20 / 66
一章 降って湧いた災難
お前は今日から俺の嫁だ、嬉しいなお姫様。
しおりを挟むさて、長い間語ってきたけど、一応これで一つ目の私の受難は終わるかな?
永らく番い、数千年も共にいたから、もっと沢山のありえないエピソードも、
…とても苦しい思いも…本当に沢山あった。
《最初は酷かったシュテンは良い夫になったのか?》
夫とかそういうものよりも、離せない半身になってしまったんだよ。
またグラスが空いたけど、今はガスウォーターにライムでも絞ったのにするよ。
とりあえずのハッピーエンド?かなそれを話そうか。
◇◇◇
何となく、僕らの距離が少し縮み、僕自身も気持ちを自覚した日から一夜明けた。
僕が寝入った後にあいつは、あいつらと同じ様な変な【青】の奴らを纏めて始末し、喰らったそうだ。
おかげで【青】の家は殆どのものがいなくなり、
僕が跡継ぎとされていたが、朱点がどうやっても僕を手離すとは思えず、
【青】として生まれているのに、何故か生来の名を捨て、朱点の元に下り、
結婚の相手のことで喧嘩をし、勘当までされていた姉が戻り、
【青】の家を継ぐ事になった。
他にも数人残っていた父と祖父母や親戚と共に【青】を立て直すらしい。
また、あの変な【青】を纏った朱点の兄姉らを始末したことは、
不思議なことに問題にすらならなかった。
あれらは鬼の掟に反した行動をし、処分待ちのようなものであったらしい。
ただ、時期が悪いということや様々な事情から留め置かれていたそうだ。
それを無視して私刑を実行したことについてだけ、あいつは后陛下に叱られた。
『良いですか?このアホ!お前はいくつになっても、どうしてこんなことすらわからないのですか?!』
『あいつらはゴミだ。お姫様と仲良く暮らせない。始末した。母上どうしたんだ?』
『お前はねぇ…このアホ!!』
叱られているときに不思議そうな顔をしていてそのことでまた怒られていた。
それから僕に会いたいという客人が訪れ、会うことになり、驚いた。
「【青】は良くないものの出口にされているんだよ。ずっとね。」
姉の【名】は緋という。
久しぶりに見た姉には角が無かった!!
「姉様!あ、えぇ?!あ?エエエェ?!角ーッ!!!」
腕を組み顎に手を当て考え込む姉。
「だから父上たちはお前が、あの方のところに嫁ぐのを危ぶんでいたんだけれどね。」
姉は溜息を吐き、続ける。
「お前も、朱点様も純粋なこちらの魂だからね。
『神』から睨まれやすいから、そう考えるのもわかるんだけれど。まぁ、あの人たちもおしおきしておいたから。」
にっこりと笑う姉。その瞳には危険な光が宿っていた。
何を言っているかはわからないが、この姉は耳長族の長と恋に落ち、結婚の約束をして飛び出していた。
そんな姉を、家に戻すことになったことが申し訳なかった。
「お姉ちゃんはお前に『運命』は自分で掴めって教えたよね?朱点様がそうなのかな?」
「恋も愛もまだわからない。でも、離れたくないんだ。」
自覚したこの気持ちは、まだ名前がつけられない。
【青】の跡継ぎとして、僕はそういったことを望むのは難しかった。
家のためにより良いオスと縁を繋ぐもの。
だから考えたことはなかった。
「そっか、存分に悩みなさい。そして振り回してやれば良いんだ。」
「姉様?」
「認め祝福すると言ったが、なんて事を私の可愛い弟にしてくれた…」
「姉様、なんか怖いよ?」
「ん、あぁ…何でもないよ。ところで何か困った事などはないかい?」
こんなふうに姉と再会して心ゆくまで話し込んだ。
◇◇◇
「目障りだったゴミ共も始末した。俺の子も孕んでる。
お前は今日から俺の嫁だ、嬉しいなお姫様。」
「ハイーーーー?!」
いつのまにか勝手にこいつの嫁…妃にされていた。
あんな惨殺現場を見せられ、とんでもない給餌行動をし、
そして、それらを無理矢理食わせる。
いきなり閨に連れ込み、僕の純潔を奪い、勝手に番にしたうえに、一方的に【血の伴侶】にしかけ、孕ませようとする事に
さらなる問題行動が追加された。
そんな恐怖の存在が自分の夫に決定した瞬間だった。
もう、こいつに出会ったことから、僕の受難は始まったとしか思えない。
確かに色々と相性が良くて、一緒にいても退屈しない(しようがないくらいの問題を起こすともいうが)
そして、物凄く僕好みの容姿だ。
…でっかいちんちんもすごく好き。
言葉が足りない、問題行動を起こす、突飛すぎる考えについていけない
…他にもまだまだ言いたいことはある。
僕もなんでこいつが好き?になったかわからない。
しかも最近の異常な空腹は妊娠からくるものらしい。
お前!知ってたなら早く言えよ!!
僕がまだまだ子供だし、いくら『運命』でもこんなすぐに子供が出来るとは思わなかった。
あの時の僕の不安は的中していたのだ。
『運命』と番っているあいつの側近の四童子の一人から、凄いと言われるくらいの確率と期間と
僕の成熟してもまだまだ幼い肉体では、あり得ないくらいの奇跡だった。
流石、奇跡の子。
お前本当に凄いよ…
「先日から后陛下が
『予兆があり頭が痛いです。本当にあのアホはーー!!!
あんな幼子にはまだ少し早いです!
この鬼畜め!!まぁ、鬼ですけれどね……』と仰られてまして、
その後呼び出され、百合様に付くように命じられました。」
そう茨木は僕に言った。
つまり、あいつに彼女を初めて紹介された時には、既に僕は妃に内定していたという事になる。
本当に!お前いい加減にしろよな!!
あんなに散々!僕が悩んで!!苦しんでいたのに!!!
どおりで彼女が僕のことを少し微笑ましそうに見るわけだよ!
「お前はなぁ…
いつも単語を繋げてしゃべるような会話をやめろ!
ちゃんと考えている事を実行する前に話せ!!
衝動的に本能的に行動するな!!!」
続けて
「頭が足りないわけじゃないのに、なんでそう色々な常識が抜けているんだ!
お前についてた教育係とかどうしたんだよ!!」
「喰った。」
「え、食べた…?!冗談だよな?な?な?」
本当に僕はなんで好きなんだろうな?
でっかいちんちんか?
ありえない絶倫か?
駄目だ、体で堕とされかけている…
姉様、ごめんなさい…百合は悪い子になりました。
しかし、これから成長期に入ったばかりの僕が子供を産み、育てなければいけない。
しかもその子がいきなり次期皇に決まるとか、もう…頭が痛すぎるし、責任の重さに目眩がする。
もう、嫌だ。
深く考えると疲れる。
とりあえず…………
「僕は何としても【青】に帰る!絶対に!絶対に!!家に帰るんだ!!
離せ朱点!お前、本当にいい加減にしろよな!!うわぁぁ!助けて姉様!!!」
◇◇◇
あら、ファイゲンバウムどうしたの?
《マリー、君は疲れているから早く帰って寝た方が良い。》
失礼だな、皆が強請るから普段は喋らないことを話したんだ。
そんなに美人で賢くて優秀でモテるのに、なんで恋人すら作らない?とか皆が煩いからだろう?
《うーん、マリーを信じないわけではないが、荒唐無稽過ぎて困った。》
私の純潔はあいつに捧げることにしているんだ!
《………………あー…うん。そっか。》
あいつのでっかいちんちんに慣れて、あいつと寝たことあったら、絶対に他では満足なんてできないぞ!
やつは問題児だったが、そこは素晴らしく優秀だったからな!
《わー始まったよ!誰かマリーの口を塞げ!》
《嘘だろう!この絶世の美女からこの発言は無い…》
《いや、下ネタも出来るから逆に親しみがわいた。》
何故か茨木とか四童子とかには『良く我慢できますね?若はあり得ないくらいの巨根のうえに絶倫で、僕らは泣き叫ぶくらいですよ?』とか何度も言われたが…
それに私は貞操が非常に堅いんだ。
夫以外にも物凄い数のものに迫られたが、絶対に許さなかったんだ。
眷属だって暫くは作らせてもらえなかったからな!
《これはだめだないつもみたいに暴れだすぞ。》
《マリーは酒が入ると物凄く下品になる。》
《びっくりするような発言が出る前に止めよう。》
《もう…手遅れだと思うが?》
なんなんだ?さらに酷く疲れた顔をして。
続きもまだあるんだぞ!
なんだ?
《そろそろお開きにしないと、マリーを女神の様に崇めている者たちの理想が崩れる》
そんなの私の知ったことじゃないな。
私はあれの前では、開発されきったエロいお姫様だからな!
《マリー、君は悪酔いしているから、送っていくよ!》
《それが良い!》
ありがとう助かるよ。
《今日は長い間話させてごめんなさい、色々と楽しかったわ!》
《また今度続きをお願い。》
《マリーも私たちのお仲間だとは思わなかったわ!》
うん?機会があればね。
◇◇◇
仲間内のパーティーから家に帰ってきた。
なんだか最終的に夢とかにされていそうだな。
それか狂人扱いか?
