13 / 26
本編
09. my master / Wynn
しおりを挟む
〈ウィン視点〉
「じゃあ、見回り行ってくるね」
「気をつけて行ってらっしゃい」
「2人とも、夜更かししないようにね?」
夜。
墓守として見回りに行く悠祈サンとイヴを私と綾祇クンで見送ると、ふたりだけの夜のお茶会が始まります。
綾祇クンはこの時間を楽しみにしているようで、よく悠祈サンのことや街のことなどを聞きたがります。
特に悠祈サンのことは、こうやって本人のいない時にこっそり聞き出そうとする素直じゃない子です。
「そういえば、ウィンさんと悠祈さんって、いつ知り合ったの?」
綾祇クンがこの屋敷に住むようになって半年以上過ぎました。
最初は命を狙われて大変でしたが、最近は特訓をしたり学校へ通い始めたりして、周りを気にする余裕が出てきたのでしょう。
思いがけない質問に、一瞬、どう答えようか悩みます。
「そうですねぇ…」
口をつけていたカップを静かに下ろし、話せる範囲はどこまでかな?と考えながら、話し始めました。
私、ウィンと、悠祈サンの始まりの話を…。
■■■
私は、由緒ある使用人家の次男でした。
長男はレイルといい、人を上手に采配するとても優秀な人物で、将来は仕えている屋敷の執事になるだろうと言われていました。
私はそんな優秀な兄とは違って、料理や洗濯といった家事全般が得意だったので、将来はそちらの道に進むつもりでした。
私の両親も兄のレイルも、私の希望を嘲笑うことなく応援してくれていて、まもなく成人を迎えたら、仕える屋敷で正式に働くことになっていたのです。
そんなある日。
お屋敷に必要なものを買いに、兄と共に街へ出かけた帰り道でした。
夕暮れに染まった街並みを兄と並んで歩いていたら、突然、目の前に真っ黒なものが降ってきました。
死神です。
このシアン地区では、いまだに死神と聖職者が戦いを続けていて、死神たちは街に住む人や幽霊を狙って狩りをしているのです。
一瞬の後、兄と2人、森に向かって走り出しました。
屋敷に逃げ帰れば、主一家を危険に晒してしまう。咄嗟の判断でした。
私たち兄弟は、そこまで戦闘に長けているわけではありません。
けれど、なんとかこの場を逃げ切り、森にたどり着けたなら…。
私たちが向かっている森は、別名、浄化の森と言われています。
私たちの仕えるクロフォード家が代々守護している清浄な気に満ちた森で、死神たちが手出し出来ない神聖な領域なのです。
あとすこし、あと、もうすこし。
目の前に見えた森の入り口目指して、疲れている足をなんとか動かして走りました。
一足先に兄が入口をくぐり、やっと希望が見えてきた…そう思った瞬間、私の背中に強烈な痛みが走り、気づいたら目の前に地面がありました。
引き裂かれるような、刺すような、よく分からないけれど、とても痛い。
森は目の前なのに、身体がうまく動かないのです。
兄が森の入り口でこちらを振り返り、目を見開いていました。
「ウィン、逃げろ!!!うしろ…!!!」
兄の叫びを聞いて後ろを振り返ると、薄ら笑いを浮かべてカマを振り上げている1人の死神。
どうやら私はこのカマで切りつけられたようです。
今度こそ避けなければ、死神にされてしまいます。
でも、背中の痛みで起き上がれません。動けません。
これでお終いだ…と諦めて目を閉じたとき…
キィィィ…ン!!!
いきなり、金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り響いたのです。
何事かと再び目を開けると、目の前には見覚えのある小さな背中。
艶やかな銀髪を風に靡かせ、死神のカマを剣で受け止めています。
「悠祈、サン…?」
呆然と呼びかけた声に、一瞬だけ視線を寄越してくれたのは、間違いなく、その人でした。
私たち兄弟の仕えるクロフォード家の長男である、悠祈サン。
まもなく14歳になり、学校へ通い始めるのだと言っていました。
将来は私たち兄弟の主となる人物です。
代々続く教会を継いで、神父として彷徨える子や人々を癒し、守る人になるはず。
それなのに、教会で神父になるべき人が、剣を振るい、死神を倒そうとしているのです。
神父という職業では忌み嫌われ邪道とされている、死神浄化をしようとしているのです。
結局、私を襲った死神は、悠祈サンの手で浄化されました。
浄化された死神は、死神として蘇ることができなくなり、輪廻の輪に戻されるのだとか。
私はといえば、悠祈サンが死神と戦っている間に、兄に支えられて森の結界の中へ逃げることが出来ました。
けれど、背中からはかなりの出血をしているようで、目の前の兄の姿さえ霞んできています。
兄に肩を抱かれながら、近づいてくる悠祈サンの姿を目で追いました。
「レイル…ウィンはおそらく助からない…」
「っ…!そんな…っ!!なにかないんですか?!ウィンが…弟が助かる方法は…!!」
私は、悠祈サンの言葉に、悲しいとか悔しいとか言うよりも、納得していました。
悠祈サンに向かって叫びながらほとんど泣いている兄の顔を見上げて、精一杯微笑みました。
もう、仕方ありません。
死神のカマで殺されなかっただけマシです。
あのカマで殺されたら、私は否が応でも死神になってしまうのですから。
死神にならずに死ねるのなら、幸せです。
ついに泣き崩れる兄にゆっくり手を伸ばすと、兄が痛いくらいに手を握り返してくれました。
私の手より温かい、優しい兄の手。
「…ウィンとレイルが望むならば、ひとつだけ、方法があるのだけれど…」
弟である私の命が助かるならば、と兄が縋った悠祈サンからの提案。
それは、これから死を迎え、輪廻の輪に戻されるはず私を、悠祈サンと契約した精霊として甦らせることでした。
魔物や幽霊と契約できるほどの能力は、墓守と呼ばれる聖職者だけがもつものです。
代々神父として教会を守る家柄のクロフォード家では忌み嫌われる、『災厄』とか『悪魔の力』とまで言われるほどの能力。
「ダメですよ、悠祈サン…あなたは、家を継ぐ方です…」
やっとのことで悠祈サンに伝えると、兄も大きく頷いています。
けれど、肝心の悠祈サンは…穏やかに優しく笑っているのです。まるで、今日の夕焼けのように。
「僕にはもう、あの家を継ぐ資格がないんだ。既に使い魔がいるから」
そう言うと、悠祈サンは自分の肩に手を伸ばしました。
そこにはオレンジ色の小さな羽付きトカゲが乗っています。
それが、悠祈サンの使い魔、なのでしょうか。
兄も私もただ唖然としてしまいました。
「僕は教会を継ぐつもりはないよ。ウィンとレイルさえ良ければ、僕はウィンと契約する」
結局、私と兄は、悠祈サンの提案に縋りました。
契約が終わると、悠祈サンは笑って「ウィンが死ななくてよかった」と優しく言ってくれました。
けれど、兄にすら分かるくらい、私には生きた者の気配がなくなっていました。
3人でお屋敷に帰った後のことは…正直なところ、思い出したくもありません。
悠祈サンを罵倒するお館様。
悠祈サンを化け物を見るような目で睨みつける奥様。
その姿は、聖職者でありながら悪魔のようでした。
悠祈サンは間違いなくお二人の子どもで、長男で、クロフォード家を継ぐ人だったのに。
悠祈サンと契約して生者でなくなった私と、『悪魔の力』の持ち主であることがバレた悠祈サンは、お屋敷を追い出されました。
本当は、悠祈サンが14歳になったら神父になるための学校に通うはずでしたが、『悪魔の力』を持つものは入学できない、と断られてしまったのです。
