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第158話 お前が持っててくれ
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「綺麗なデザインだなぁ。リンカちゃん、これどこで頼んだの?」
オレはリンカがセナさんに贈ったブレスレットを見てその辺りのジュエリーショップには無いデザインであると感じていた。
「前にユニコ君が大暴れした商店街にある雑貨店だよ」
「…………そ、そうなんだ! へ、へぇー!」
含みのある言い方。これバレてるな。あの時、オレが出撃していたことが……
「スイレンの雑貨店?」
「え? そうだけど……」
言い当てるセナさんは、紙袋に記載されている店名をリンカに見せる。
「手広い店なのかな? 雰囲気はどんな感じだった?」
「……魔女の店」
「え?」
「後、億の部屋もあった」
億? ああ、奥の部屋ね。リンカは話しながら、サイトもあるぞ、とスマホでそのページを表示する。
「インテリア店か……結構、値の張るものばかり」
「高かったんじゃない~?」
「……な、なんとかなった!」
セナさんのブレスレットはサイトの商品に載ってない。店に行っての直接注文か。しかも印字までしてくれるとなると数万程度では済まないだろう。
「大切にするわね」
「うん」
セナさんは値段の事を聞かない。リンカが一生懸命考えて贈った気持ちを大切にしたいのだ。
「ところでコレは何かしら?」
紙袋にはもう一つ品物が入っていた。ブレスレットの箱と同じ様にラッピングされた代物。薄くて正方形に近い長方形。
「あたしも分からない」
リンカも心当たりは無いようだ。サプライズ商品かな? 本日の主賓でもあるセナさんに開けてもらう。
出てきたのは冊子である。ここまで出てもリンカは頭に疑問詞を浮かべていた。セナさんが、パラッとページを捲る。
「――ふふ」
笑った。何が載ってるんだろうと、オレとリンカは両脇から覗き込む。そこには――
「なんだ……ってぇ?!」
「はぃ?! な、なんでこれが!」
オレとリンカは各々で衝撃を受ける。ソレは衣装のカタログ。しかし、只のカタログではなく、コスプレ衣装のカタログだ!
浴衣、スーツ、メイド服を着たリンカが写っており、更にバニー――
「見るな!」
「うぎゃぁ!? 眼ぇぇぇ!!?」
オレはリンカに目潰しを食らって悶える。
「お母さん! それ貸して! 燃やすから!」
「あら~リンちゃん楽しそうだわ~。燃やすなんて勿体ない~」
「それは駄目! 絶対だめー!」
「そうは行きませんよ~誕生日プレゼントに入っていたのだから、これもお母さんのです」
「確かに紙袋に入っていたけれども!」
「プレゼントを取り上げるなら、このブレスレットも取り上げちゃうのね。お母さん泣いちゃう。しくしく」
「う……」
「ふふ。変に広めたりしないから。ね」
「むぅぅ……わかった……」
オレが悶えてる間に話は着いた様だ。リンカは、ホントにあのお婆さんは……と恥ずかしそうに悪態をついていた。
「光が戻ったか……」
「ケンゴ君~」
と、セナさんはオレに例のカタログを渡して来る。
「見たいでしょ?」
「え? ま、まぁ――」
リンカは頬を赤らめて、キッ! とセナさんを睨む。
「お母さん。変に広めないって……」
「あら~。ケンゴ君は他人でも無いし、浅い関係じゃないわ~。水着なんかも普通に見せてるのに~、今さらよ~」
「……見るのか?」
今度はオレを睨む。何だろう。全然怖くない。寧ろ、恥じらいも混ざったソレは何処と無く可愛らしい。オレはスッと手をかざした。
「……セナさん。これはセナさんだけの記憶に留めておいてください」
誠に……誠に惜しいけれども! こうまでリンカが見て欲しくないと言うのだ。彼女の意思を無視するのはよくない。
「あら。ふふ。そう。だ、そうよ。残念? リンちゃん」
「……何が?」
オレの選択にリンカは何故か残念そうだ。むむむ……リンカの気持ちが全くわからねえ。答えは何だったんだ?
「じゃあ、お母さんがコスプレしようかしら~。ケンゴ君。この中でどの衣装を着て欲しい~?」
と、カタログを広げてくるセナさん。さっきのオレの決断は全然意味ねぇや! あ、バニースーツエロ――
「どれにする~?」
「……ジロジロ見てねぇでさっさと答えろよ」
リンカの視線が横からオレを滅多刺しにしてくる。痛てて……
「えっと……」
ここは無難にスーツにするかな。セナさんのスーツは良く見かけるし、皆が納得できる結末だろう。
そして、オレはバニースーツを指差す。
「あら~」
「……」
な!? 馬鹿なぁ! オレは確かにスーツを指差したハズ! 身体が勝手にバニースーツを!? 本能が理性を凌駕したと言うのか!? リンカのゴミを見るような眼に冷や汗が滝のように流れやがる。
「変態」
「うごふぉ!?」
その言葉にオレは壁に叩きつけられてダウン。だって男の子だもん……欲望には逆らえないもん……
「うふふ」
セナさんは相変わらず笑っていた。そして、バニースーツをポチッていた。リンカのサイズで。
うろうろ。
セナの誕生日会場である鮫島家のあるアパートの外では一人の男が悩むようにうろついていた。
その手にはショートケーキの入った袋を引っ提げて、アパートに入ろうとしては戸惑い、やっぱり行こうと決意するも階段は上がれない。
「やっぱり……だよなぁ」
彼女の誕生日は大切な人がきちんと祝ってくれる。ずっと二人きりにしておいて、今さら顔を出すのは……やはり違う。
すると、ピロン、とLIKEの通知が入る。それは彼女からだった。
“素敵なプレゼント”
そのメッセージと共に『神ノ島』と言うラベルの缶酒と綺麗なブレスレットが一緒に写った画像が添付されていた。
「……ホントに、お前は良い女だよ」
「でも、リンカちゃん、良くバニー着たよね。何かあったの?」
「……なら、お前も行くか?」
「どこに」
「魔女の店」
「それ……比喩じゃなくて?」
「マジだ」
等と会話をしながら仲良く洗い物をしている二人の背中を見ていたセナは、ピロン、とLIKEの返信にスマホへ視線を移した。
“お前が持っててくれ”
そのメッセージに思わず立ち上がると、扉を開ける。
「お母さん?」
その行動に不思議そうな顔を向けるリンカとケンゴ。外には誰もいない。代わりに扉の前にはショートケーキの入った袋と小さな箱が置かれていた。
「――ふふ。可愛い」
二人のプレゼントに彼が対抗意識を感じたのだと察した。
そして、小さな箱の中にはS.SとN.Sのイニシャルが刻まれた二つの指輪が入っていた。
オレはリンカがセナさんに贈ったブレスレットを見てその辺りのジュエリーショップには無いデザインであると感じていた。
「前にユニコ君が大暴れした商店街にある雑貨店だよ」
「…………そ、そうなんだ! へ、へぇー!」
含みのある言い方。これバレてるな。あの時、オレが出撃していたことが……
「スイレンの雑貨店?」
「え? そうだけど……」
言い当てるセナさんは、紙袋に記載されている店名をリンカに見せる。
「手広い店なのかな? 雰囲気はどんな感じだった?」
「……魔女の店」
「え?」
「後、億の部屋もあった」
億? ああ、奥の部屋ね。リンカは話しながら、サイトもあるぞ、とスマホでそのページを表示する。
「インテリア店か……結構、値の張るものばかり」
「高かったんじゃない~?」
「……な、なんとかなった!」
セナさんのブレスレットはサイトの商品に載ってない。店に行っての直接注文か。しかも印字までしてくれるとなると数万程度では済まないだろう。
「大切にするわね」
「うん」
セナさんは値段の事を聞かない。リンカが一生懸命考えて贈った気持ちを大切にしたいのだ。
「ところでコレは何かしら?」
紙袋にはもう一つ品物が入っていた。ブレスレットの箱と同じ様にラッピングされた代物。薄くて正方形に近い長方形。
「あたしも分からない」
リンカも心当たりは無いようだ。サプライズ商品かな? 本日の主賓でもあるセナさんに開けてもらう。
出てきたのは冊子である。ここまで出てもリンカは頭に疑問詞を浮かべていた。セナさんが、パラッとページを捲る。
「――ふふ」
笑った。何が載ってるんだろうと、オレとリンカは両脇から覗き込む。そこには――
「なんだ……ってぇ?!」
「はぃ?! な、なんでこれが!」
オレとリンカは各々で衝撃を受ける。ソレは衣装のカタログ。しかし、只のカタログではなく、コスプレ衣装のカタログだ!
浴衣、スーツ、メイド服を着たリンカが写っており、更にバニー――
「見るな!」
「うぎゃぁ!? 眼ぇぇぇ!!?」
オレはリンカに目潰しを食らって悶える。
「お母さん! それ貸して! 燃やすから!」
「あら~リンちゃん楽しそうだわ~。燃やすなんて勿体ない~」
「それは駄目! 絶対だめー!」
「そうは行きませんよ~誕生日プレゼントに入っていたのだから、これもお母さんのです」
「確かに紙袋に入っていたけれども!」
「プレゼントを取り上げるなら、このブレスレットも取り上げちゃうのね。お母さん泣いちゃう。しくしく」
「う……」
「ふふ。変に広めたりしないから。ね」
「むぅぅ……わかった……」
オレが悶えてる間に話は着いた様だ。リンカは、ホントにあのお婆さんは……と恥ずかしそうに悪態をついていた。
「光が戻ったか……」
「ケンゴ君~」
と、セナさんはオレに例のカタログを渡して来る。
「見たいでしょ?」
「え? ま、まぁ――」
リンカは頬を赤らめて、キッ! とセナさんを睨む。
「お母さん。変に広めないって……」
「あら~。ケンゴ君は他人でも無いし、浅い関係じゃないわ~。水着なんかも普通に見せてるのに~、今さらよ~」
「……見るのか?」
今度はオレを睨む。何だろう。全然怖くない。寧ろ、恥じらいも混ざったソレは何処と無く可愛らしい。オレはスッと手をかざした。
「……セナさん。これはセナさんだけの記憶に留めておいてください」
誠に……誠に惜しいけれども! こうまでリンカが見て欲しくないと言うのだ。彼女の意思を無視するのはよくない。
「あら。ふふ。そう。だ、そうよ。残念? リンちゃん」
「……何が?」
オレの選択にリンカは何故か残念そうだ。むむむ……リンカの気持ちが全くわからねえ。答えは何だったんだ?
「じゃあ、お母さんがコスプレしようかしら~。ケンゴ君。この中でどの衣装を着て欲しい~?」
と、カタログを広げてくるセナさん。さっきのオレの決断は全然意味ねぇや! あ、バニースーツエロ――
「どれにする~?」
「……ジロジロ見てねぇでさっさと答えろよ」
リンカの視線が横からオレを滅多刺しにしてくる。痛てて……
「えっと……」
ここは無難にスーツにするかな。セナさんのスーツは良く見かけるし、皆が納得できる結末だろう。
そして、オレはバニースーツを指差す。
「あら~」
「……」
な!? 馬鹿なぁ! オレは確かにスーツを指差したハズ! 身体が勝手にバニースーツを!? 本能が理性を凌駕したと言うのか!? リンカのゴミを見るような眼に冷や汗が滝のように流れやがる。
「変態」
「うごふぉ!?」
その言葉にオレは壁に叩きつけられてダウン。だって男の子だもん……欲望には逆らえないもん……
「うふふ」
セナさんは相変わらず笑っていた。そして、バニースーツをポチッていた。リンカのサイズで。
うろうろ。
セナの誕生日会場である鮫島家のあるアパートの外では一人の男が悩むようにうろついていた。
その手にはショートケーキの入った袋を引っ提げて、アパートに入ろうとしては戸惑い、やっぱり行こうと決意するも階段は上がれない。
「やっぱり……だよなぁ」
彼女の誕生日は大切な人がきちんと祝ってくれる。ずっと二人きりにしておいて、今さら顔を出すのは……やはり違う。
すると、ピロン、とLIKEの通知が入る。それは彼女からだった。
“素敵なプレゼント”
そのメッセージと共に『神ノ島』と言うラベルの缶酒と綺麗なブレスレットが一緒に写った画像が添付されていた。
「……ホントに、お前は良い女だよ」
「でも、リンカちゃん、良くバニー着たよね。何かあったの?」
「……なら、お前も行くか?」
「どこに」
「魔女の店」
「それ……比喩じゃなくて?」
「マジだ」
等と会話をしながら仲良く洗い物をしている二人の背中を見ていたセナは、ピロン、とLIKEの返信にスマホへ視線を移した。
“お前が持っててくれ”
そのメッセージに思わず立ち上がると、扉を開ける。
「お母さん?」
その行動に不思議そうな顔を向けるリンカとケンゴ。外には誰もいない。代わりに扉の前にはショートケーキの入った袋と小さな箱が置かれていた。
「――ふふ。可愛い」
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