44 / 131
一章 降って湧いた災難
俺の俺だけのお姫様… 参 *
しおりを挟む「うっ!あぁ…ぁぁああああああああ!!」
(痛い!痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたい…………!!)
心臓のあたりから激痛がして、思わず中にいるこいつのソレを締めてしまう。
(凄く痛くて苦しい………)
(でも、お前は特別だ)
まだ暫くは飲んでいる朱点をギュッと抱きしめ、今度は僕が頭を撫でてその痛みに耐える。
僕はもう、こいつのことを放っておけない。
離れたくないとそう思った。
(このぬくもりを離したくない)
あんなにもやもやして、イライラしていた彼らへの嫉妬の気持ちもなぜか萎んでしまった。
僕を貪りながらも更に注挿を繰り返すこいつに翻弄されるが、まだ暫くは耐える。
どんどん飲まれ、体から力が…命が抜けていく。
痛みが薄らいで妙な浮遊感も出てきた。
「しゅ…てん、そろそ…ろ代、われ…」
僕を貪る朱い鬼に声をかける。
「…すまぬ」
短く僕に一言謝る朱点。
僕の【華】から牙を抜き、その痕をペロペロと舐めて癒やす。
金と銀の色違いの目はずっと僕を見ている。
(始祖様たちから継がれたこいつのこの眼も好きだ)
「百合、これはいかんな美味過ぎる。
俺が死ぬことなどはまずないが、お前も気をつけろ」
そう言って僕に注意した。
「お前と違って、僕は行為中に相手を殺したりはしません!」
心外なので抗議するが、
「俺とてしたいわけではない」
「ゴメン…」
傷ついているかのようなこいつの物言いに思わず謝る。
「でも、お前なら危なくなれば僕の意識を落として、自分で防げるだろ?」
「……………──だ」
何か小さく話したが、珍しく気まずい顔をして目を反らした。
(こいつがこんな表情するのは珍しいな?)
かと思うと、いきなり僕の唇に口づけをしてきた。
「ん、んンーーーーッ!!」
そして、息が苦しくなるまで吸い上げられる。
中に舌まで入れてきて、口内を蹂躙しながら同時に僕の奥にある、子を宿し育てる部屋の戸も撫でている。
(おかしい。いつもならそこにまで入れる勢いで来るのに)
強引な行為よりも、何となく誤魔化されたことの方が気になる。
こいつが 発情するのは初めてだし、僕らは喋るよりも体で語り合う事ばかりだが、勢いのある今なら色々と聞きたいことも聞けるかもしれない。
口づけに奪われた呼吸により息が苦しくなり、バシバシとこいつの胸を叩き止めさせる。
「ぶっ!…はぁ…はぁはぁ…、お、前…なぁっ!代われって言ったのに何してんだよッ!!」
「俺のお姫様が物凄く愛い故ついな、許せ」
「そう!それだよ、なんで初めて会った時から、僕のことを「俺のお姫様」って呼ぶワケ?」
これもずっと気になっていたことだ。
(「お姫様」呼びは本当になんでなんだろう?)
確かに自分はそのように育てられているし、母の元従者の耳長の小間使いや乳母などからそう言われていた。
だがこいつから言われる意味がわからない。
【青】に居た他の者からは「百合様」と呼ばれていた。
(僕が他を知らないだけなんだろうか?)
「昔から母上に俺の『運命』の伴侶はΩで、俺の俺だけのお姫様だから、優しく大事に大事にして可愛がれと、俺を惜しみなく与え、仲良く暮らせと言われてきた」
そこまで話すと本当に愛しそうに僕を見つめてこんなこと言った。
「言われたとおりに百合はΩで俺の俺だけのお姫様だった」
こいつにしては珍しく長く喋ったが、返ってきた良くわからない言葉に戸惑う。
(后陛下は【予知】などの力がある方だから、そんな事をこいつに告げていたのか?)
こんな話をしている間も、僕の中を蹂躙するソレは、いつもより熱く逞しい。
思ってたが、こいつのマザコンは過ぎる気がする。
こんな幼い自分よりも子供みたいなところをなんだか可愛く思えてしまう。
(イヤイヤイヤイヤ!)
全然優しく無い抱き方なのに、心は何故か暖かくなってきた。
(何をヤバいこと考えているんだ僕は!!)
このままずっと抱かれていたいと思う気持ちもあるが…
(こんな関係なんてずっと続くわけなんかない…)
僕の他にもこいつには愛人の茨木に、後宮には大量の女やΩにαも囲っている。
【皇】の角を与えられたが、僕は【青】の跡取りだ。
異母弟はいるが 、あの子は母親が最下層の鬼で、血が薄過ぎその資格はない。
(それにあの子は父様に似て心が弱すぎ、その役目に耐えれないだろう)
僕の背には【青】のみんなの未来がかかっている。
無責任なことは出来ない。
度重なる不祥事で、【青】の薄まった皇の血と力を戻す為だけに生まれてきた、僕の選べる未来はその一つしかない。
例え、今のように【青】の中で疎まれていたとしても、異母弟の方が好まれていても、それに相応しいものが僕以外には存在しない。
こいつに捨てられる事もあり得るし、注意されたように、ヘタしたら他のやつみたいに喰われるかもしれない。
実際に今までに抱かれて喰い殺されたやつは沢山いる。
でも今はこいつとこうしてるのが、悪くないどころかとても良い。
考えれば考えるほど自覚する自分の気持ち。
まだそれを認めるのは怖い………
僕にとって『運命』の絆も番も恋に愛もみんな信じられないものだ。
どれも必要ないと思い、諦めていた。
『運命はお前の手で選び、掴み取るものだよ』
不意に姉の言葉を思い出して、与えられた額の秘印が熱くなった気がした。
(悩んでもきりがない)
今も熱くギラギラとした欲に満ちた目で僕を慾るこいつに声をかける。
「…朱点、代われ。お前のを貰う」
そう言うと僕に覆いかぶさっていた朱点を反対に押し倒した。
最近はこいつの従者たちなどから、妙に耳長の姫君扱いをされ過ぎて、自分でも忘れていたが、僕も鬼だ。
こいつの番にされ【華】を与えられた。
以来、大幅な肉体の強化がされ、力も強くなった。
体も頑丈で傷なんかもすぐに癒える様になり、こんなことも出来る様になった。
朱点の心臓の【青薔薇】にそっと口づけをした。
こいつから薫る僕だけにしかわからない香りに酔いしれる。
自分を縛り付ける色々なものを、しがらみ全てを、何もかもを忘れてしまいたい。
ただ、今はこいつに溺れたい。
「構わぬ。来い」
その言葉を合図にして、美しく咲いているそれをペロリと舐めてから噛み、血を吸い上げていく。
「ぐっ!ぁ…あ!!」
(こいつでも痛いとかあるんだ)
こいつの痛覚や諸々の感覚はぶっ飛びすぎておかしい。
それでも流石に鬼族の急所はキツいみたいで、さっきので果てたようだった。
そんな事を思っていると、朱点は僕の尻を掴み後孔に雄を宛てがい、一気に奥まで突き入れてきた。
(………もう回復していつもみたいになってる。お前、元気だね…)
こいつの血を何度も何度も飲んでいるが、今の行為で得られる味は加減を忘れそうになるほどの美味だ。
それに言われていた、恐ろしいまでの快感の予兆も来ている。
自分から誘っておいてあれだが危険を感じる。
ある程度貰うと牙を抜き、丁寧に痕を舐めてから最後にまた口づけをして離れた。
「ほら、朱点……ここからは色々と忘れて睦み合おう」
「俺のお姫様、お前は本当に愛い。もっとお前を可愛がらせてくれ…」
「この『【青】の美姫』を与えてやるんだから満足させろよ」
「無論だ。お前の期待に応えよう」
そこからはまた朱点の下になり、責めてくるソレを締めつつ自分も善いところを擦る様に動く。
いつの間にかこいつの背に爪を立て、縋りつき、発情期並に恥ずかしい状態になっていった。
この後も僕らはずっと睦み合っていたが、あの様な事が起こったのに騒ぎにもならず、誰も様子を見に来ることも無かった。
昼前からはじまったそれは日が暮れ、灯りなどが必要になり、それを灯すくらいの時間になっても続いた。
いつまで続けたのかは憶えていないが、疲れ果てた僕が寝入ってしまうまで、朱点は僕を慾り続けた。
3
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説
僕は貴方の為に消えたいと願いながらも…
夢見 歩
BL
僕は運命の番に気付いて貰えない。
僕は運命の番と夫婦なのに…
手を伸ばせば届く距離にいるのに…
僕の運命の番は
僕ではないオメガと不倫を続けている。
僕はこれ以上君に嫌われたくなくて
不倫に対して理解のある妻を演じる。
僕の心は随分と前から血を流し続けて
そろそろ限界を迎えそうだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
傾向|嫌われからの愛され(溺愛予定)
━━━━━━━━━━━━━━━
夢見 歩の初のBL執筆作品です。
不憫受けをどうしても書きたくなって
衝動的に書き始めました。
途中で修正などが入る可能性が高いので
完璧な物語を読まれたい方には
あまりオススメできません。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
悪魔の子と呼ばれ家を追い出されたけど、平民になった先で公爵に溺愛される
ゆう
BL
実の母レイシーの死からレヴナントの暮らしは一変した。継母からは悪魔の子と呼ばれ、周りからは優秀な異母弟と比べられる日々。多少やさぐれながらも自分にできることを頑張るレヴナント。しかし弟が嫡男に決まり自分は家を追い出されることになり...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる