言ったんだよ?
《それだけ愛が深いってことだろう。》
そんな事もあってあいつも自分の力を受け入れようとしたんだ。
強い【予知】の力や視る力、聴く力。
他にもあいつだけが識っていること。
生まれ落ちた時から持つそれらを厭んでいたが、私を…リスや子どもたちを守るために使うことにしたんだ。
それが『アレ』の策略とは思わずにね。
双子を新しく家族に迎えるだけではなく、あいつが亜神から神になり、二つ名も得る事になって行く事をこれから話すよ。
◇◇◇
【指切りげんまん】の誓いをして朱天との間に新たな縛りが増えた僕は、短い監禁生活から解放された。
───この時には気づいていなかったが、本当なら双子を妊娠したことにより精を大量に胎に受けないと体に支障が生じたり、恐ろしいほどの渇きを覚えているはずだった。
受胎後すぐでも強い力を持つ子ならそれくらい負担がかかる。
それを抱き潰して、滅茶苦茶飲ませ食べさせて、絶対に気づかせないようにしていた。
だけど僕が本当に嫌なことは絶対にしない。
監禁して体を慾るけれど、僕が悦ぶイジワルな責めをして、蕩かす様に抱いて甘やかして、好物の菓子もせっせと貢いで僕を溺愛した。
子どものことも強引だったし、悩みもあったけれど本当は欲していた。
発情期で強引に了承させて、流れなくなるまで意図的にそれを隠す。
重大な秘密を打ち明けるときは逃げれないように僕を孕ましている。
そんなワガママを毎度してくれちゃってるけど…
あれ?なんだか嫌なことをしないんじゃなくて、拒否できなくしてる気もするな。
それでも…本当は良くないと分かっていても、出逢った当初のように務めを休み、蜜月を過ごすかのように常には無いほど自分の側に居てくれる。
そんなことを嬉しく思っていたりもした───
午睡から目覚めた僕は今、約束だったこいつの髪の手入れをしている。
「お前の腕の中で寝ちゃってごめん…」
体を慾られ続けたことによる疲労から、こいつの腕の中で寝入ってしまった事を謝る。
「構わぬ。」
「僕が起きるまで抱えてて疲れなかったか?」
「お姫様の重さなど俺には些末なものだ。」
こいつは起こさないように抱きしめた状態でずっと居てくれたらしい。
僕の髪を手入れした後に数刻、寝入った僕を抱えその寝姿を見て楽しんだなどとも言われ、顔から火が出そうになる。
手入れの為にこいつの背後に居て、赤くなったそれを見られずに済んで良かったと胸をなでおろす。
「美しい銀糸の様な髪を玩び、口づけをしようとしたら起きたお前に拒まれ、残念だ。」
目が覚めた時に目の前にこいつの顔があって、それが口づけをしようとしているからと分かったときは、驚いて変な声が出た。
『ファーーーーーッ?!』って。
見慣れたとはいえ、こいつの顔は心臓に悪いくらいのとんでもない美貌だ。
実のところ最近は顔だけじゃなく、こいつの匂いに体にそしてちんちんにまで…全てにドキドキしている。
(ダメだ!淫乱なのは本当に良くない。さっきまでも散々してただろ!)
発情期の疼きや濡れる感じではないのだが、何故かこいつの側にいると僕の胎はきゅうんとしてる。
つまり、こいつの雄が精が堪らなく欲しくなる。
『飢餓』の感覚、お腹が空いた感じにも似ていて物凄く不思議だ。
それでちょっと洒落にならない頻度でそれを求めてしまい、結果あの監禁行為も許してしまった感がある。
(いくらエロいお姫様でも節度は必要だ。)
邪念を振り払い、鮮やかな朱い髪に両手に馴染ませた香油を手櫛で馴染ませ伸ばしていく。
既に湯から出て数刻も経ち乾いてしまっているので、香油を付けてから丁寧に梳り、整えるくらいだ。
それでもこういう手入れを許され、整えてやるのは楽しい。
「お前の赤毛ってやっぱり鮮やかで綺麗だよなぁ。
黒の艶のある漆黒の髪も良いけど、姉様やお前みたいな色にも憧れるな。」
「俺はお前や母上の色を美しく思い、好むが?」
義母や僕、それから黒などにしかこいつは頭を触らせない。
僕が手入れを買って出る前は義母がするか、茨木が物凄く宥めて宥めて漸く手入れを許していたらしい。
黒が小さい頃に何度も叱ったが、鬼の急所の一つである角が生えている頭に触れられるのを、αは特に嫌がるそうだ。
義母によるとこいつは肉が好きすぎたり、そういうところで昔からα寄りになりそうな兆しはあったという。
Ωである僕はそこまでの忌避感がないのでよく分からないが、基本的に頭を撫でたりなどの行為は親に番や伴侶、子どもなどの身内にしか許されないものらしい。
場合によってはそれすらも受け付けない者もいるそうだ。
その代わり僕らΩは【華】がαよりも弱く、ちょっとした衝撃でも激痛がする。
だからこいつが僕に良くする睦み合う時のあの行為は本当にありえない。
(そういう行為をするやつをドS野郎って言うらしいぞ?)
こいつは色々と自分のことに関しては適当にするところがあり、放っておいたらざんばら髪になったりするらしく、従者たちも苦慮していたらしい。
目に余るほど長くなってきたり、祭祀などの儀式や宴なんかの時には本当に大変だったそうだ。
そういう時は大抵、義母の出番だったそうで、僕が手入れするようになった事を義母はすごく喜んでいた。
(お前、ほんとうにマザコンが過ぎるからな?)
物凄くツッコみたいが「お前はいくつだ?歳を考えろ!」なんて聞いたりしたら、きっと「百から数えておらん。」って素で返ってくる。
(そうに違わない。絶対にそうだ。)
容易に想像できたので言わないでおくことにした。
香油も髪に馴染んだので、梳る事にする。
櫛を通し整えていくと次第にこいつの鮮やかな髪が、美しい艶を出すようになり嬉しくなる。
僕の手の中でサラサラと流れるこいつの髪。
「好みだと思うけど、こういう鮮やかな色は見ていてホントに綺麗で僕は好きだ。」
もとより抜きん出て美しいこいつが僕の手で更に美しくなる。
そんなこの瞬間が僕は結構好きだ。
それに大きな背中を見つめていると愛しい気持ちになり、抱きつきたくなる。
本当ならもっと怒るところの監禁行為をあっさりと受け入れたり、旦那が妙に可愛く美しく見えたり、発情期が明けても今回は妙に頭が湧いていて困る。
(やっぱりそのことはちゃんと叱らないといけないな。)
朱い髪が絹の様な滑らかさと光沢を放つようになってきた。
「この髪が…お前が動く度に躍る様が美しいんだよ。」
「そうか。」
「うん、僕はそれが好きなんだ。」
「それならこの色も良いと思えるな。」
どことなく嬉しそうな声に安心する。
僕の手入れをこいつは雑だと度々文句をつけてくる。
義母はなかなかに器用な方だし、永く生きておられるので、色々と手慰みに身に着けられた事も多い。
僕もお茶をしながら色々と教えて頂いたが、本当に多趣味であられ、どれも熟練の腕前だ。
そんな方と僕を比べるなと怒りたい。
(今のところは特に不満はないみたいだ。)
放っておいたらお前は適当にしてるだろうにと言いたくなるが、この辺のワガママ具合がなんとも可愛く思える僕は末期だと思う。
綺麗な光の輪が髪に浮き上がって満足いく仕上がりになる。
「よし!終わったぞ」と声を掛けると、それを聞いたこいつはすぐに僕の方へ向き直り、真剣な顔をして僕の両肩に手を置いてきた。
(なんだか僕を宥めるみたいな態度だ。)
「お姫様、俺の事は自分で適当に出来る。くれぐれも無理はしてくれるな。」
「何言ってんだよこのくらいのことで。」
こいつはなにかにつけて妙に嫌がって僕に何もさせないようにする。
そのことを不思議に思い問いただしたら『お前はお姫様育ちが過ぎる。』と言われ、出逢った当初は着替えすら出来なかったことを指摘された。
こいつにとっては衝撃的だったらしい、番にされ角が生えているのを見て怒り狂った後『で、小間使いは?』と、聞いたことを度々引き合いに出されている。
(全く、あの頃はともかくちゃんと着替えも出来るようになった。
今みたいにお前の髪の手入れもしてるだろ?)
確かに色々と問題のある育て方ではあったが、ある意味では父や姉から溺愛されて育てられてもいた。
箸より重いものを持ったことがないわけではないがそれに近かった。
(出逢った頃とは違うのにほんとうに失礼するな!)
そんな僕の考えを読んだのか、こいつはふるふると頭を横に振って否定する。
「未だ手付きなどが時に危うく、心配になる。」
僕の両手をふわりと包むように触り、心底気遣わし気な表情をした。
「お前のこの真っ白な手が傷つく事は許さん。
それにお前の肌を傷つけてよいのは俺だけだろう?」
金と銀の色違いの瞳に欲が宿り、優しく撫でるこいつの手指が僕の熱を起こしそうだ。
いつもの様に色を含んだ言葉や、どことなく艶のある仕草に降伏してしまいそうになる。
だがここは踏ん張り、本気で心配してくれていることを感謝しつつも、やんわりと断りを入れる。
「大丈夫だって!
お前ほどじゃないけど、僕の体はΩにしてはめちゃくちゃ頑丈なんだから気にすんな。」
「お姫様、肌理が細かく触り心地の良い肌を損なってくれるな。」
「もう!髪も切ったりしてやりたいのに…」
僕のその発言を聞いたこいつの目がスッと細くなる。
「【ならん】。」
放たれた言葉は絶対に許さないという強い強い意志をさらに呪いで強化されていた。
負けじと深呼吸をして『【否】』と小さく呟き、それを破る。
片眉が少し上がりさらに視線は厳しくなる。
「鋏くらいは大丈夫だって!
僕の爪なんかはお前が手入れしてるから、小刀すら使ったことがないんだぞ。」
対する僕もむくれながらそれを主張する。
「無論だ。なぜ必要がある?」
(相変わらず「何故?」って書いてそうなそんな不思議そうな顔すんな!)
こいつは過保護が過ぎて、【血吸】を物にする為に綱に剣術を仕込まれるのも、ものすごーく渋った。
義父母から『危険すぎるから制御出来る様にしろ(意訳)』と煩く何度も言われ、凄まじい父子喧嘩を何度かした後にやっと認めた。
今でも定期的に稽古をつけてもらうがそれも不服そうにしている。
本当は刀などの物質を介して発現する方が楽なんだが、あまりに渋るので僕は刃物を持たせてもらったことがない。
未だにこんなふうにして刃物を使う必要のある、髪を切り揃えることなどは断固として拒む。
蓬髪とまではいかなくても、あまりの状態を見兼ねた茨木や綱などが懇願し、やっとそれを受け入れているような状態だ。
今度こそと意気込んでいるのだが、こいつも含め皆一様に渋い顔をして絶対にやらせてくれない。
僕のお姫様育ちを知るからか?こいつが怖いのか?はたまた影響されたのか?
従者たちからも散々な態度をされており、それにも腹が立つ。
そもそも貴い身分に生まれているのに、世話を焼かれることを極端に嫌がるこいつのほうが例外だ。
「僕が!お前を!手入れしてやりたいの!!わかれよ!!!」
(少し拗ねてやろうかな。いや、その前に話し合いだな。)
◇
手入れも終わり、その感謝とご褒美だと言ってあいつは菓子を取りに行っている。
最近また四童子が新しいものを見つけたり、厨の者が作ってくれるものも美味しく、楽しみだ。
帰りを待つ間、話し合う事をまとめておくことにする。
このところ僕も不安で情緒が安定しなかったが、あいつも少しばかり様子がおかしかった。
怒りや喜び、悲しみなどを出逢った当初よりも出すようにはなったが、その起伏は激しい。
義父の様に昂りを覚えないように、適当に感情を殺して暮らす方が楽であるそうだが、あいつ自身がそれを望まない。
『神』として生を受けたが僕と「ずっと仲良く暮らしたい」なら『ヒト』を理解しなくてはいけない。
黒が生まれてからあいつはそう思ったそうだ。
僕や息子を大切に思い、そんな努力をしてくれていることを嬉しく思う。
そんなあいつに対して僕が出来る事……
体を重ねて愛を与え合うこと。
互いに分かり合えるまでちゃんと話しをする。
他にも秘密や隠し事が全くないと言う訳にはいかないけれど、嘘をつかないことも心掛けている。
前から思っていたことだが、あいつも僕と同じ様に何かを恐れている。
まだ話せないと言われた秘密もある。
今回の事件が起こり僕の悩みは思わぬ形でほぼ解決された。
前は僕が悩みを聞いてもらった。
今度は僕があいつの悩みを聞いてやる番だと思う。
◇
ギッと言う床の軋む音と衣擦れの音、そしてあいつの【青薔薇】の薫りがして帰りを知る。
御簾を軽く上げて入ってくるのは僕の番。
鬼族の守護者、朱い鬼の亜神様だ。
金色の皇の双角を生やし、手入れしたばかりの朱い髪は絹糸の様な艶を持ち、美しく波打つ。
僕好みの綺麗な顔とオスの魅力に溢れた大きな体。
首もとに見える僕の【庭白百合】は今日も綺麗に咲いている。
その体を包む衣は僕の紫色に庭白百合が描かれているが、銀糸と金糸で薔薇も入っているのをさっき見つけた。
自分の番の艶麗な姿についうっとりとしてしまう。
「おかえり朱天!」
「戻った。」
朱天はホカホカとした湯気を上げる、揚げたてのお菓子の乗った三方を、両手に幾つも抱えている。
「お姫様の好きな揚げ菓子に糖蜜を絡めたもの(かりんとう)だ。」
「マジで!?朱天、それを早く僕に寄越せ!」
巣籠りしたことによって、取り敢えずの欲求や衝動が多少落ち着いたらしいこいつに、監禁したことや子をしきりに欲しがることなどを問いただすことにした。
軽く深呼吸をして、息を整える。
パンパンと手を叩きながら、僕は力ある言葉を発して、茶を淹れて出してきたこいつにそれを命じる。
「ハイハイ!朱天くん、【 お す わ り ! 】」
姉が考案し、義姉が術式を作った【説教の躾】を久しぶりに使う。
僕の目の前には即座にそれに従い、不思議そうな顔をしたこいつが正座をしている。
「百合?こんな呪いを使い、一体どうしたんだ???」
簡単に破れるからか、力ある言葉…【呪】に逆らわない。
話がしにくくなるので今回は土下座は無しだ。
出来るだけこいつの慾を刺激しないように、流されないように気をつけながら質問をする。
「お前さ、なんで僕を閨に閉じ込めていたワケ?
お前は何を恐れているワケ?
どうしてそんなに子を持つことを急くの?」
不思議そうな顔は一転して、眉根を寄せ不快そうになる。
怒りもあるのか膝の上に乗せた手は強く握りこまれ震えている。
「お前は俺が望んでもいないのに無理やり納得して、勝手にそれを成し、俺から逃げようとした。」
帰ってきたのは予想通りのこと。
今のまま誤解されていても困るし、これ以上監禁されるのも御免なので訂正を入れる。
「そんな訳じゃ」違わぬ!」
僕の言葉を強い口調で遮ぎりこいつは続ける。
「お前は俺に勝手なことをするなと散々怒り叱るが、今回は俺がそれを言わせてもらう。」
(そう言われると何も言えなくなる。)
黙り込んだ僕とそんな僕に対して叱責するこいつ。
いつもの話し合いとは違うピリリとした空気が流れる。
「勝手に命を捨てるなど、俺にそれを遣るだなんて言うな。
その事を、その声を、あの時何度も聴いた。」
軽く伏せられ朱い睫毛に彩られた、僕を見つめる金と銀の眼には薄っすらと涙が溜まっている。
「お前も俺を厭うのか?」
いつもの落ち着き動じない様子は無く、どこか不安げな様に僕が驚いてしまう。
(この頃のこいつは本当に安定しない心を持て余している。)
『ヒト』の心を理解してきたから、それが今までこいつの心に存在しなかった波風を立てている。
(その事自体は悪くはないけれど、今はその事を喜んでいられないな。)
「噛んで番にした。
【華】を与え伴侶にした。
子を孕ませ俺の側に縛り付けた。
呪いを受けたお前を俺の【域】に留置いて尚、お前は逃げようとする。」
(あの時『【俺のところまで堕ちてきて欲しい】。』そう言ったこいつに…
ずっと地獄で藻掻いている孤独な朱い魂に寄り添いたいと、そう思って同じものを感じれるところにまでは辿り着けた。)
でもまだ僕はそこまで堕ちていないんだろう。
こいつの言うように恐ろしく思うことも怖いと思うこともまだまだある。
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「他と違いすぎる俺はやはり恐く、怖ろしいとお前は困惑する。
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「ごめん…そんなつもりじゃなかったんだ。」
「お前の母の様にそれを俺に与え、遺して逝くことを俺は絶対に許さぬ。」
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「俺にそれをさせてくれるな。」
いつもみたいな落ち着いた声と調子で静かに告げられたことで分かった。
こいつや黒の迷惑になりたくない。
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でも、こいつを傷つけてしまった。
あんなに後悔して僕に謝り、二度としないと誓っていたことを破らせようとした。
「ごめ゛ん゛!」
そのことを漸く理解すると僕の目からも決壊した川みたいに涙が溢れた。
「お゛、前や゛、くろ゛に゛…め゛い゛、わ、く…かけ…だ、ぐな、くで…ホント、にごめ゛、んッ」
歯を食いしばり嗚咽を飲み込むが、堪えきれずしゃっくりみたいになってきた。
「すまん、俺も強く言い過ぎた。」
「う゛う゛んッぼ…く、も…ヒグッ、わ゛る゛…っ…た、ウッウッ…」
「だが、遺される俺や黒の事を考えてくれ。」
「う゛ッ、ん゛…」
その後も暫くは泣きじゃくり、そんな僕を見ているこいつの目からは、いつの間にか涙が消えていた。
背中を擦ったりして、なかなか泣き止まない僕をなんとか宥めようとしてくれている。
「参ったな…そんなに泣くならもう考えるな。」
「茶は冷めたが揚げ菓子はまだ少し温かいぞ。」
「他の好物の菓子も出してやろうか?」
「俺を飲むか?」
「可愛がってやればよいか?」
「なぁ…どうすれば泣き止む?」
「お姫様…もう、泣くな。」
「致し方あるまい…」
深い溜め息を吐き「やつらに申し訳ないな。」と呟くとこいつは僕の前に跪いた。
そして僕の左手を恭しく手に取り、その薬指の付け根を軽く食んだ後、そこにまた優しい口づけを落とした。
「ぇ?!ん、な…に?」
突然のおかしな行動に驚きすぎて思わず涙が止まった。
「【絶対にするな】。それは約束してくれ。」
再び僕を見つめている二色の綺麗な瞳にはもう、怒りの色も悲しみの色もない。
僕の好きな【天】色の笑顔になってくれた。
それを見るとスッと気持ちが落ち着いていく。
「…うん。」
「全く、俺のお姫様は本当にしようのないやつだ。
そんな泣き虫なところもとても可愛く、愛らしく思うが。」
頬を伝う零れた落ちた涙もこいつが拭い、目尻や頬に軽く口づけをしてくれる。
「【巣】を前にした俺が舞い上がり台無しにしてしまったが、お前が承知してくれたらこれをする予定だった。
折を見て再度申し込もうと思っていたのだがな。」
些か不本意そうにそれを告白する。
最初は自分の失敗で、次は僕を宥める為に、準備していたものを駄目にしてしまい申し訳なく思う。
「既に契りを結び俺のもとに嫁いでくれているが、
お前にちゃんとした求婚の願いをし、誓いを立てろとフレイヤにずっと言われていた。」
「えぇ…?!そんなの初耳だよ!」
姉はなにかにつけて不思議な習慣を教えてくれた。
綱も度々、茨木にしているから『あちら』にはそんな作法があるのだろう。
「メスにとっては大事な事で千年経っても後々言われ続ける事になると。
お前の従者たちも皆一様に同意した。
それでやつらに作法を教えられ、贈り物も用意した。」
(ええぇ?!姉様にゲンジのみんなこいつに何教えてんの…もうッ!)