神父になれないものは、クロフォード家の人間ではない。
『悪魔の力』を持った人間が生まれていたなど、クロフォード家の恥だ。
お館様と奥様からの冷たい言葉をただ黙って聞いて、悠祈サンはあのお屋敷を出て行ったのです。
もちろん、悠祈サンと契約をして甦った私も、お屋敷に残ることはできませんでした。
私の両親と兄は、いまだにお館様のところで仕えているようですが、もうほとんど関わっていません。
お屋敷を追われたあとは、とにかくいろいろなことがありました。
悠祈サンと私を保護してくれた方のおかげで、悠祈サンは墓守となり、私は悠祈サンの精霊としてこうして生きることができています。
本当は何度も後悔をしました。
いえ、今でも時折後悔することがあります。
あの時、悠祈サンに縋ってしまって良かったのか。
私があのまま死んで、輪廻の輪に戻されていたら…悠祈サンがお屋敷を追われることはなかったんじゃないか。
反面、あの時、悠祈サンと契約することを選んだ自分を誇る気持ちもあります。
悠祈サンは、今やこのシアンの墓守たちの憧れの的となりました。
あの時、悠祈サンと契約していなかったら、今こうやって活躍する悠祈サンの姿を見ることはできなかったでしょう。
悠祈サンのために食事を作ったり掃除洗濯をして働くこともできなかったでしょう。
悠祈サンは、私にとってたった1人のご主人様なのです。
■■■
「へぇ~。じゃあ、森の近くで襲われてたウィンさんを助けたのが悠祈さんなんだ」
「そうですよ。だから、私、実は幽霊なんです。ふふふ」
悠祈サンの実家のことには触れず、死神に殺されかけたところを助けられ、死にかけていたので契約して甦らせてもらったことを話せば、綾祇クンの目が輝きました。
やはり、この子は、悠祈サンが活躍するお話が好きなようです。
悠祈サンの前では素直な態度を出せないのに、本人の居ないところではこんなに素直だなんて…まだ子どもですもんね。
「ウィンさんにとって、悠祈さんってどんな人なの?」
まるで私の心の中を見ていたかのような質問に、思わずくすっと笑ってしまいました。
そんな私の様子を見て、不思議そうに首を傾げている姿がまた可愛らしいと思う私は、多分、綾祇クンに甘いのでしょうね。
ふぅ、とひとつ息をつくと、ゆっくりと言葉をつむぎました。
「悠祈サンは…強くて、気高くて、麗しくて、格好よくて……誰よりも優しい人ですよ」
そして、私の生涯でたったひとりのご主人様、ですかね。
「じゃあ、見回り行ってくるね」
「気をつけて行ってらっしゃい」
「2人とも、夜更かししないようにね?」
夜。
墓守として見回りに行く悠祈サンとイヴを私と綾祇クンで見送ると、ふたりだけの夜のお茶会が始まります。
綾祇クンはこの時間を楽しみにしているようで、よく悠祈サンのことや街のことなどを聞きたがります。
特に悠祈サンのことは、こうやって本人のいない時にこっそり聞き出そうとする素直じゃない子です。
「そういえば、ウィンさんと悠祈さんって、いつ知り合ったの?」
綾祇クンがこの屋敷に住むようになって半年以上過ぎました。
最初は命を狙われて大変でしたが、最近は特訓をしたり学校へ通い始めたりして、周りを気にする余裕が出てきたのでしょう。
思いがけない質問に、一瞬、どう答えようか悩みます。
「そうですねぇ…」
口をつけていたカップを静かに下ろし、話せる範囲はどこまでかな?と考えながら、話し始めました。
私、ウィンと、悠祈サンの始まりの話を…。
■■■
私は、由緒ある使用人家の次男でした。
長男はレイルといい、人を上手に采配するとても優秀な人物で、将来は仕えている屋敷の執事になるだろうと言われていました。
私はそんな優秀な兄とは違って、料理や洗濯といった家事全般が得意だったので、将来はそちらの道に進むつもりでした。
私の両親も兄のレイルも、私の希望を嘲笑うことなく応援してくれていて、まもなく成人を迎えたら、仕える屋敷で正式に働くことになっていたのです。
そんなある日。
お屋敷に必要なものを買いに、兄と共に街へ出かけた帰り道でした。
夕暮れに染まった街並みを兄と並んで歩いていたら、突然、目の前に真っ黒なものが降ってきました。
死神です。
このシアン地区では、いまだに死神と聖職者が戦いを続けていて、死神たちは街に住む人や幽霊を狙って狩りをしているのです。
一瞬の後、兄と2人、森に向かって走り出しました。
屋敷に逃げ帰れば、主一家を危険に晒してしまう。咄嗟の判断でした。
私たち兄弟は、そこまで戦闘に長けているわけではありません。
けれど、なんとかこの場を逃げ切り、森にたどり着けたなら…。
私たちが向かっている森は、別名、浄化の森と言われています。
私たちの仕えるクロフォード家が代々守護している清浄な気に満ちた森で、死神たちが手出し出来ない神聖な領域なのです。
あとすこし、あと、もうすこし。
目の前に見えた森の入り口目指して、疲れている足をなんとか動かして走りました。
一足先に兄が入口をくぐり、やっと希望が見えてきた…そう思った瞬間、私の背中に強烈な痛みが走り、気づいたら目の前に地面がありました。
引き裂かれるような、刺すような、よく分からないけれど、とても痛い。
森は目の前なのに、身体がうまく動かないのです。
兄が森の入り口でこちらを振り返り、目を見開いていました。
「ウィン、逃げろ!!!うしろ…!!!」
兄の叫びを聞いて後ろを振り返ると、薄ら笑いを浮かべてカマを振り上げている1人の死神。
どうやら私はこのカマで切りつけられたようです。
今度こそ避けなければ、死神にされてしまいます。
でも、背中の痛みで起き上がれません。動けません。
これでお終いだ…と諦めて目を閉じたとき…
キィィィ…ン!!!
いきなり、金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り響いたのです。
何事かと再び目を開けると、目の前には見覚えのある小さな背中。
艶やかな銀髪を風に靡かせ、死神のカマを剣で受け止めています。
「悠祈、サン…?」
呆然と呼びかけた声に、一瞬だけ視線を寄越してくれたのは、間違いなく、その人でした。
私たち兄弟の仕えるクロフォード家の長男である、悠祈サン。
まもなく14歳になり、学校へ通い始めるのだと言っていました。
将来は私たち兄弟の主となる人物です。
代々続く教会を継いで、神父として彷徨える子や人々を癒し、守る人になるはず。
それなのに、教会で神父になるべき人が、剣を振るい、死神を倒そうとしているのです。
神父という職業では忌み嫌われ邪道とされている、死神浄化をしようとしているのです。
結局、私を襲った死神は、悠祈サンの手で浄化されました。
浄化された死神は、死神として蘇ることができなくなり、輪廻の輪に戻されるのだとか。
私はといえば、悠祈サンが死神と戦っている間に、兄に支えられて森の結界の中へ逃げることが出来ました。
けれど、背中からはかなりの出血をしているようで、目の前の兄の姿さえ霞んできています。
兄に肩を抱かれながら、近づいてくる悠祈サンの姿を目で追いました。
「レイル…ウィンはおそらく助からない…」
「っ…!そんな…っ!!なにかないんですか?!ウィンが…弟が助かる方法は…!!」
私は、悠祈サンの言葉に、悲しいとか悔しいとか言うよりも、納得していました。
悠祈サンに向かって叫びながらほとんど泣いている兄の顔を見上げて、精一杯微笑みました。
もう、仕方ありません。
死神のカマで殺されなかっただけマシです。
あのカマで殺されたら、私は否が応でも死神になってしまうのですから。
死神にならずに死ねるのなら、幸せです。
ついに泣き崩れる兄にゆっくり手を伸ばすと、兄が痛いくらいに手を握り返してくれました。
私の手より温かい、優しい兄の手。
「…ウィンとレイルが望むならば、ひとつだけ、方法があるのだけれど…」
弟である私の命が助かるならば、と兄が縋った悠祈サンからの提案。
それは、これから死を迎え、輪廻の輪に戻されるはず私を、悠祈サンと契約した精霊として甦らせることでした。
魔物や幽霊と契約できるほどの能力は、墓守と呼ばれる聖職者だけがもつものです。
代々神父として教会を守る家柄のクロフォード家では忌み嫌われる、『災厄』とか『悪魔の力』とまで言われるほどの能力。
「ダメですよ、悠祈サン…あなたは、家を継ぐ方です…」
やっとのことで悠祈サンに伝えると、兄も大きく頷いています。
けれど、肝心の悠祈サンは…穏やかに優しく笑っているのです。まるで、今日の夕焼けのように。
「僕にはもう、あの家を継ぐ資格がないんだ。既に使い魔がいるから」
そう言うと、悠祈サンは自分の肩に手を伸ばしました。
そこにはオレンジ色の小さな羽付きトカゲが乗っています。
それが、悠祈サンの使い魔、なのでしょうか。
兄も私もただ唖然としてしまいました。
「僕は教会を継ぐつもりはないよ。ウィンとレイルさえ良ければ、僕はウィンと契約する」
結局、私と兄は、悠祈サンの提案に縋りました。
契約が終わると、悠祈サンは笑って「ウィンが死ななくてよかった」と優しく言ってくれました。
けれど、兄にすら分かるくらい、私には生きた者の気配がなくなっていました。
3人でお屋敷に帰った後のことは…正直なところ、思い出したくもありません。
悠祈サンを罵倒するお館様。
悠祈サンを化け物を見るような目で睨みつける奥様。
その姿は、聖職者でありながら悪魔のようでした。
悠祈サンは間違いなくお二人の子どもで、長男で、クロフォード家を継ぐ人だったのに。
悠祈サンと契約して生者でなくなった私と、『悪魔の力』の持ち主であることがバレた悠祈サンは、お屋敷を追い出されました。
本当は、悠祈サンが14歳になったら神父になるための学校に通うはずでしたが、『悪魔の力』を持つものは入学できない、と断られてしまったのです。
神父になれないものは、クロフォード家の人間ではない。
『悪魔の力』を持った人間が生まれていたなど、クロフォード家の恥だ。
お館様と奥様からの冷たい言葉をただ黙って聞いて、悠祈サンはあのお屋敷を出て行ったのです。
もちろん、悠祈サンと契約をして甦った私も、お屋敷に残ることはできませんでした。
私の両親と兄は、いまだにお館様のところで仕えているようですが、もうほとんど関わっていません。
お屋敷を追われたあとは、とにかくいろいろなことがありました。
悠祈サンと私を保護してくれた方のおかげで、悠祈サンは墓守となり、私は悠祈サンの精霊としてこうして生きることができています。
本当は何度も後悔をしました。
いえ、今でも時折後悔することがあります。
あの時、悠祈サンに縋ってしまって良かったのか。
私があのまま死んで、輪廻の輪に戻されていたら…悠祈サンがお屋敷を追われることはなかったんじゃないか。
反面、あの時、悠祈サンと契約することを選んだ自分を誇る気持ちもあります。
悠祈サンは、今やこのシアンの墓守たちの憧れの的となりました。
あの時、悠祈サンと契約していなかったら、今こうやって活躍する悠祈サンの姿を見ることはできなかったでしょう。
悠祈サンのために食事を作ったり掃除洗濯をして働くこともできなかったでしょう。
悠祈サンは、私にとってたった1人のご主人様なのです。
■■■
「へぇ~。じゃあ、森の近くで襲われてたウィンさんを助けたのが悠祈さんなんだ」
「そうですよ。だから、私、実は幽霊なんです。ふふふ」
悠祈サンの実家のことには触れず、死神に殺されかけたところを助けられ、死にかけていたので契約して甦らせてもらったことを話せば、綾祇クンの目が輝きました。
やはり、この子は、悠祈サンが活躍するお話が好きなようです。
悠祈サンの前では素直な態度を出せないのに、本人の居ないところではこんなに素直だなんて…まだ子どもですもんね。
「ウィンさんにとって、悠祈さんってどんな人なの?」
まるで私の心の中を見ていたかのような質問に、思わずくすっと笑ってしまいました。
そんな私の様子を見て、不思議そうに首を傾げている姿がまた可愛らしいと思う私は、多分、綾祇クンに甘いのでしょうね。
ふぅ、とひとつ息をつくと、ゆっくりと言葉をつむぎました。
「悠祈サンは…強くて、気高くて、麗しくて、格好よくて……誰よりも優しい人ですよ」
そして、私の生涯でたったひとりのご主人様、ですかね。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる