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34 公国誕生

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 テレンザ王城の大広間、新年の儀に王国中の貴族が集いざわついていたのは、テレンザ国王から重大発表が有ると知らされていたからである。
 貴族達はユーヤの授爵だろうと噂しあっていたが、元クルンガー領はヤマト公国として独立すると発表されて大騒ぎになった。

 騒ぎを無視して、テレンザ国王が告げる。
 
 「テレンザ王国とヤマト公国は対等の同盟を結び、以後内外の問題に手を携えて協力する事になる。ユーヤはクルンガー領を引き継ぐ為に、ユーヤ・タカツカ公爵を名乗る事になる」と告げる。

 紹介された俺は、上等では有るが商人の平服の様な出で立ちで、軽くテレンザ国王と握手をすると会場を去る。
 変わってブラウンがテレンザ国王の隣に立ち、以後ヤマト公国の全権代表となる事が発表されると、貴族達は蜂の巣を突いた様な騒ぎに為った。
 
 彼等には理解出来ない事である。
 小とはいえ一国の主になった瞬間に、他者に全権を委ねて表舞台から去るなど、思いも依らぬ出来事だった。
 ブラウンが詰めていた部屋は最初の頃より遥かに広く部屋数も多く為っていたが、ヤマト公国の公式公邸扱いになった。
 一国の城内に他国の公邸が存在するなど、属国で無い限り有り得ないがテレンザ国王は笑って認めた。
 理由は、離れれば互いの往来が面倒だの一言で説明した。
 
 翌日俺は改めて内政を取り仕切る重職者を集め、ブラウンを一代限りの筆頭侯爵とし他の重職も一代侯爵にすると発表した。
 基本爵位は要職に在る者に対して一代限りで与え、領地は無く年金のみとした。
 現職に在る時は月の給与を
 侯爵  金貨180~200枚
 伯爵  金貨140 ~160枚
 子爵  金貨100~120枚
 男爵  金貨40~70枚
 騎士爵 金貨25枚
 他の重職と認める者には騎士爵か男爵又は子爵位を与え 職を辞した時に半給を生涯年金として支給すると定めた。
 最も半給を受け取れるのは25年以上勤めた者に限るとし、そんなに甘く無いのだと示した。
 俺自身は無給だ。
 後は多大なる貢献をした領民に対し一代限りの名誉爵位を与え半給を支給すると広く告知した。
 
 「あー面倒だ、ブラウンこの程度で良いかな。小さな領だし名誉爵位で勘弁して貰おう。既得権益で無い事を理解して貰わないとね」
 
 「はい、クルンガー公爵の様な輩が出ない様に致します」
 
 「じゃあ後は頼むと言いたいが後一つ、フルンカも人が多くなりすぎて手狭なので街を一つ造りそこを首都に定めたいがどうかな」
 
 「確かに、豊かになり人が増えて手狭ですが場所は何処に」
 
 「フルンカとクースの間の草原地帯にしたい。実はもう調べて大量の地下水が確保出来るのは確実なんだ。最初は城壁と政務庁舎と職員達の公舎に、道路や上下水道だけ造れば良い。移り住みたい者にはそれ相応の負担金を取れば良い。道路は必ず歩道を設け市場を兼ねる広場や樹木を植えた広場も全体に配置しろ。建物は全て4階建で屋根裏部屋や通路ドアともゆったりした広さと高さを定めて統一だな」
 
 「資金は如何いたします」
 
 「初期費用は全て出す、後で回収するがな。もう税の徴収を始めても良いだろう」
 
 「はい民も余裕が出てきています。衣服や食事に贅沢をしていますので大丈夫です」
 
 「始めは1割位から始めて2~3割が限度だな、但し高級家具や宝石、上等な衣服には3~4割程度は徴収し、領民の食料品や普段着等は無税で良かろう。少しずつやろう」
 
 頷くブラウンに、新しい街の基本案を後日渡すと言って下がらせる。
 気楽な生活が中々実現しないが割と充実した日々なので良しとする。
 
 * * * * * * * *

 移転予定地は軽い傾斜はあるものの真っ平らな感じの平原で、フルンカとクースを結ぶ街道から少し逸れた場所になる。。
 馬車で半日走れば十分な距離なのでそれ程不便にはなるまい。
 地下水脈は何層かに別れていて、尚且つ枝分かれした木の様に為っている。
 試しに一本水脈迄穴を開けると、自噴して周囲を水浸しにしたので慌てて塞ぐ事になった。
 街の中心を定め半径3kmの円形都市にする予定、最大半径5km程度迄は拡大余地が有り緩やかな傾斜を経て森になる。
 
 中心地に半径600m程度の敷地を確保し、政務庁舎を置き周辺に防衛騎士団,警備隊,魔法部隊等の訓練場や各種施設を配置予定。
 20~30m幅の堀りを巡らしその外に要人や高位役職者と職員官舎を配置する。
 その外周に幅20m程度の用水路を巡らし警備の重点地に定める。
 
 後は3重の週回路いわゆる環状線を造り、街割はブラウンに任せた。
 条件は縦横100m以上の公園や市場になる広場の間隔は500m以内に1ヶ所は設ける。
 義務教育・魔法訓練・冒険者訓練・職業訓練等各種訓練施設の設置。
 冒険者ギルドの周辺には、下位冒険者の為の低料金な宿泊施設と人の集まる場所には、必ず公衆トイレを義務付けた。
 最後に予備地の確保だ、必ず思わぬ物が必要に成るはずなので、大小幾つかの土地を広場にして遊ばせておけと言っておく。
 
 まあこんなところだろな、中心には土柱を立てているが、半径3kmは目安なので多少大きくなっても気にするなと伝える。
 俺の屋敷は何処にと聞かれて忘れていたのに気づいた、間抜けだねぇ。
 政務庁舎の後ろに周囲から隠れる様に小さな家を建てる事にする。
 外国使節や大使の御接待等真っ平御免なのでその施設から離しておいてとお願いする。
 その為の代理人全権委任なのだが、まだまだ逃げられない、屋敷の周囲は堀と塀で囲む事にしよう。
 街割の図面が出来たら、皆で検討して決定だ。
 
 ルーシュと暫く森に通うが、行きっぱなしって訳には行かないのが辛い処だが、後少しの我慢だ。
 最近のマイブームは果樹採取だ、春夏秋冬それぞれに成る果物はさすが魔法世界の果実で珍味の宝庫だ。
 一般に知られていないか知られていても採取が非常に難しく、市場に出回れば金貨銀貨が舞落ちると称される物だ。
 果実を収穫し木に目印を付けておき、後で冒険者達を連れて来て根本から掘りだし持ち帰りる。
 転移魔法陣って、とーっても便利です。
 有り難うヨークス様、感謝感激今度果物献上しますからね。
 
 栽培は領内の寒村に委託栽培させている、持ちだし厳禁の厳しい掟を定め村の特産品にする為だ。
 村周辺は土魔法使いに土柱を大量に作らせ、村と果樹園を柵で囲い安全を確保しながら農作業が出来る体制を整えている。
 特に果樹園は柵を密着させて、外部から中を伺う事すら出来ない様に徹底する。
 村人達も自分達の豊かな生活の為に、必死で森に行き肥料にする腐葉土や落ち葉を集め樹木の成長を促している。
 
 俺は村人の生活を保障し、果樹園の維持管理と剪定や摘果等を拙い知識を総動員して、試行錯誤を繰り返しながら栽培を拡大していた。
 今では少人数の村にも某かの特産品が有り、収穫物はフルンカで開かれる公爵家主催のオークションで売り、高額の利益を揚げている。
 公爵家主催の定期オークションは2種類有り、エビ蟹魚や野獣を売るものと果実の収穫時に開かれる不定期オークションだ。
 
 もう少しすれば農園主として実利の2~3割程度を徴収し、それ以外の利益を村人達に還元する予定だ。
 聴取した利益は、他の貧しい集落や人々の新たな仕事の開発費に回る。
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