顔に熱が集まり、嬉しい告白に胸が踊る。
「ぇ?!う、ぇぇ…?!」(だから【お姫様抱っこ】を強請れってあんなに言われたんだ!)
喜びによりまた涙が出てきてしまいそうだ。
「お姫様、まだ喜ばないほうが良い。」
そんな僕の気持ちを見抜いたこいつが水をさす。
「なんでだよ?」
どうしてそんなことを言うんだろうか?
こういうことを言う時には大体において良くない話ばかりされてきた。
嬉しいことと合わせて話すことが多いので、僕の受ける衝撃を考慮しているんだろう。
「俺が【真名】を伝えた時、俺自身がまだ受け入れ難いことがあると話したな?」
「お前が今も頑なに教えてくれない事?」
「元々、俺は此度のお前の発情期に入る前に伝えるつもりだった。
ずっとお前が知りたがっていたお前にはまだ話せない事。
受け入れ難いと話した事を…
それをお前に告げようと思っていた。」
そう前置きをすると一呼吸おいて、スッと遠くを視るような顔になった。
僕を見ているがどこか彼方を見ているようなそんな目をした『神』の姿になった。
どうやらまた重い話になるようだ。
「……亜神とて死なぬ訳ではない。」
「は?」
(いきなり何を言い出すんだ?)
さっきからこいつの言動は意味不明だし、理解不能だ。
「肉体的な死もあるがすぐに復活し、
魂も不滅で伯母上のように記憶と力を持ち転生も出来る。
これは知っているな?」
「うん。」
僕の知識を確認するようなこの質問だが、これは昇神してすぐに教えられたことだ。
こいつに食べられても平気なのは、そんな肉体の再生力や蘇生力の強さがあるからだ。
でも、前置きでわざわざそんな話をする事がよく分からない。
また『神』としての力や在り方の話なんだろうか?
「俺が初めて奪った命は母だった。」
それは今までに聞いたこいつのぶっ飛んだやらかしの中でも、一番最悪で怖ろしいことだった。
あまりの衝撃に絶句してしまい言葉が出ない。
どんな悩みかを想像したことはなかった。
だが、話したくない、受け入れ難いということに納得がいった。
「…父からも奪った。」
続けて何かを話しているこいつの言葉が入ってこない。
心がそれを拒絶する。
恐怖からこいつの手を振り払い、後ずさりしたくなる自分の体を叱咤して、こいつの話をちゃんと聞くように奮い立たせる。
(落ち着け、僕!しっかりしろッ!)
こいつはずっと黙って話したくなかったことをやっと話してくれようとしている。
それも僕が望んでいた事をだ。
(僕の愛しい旦那様のことだろ!)
僕の左手を掴むこいつの手を両手で握ってやる。
不意にこいつが『ヒト』の顔に戻り、僕を見てとても哀しい表情をした。
その顔を見たことにより僕の中の恐怖は無くなる。
滅多に崩れない整いすぎて恐ろしいほどの顔は、悦びで蕩けたり、怒りや哀しみに染まっていたり……
僕の前でだけ感情豊かになってくれる。
ありえないくらいに美しいけど恐ろしく怖い鬼。
みんなからはそう言われていた。
義母や黒はともかく、茨木でさえこいつの心からの笑顔や、子供みたいな泣き顔を見たことはないと聞いた。
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適当にして感情を殺して生きていて、そんなところは義父とそっくりだったそうだ。
ここのところこいつにはこんな悲しい顔ばかりさせている気がする。
(しきりに嫌なことを強請ってごめん…)
「俺はもう…愛するものを、それを…喰い殺したりしたくない。」
こいつには珍しく言い淀んだ口調。
その内容のあまりの重さに吐き気がしてきそうだ。
「これから話すのは俺自身が産まれ落ちた時に受けた呪いについてだ。
そのことで俺は荒神、荒れすさぶ魂を持つ神になるだろうと…
そう思われていた。」
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