キッチンで水を汲み飲み干す。
あいつは酒とかもザルというか枠みたいな奴だったな。
私はわりと弱かったうえに、良くない酔い方をするらしいから、
茨木からは止められていたが、あいつは好んで飲ませたな。
きっと、その時に色々と変態行為を仕込んだんだろうな。
いつの間にか色々と慣れてて、凄く不思議だったからな。
あいつは三大欲求で行動するから本当に参る。
ん?息子たちが二人で来たな。
相変わらずこの子たちは仲が凄く良い。
……いや、不安になるくらい良すぎる。
魂が惹かれ合うのか離すと激しく嫌がるし、恐ろしいことをしそうだ。
「お袋、あのさ…話があるんだけど。」
私の実子であるランディが声をかけてきた。
「なに?」
「マリーさん。」
同僚から預かっているコリンも声をかけてきた。
「実は俺た「ランディとセックスした。」
ハイーーーーーーーーーーー?!
「おい!コリン!!何言ってんだよ!!!」
「事実だよ?」
慌てて片割れを咎める息子と、不思議な顔をして片割れに話す子。
思わず目眩がしたが、何となく彼らはそういう関係になるかと思っていた。
が、些か早すぎる。
お前たち…まだ十歳になるかならないかくらいだろう?
なんでそんなに性の目覚めが早いんだ?
いや、あいつはそれくらいかもう少し前だとか言っていたな。
イヤイヤイヤイヤ、鬼の子の体ではないから…
それにこちらはあちらの様な体の作りをしていない。
Ωでもないのに受け入れるのも、入れる側も病気とか色々あるんだからな!
こいつらは本当にあいつにそっくりだ。
これから詳しく聞き出して、きっちり叱らないといけない。
なんでこんなに頭の痛い事ばかりをするのかわからないな。
でも、こういった日常が楽しかった。
それが忘れられなかった。
あいつのゾッとするまでの美貌、その強さ、心の純粋さ、
始祖達が不可能だと言われていた末に、生まれてきた待望の祝福された子。
その存在自体が奇跡のようなそんなやつだった。
あいつを忘れることなんて僕には無理だった。
0
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
異世界で性奴隷として生きてイクことになりました♂
あさきりゆうた
BL
【あらすじ】
●第一章
性奴隷を軸とした異世界ファンタジーが開幕した! 世界は性奴隷の不遇な扱いを当たり前とするものだった。
ある時、現世の不運な死により転生した少年は助けた戦士の性奴隷となってしまった!?
●第二章
性奴隷を扱う施設、「性奴隷の家」内で、脱退の意思を示した男が監禁されることになった。その友人に課せられた命令は愛と狂気の入り交じった性的な拷問であった!
●第三章
義賊とよばれる盗賊は性奴隷の家から一人の性奴隷候補の子を誘拐した。その子はダークエルフの男の子だった。その子のあまりにも生意気な態度に、盗賊はハードプレイでお仕置きをすることにした。
※変態度の非常に高い作品となっております
【近況報告】
20.02.21
なんか待たせてしまってすいませんでした(土下座!)
第三章は本編を絡めながら、ショタのダークエルフに変態的なプレイをする作者の欲望を表現するだけのおはなしです。
20.02.22
「大人しくしていれば可愛いな」を投稿します。一応シリアスめな展開になります。
20.02.23
「助けた礼は体で支払ってもらうぞ」を投稿します。引き続きシリアスな展開。そしてR18を書きたい。
20.02.24
試しに出版申請しました。まあ昔やって書籍化せんかったから期待はしていませんが……。
「欲望に任せたら子作りしてしまった」を投稿します。つい鬼畜にR18を書いてしまった。
あと、各章に名称つけました。
ついでに第一章の没シナリオを7話分のボリュームでのっけました。このシナリオ大不評でした(汗)
ディープ層向けな内容です。
20.02.25
「束の間の握手だ」を投稿します。本編が進みます。
20.02.26
「妊夫さんですがHしたくなっちゃいました」を投稿します。
久々に第一章のお話書きました。そして妊婦さんならぬ妊夫さんとのHな話が書きたかったです。
20.02.27
「世話の焼けるガキだ」を投稿します。
話書いたのわしですが、酷い設定持たせてすまんなエルトくん。
20.02.28
「死んだなこりゃあ」を投稿します。展開上、まだR18を書けないですが、書きてえ。やらしいことを!
20.02.29
「性欲のまま暴れて犯るか」を投稿します。R18回です。この二人はどうも男よりの性格しているのでラブシーンの表現苦戦しますね・・・。
20.03.01
「お前と一緒に歩む」を投稿しました。第三章、良い最終回だった…としたいところですが、もっとR18なお話を書く予定です。
後、第四章あたりで物語を終結させようかと考えています。
20.03.05
職場がキツくて鬱になりました。しばらくは執筆できないかもしれないです。またいつか再開できたらなと思っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる