僕の番が怖すぎる。

msg

文字の大きさ
上 下
22 / 66
二章 あいつの存在が災厄

Lily 、Plum と Indigo を叱る。そして、百合が銀の君になるまで。

しおりを挟む
 ご覧頂きありがとうございます。
 マリーとランディとコリンの会話を増やし、それに伴いタイトルも変更しました。
 ───────────


 私の目の前にいる子達にどうお説教をするのか悩んでいた。

 恋をすること。
 愛すること。 

 それを怒るのはおかしい。
 だが、色々とこの世界で生きていくのに大切なことや、注意する事がある。
 
 そこから話をしていくことにした。

「お前たち…」

 神妙にする子どもたち。
 私はゆっくりとだが、強く言葉にをのせて話しだした。

「この国は自由の国だとか言われてはいるけれど、私がランディを一人で育てるのにはそれなりに苦労もあったし、女で研究者をするのもとても大変だった。」

 前世の様に実家には、両親が随分遅くにやっと出来た子である自分しか跡取りがいなかった。
 先祖からの仕事や財を継いで欲しい親と、やりたい事を勉強する自分とで対立や、ランディを産んだことなどで軋轢があった。
 結局、孫可愛さなどで両親は折れたが、身一つでこの国に来て色々な奨学金を貰い女など捨て、がむしゃらに学び、現在の地位に就くまでに相当な労力を要した。

『弱く、儚く、美しい』そんなものでなくても、性別による軽視や 差別と言うのはどこにでもある。

『皆が平等に幸せになるための祝福です。』

 そのように僕たちに呪いを与えた『神』。
 お前の理想なんて実るはずもない。

 あちらとは違い、様々な禁忌tbooがあるこちらでは、あいつの側近の四童子の親のように兄弟姉妹で番い子を成したり、男同士や女同士で番うことも忌避されている。
 最近では色々と認められてきてはいるがまだまだだ。
 そんな彼らを擁護できるのは自分しかいない。

 彼らの眼を見て、さらに強く言葉にをのせて話す。

「【あなた達がそれでも人とは違うことを貫くことができるなら、それをずっと大切にしなさい。】」

 きっと強い意志と愛でもって守っていくだろうが、私とあいつでさえ色々と大変だった。
 周りを振り回しては怒られ、呆れられた。

 そんな私の言葉に目をぱちくりさせて、驚く子どもたち。

 私が激怒して、お前たちを引き離すとでも思ってていたのだろうか?
 そんな狭量な母ではなかった筈だ。

『運命』と出会い離れたくないと嘆くお前たちに、コリンを引き取りここから学校に通えと提案したのも私だよ?

 その後にコリンと学力差があるので一緒の学校に通えないと告げたら、ランディをコリンが猛烈に扱き、二人が同じところに通うことになって、少しばかり寒気を覚えたが…
 
 思えばその頃からお前たちはこうなると思っていた。

「お袋、良いの?」
「マリーさん…」

 怯え、驚きながらも返してくる小さな番たち。

 今更なにを言っているんだろうか?
 私に話すまでそれなりに勇気が必要だっただろう。  
 何も言わず隠していることも可能だった。
 だが、それをせずに私に報告をした。

 大切な子たちが早くもそんなふうにして、巣立ってしまうのは残念だが、私はそれを認め祝ってやることにした。

「お前たち、こちらに来なさい。」

 二人に声をかける。
 やってきた子たちを、まとめて両手で抱きしめ、それから頭を優しく撫でてやる。
 あいつにされて嬉しかったこれも、私の子どもたちにしてあげている。
 息子も小さい頃大好きだった……私の最期の時にもこうして抱きしめて声をかけたな。
 素晴らしいオスに成長したあの子にも、このような愛するものが出来ただろうか?

 そうして幾らかの時間を過ごした。
 僅か数分、何も語らずただただ抱きしめて、撫でた。

 こんなふうに私もまたあいつに慰められたい。
 そんな欲求がまた湧いてきて泣きそうになる。

 漸く気持ちも落ち着いた私は、彼らにもう一つしなければいけない話を切り出した。

「さて、ここからはお説教の時間です。」

 これはこの子達のためにもちゃんと教えておかないといけない。
 ランディは勿論だが、コリンは預かっている大切な子だ。
 健康などを害してしまうわけにはいかない。

「へ?!」
「ふぇ?!」

 幸いにも私は医者だ。
 必要な知識を授けることもできるし、検査などの手配もできる。

「もともと男同士でそういった事をするには色々と準備が必要だし、病気の予防や検査なんかも…………」
 
 あちらと違いこういったことに注意をちゃんとしなくてはいけない。

 再び・・あちらに生まれるその日まで、お前たちはこちらで精一杯生きなければいけないのだから───


 ◇◇◇


 前回のパーティーでの話が、何故かかなり好評を博したらしく、また続きが聞きたいと言われ、話すことになった。

 私の好みの酒やツマミも出すと言うのですることにした。

『運命』と番った子たちを見ていると思い出に浸りたかったのだ。



 ──さてと、皆からなんだか物凄く期待されているんだけれど?
 この間の終わり方だと、精神病患者扱いでもされるかと思っていたけれど?

《作り話としてはかなり面白かった。》
《荒唐無稽過ぎて創作物としか思えない。》
《マリーの『萌』はちょっと独特ね。》
 
 そう……

《マリーの理想の男についてもっと知りたい!》
《夫婦?になった二人はどうしたんだ?》
《リリィは逃げたのか?》
 
 あー…この間続きだと、あいつはなんというかもっと酷くて危険だな。

《シュテンの危険はなんか怖いな。》
《最強のモンスターなんだよな?》
《赤ちゃんはどうなった? 》
《なぁ、マジに男に子ができるのか?!》
《オメガバースってそういうものよ。》
 
 あ、それもあったわね。

 あの子は元気にやっているだろうか?
 重責に負けていないか心配だな……

《マリー!トリップしない!!》

 ん?あぁ…じゃあ、この間の続きからにしようか。

 お酒は…あ、ワイン?私はそれとライスワイン日本酒についてはうるさいよ?

 それじゃあ、語ろうか。

 いきなり番にされてから、子供を授かり、夫婦として暮らし始めた百合ユリが、いかにして『銀の君』とまで呼ばれる様になったかを。
 本当は、それよりもう一つの【名】が有名だが…私は好まない。

《『銀の君』?》
《もう一つの【名】???》

 前に言っただろう?あちらでは強い力を持つ存在の【名】は恐ろしくて呼べなくなる。
 それで通り名みたいなもので呼ばれるようになるんだよ。

 あいつは出会ったときから、私に了承も得ずに有ろう事か勝手にヒト…鬼なんだが、それをやめさせられた……

《えぇ?!》
《ハァ?!》
《シュテンはいつも何かやらかすな。》

 あ、ドン引いてるね?

 自分と同じ・・存在にする為に、鬼族でも禁忌的な事で色々とやっちゃいけない事を、今までに話した中で既にしている。

 出会った直後からだよ!!

 あいつに捕まった事が、もう既に私にとっては災難どころでないものだったんだよ………


 ───────────
 前章でデキ婚した二人がこの章でちゃんと夫婦になり、百合も大人になって行きます。
 宜しければ、またお付き合い頂けると嬉しいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

雑魚兎が貴族に飼われてもいいじゃない!?

べべ
ファンタジー
 チート? ねぇよんなもん。  オレツエェ? んなわけあるか。  こちとら愛らしさMAXぷにぷにボディとたった一本の角が武器ってだけの雑魚モンスター、『ホーンラビット』ですが何か!?  元は色々不運なサラリーマン、今はお貴族様の契約獣、という名のペット! 内政も戦争も関係なく、俺はただ寝て過ごすだけっ。  そりゃあ、少しは暮らし易くするために口も出すけどさ。そこはそれ、人間様に功績も責任も仕事もぶん投げりゃあいいわけで?    そんなこんなで、雑魚モンスターに転生した俺のぐうたらのんびりスローライフ。   もふもふ成分マシマシの、本当のものぐさって奴を見せてやんよぉ……!!   ※本作品では残酷な描写ありとしていますが、展開によって狩りなども発生するためなどです。戦争とうの展開は想定したものではございません。 ※最終章までの投稿が完了しました。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。

君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。 そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。 しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。 ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。 そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。 「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」 別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。しかしこれは反撃の始まりに過ぎなかった。  ※一万文字ぐらいで終わる予定です。

無気力令息は安らかに眠りたい

餅粉
BL
銃に打たれ死んだはずだった私は目を開けると 『シエル・シャーウッド,君との婚約を破棄する』 シエル・シャーウッドになっていた。 どうやら私は公爵家の醜い子らしい…。 バース性?なんだそれ?安眠できるのか? そう,私はただ誰にも邪魔されず安らかに眠りたいだけ………。 前半オメガバーズ要素薄めかもです。

森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

Oj
BL
オメガバースBLです。 受けが妊娠しますので、ご注意下さい。 コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。 ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。 アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。 ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。 菊島 華 (きくしま はな)   受 両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。 森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄  森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。 森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟 森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。 健司と裕司は二卵性の双子です。 オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。 男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。 アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。 その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。 この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。 また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。 独自解釈している設定があります。 第二部にて息子達とその恋人達です。 長男 咲也 (さくや) 次男 伊吹 (いぶき) 三男 開斗 (かいと) 咲也の恋人 朝陽 (あさひ) 伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう) 開斗の恋人 アイ・ミイ 本編完結しています。 今後は短編を更新する予定です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

処理中です...