僕の番が怖すぎる。

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一章 降って湧いた災難

お前は今日から俺の嫁だ、嬉しいなお姫様。

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 さて、長い間語ってきたけど、一応これで一つ目の私の受難は終わるかな?

 永らく番い、数千年も共にいたから、もっと沢山のありえないエピソードも、
 …とても苦しい思いも…本当に沢山あった。

《最初は酷かったシュテンは良い夫になったのか?》

 夫とかそういうものよりも、離せない半身になってしまった・・・・・・・んだよ。 

 またグラスが空いたけど、今はガスウォーターにライムでも絞ったのにするよ。

 とりあえずのハッピーエンド?かなそれを話そうか。


 ◇◇◇


 何となく、僕らの距離が少し縮み、僕自身も気持ちを自覚した日から一夜明けた。
 僕が寝入った後にあいつは、あいつらと同じ様な変な【】の奴らを纏めて始末し、喰らったそうだ。
 
 おかげで【青】の家は殆どのものがいなくなり、
 僕が跡継ぎとされていたが、朱点シュテンがどうやっても僕を手離すとは思えず、
【青】として生まれているのに、何故か生来の名を捨て、朱点の元に下り、
 結婚の相手のことで喧嘩をし、勘当までされていた姉が戻り、
【青】の家を継ぐ事になった。
 他にも数人残っていた父と祖父母や親戚と共に【青】を立て直すらしい。
 
 また、あの変な【】を纏った朱点の兄姉らを始末したことは、
 不思議なことに問題にすらならなかった。
 あれらは鬼の掟に反した行動をし、処分待ちのようなものであったらしい。
 ただ、時期が悪いということや様々な事情から留め置かれていたそうだ。

 それを無視して私刑を実行したことについてだけ、あいつは后陛下に叱られた。

『良いですか?このアホ!お前はいくつになっても、どうしてこんなことすらわからないのですか?!』
『あいつらはゴミだ。お姫様と仲良く暮らせない。始末した。母上どうしたんだ?』
『お前はねぇ…このアホ!!』

 叱られているときに不思議そうな顔をしていてそのことでまた怒られていた。


 それから僕に会いたいという客人が訪れ、会うことになり、驚いた。

「【青】は良くないものの出口にされているんだよ。ずっとね。」
 
 姉の【名】はアケという。
 久しぶりに見た姉には角が無かった!!

「姉様!あ、えぇ?!あ?エエエェ?!角ーッ!!!」
 
 腕を組み顎に手を当て考え込む姉。

「だから父上たちはお前が、あの方のところに嫁ぐのを危ぶんでいたんだけれどね。」 

 姉は溜息を吐き、続ける。

「お前も、朱点様も純粋なこちら・・・の魂だからね。
アレ』から睨まれやすいから、そう考えるのもわかるんだけれど。まぁ、あの人たちもおしおきしておいたから。」

 にっこりと笑う姉。その瞳には危険な光が宿っていた。

 何を言っているかはわからないが、この姉は耳長族エルフの長と恋に落ち、結婚の約束をして飛び出していた。
 そんな姉を、家に戻すことになったことが申し訳なかった。

「お姉ちゃんはお前に『運命』は自分で掴めって教えたよね?朱点様がそうなのかな?」
「恋も愛もまだわからない。でも、離れたくないんだ。」 

 自覚したこの気持ちは、まだ名前がつけられない。
【青】の跡継ぎとして、僕はそういったことを望むのは難しかった。
 家のためにより良いオスと縁を繋ぐもの。
 だから考えたことはなかった。

「そっか、存分に悩みなさい。そして振り回してやれば良いんだ。」
「姉様?」
「認め祝福すると言ったが、なんて事を私の可愛い弟にしてくれた…」
「姉様、なんか怖いよ?」
「ん、あぁ…何でもないよ。ところで何か困った事などはないかい?」

 こんなふうに姉と再会して心ゆくまで話し込んだ。


 ◇◇◇


「目障りだったゴミ・・共も始末した。俺の子も孕んでる。
お前は今日から俺の嫁だ、嬉しいなお姫様。」


「ハイーーーー?!」

 
 いつのまにか勝手にこいつの嫁…妃にされていた。

 あんな惨殺現場を見せられ、とんでもない給餌行動をし、
 そして、それらを無理矢理食わせる。
 いきなり閨に連れ込み、僕の純潔を奪い、勝手に番にしたうえに、一方的に【血の伴侶】にしかけ、孕ませようとする事に

 さらなる問題行動が追加された。

 そんな恐怖の存在が自分の夫に決定した瞬間だった。

 もう、こいつに出会ったことから、僕の受難は始まったとしか思えない。

 確かに色々と相性が良くて、一緒にいても退屈しない(しようがないくらいの問題を起こすともいうが)
 そして、物凄く僕好みの容姿だ。

 …でっかいちんちんもすごく好き。

 言葉が足りない、問題行動を起こす、突飛すぎる考えについていけない
 
 …他にもまだまだ言いたいことはある。

 僕もなんでこいつが好き?になったかわからない。
 しかも最近の異常な空腹は妊娠からくるものらしい。


 お前!知ってたなら早く言えよ!!


 僕がまだまだ子供だし、いくら『運命』でもこんなすぐに子供が出来るとは思わなかった。
 あの時の僕の不安は的中していたのだ。
『運命』と番っているあいつの側近の四童子の一人から、凄いと言われるくらいの確率と期間と
 僕の成熟してもまだまだ幼い肉体では、あり得ないくらいの奇跡だった。

 流石、奇跡の子。
 お前本当に凄いよ…

「先日から后陛下が
『予兆があり頭が痛いです。本当にあのアホはーー!!!
あんな幼子にはまだ少し早いです!
この鬼畜め!!まぁ、鬼ですけれどね……』と仰られてまして、
その後呼び出され、百合ユリ様に付くように命じられました。」

 そう茨木イバラキは僕に言った。

 つまり、あいつに彼女を初めて紹介された時には、既に僕は妃に内定していたという事になる。


 本当に!お前いい加減にしろよな!!
 あんなに散々!僕が悩んで!!苦しんでいたのに!!!
 どおりで彼女が僕のことを少し微笑ましそうに見るわけだよ!


「お前はなぁ…
いつも単語を繋げてしゃべるような会話をやめろ!
ちゃんと考えている事を実行する前に話せ!!
衝動的に本能的に行動するな!!!」

 続けて

「頭が足りないわけじゃないのに、なんでそう色々な常識が抜けているんだ!
お前についてた教育係とかどうしたんだよ!!」


「喰った。」


「え、食べた…?!冗談だよな?な?な?」


 本当に僕はなんで好きなんだろうな?  
 でっかいちんちんか?
 ありえない絶倫か?

 駄目だ、体で堕とされかけている…
 姉様、ごめんなさい…百合は悪い子になりました。


 しかし、これから成長期に入ったばかりの僕が子供を産み、育てなければいけない。
 しかもその子がいきなり次期スメラギに決まるとか、もう…頭が痛すぎるし、責任の重さに目眩がする。


 もう、嫌だ。
 深く考えると疲れる。

 とりあえず…………


「僕は何としても【】に帰る!絶対に!絶対に!!家に帰るんだ!!
離せ朱点シュテン!お前、本当にいい加減にしろよな!!うわぁぁ!助けて姉様!!!」 


 ◇◇◇

 
 あら、ファイゲンバウムどうしたの?

《マリー、君は疲れているから早く帰って寝た方が良い。》

 失礼だな、皆が強請るから普段は喋らないことを話したんだ。
 そんなに美人で賢くて優秀でモテるのに、なんで恋人すら作らない?とか皆が煩いからだろう?

《うーん、マリーを信じないわけではないが、荒唐無稽過ぎて困った。》

 私の純潔はあいつに捧げることにしているんだ!
 
《………………あー…うん。そっか。》

 あいつのでっかいちんちんに慣れて、あいつと寝たことあったら、絶対に他では満足なんてできないぞ!
 やつは問題児だったが、そこは素晴らしく優秀だったからな!

《わー始まったよ!誰かマリーの口を塞げ!》
《嘘だろう!この絶世の美女からこの発言は無い…》
《いや、下ネタも出来るから逆に親しみがわいた。》

 何故か茨木とか四童子とかには『良く我慢できますね?若はあり得ないくらいの巨根のうえに絶倫で、僕らは泣き叫ぶくらいですよ?』とか何度も言われたが…

 それに私は貞操が非常に堅いんだ。
 夫以外にも物凄い数のものに迫られたが、絶対に許さなかったんだ。
 眷属だって暫くは作らせてもらえなかったからな!

《これはだめだないつもみたいに暴れだすぞ。》
《マリーは酒が入ると物凄く下品になる。》
《びっくりするような発言が出る前に止めよう。》
《もう…手遅れだと思うが?》

 なんなんだ?さらに酷く疲れた顔をして。

 続きもまだあるんだぞ!

 なんだ?

《そろそろお開きにしないと、マリーを女神の様に崇めている者たちの理想が崩れる》

 そんなの私の知ったことじゃないな。
 私はあれの前では、開発されきったエロいお姫様だからな!

《マリー、君は悪酔いしているから、送っていくよ!》
《それが良い!》

 ありがとう助かるよ。

《今日は長い間話させてごめんなさい、色々と楽しかったわ!》
《また今度続きをお願い。》
《マリーも私たちのお仲間だとは思わなかったわ!》

 うん?機会があればね。


 ◇◇◇


 仲間内のパーティーから家に帰ってきた。

 なんだか最終的に夢とかにされていそうだな。
 それか狂人扱いか?

 キッチンで水を汲み飲み干す。

 あいつは酒とかもザルというか枠みたいな奴だったな。

 私はわりと弱かったうえに、良くない酔い方をするらしいから、
 茨木からは止められていたが、あいつは好んで飲ませたな。

 きっと、その時に色々と変態行為を仕込んだんだろうな。
 いつの間にか色々と慣れてて、凄く不思議だったからな。
 あいつは三大欲求で行動するから本当に参る。


 ん?息子たちが二人で来たな。
 相変わらずこの子たちは仲が凄く良い。

 ……いや、不安になるくらい良すぎる。
 魂が惹かれ合うのか離すと激しく嫌がるし、恐ろしいことをしそうだ。 

「お袋、あのさ…話があるんだけど。」

 私の実子であるランディが声をかけてきた。

「なに?」

「マリーさん。」

 同僚から預かっているコリンも声をかけてきた。


「実は俺た「ランディとセックスした。」


 ハイーーーーーーーーーーー?!


「おい!コリン!!何言ってんだよ!!!」
「事実だよ?」

 慌てて片割れを咎める息子と、不思議な顔をして片割れに話す子。

 思わず目眩がしたが、何となく彼らはそういう関係になるかと思っていた。
 が、些か早すぎる。

 お前たち…まだ十歳になるかならないかくらいだろう?

 なんでそんなに性の目覚めが早いんだ?

 いや、あいつはそれくらいかもう少し前だとか言っていたな。
 イヤイヤイヤイヤ、鬼の子の体ではないから…
 それにこちらはあちらの様な体の作りをしていない。
 Ωでもないのに受け入れるのも、入れる側も病気とか色々あるんだからな!

 こいつらは本当にあいつ・・・にそっくりだ。

 これから詳しく聞き出して、きっちり叱らないといけない。

 なんでこんなに頭の痛い事ばかりをするのかわからないな。

 でも、こういった日常が楽しかった。
 それが忘れられなかった。
 あいつのゾッとするまでの美貌、その強さ、心の純粋さ、
 始祖達が不可能だと言われていた末に、生まれてきた待望の祝福された子。

 その存在自体が奇跡のようなそんなやつだった。

 あいつを忘れることなんてには無理だった。
 
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