26 / 131
一章 降って湧いた災難
朱と緋と茨木 弐
しおりを挟む◆◆◆
俺の隣で寝ている、運命の番を見る。
さっきまで散々、怒り【青】に帰ると訴えていた。
気を失るまで抱いて落としたが、このあと機嫌を取らなければならん。
百合は何が好きだろうか?
こういった事すら初めてだ。
いつもは適当に欲求のまま抱いて、終わらせる。
奴らも…番のいないΩなどは俺を利用する。
絶対に噛まないからだ。
割り切った付き合いをして適当に囲っている奴らも解放するつもりだ。
犯罪者や奴隷に関してはそのまま置いておくしかないが。
百合はかなり潔癖な性質を持つ。
俺も本来は好まぬが、こいつはより煩いだろう。
それに緋の言うとおり今は良くないものが多い。
この皇の神域もだ。
お姫様がなんの心配もなく俺と仲良く暮らすには、そろそろ掃除の必要がある。
父に訴えているが、許しを得られぬなら勝手にやるしかないが…
頬杖をついた反対の手で、可愛らしい寝息をたてている、お姫様の銀の髪を一房取る。
最上級の銀糸の様なこの髪も、真っ白な一切の陽に当たったことのないような肌も、素晴らしく美しい。
「正しく、絶世の」「ため息が出るほどに美しい」などと呼ばれる類の美貌だが、それよりも俺を魅了するものがある。
近寄り難いまでの気高く、貴いその魂。
俺を恐れない態度も好ましい。
発情期を開けてすぐに畏まった態度や物言いをしたが、やめさせた。
こいつは生意気なくらいが可愛い。
他の奴らがそんな事をすれば俺は怒り、始末することもあるかもしれぬ。
(お姫様。お前は特別だ)
掴んだ髪に口づけを落とす。
まだまだお姫様は眠りの中だ。
俺の従者を紹介したかったが次の機会にしよう。
奴らが来た。
「お呼びですか、若」「「「「あまりに長いので困りました」」」」
俺の従者たちが来た。
茨木に四童子たちだ。
俺の腹心たちに新たに仕えるべき主人を紹介してやる。
「こいつを俺の嫁にする」
(俺のお姫様なら当然だろう?)
俺の言葉に戸惑っている従者たちこいつの身の上を伝える。
「【青】の家の出の百合だ。確か…宗家の跡取りだったか?」
こいつにはもう角もある。
だから既にその身分は【皇】のものだ。
もう【青】ではない。
「「「「「は?!」」」」」
珍しく従者たちが揃って驚き、口をぽかんと空けている。
星熊のやつなどは目を白黒させて「ファーーッ?!」などと奇声をあげている。
(お前たち、随分仲が良いな)
四童子は四つ子でよくこんな事があるが、茨木は違うのに珍しい。
「イヤイヤイヤ、若!今は時期が悪いです!」
「この子、藍青と瑠璃様の子ですよね?
【青】の子ですよ?!唯一の!ひとりしかいない跡取りですよ!!
なんてことしてくれたんですかッ!!!」
「あー、角まで与えて…諦めろ星熊」
「番にしちゃってるからもう無理だ」
口々に喋る、四童子。
茨木はぷるぷると震えている。
「あなたは!なんて事を!!友人の弟を手籠めにしたんですか?!」
美しい柳眉を吊り上げ俺に詰め寄る。
(失敬な)
「あれも良いと言った」
緋もこれの価値を見出したなら祝福すると言った。
百合も喜んで受け入れた。それに茨木、お前が怒ることは珍しいな。
俺は運命をその手で掴んで手に入れた。
ずっとずっと大事にする。
毎日愛もたっぷり注いでいる。
俺の言葉に納得出来ないのか、茨木は再度俺に尋ねる。
「は?!そんなはずはありません!
彼女はこの子を溺愛していたはずです!
若様っ聞いておられますか?」
尚も俺に言い募る従者が煩い。
「貴様ら【少し黙れ】」
「あぐぅっ!」「「「「ぐっ…!」」」」
煩いので【呪】を使い、言葉を奪う。
少し静かになった奴らに食事の手配と父母への報告を頼む。
口々に文句を言ってはいたが、皆祝福はしてくれた。
『お妃様にまたご挨拶に参りますが、若…本当にあの食事をお与えになるのですか?
了承は…いえ、出過ぎた真似でした。
お妃様はまだまだ幼いですからお菓子などもお持ち致します』
茨木はそんな事を少し悲しそうな顔をして言い、出ていった。
これから暫くは蜜月を過ごす予定だ。
狩りもするが、あいつらに任せることも多いだろう。
お姫様がどれくらい食べるかはわからんが、こいつもなかなか強い。
十日ほど過ごした発情期でたっぷり俺も与えたが、かなり持っていく大食らいだ。
これからも色々とお前が強くなるために、もっと与える。
俺もあれもたっぷり喰らい、早く大きく、強くなれ。
そして、早く俺のところに堕ちて来い。
俺のお姫様、お前の羽化を俺は待つ。
0
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説
「俺の子を孕め。」とアルファ令息に強制的に妊娠させられ、番にならされました。
天災
BL
「俺の子を孕め」
そう言われて、ご主人様のダニエル・ラーン(α)は執事の僕、アンドレ・ブール(Ω)を強制的に妊娠させ、二人は番となる。
賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。
かるぼん
BL
********************
ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。
監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。
もう一度、やり直せたなら…
そう思いながら遠のく意識に身をゆだね……
気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。
逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。
自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。
孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。
しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ
「君は稀代のたらしだね。」
ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー!
よろしくお願い致します!!
********************
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
悪魔の子と呼ばれ家を追い出されたけど、平民になった先で公爵に溺愛される
ゆう
BL
実の母レイシーの死からレヴナントの暮らしは一変した。継母からは悪魔の子と呼ばれ、周りからは優秀な異母弟と比べられる日々。多少やさぐれながらも自分にできることを頑張るレヴナント。しかし弟が嫡男に決まり自分は家を追い出されることになり...
【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】
海林檎
BL
強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。
誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。
唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。
それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。
そうでなければ
「死んだ方がマシだ····」
そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ····
「これを運命って思ってもいいんじゃない?」
そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。
※すみません長さ的に短編ではなく中編です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる