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第678話 ババァになるまで生きる続けてやるわい!

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聖母マリア……」

 ガリアは現れたセナに跪くと十字を切った。

「こんにちは~神父さん~。鮫島瀬奈です~」
「ワタシはガリア・ミケロ・ツファイスと申しマス。神託を頂きたく思いマス」
「神託~? それよりも~サマーちゃんは一緒じゃないんですか~?」
「サマーは――」
「帰ってきたのはミツだけか?」
「――主神マイゴット・ショウコ」

 ビクトリアと言う付属品を引きずりながら現れたショウコに場の光が増し、ガリアは一向に顔を上げられない。

 主神マイゴット聖母マリア
 コレハ……何と言う事ダ……いつの間にかここは聖域サンクチュアリになっていたトハ。やはり、外のモンキーどもはマイゴットとマリアを狙うカス共と言うと事デースネ。

 ガリアはスッと立ち上がると回れ右して扉に手を掛ける。

「あら~?」
「ミツ?」
「外にマイホームを見張るモンキー共が居まシタ。綺麗にしてきマース」

 一人は顔を覚えている。ヤツを捕らえて拷問し、残りの奴らを炙り出した後に一人ずつ潰して――

「止まれ、ガリア」

 その言葉にガリアに稲妻が走った。更に回れ右して声のした方に向き直るとジョージの姿を視界に映す。

師父マスター……」
「ここにはワシが居る。お前が“腕前”を振るう必要は無い」

 そう言いながら片腕を首から吊ったジョージを見てガリアは胸に手を当てて頭を下げる。





「……ナゼ……殺さなイ?」
「お前を殺す理由が無いからだ。ワシは殺戮者じゃない」

 壁に寄りかかり、肩の骨を外されたガリアは戦意を完全に喪失していた。

「ワタシは……裏切ってイタ。『マザー』を……皆ヲ……」
「違う。お前は機を伺っていただけだ」
「もう……何者でも無いのデス……ワタシハ……」
「お前は神父だ」

 ジョージの迷いの無い言葉にガリアは聞き入る。

「子供達に好かれ、ユーリィが愛した、少しばかり正直な人間だ」
「……」
「命は消えない。死んだ後も忘れぬ限り、その者の力になってくれる。それに、ワシらが殺り合って笑うのはサモンだけだ」
「……」
「ガリア、サマーの姿を見たか?」
「サモンの器に興味ハ……」
「ユーリィと同じ色のオッドアイが現れている。遺伝子を組み込まれた証拠だ」
「!」
「そして、ワシの義娘の遺伝子もな。ガリア、ワシらの家族を助けに行くぞ。お前も力を貸せ」

 そうやって差し出されたジョージの手を掴む事に迷いはもう無かった。 





 セナ、ビクトリア、ガリアと言う高身長な面々が集まると玄関は狭かったので、改めて居間へ移動し五人は席に着く。

「元気そうだな」
「師父ハ……それほどのダメージを一体ドコデ?」

 ジョージと向かい合って座るガリアは、片腕を吊る彼の姿を見て信じられないと言った眼を向けた。

「家族を護った。ワシも歳だな」
「ho……」
「ホントにびっくりだよ。ジョーさんが、怪我するってさ。メストレとジョーゴやっても逆に転ばせるのに」

 『ハロウィンズ』でもジョージの類比無き“強さ”は替えが効かない程のモノだった。

「はい、は~い」

 と、セナが手を上げる。

「改めて聞いても良いですか~?」
「なんだ?」
「皆さんは~どういうご関係です~?」

 聞かない方が良いと思って皆の会話をある程度受け流していたセナだったが、ここまでオープンに話すなら聞いても良いと判断した。

「家族だ」

 すると、ジョージは迷い無く告げる。

「血の繋がりはない。だが、ワシらの中にはソレを越えた繋がりが間接的に延びている」
「師父……」
「あはは……なんかちょっと泣きそう」

 ガリアとビクトリアはジョージの偽りの無い言葉に心を打たれる。

「ふむ。では、私は部外者か」
「そんなこと無いよー! ショウコー! ショウコも家族! アタシが、否定は絶対にさせないから!」
「主神・ショウコ。我々は決してアナタをソロにはしナーイ」

 横からガバッと抱き着くビクトリアと、即座にショウコの言葉を否定するガリア。

「愛されてるわね~ショウコちゃん~」
「ん」

 セナに対してVピースを作るショウコは二人の反応を淡々と受け入れていた。

「師父。本日の用件トハ?」
「サマーに会いに来た。だが、タイミングが悪かったようだ」
「そうだねー。今度はこっちから『里』に行こうか?」
「いや、また来る」
「師父……サマーの連絡先ヲ。最近は映像を映したまま通話デキマース」
「ワシの携帯にそんな機能はない。会話とメールしか出来ん」

 と、ジョージはガラ携帯を出そうとするが、

「ん? なに?」
「どうしマシタ?」
「どうやら……家に忘れてきたらしい」

 知らず内にワシも浮かれすぎていたか……とジョージは今後の反省点として改善する事にした。





 約6年前――

「終わったのかのぅ……」
「ああ、終わった。少なくともお前はもう自由だ」

 サマーは爆発の煙が高々と立ち上がる孤島が離れていく様を輸送機から見て呟いた。
 輸送機には、今回の作戦に関わった面々が座り、ジョージ以外は怪我の治療をされている。

「エスペランサ……レッドフェザー……」

 離れていく島に未練は無い。しかし、あの二人の命を犠牲にしてまで、自分があの島を出る価値はあったのかと考えてしまう。

「サマー、名前はどうする?」
「名前……?」
「“サマー”だけでは不便だろう? ミドルネームを決めると良い」
「わしは……」

 ジョージの提案にサマーは少し考えて、その言葉を機内全員が待った。

「ラインホルト」

 そして、全員に宣言するように声を放った。

「わしの名前はサマー・ラインホルトじゃ! この名でババァになるまで生き続けてやるわい!」

 助けてから初めて見せるサマーの笑顔と言葉に皆が賛同する中、ガリアだけは眼を伏せて涙を流す。

“私はユーリィ・ラインホルトです、神父様。よろしくお願いいたします”

「だ、そうだ。危なっかしい。ガリア、お前が護ってやれ」
「YES……」

“もうじき『ジーニアス』の研究は終わるとサモン様が仰られてました。
 ガリア様、生まれつき子を成せない私でも貴方様との子を成せるようになるのです。名前は、もう決めてあります。私の好きな季節を――”

「ワタシがサマーを護りマス……」
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