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第317話 名が廃れるってモンよ!
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ショウコさんと取り留めの無い話をしつつ、アパートに帰還すると赤羽さんが買い物に行く所と鉢合わせた。
「お帰り」
「なんだが……1ヶ月ぶりに帰ってきた気がします……」
「それだけの苦労に見合った成果は得られたのだろう?」
と、視線を向けられたショウコさんはペコリと頭を下げる。
すると、どこからかジャックがやってくると、ショウコさんの足に擦りよ寄った。ほほぅ、もう媚を売り始めたか、ジャックよ。
「無事で何よりだ」
「赤羽さん。『ハロウィンズ』の幹部だったんですね……」
とんでもない人物のアパートに住んでいたものだ。
「成り行きでね。一線は退いて居るが、名刺は毎年送られくる。今はのんびり、旅を楽しみに生きる老人だよ」
「でも名刺を見せたら、サマーちゃんはびっくりしてましたよ?」
生きてたのか!? と、まるで死に別れしたような反応は相当なドラマがあるに違い無い。
「彼女に関して一躍買っただけだよ。当時は死を偽装しなければ、面倒だったからね」
一体どんな状況だそれは。……むむむ、是非とも聞きたいぞぅ。
「人に話す様な事ではないし自慢する様な事でもない。気になるのなら、君の祖父に聞くと良い」
「え? 赤羽さんってジジ――祖父と知り合いだったんですか!?」
「サマーの一件で鉢合わせてね。互いに敵と勘違いして殺りあったが、二度と戦り合いたくはない相手だった」
君がアパートに入った後の話だ。と、オレがこのアパートに来た事は全くの偶然だったと赤羽さんは言った。
「マジですか……」
熊吉でさえ、ほぼ一人で仕留めかけたジジィから生還するとは。赤羽さんも相当な実力者か!
「後々知ったのだが相当な大物だね。あれで全盛期を過ぎているとは、当時は凄まじかったのだろう」
そりゃ、今でも国が媚を売るほどに警戒されてる一番やべージジィですから。
それにしても……オレの知らない所で様々なバックストーリーが起こっている様だ。
こりゃ、帰省したらジジィに聞かないといけないな。
「ケンゴさん。君の家族は何者だ?」
「黒幕」
ジャックを抱えるショウコさんは頭に“?”を浮かべるが、それで良い。知り過ぎればゴッドアイランドからブーギーマンが殺りにくるので。
部屋に戻り、ようやく一息。オレは財布やら免許証やら、壊れたスマホを持つと再度靴を履く。
「外には出ない様にね」
「演舞の練習に少し出るのは?」
「うーん。オレが居るときじゃ駄目?」
「君には本番を見せたい」
「そこまで気を使わなくてもいいよ?」
「いや……不様な所は見せたくない」
別にそんな事は無いけどなぁ、と思ったが、アパートの敷地内なら大丈夫か。仮面に青竜刀のショウコさんなら大概の人間は何とかなるだろうし。
「じゃあアパートの敷地内でね。通話が繋がったら連絡するからスマホは手元に持ってて」
「わかった」
オレはその返事を聞き、アパートの階段を降りて行った。
とある事務所の電話が鳴った。
「こちらぁ、何でも屋『荒谷』っす!」
電話を取ったのは作業着に2メートル近い体躯をした大男。声もでかく、電話をした相手は思わず受話器を遠ざけた。
『……蓮斗か?』
「おお!? 青野さん? どうしたんですか! ウチにわざわざ用なんて珍しいっすね!」
『少しは声のトーンを落とせ! うるせぇよ!』
「あ、すんません」
荒谷は電話先の相手にペコペコする。
『ったく……。今日はハジメは居ないのか?』
「ハジメのヤツぁ、今日一日出掛けてますよ。アイツに用事で?」
『いや、用事はお前らだ。ハジメがいないなら丁度良い』
「なんすか?」
『ウチの大元からの依頼だ。人手が欲しくてな。手を貸せ』
「マジっすか! あ、いや……ハジメのヤツに、自分が居ないときは依頼を受けるなって言われてんすよ」
お前は後先考えずに行動し過ぎだ。私が居なければ今頃檻の中だぞ? 解っているのか? ん? ん?
誤認逮捕から解放された蓮斗が正座をさせられ、怒りの二番手に座禅のお仕置き棒で頭をコンコンされながら言われたのが、その言葉だった。
『『空の園』の件、こっちの方で大元に話を通してやるぞ? 確か、借金を返してたんだろ?』
「マジっすか! あ、でも……」
『お前もガキじゃねぇんだからよ、忍のハジメ顔色ばっか伺ってんじゃねぇ』
「そうっすけど……」
『数時間ほどお前らを借りるだけだ。バレやしねぇよ。それで、『空の園』の借金を何とかできるんだぞ?』
蓮斗の中で揺れる。ハジメの指示か『空の園』の事か――
「わかりやした! この荒谷蓮斗! 誠心誠意を込めて、協力させていただきやす!」
『追って連絡する』
そう言うと、通話は切れた。
すると、部下三人が声をかけてくる。
「社長、いいんですか? ハジメの姉御に話を通さずに決めちゃって」
「そーそー。前にトラック壊しちゃった時に、滅法怒られたじゃないですか」
「反省文を書かされたの小学校以来でしたよ?」
後ろ向きな部下の言葉に、確かに……、と荒谷も考えるが。
「だー! うるせぇな! 良いんだよ! 『空の園』の事は俺が何とかしなきゃいけねぇんだ。ハジメにばっかり頼ってちゃあ、この荒谷蓮斗の名が廃れるってモンよ!」
もう受けちまったモンはしょうがねぇ! と吹っ切れた。
「お前ら準備しとけ! 電話が来たら即出るぞ!」
と、腕を組んだ蓮斗は三人の部下に号令を出した。
「人手を用意しました。すぐに行動に移せます」
『そうか』
青野はとある政治家の抱える、荒事を担当する取りまとめであった。
「標的はアイツらに拉致らせます。最悪、身代わりにも出来るので」
『任せるぞ。俺は例の場所で待機してる。言っておくが、俺のショウコに傷一つでもついてたらお前らは全員檻の中に行ってもらうからな!』
ブツッと一方的に通話が切れると青野は、チッ、と舌打ちをした。と、横から部下が話しかけてくる。
「本当に良いんですか?」
「仕方ないだろ。クロガネに抱えられてる俺たちに選択肢はない。身代わりも用意は出来たしな」
「荒谷ですよね? 他の債務者じゃなくて、アイツをわざわざ起用するなんて、相当に出来るヤツなんですか?」
「図体ばかりで頭の中はガキだ。けど、その図体には十分な価値があるヤツでな。舵取りの二番手が居ないなら今の状況だと都合が良い」
失敗にしろ成功にしろ、こちらが捕まる事は無いだろう。
青野は蓮斗に連絡し、詳細を伝えてGO指示を出した。
「お帰り」
「なんだが……1ヶ月ぶりに帰ってきた気がします……」
「それだけの苦労に見合った成果は得られたのだろう?」
と、視線を向けられたショウコさんはペコリと頭を下げる。
すると、どこからかジャックがやってくると、ショウコさんの足に擦りよ寄った。ほほぅ、もう媚を売り始めたか、ジャックよ。
「無事で何よりだ」
「赤羽さん。『ハロウィンズ』の幹部だったんですね……」
とんでもない人物のアパートに住んでいたものだ。
「成り行きでね。一線は退いて居るが、名刺は毎年送られくる。今はのんびり、旅を楽しみに生きる老人だよ」
「でも名刺を見せたら、サマーちゃんはびっくりしてましたよ?」
生きてたのか!? と、まるで死に別れしたような反応は相当なドラマがあるに違い無い。
「彼女に関して一躍買っただけだよ。当時は死を偽装しなければ、面倒だったからね」
一体どんな状況だそれは。……むむむ、是非とも聞きたいぞぅ。
「人に話す様な事ではないし自慢する様な事でもない。気になるのなら、君の祖父に聞くと良い」
「え? 赤羽さんってジジ――祖父と知り合いだったんですか!?」
「サマーの一件で鉢合わせてね。互いに敵と勘違いして殺りあったが、二度と戦り合いたくはない相手だった」
君がアパートに入った後の話だ。と、オレがこのアパートに来た事は全くの偶然だったと赤羽さんは言った。
「マジですか……」
熊吉でさえ、ほぼ一人で仕留めかけたジジィから生還するとは。赤羽さんも相当な実力者か!
「後々知ったのだが相当な大物だね。あれで全盛期を過ぎているとは、当時は凄まじかったのだろう」
そりゃ、今でも国が媚を売るほどに警戒されてる一番やべージジィですから。
それにしても……オレの知らない所で様々なバックストーリーが起こっている様だ。
こりゃ、帰省したらジジィに聞かないといけないな。
「ケンゴさん。君の家族は何者だ?」
「黒幕」
ジャックを抱えるショウコさんは頭に“?”を浮かべるが、それで良い。知り過ぎればゴッドアイランドからブーギーマンが殺りにくるので。
部屋に戻り、ようやく一息。オレは財布やら免許証やら、壊れたスマホを持つと再度靴を履く。
「外には出ない様にね」
「演舞の練習に少し出るのは?」
「うーん。オレが居るときじゃ駄目?」
「君には本番を見せたい」
「そこまで気を使わなくてもいいよ?」
「いや……不様な所は見せたくない」
別にそんな事は無いけどなぁ、と思ったが、アパートの敷地内なら大丈夫か。仮面に青竜刀のショウコさんなら大概の人間は何とかなるだろうし。
「じゃあアパートの敷地内でね。通話が繋がったら連絡するからスマホは手元に持ってて」
「わかった」
オレはその返事を聞き、アパートの階段を降りて行った。
とある事務所の電話が鳴った。
「こちらぁ、何でも屋『荒谷』っす!」
電話を取ったのは作業着に2メートル近い体躯をした大男。声もでかく、電話をした相手は思わず受話器を遠ざけた。
『……蓮斗か?』
「おお!? 青野さん? どうしたんですか! ウチにわざわざ用なんて珍しいっすね!」
『少しは声のトーンを落とせ! うるせぇよ!』
「あ、すんません」
荒谷は電話先の相手にペコペコする。
『ったく……。今日はハジメは居ないのか?』
「ハジメのヤツぁ、今日一日出掛けてますよ。アイツに用事で?」
『いや、用事はお前らだ。ハジメがいないなら丁度良い』
「なんすか?」
『ウチの大元からの依頼だ。人手が欲しくてな。手を貸せ』
「マジっすか! あ、いや……ハジメのヤツに、自分が居ないときは依頼を受けるなって言われてんすよ」
お前は後先考えずに行動し過ぎだ。私が居なければ今頃檻の中だぞ? 解っているのか? ん? ん?
誤認逮捕から解放された蓮斗が正座をさせられ、怒りの二番手に座禅のお仕置き棒で頭をコンコンされながら言われたのが、その言葉だった。
『『空の園』の件、こっちの方で大元に話を通してやるぞ? 確か、借金を返してたんだろ?』
「マジっすか! あ、でも……」
『お前もガキじゃねぇんだからよ、忍のハジメ顔色ばっか伺ってんじゃねぇ』
「そうっすけど……」
『数時間ほどお前らを借りるだけだ。バレやしねぇよ。それで、『空の園』の借金を何とかできるんだぞ?』
蓮斗の中で揺れる。ハジメの指示か『空の園』の事か――
「わかりやした! この荒谷蓮斗! 誠心誠意を込めて、協力させていただきやす!」
『追って連絡する』
そう言うと、通話は切れた。
すると、部下三人が声をかけてくる。
「社長、いいんですか? ハジメの姉御に話を通さずに決めちゃって」
「そーそー。前にトラック壊しちゃった時に、滅法怒られたじゃないですか」
「反省文を書かされたの小学校以来でしたよ?」
後ろ向きな部下の言葉に、確かに……、と荒谷も考えるが。
「だー! うるせぇな! 良いんだよ! 『空の園』の事は俺が何とかしなきゃいけねぇんだ。ハジメにばっかり頼ってちゃあ、この荒谷蓮斗の名が廃れるってモンよ!」
もう受けちまったモンはしょうがねぇ! と吹っ切れた。
「お前ら準備しとけ! 電話が来たら即出るぞ!」
と、腕を組んだ蓮斗は三人の部下に号令を出した。
「人手を用意しました。すぐに行動に移せます」
『そうか』
青野はとある政治家の抱える、荒事を担当する取りまとめであった。
「標的はアイツらに拉致らせます。最悪、身代わりにも出来るので」
『任せるぞ。俺は例の場所で待機してる。言っておくが、俺のショウコに傷一つでもついてたらお前らは全員檻の中に行ってもらうからな!』
ブツッと一方的に通話が切れると青野は、チッ、と舌打ちをした。と、横から部下が話しかけてくる。
「本当に良いんですか?」
「仕方ないだろ。クロガネに抱えられてる俺たちに選択肢はない。身代わりも用意は出来たしな」
「荒谷ですよね? 他の債務者じゃなくて、アイツをわざわざ起用するなんて、相当に出来るヤツなんですか?」
「図体ばかりで頭の中はガキだ。けど、その図体には十分な価値があるヤツでな。舵取りの二番手が居ないなら今の状況だと都合が良い」
失敗にしろ成功にしろ、こちらが捕まる事は無いだろう。
青野は蓮斗に連絡し、詳細を伝えてGO指示を出した。
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