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第571話 恐るべしじゃな、ブンカサイ……
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文化祭を散策する際は着替えるのが面倒なのでメイド服のままで歩く。流石に猫耳は外すが。文化祭は制服で歩く生徒の方が少なく、ハロウィンの様に色んな服装をしている人が多い。
メイド服はあまり目立たなかったか、別の問題が出た。
「これ……あんまり食べられないね」
「私も盲点だったわ……」
メイド服は胴体にコルセットを着ける形なので何か食べると苦しく感じる。
「なんか……たこ焼きだけでお腹いっぱい」
「あたしも……」
なんだか……胃に物を溜める容量が極端に再現される感じだ。
中世の頃のメイドさんはこう言う過酷な服装を標準としていたのだ。現代社会に生まれ落ちて本当に良かったと思える。
「ヒカリ、食事エリアを離れてちょっと運動エリアに行かない?」
「賛成ー。でも、リンから運動したいって珍しいわね。まさか……ケン兄に献上する身体に余分な肉がっ!?」
「やかましい。残念でしたー。昔から食べても太らないの。知ってるでしょ?」
リンカは元々太る体質ではなかった。その代わりに別の所が膨らんだのだと、ヒカリはソレを凝視する。
「これがDNAの差ってヤツか……栄養の“重さ”は全部こっちに……」
「下から持ち上げるの止めて」
「そう言えばセナさんも運動してる感じは無いのにスタイル良いわよね」
リンカの母親であるセナも運動をする職場でも無ければ休日に身体を動かす趣味をしているワケではない。
なのに、服の上からでもスタイルが良いとわかる程に何年も変わってない様に見える。
「お母さんに関してはあたしが色々と考えて食事を作ってるから。油断するとすぐにお酒飲もうとするし」
「贅沢な悩みな事で」
「ヒカリん家はエイさんがご飯作ってるんでしょ?」
「基本はね。でも、ふらっと家を開ける事が多いからパパが作る事もあるよ。パパも仕事で遅くなる時は西城さんと外食になるか、カレンさんが来てくれる感じ」
ヒカリの家は両親が共働きと言う事もあって、夕飯時に誰も居ない事がある。その時のママさんチームが動き、カレンさんが来てくれるとのこと。
「ママ何するにしても極端だからね……分量を指摘しないと、やたら大盛り出してくるし……」
ヒカリ! 体型を維持しようと考えるお前のプロ意識にはお母さんも頭が上がらないが、やはりその食事は細すぎる! ちょっと運動するとぶっ倒れるぞ! 要望に合わせて用意したのは私だが……鳥の胸肉サラダと玄米と魚じゃエネルギーは生まれない! 今からお母さんが特性大盛りカツ丼を作ってやる! 空腹に打ち勝て! カツなだけに!
「とか言って、平日の朝に二人前のカツ丼を作って娘の腹にねじ込もうとするのよ。後でパパがソレ処理してたけど」
ヒカリは基本的に出された物は全部食べきる事を両親から教わっている。故に好き嫌いは殆んど無いのだが大量に何かを食べる事は特別な日でもない限りは考えていなかった。
「でも、エイさんも全然太らないじゃん。そっちのDNAも優秀なんじゃないの?」
「あー、ママは常に動き回ってるから。思い付いたら即座に行動を起こす人だし、昔はソレにケン兄も巻き込んで、樹海とかごみ処理場とか、廃墟とかに連れていかれたじゃん」
「今思えば……とんでもない事だよね」
当時は普段は見れない場所に行ける事にテンションが上がって特に気にしていなかったが、危険な場所のオンパレードだ。
「そんなこんなな、大人たちのおかげ様で、私はしっかりしないと将来苦労すると早くに実感した女の子になりましたとさ」
「谷高光の物語はとても面白かったです。高評価100点つけるよ」
「何を他人事を……半分はリンとダイキの話でもあるのにさ」
「それもそうか」
ここには居ないもう一人の幼馴染みの事を思いつつ姉妹の様に育ってきた二人は昔話に笑いあった。
「はっ! ダメよ……折角の文化祭なのに! 時間もったいない!」
「じゃあ、運動エリアに?」
「Let's Go!」
良い発音でヒカリは言うとたこ焼きの空容器を近くのごみ袋に捨てる。
そして、運動系の部活が各々の特徴を生かして店を構えている運動エリアへと二人は歩いて行った。
「サマー聞こえる?」
『うむ。聞こえておるぞ。音質はバッチリじゃな!』
「入念に準備をするのは解るけどさ。これって本当に必要ある?」
ビクトリアはイヤホンマイクにてサマーと通信を取りながら学校の廊下を歩いていた。
彼女はショウコの付き人として文化祭にやって来たが、同時に偵察を行う事も指示されていた。
『テツを無防備で送り出すワケには行かんからのぅ』
「無害だと思うけどなぁ」
この場ではビクトリアの褐色とスーツ姿は逆に目立つ。日本では珍しく見られる事も少なくないが、学校と言う閉鎖空間では特に顕著に視線を向けられた。
「見た感じ、殺気とか危険な雰囲気はゼロ――」
と、ビクトリアは階段を上がった所で視界に写った大宮司に気がついた。
大宮司の方はビクトリアに少し驚いたが、軽く会釈して上階へ向かう。
「……危ない雰囲気は無いけど、ヤバい奴はいるね」
その背を見つつボソリと呟く。そして、大宮司もビクトリアを見て同じことを思った。
今のヤツ――
あの女の人――
“強いな”と――
『カツにそこまで言わしめるとは……恐るべしじゃな、ブンカサイ……』
アレで未成年かよ。イグルーといい、女郎花教理といい、ホント日本人ってスペック高いよなぁ。
「すみません。外からのお客様かな? 職員室の場所がわからないんですか?」
二学年のフロアを歩く謎のスーツ外人であるビクトリアを避けていた生徒たち。
その中で一人の女子生徒が声をかけてきた。
「そっか、昨日対面したのはテツだけだったね」
「?」
ビクトリアの反応に対して女子生徒――暮石愛は首を傾げた。
メイド服はあまり目立たなかったか、別の問題が出た。
「これ……あんまり食べられないね」
「私も盲点だったわ……」
メイド服は胴体にコルセットを着ける形なので何か食べると苦しく感じる。
「なんか……たこ焼きだけでお腹いっぱい」
「あたしも……」
なんだか……胃に物を溜める容量が極端に再現される感じだ。
中世の頃のメイドさんはこう言う過酷な服装を標準としていたのだ。現代社会に生まれ落ちて本当に良かったと思える。
「ヒカリ、食事エリアを離れてちょっと運動エリアに行かない?」
「賛成ー。でも、リンから運動したいって珍しいわね。まさか……ケン兄に献上する身体に余分な肉がっ!?」
「やかましい。残念でしたー。昔から食べても太らないの。知ってるでしょ?」
リンカは元々太る体質ではなかった。その代わりに別の所が膨らんだのだと、ヒカリはソレを凝視する。
「これがDNAの差ってヤツか……栄養の“重さ”は全部こっちに……」
「下から持ち上げるの止めて」
「そう言えばセナさんも運動してる感じは無いのにスタイル良いわよね」
リンカの母親であるセナも運動をする職場でも無ければ休日に身体を動かす趣味をしているワケではない。
なのに、服の上からでもスタイルが良いとわかる程に何年も変わってない様に見える。
「お母さんに関してはあたしが色々と考えて食事を作ってるから。油断するとすぐにお酒飲もうとするし」
「贅沢な悩みな事で」
「ヒカリん家はエイさんがご飯作ってるんでしょ?」
「基本はね。でも、ふらっと家を開ける事が多いからパパが作る事もあるよ。パパも仕事で遅くなる時は西城さんと外食になるか、カレンさんが来てくれる感じ」
ヒカリの家は両親が共働きと言う事もあって、夕飯時に誰も居ない事がある。その時のママさんチームが動き、カレンさんが来てくれるとのこと。
「ママ何するにしても極端だからね……分量を指摘しないと、やたら大盛り出してくるし……」
ヒカリ! 体型を維持しようと考えるお前のプロ意識にはお母さんも頭が上がらないが、やはりその食事は細すぎる! ちょっと運動するとぶっ倒れるぞ! 要望に合わせて用意したのは私だが……鳥の胸肉サラダと玄米と魚じゃエネルギーは生まれない! 今からお母さんが特性大盛りカツ丼を作ってやる! 空腹に打ち勝て! カツなだけに!
「とか言って、平日の朝に二人前のカツ丼を作って娘の腹にねじ込もうとするのよ。後でパパがソレ処理してたけど」
ヒカリは基本的に出された物は全部食べきる事を両親から教わっている。故に好き嫌いは殆んど無いのだが大量に何かを食べる事は特別な日でもない限りは考えていなかった。
「でも、エイさんも全然太らないじゃん。そっちのDNAも優秀なんじゃないの?」
「あー、ママは常に動き回ってるから。思い付いたら即座に行動を起こす人だし、昔はソレにケン兄も巻き込んで、樹海とかごみ処理場とか、廃墟とかに連れていかれたじゃん」
「今思えば……とんでもない事だよね」
当時は普段は見れない場所に行ける事にテンションが上がって特に気にしていなかったが、危険な場所のオンパレードだ。
「そんなこんなな、大人たちのおかげ様で、私はしっかりしないと将来苦労すると早くに実感した女の子になりましたとさ」
「谷高光の物語はとても面白かったです。高評価100点つけるよ」
「何を他人事を……半分はリンとダイキの話でもあるのにさ」
「それもそうか」
ここには居ないもう一人の幼馴染みの事を思いつつ姉妹の様に育ってきた二人は昔話に笑いあった。
「はっ! ダメよ……折角の文化祭なのに! 時間もったいない!」
「じゃあ、運動エリアに?」
「Let's Go!」
良い発音でヒカリは言うとたこ焼きの空容器を近くのごみ袋に捨てる。
そして、運動系の部活が各々の特徴を生かして店を構えている運動エリアへと二人は歩いて行った。
「サマー聞こえる?」
『うむ。聞こえておるぞ。音質はバッチリじゃな!』
「入念に準備をするのは解るけどさ。これって本当に必要ある?」
ビクトリアはイヤホンマイクにてサマーと通信を取りながら学校の廊下を歩いていた。
彼女はショウコの付き人として文化祭にやって来たが、同時に偵察を行う事も指示されていた。
『テツを無防備で送り出すワケには行かんからのぅ』
「無害だと思うけどなぁ」
この場ではビクトリアの褐色とスーツ姿は逆に目立つ。日本では珍しく見られる事も少なくないが、学校と言う閉鎖空間では特に顕著に視線を向けられた。
「見た感じ、殺気とか危険な雰囲気はゼロ――」
と、ビクトリアは階段を上がった所で視界に写った大宮司に気がついた。
大宮司の方はビクトリアに少し驚いたが、軽く会釈して上階へ向かう。
「……危ない雰囲気は無いけど、ヤバい奴はいるね」
その背を見つつボソリと呟く。そして、大宮司もビクトリアを見て同じことを思った。
今のヤツ――
あの女の人――
“強いな”と――
『カツにそこまで言わしめるとは……恐るべしじゃな、ブンカサイ……』
アレで未成年かよ。イグルーといい、女郎花教理といい、ホント日本人ってスペック高いよなぁ。
「すみません。外からのお客様かな? 職員室の場所がわからないんですか?」
二学年のフロアを歩く謎のスーツ外人であるビクトリアを避けていた生徒たち。
その中で一人の女子生徒が声をかけてきた。
「そっか、昨日対面したのはテツだけだったね」
「?」
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