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第121話 マックスの助言

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 鮫島家でも夕食時を終えたオレとダイヤは洗い物を手伝ってから部屋に戻った。
 皆、明日も仕事や学校なので、夜更かしできるのは週末である明日だけだ。

『なんや~ケンゴ。LINEでSkypeのID送ってきたと思ったら、いきなり文句かいな』
「お前さ、ダイヤに変な知識吹き込むなよ」

 オレはPCでマックスとスカイプで会話をしていた。互いのプライバシーを尊重しWebカメラは切ってある。

『ウチもニッポンには片手で数えるしか行かんさかい。殆んどコミック知識やけどな!』
「……何読んだんだよ」
『コチカメとか、ナルトや!』
「どっちも異次元じゃねぇか」

 しかし、日本を勉強できる漫画なんて考えて見れば殆んど無いか。こち亀はギリだが、両さんがアウトロー寄りなので日本人が誤解されそう。

『ダイヤが前知識が欲しい言うとったからな。何も無いよりはマシやろ』
「そんな事より、アイツのキス魔を抑えろと言っておいてくれ」
『そやったな! アイツキス魔やったな。HAHAHA』
「HAHAHAじゃねぇ。それが原因で被害出たぞ」
『ダイヤきっての願いやったから、チーフが許可したんやが……そっちも楽しそうやな! やっぱニンジャおるんか?』
「居るわけねーだろ」
「ニックス、シャツのサイズスモールヨ」

 その時、ダイヤが風呂から出てきた。下半身はオレの短パンを履いているが、上半身は下着姿。オレは思わず吹き出す。

「ばっ!? お前!? サイズ合ってないなら中から声かけろって!」
「オゥ。いつもシスターズばかりだカラ油断してたネ」
「今はオレだけだろうが!」

 記憶のセーブ機能が壊れてんのかコイツ。オレは通販でサイズを間違えて頼んだ大きめのTシャツを投げて渡す。胸の部分に『九時の方向に敵影!』と書かれた面白Tシャツである。

「オレも風呂入るわ」

 着替えを持って脱衣所に行くと何故かダイヤがついて来る。

「何? 何なの?」
「オ背中、オ流しシマス!」

 マックスのヤツ……こんな所にも仕込んでやがったっ!

「オレは一人で大丈夫だから。今、スカイプでマックスと繋がってる。シスターズの様子を聞いてみたらどうだ?」
「ソレはイイネ!」

 オレは言葉にダイヤは脱衣所から出て行った。
 どこにでも着いてくる大型犬だな。まったく……好意は解らなくても欲情はするんだよなぁ。
 肉欲に脳が支配されない様に、今のうちにケアしておくか……





『そうか。ええやん。ニッポン楽しそう』
「良い人バカリネ。誰がステイしても問題なくワークできるヨ」

 ダイヤは本社での出来事をマックスに報告する。彼を通して、チーフへと簡易的に話が行くのだ。

『ボスもかなりクセのある人物やからなぁ。近くのヤツらは曲者揃いやろとは思うとった』
「働いてて飽きナイヨ。ベストワークフィールドネ」
『残りたくなったか?』

 マックスの言葉にダイヤは少し言葉を詰まらせる。その様子にマックスは彼女の心境を察した。

『ケンゴに再会して少しハートを持っていかれたか?』
「……ニックスも相変わらずヨ」
『ヤツは変わらんよ。変わるのは周りだ』
「ソウネ」

 何かと騒ぎや問題に関わってくるケンゴは海外支部では潤滑油の用な存在だった。無茶をする事を多々見てきたが、なんやかんや、事を丸く納めるのを彼らは何度も見てきている。

『ラブなんやろ? ライクやのうて』
「……うん」
『なら、ちゃんと伝えな。ヤツの鈍感はダイヤモンドより硬いで』
「でもマックスの助言は全部空回りヨ」
『次は大丈夫やて。例のアレは持って行ったやろ?』
「一応あるケド……」
『ジャパニーズはそれでイチコロや! ダメ元と思ってやってみい』





 そわそわ。リンカは落ち着かない様子で歯を磨いていた。
 海外での彼の生活を話してもらった。
 ダイヤさん達のドタバタを、なんやかんやで彼が解決する用な形が多かった。そりゃ、一緒に暮らしていれば信頼関係も生まれて家族のようになるだろう。しかし、服を貸すほどに距離が近いのは――

「リンちゃん。水、出しっぱなしよ~」
「はっ!?」

 口をゆすぎ水を止める。今夜二人きり……大人の男女が二人きり……美人でスタイルも良いダイヤさんと彼が二人きり……

「ふふ。はい、リンちゃん」

 セナは娘の様子に家の鍵を手渡した。

「……」
「ゴー~」

 えいえいおー、とまだ酔いが抜けきっていないセナは腕を上げる。

「気になるなら行きなさいな。案外何もないかもしれないけど~リンちゃんの気は済むでしょ~?」
「……迷惑だと思う」
「そんな事をないわ~。リンちゃんが行きたいって言ってダメだった事一度も無いでしょ~」
「……お母さん楽しんでる?」
「うん~、うん? うん!」

 はいはい、もう寝ようね~。とリンカはセナを布団へ入れる。するとセナはすぐにスヤァ、と眠った。

「……様子だけ見に行くか」

 リンカは手の平に乗った家の鍵を見る。





 色々とスッキリしたオレは風呂から出ると、頭を拭きながらドライヤーが目に入る。
 そういや、ダイヤにドライヤーの位置教えるの忘れてたな。髪を乾かすの手伝ってやるか。

「おーい、ダイヤ。髪、乾かすの手伝ってや――」

 そして、オレは居間に戻ってソレを見た。

「ア……ニックス! コ、コレは……ネ。うん……」

 ダイヤに猫耳が生えている。まさか……コイツの正体はモンスターキャットだったのか!?

「やっぱり恥ずかしいネ」

 顔を隠すダイヤ。つけ耳なのは解るんだが……どう収集をつけるんだよ、コレ……
 すると、インターホンが鳴った。

「! ワタシが出るヨ!」
「あ! 待て! お前頭のを――」

 いたたまれなくなって逃げるダイヤは来客に扉を開けた。

「こんばんは。何か不便な事は――」

 扉の向こうにいたのはリンカ。うん、彼女しかいないね。この時間にくるのは。そして、ダイヤの猫耳とオレを見て、

「……何やってんだ? お前」

 ゴミを見るような視線をオレに向けてきた。
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