695 / 701
第694話 オレが悪い! あたしが悪い!
しおりを挟む
ジェンガが倒れると言う事は、一つの勝負の終わりを意味する。
それは接戦であればある程、納得した結末を迎える事が出来るだろう。しかし、横槍を入れられて倒された場合は全くの別である。
リンカの前髪から外れたヘアピンが飛翔し、ジェンガに直撃。八割が骨になっていたジェンガはその衝撃で簡単に倒れた。
「あたしのヘアピン……」
その言葉はジェンガを倒したのが、あたしです、と自供している様なモノだった。
ジェンガで雌雄を決していたジジィと赤羽さんの殺意と気迫がこちらへ、ドッと押し寄せる。
オレは咄嗟にリンカの前に出て両手を広げて彼女を護った。ぬぉぉぉお!!
「……」
「……」
オレは洪水のような圧を何とか耐えきった。後ろにリンカが居る事による守護者ブーストが無ければ廃人になっていただろう。くはぁ……はぁ……
しかし、これは余波だ。これから勝負を台無しにしたことによる二人からの断罪を捌かなければならない。
ゆらりと立ち上がる二人。
ジジィと赤羽さんから龍と虎のオーラが立ち昇る。本気だ。説得は欠片も入らないだろう。
こちらは正座で足が痺れ、まともに動けない。この状態で日本最高クラスの二人を相手か……関係ねぇ! リンカは絶対に守護る! この命を焼きつくそうとも!
オレはユニコ君のオーラで対抗。ヤバい生物の知名度では龍虎と拮抗するぞオラッ!
「ちょっと、どいてくれ」
「あぅんっ」
と、リンカちゃんがユニコ君オーラまで出した決死のオレを横へ押し退ける。踏ん張れないオレは、変な声を出して横に倒れた。すると、圧迫していた足の神経が解放され痺れが走る。ぐわぁぁぁ!!
「つっ……っと」
リンカも足が痺れている様子だが何とか立ち上がり、目の前に立つ化け物ジィさん二人に視線を向けると、
「ごめんなさい!」
頭を深く下げて謝った。
「二人が真剣に勝負をしている事は見てて解りました。だから……台無しにしてしまって本当にごめんなさい!」
「…………」
「…………」
ジジィと赤羽さんは無言。しかし、龍虎のオーラは引っ込む様子がない。
くっ! 鳳健吾! お前は何やってる!? 立て……立つんだよ! ここで立てなきゃ――
「何のために居るのか解らないよね」
オレは立ち上がって頭を下げるリンカの隣に立つ。足の痺れはまだキツイ。父さん、母さん、ユニコ君、力を貸してくれ!
「じっ様、赤羽さん。リンカちゃんを部屋に招き入れたのはオレなんだ。だから……悪いのはオレです。二人の勝負を邪魔した責任はオレが取ります」
「! 何言ってんだ! あたしのヘアピンが直接の原因だろ!」
「その原因の大元を作ったのはオレの情けないワガママで君を頼った事だよ」
「な! あたしは……頼られて……嬉しかったし……と、とにかく! あたしのせいだ!」
「違う。オレのせい!」
オレが悪い! あたしが悪い!
そんな感じでリンカと互いに罪を引き受けあっていると、
「ふっ」
と、短く笑う声が聞こえた。発したのは赤羽さんである。
「……やれやれ、この歳で己の大人気なさを見直される時が来るとはな」
次にじっ様が己に呆れる様にそう呟いた。
いつの間にか、二人からは龍虎のオーラが消えている。
「おい。決着はまた今度だ」
「今回はその方が良さそうだね」
と、なんだか平和的な雰囲気だ。目の前でリンカと少し言い合っただけなのに何故……?
「それよりもリンカ君、アレはなんだい?」
赤羽さんはリンカが持ってきたお裾分けに視線を向ける。食欲をそそる良い匂いで気がついたご様子。
「あ、お母さんが持っていくようにって」
「良ければ赤羽さんで食べてください! じっ様も!」
腹が満たせれば余裕が生まれる。また龍虎が再燃する可能性があるので、ここで食べ物を腹に入れてもらって完全に落ち着いてもらおう。
オレは身分の高い人物に粗品を献上するように箸と皿を二人へ、ハハァァ……と差し出す。
二人は受け取るとちゃぶ台へ戻って座り、向かい合って食べ始めた。
その間にオレとリンカはジェンガの回収へ。この残骸を見て先程の悲劇を思い出されても困る。ササッとケースに片付けて押し入れに封印。
「旨いな」
「これはリンカ君が作ったのかい?」
料理に関してジジィと赤羽さんが尋ねてくる。
「いえ、お母さんです」
「なるほど……流石だ」
絶品とも言われるセナさんの手料理は本当に替えがない旨さがある。世界を又に駆ける赤羽さんが言うのだ。恐らく、全人類共通の旨味を引き出せているのだろう。
なんか、そう考えるとオレも腹減ってきた。
「ワシは神島譲治だ」
と、ジジィが少し遅い自己紹介。無論、自分に対してだと察したリンカも返す。
「鮫島凛香です」
「鮫島……セナの娘だな?」
「母と知り合いですか?」
「ああ。ワシの事はジョー、もしくはじっ様と呼べ」
ソレ、初対面の人には必ず突きつける選択肢だよね。じっ様よ。
「えっと……じゃあ、ジョーお爺さんで」
リンカの回答に満足な雰囲気なジジィ。
二人は小腹も満たされて完全に殺意と気迫が収まったようだ。
「ケンゴ君」
食べ終わった皿に箸を丁寧に置く赤羽さんさんがオレを見る。
「君は彼の身内だね?」
そして、次に正面に座るジジィへ視線を向けた。
赤羽さんはジジィの正体を知った上で対立してる。そして、この質問はオレとジジィの関係の再確認だろう。
「オレの祖父です」
オレは迷わず肯定した。
「そうか」
「……提案がある」
すると、ジジィが赤羽さんに向けて口を開く。
出会って五秒で殺し会う程に仲の悪い二人の関係。ジジィは一体何を言うつもりだ?
それは接戦であればある程、納得した結末を迎える事が出来るだろう。しかし、横槍を入れられて倒された場合は全くの別である。
リンカの前髪から外れたヘアピンが飛翔し、ジェンガに直撃。八割が骨になっていたジェンガはその衝撃で簡単に倒れた。
「あたしのヘアピン……」
その言葉はジェンガを倒したのが、あたしです、と自供している様なモノだった。
ジェンガで雌雄を決していたジジィと赤羽さんの殺意と気迫がこちらへ、ドッと押し寄せる。
オレは咄嗟にリンカの前に出て両手を広げて彼女を護った。ぬぉぉぉお!!
「……」
「……」
オレは洪水のような圧を何とか耐えきった。後ろにリンカが居る事による守護者ブーストが無ければ廃人になっていただろう。くはぁ……はぁ……
しかし、これは余波だ。これから勝負を台無しにしたことによる二人からの断罪を捌かなければならない。
ゆらりと立ち上がる二人。
ジジィと赤羽さんから龍と虎のオーラが立ち昇る。本気だ。説得は欠片も入らないだろう。
こちらは正座で足が痺れ、まともに動けない。この状態で日本最高クラスの二人を相手か……関係ねぇ! リンカは絶対に守護る! この命を焼きつくそうとも!
オレはユニコ君のオーラで対抗。ヤバい生物の知名度では龍虎と拮抗するぞオラッ!
「ちょっと、どいてくれ」
「あぅんっ」
と、リンカちゃんがユニコ君オーラまで出した決死のオレを横へ押し退ける。踏ん張れないオレは、変な声を出して横に倒れた。すると、圧迫していた足の神経が解放され痺れが走る。ぐわぁぁぁ!!
「つっ……っと」
リンカも足が痺れている様子だが何とか立ち上がり、目の前に立つ化け物ジィさん二人に視線を向けると、
「ごめんなさい!」
頭を深く下げて謝った。
「二人が真剣に勝負をしている事は見てて解りました。だから……台無しにしてしまって本当にごめんなさい!」
「…………」
「…………」
ジジィと赤羽さんは無言。しかし、龍虎のオーラは引っ込む様子がない。
くっ! 鳳健吾! お前は何やってる!? 立て……立つんだよ! ここで立てなきゃ――
「何のために居るのか解らないよね」
オレは立ち上がって頭を下げるリンカの隣に立つ。足の痺れはまだキツイ。父さん、母さん、ユニコ君、力を貸してくれ!
「じっ様、赤羽さん。リンカちゃんを部屋に招き入れたのはオレなんだ。だから……悪いのはオレです。二人の勝負を邪魔した責任はオレが取ります」
「! 何言ってんだ! あたしのヘアピンが直接の原因だろ!」
「その原因の大元を作ったのはオレの情けないワガママで君を頼った事だよ」
「な! あたしは……頼られて……嬉しかったし……と、とにかく! あたしのせいだ!」
「違う。オレのせい!」
オレが悪い! あたしが悪い!
そんな感じでリンカと互いに罪を引き受けあっていると、
「ふっ」
と、短く笑う声が聞こえた。発したのは赤羽さんである。
「……やれやれ、この歳で己の大人気なさを見直される時が来るとはな」
次にじっ様が己に呆れる様にそう呟いた。
いつの間にか、二人からは龍虎のオーラが消えている。
「おい。決着はまた今度だ」
「今回はその方が良さそうだね」
と、なんだか平和的な雰囲気だ。目の前でリンカと少し言い合っただけなのに何故……?
「それよりもリンカ君、アレはなんだい?」
赤羽さんはリンカが持ってきたお裾分けに視線を向ける。食欲をそそる良い匂いで気がついたご様子。
「あ、お母さんが持っていくようにって」
「良ければ赤羽さんで食べてください! じっ様も!」
腹が満たせれば余裕が生まれる。また龍虎が再燃する可能性があるので、ここで食べ物を腹に入れてもらって完全に落ち着いてもらおう。
オレは身分の高い人物に粗品を献上するように箸と皿を二人へ、ハハァァ……と差し出す。
二人は受け取るとちゃぶ台へ戻って座り、向かい合って食べ始めた。
その間にオレとリンカはジェンガの回収へ。この残骸を見て先程の悲劇を思い出されても困る。ササッとケースに片付けて押し入れに封印。
「旨いな」
「これはリンカ君が作ったのかい?」
料理に関してジジィと赤羽さんが尋ねてくる。
「いえ、お母さんです」
「なるほど……流石だ」
絶品とも言われるセナさんの手料理は本当に替えがない旨さがある。世界を又に駆ける赤羽さんが言うのだ。恐らく、全人類共通の旨味を引き出せているのだろう。
なんか、そう考えるとオレも腹減ってきた。
「ワシは神島譲治だ」
と、ジジィが少し遅い自己紹介。無論、自分に対してだと察したリンカも返す。
「鮫島凛香です」
「鮫島……セナの娘だな?」
「母と知り合いですか?」
「ああ。ワシの事はジョー、もしくはじっ様と呼べ」
ソレ、初対面の人には必ず突きつける選択肢だよね。じっ様よ。
「えっと……じゃあ、ジョーお爺さんで」
リンカの回答に満足な雰囲気なジジィ。
二人は小腹も満たされて完全に殺意と気迫が収まったようだ。
「ケンゴ君」
食べ終わった皿に箸を丁寧に置く赤羽さんさんがオレを見る。
「君は彼の身内だね?」
そして、次に正面に座るジジィへ視線を向けた。
赤羽さんはジジィの正体を知った上で対立してる。そして、この質問はオレとジジィの関係の再確認だろう。
「オレの祖父です」
オレは迷わず肯定した。
「そうか」
「……提案がある」
すると、ジジィが赤羽さんに向けて口を開く。
出会って五秒で殺し会う程に仲の悪い二人の関係。ジジィは一体何を言うつもりだ?
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる