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第70話 はぐれメタル
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人波も、眩しい程に明るい屋台も、香る料理の匂いも全てが祭りの醍醐味である。
ざわざわと各々で祭りを楽しむ者達の一組としてオレらもこの場にいるのだ。
「さて、どうしようか」
オレとリンカはどうやって回ろうか入り口で少々立ち往生していた。
「ほら」
すると、リンカが祭り会場の地図を持ってきた。どこにあったの? と聞くと、入り口近くにある案内所を指差す。
「それと……その番号は?」
「さぁ? 着けとけば良いことがあるからって」
「へー、なんだろ」
リンカの胸より少し上に、番号バッチがつけられていた。番号は220。なんかの抽選でもあるのかな? と今は深く考えても仕方ない。
「それにしても壮観だね」
地図に眼を戻す。
中央公園が広いからか出店の数だけでも五十は越える。前に来た祭りに比べて規模はかなり大きい。
「夏休み最後だからかな」
公園の中央広場では、仮設ステージが設置されており地図にはそれらのプログラムも並んでいた。
「ゲストに人気若手俳優が来るらしいね。佐々木光之助って知ってる?」
「知らない」
「オレも」
あまりドラマやバラエティを見ないオレたちは世間の俳優などの情報には疎い。
「まずは食べ歩き出来るものから行こうか」
一番近くにあるのは……わたアメの出店だぁ!
「……」
「欲しい?」
「別に」
「本当に?」
「しつこい!」
「すみませーん、わたアメ二つ!」
「おい!」
原価の低いわたアメの値段は50円。高いのか安いのか分からないが、ワンコインで二つはお得感がある。
「あいよ! 二つね!」
ねじり鉢巻のオヤジさんが、手際よく棒に盛る様を見ているとあっという間に食べれる雲が出来上がった。
商品を受け取ると何故か50円帰ってくる。
「お嬢ちゃんの分はサービスな! きちんとエスコートしなよ!」
やだ、オヤジさんかっこいい。オレはお礼を言ってリンカに片方を手渡す。
「……ありがと」
なんやかんや言いつつも受け取り、はむはむと、わたアメを食べるリンカ。
昔と変わらない仕草が微笑ましい。
「中央のステージに向かいながら物色しようか」
「そうだな」
プログラムには喜劇もあるようで少しだけ興味があった。
「お面……」
わたアメを食べ終わって棒を近くのゴミ袋に捨てると、お面屋が目についた。
ラインナップは動物や魔法少女やその他有名どころのキャラクターと様々。無論、仮面ラ〇ダーもあり、隣には敵のクモ男の面もある。うわ……超レアじゃん。前に買った一号と並べておけば魔除けになるかな?
「……」
リンカは狐の面を取ると百円払って購入する。
「好きなの? 狐」
「顔を隠す用だから特に意味はない」
「何でまた」
「……知り合いに見られると恥ずかしいんだよ。察しろ」
うぐぅ……やはり、オレと共に歩くことはお父さんと一緒ムーヴなのだろうか……
「……見られて恥ずかしいのは浴衣の方だ。お前じゃない……から」
訂正を入れてくるリンカの様子に、まだまだお兄さんルートは残っているらしい。
「お前は買うなよ」
「え? 何で……」
「逆に目立つだろ」
先に釘を刺されてしまった。口惜しいが……クモ男は見送るしかあるまいっ!
「お、射的だ」
歩いていると、パンッ! と言う短い音にそちらを見ると珍しい出店が眼に映る。
頭に狐の面を斜めに着けたリンカもそちらを見ると、オレらの眼は景品に――
「PS!?」
「5だと?!」
なんと、半導体不足で抽選でしかゲット出来ない品薄商品が置かれている。
オレは前から狙っていてリンカも抽選には協力してくれているが、中々当たらない。
おいおいマジか。祭りで見ていいモンじゃねぇぞ。皆狙いは同じなのか射的店はそれなりに人でごった替えしている。
はぐれメタルを見つけた勇者はこんな気持ちだろうな。
「一発100円か……」
人が多いからか『一回10発まで』と書かれていた。良い値段してやがる。目の前にある今期最大のお宝にオレとリンカは挑戦する事を決めた。
取れたら即帰って遊ぶか、などと言い合いながら祭りの魅力は完全に消し飛ぶ。
「お二人さんはツレかな?」
「え? そうですけど」
店員さんに言われて当然の様に答える。
「悪いが人が多くてね。平等に挑戦させる為に一組で一回って事にしてるが……それでもやるかい?」
ああ、なるほど。寄せエサが強力過ぎるわけか。オレは良いですよ、と言うと、またやるなら並んでくれ、と店員さん。
「にしても良く品薄を……」
「箱だけじゃないぜ。ネットで割高のを買ったのさ。ちなみに元はもう取れてる」
ボロい商売だよなぁホント。
「あたしがやる」
千円を出すリンカ。店員さんは、10発ね、とコルク弾と引き換えてくれた。
むぅ、こんなモノが千円札と等価とは……祭り恐るべし!
「二人で使ってもいいよ。だが遅延行為は注意させてもらうからね」
「はい」
既にいろんな事が起こってるらしい。
空気銃の先端にコルクを嵌め込み、リンカは一度コッキングを引く。それによって銃身内の空気が締まるのだ。
「狙い撃つ」
某、ロボットアニメのパイロットの名台詞はこんな場面でしか言えないだろう。
浴衣少女に狙撃銃。アニメでしか見たことの無いシチュエーションだ。
ざわざわと各々で祭りを楽しむ者達の一組としてオレらもこの場にいるのだ。
「さて、どうしようか」
オレとリンカはどうやって回ろうか入り口で少々立ち往生していた。
「ほら」
すると、リンカが祭り会場の地図を持ってきた。どこにあったの? と聞くと、入り口近くにある案内所を指差す。
「それと……その番号は?」
「さぁ? 着けとけば良いことがあるからって」
「へー、なんだろ」
リンカの胸より少し上に、番号バッチがつけられていた。番号は220。なんかの抽選でもあるのかな? と今は深く考えても仕方ない。
「それにしても壮観だね」
地図に眼を戻す。
中央公園が広いからか出店の数だけでも五十は越える。前に来た祭りに比べて規模はかなり大きい。
「夏休み最後だからかな」
公園の中央広場では、仮設ステージが設置されており地図にはそれらのプログラムも並んでいた。
「ゲストに人気若手俳優が来るらしいね。佐々木光之助って知ってる?」
「知らない」
「オレも」
あまりドラマやバラエティを見ないオレたちは世間の俳優などの情報には疎い。
「まずは食べ歩き出来るものから行こうか」
一番近くにあるのは……わたアメの出店だぁ!
「……」
「欲しい?」
「別に」
「本当に?」
「しつこい!」
「すみませーん、わたアメ二つ!」
「おい!」
原価の低いわたアメの値段は50円。高いのか安いのか分からないが、ワンコインで二つはお得感がある。
「あいよ! 二つね!」
ねじり鉢巻のオヤジさんが、手際よく棒に盛る様を見ているとあっという間に食べれる雲が出来上がった。
商品を受け取ると何故か50円帰ってくる。
「お嬢ちゃんの分はサービスな! きちんとエスコートしなよ!」
やだ、オヤジさんかっこいい。オレはお礼を言ってリンカに片方を手渡す。
「……ありがと」
なんやかんや言いつつも受け取り、はむはむと、わたアメを食べるリンカ。
昔と変わらない仕草が微笑ましい。
「中央のステージに向かいながら物色しようか」
「そうだな」
プログラムには喜劇もあるようで少しだけ興味があった。
「お面……」
わたアメを食べ終わって棒を近くのゴミ袋に捨てると、お面屋が目についた。
ラインナップは動物や魔法少女やその他有名どころのキャラクターと様々。無論、仮面ラ〇ダーもあり、隣には敵のクモ男の面もある。うわ……超レアじゃん。前に買った一号と並べておけば魔除けになるかな?
「……」
リンカは狐の面を取ると百円払って購入する。
「好きなの? 狐」
「顔を隠す用だから特に意味はない」
「何でまた」
「……知り合いに見られると恥ずかしいんだよ。察しろ」
うぐぅ……やはり、オレと共に歩くことはお父さんと一緒ムーヴなのだろうか……
「……見られて恥ずかしいのは浴衣の方だ。お前じゃない……から」
訂正を入れてくるリンカの様子に、まだまだお兄さんルートは残っているらしい。
「お前は買うなよ」
「え? 何で……」
「逆に目立つだろ」
先に釘を刺されてしまった。口惜しいが……クモ男は見送るしかあるまいっ!
「お、射的だ」
歩いていると、パンッ! と言う短い音にそちらを見ると珍しい出店が眼に映る。
頭に狐の面を斜めに着けたリンカもそちらを見ると、オレらの眼は景品に――
「PS!?」
「5だと?!」
なんと、半導体不足で抽選でしかゲット出来ない品薄商品が置かれている。
オレは前から狙っていてリンカも抽選には協力してくれているが、中々当たらない。
おいおいマジか。祭りで見ていいモンじゃねぇぞ。皆狙いは同じなのか射的店はそれなりに人でごった替えしている。
はぐれメタルを見つけた勇者はこんな気持ちだろうな。
「一発100円か……」
人が多いからか『一回10発まで』と書かれていた。良い値段してやがる。目の前にある今期最大のお宝にオレとリンカは挑戦する事を決めた。
取れたら即帰って遊ぶか、などと言い合いながら祭りの魅力は完全に消し飛ぶ。
「お二人さんはツレかな?」
「え? そうですけど」
店員さんに言われて当然の様に答える。
「悪いが人が多くてね。平等に挑戦させる為に一組で一回って事にしてるが……それでもやるかい?」
ああ、なるほど。寄せエサが強力過ぎるわけか。オレは良いですよ、と言うと、またやるなら並んでくれ、と店員さん。
「にしても良く品薄を……」
「箱だけじゃないぜ。ネットで割高のを買ったのさ。ちなみに元はもう取れてる」
ボロい商売だよなぁホント。
「あたしがやる」
千円を出すリンカ。店員さんは、10発ね、とコルク弾と引き換えてくれた。
むぅ、こんなモノが千円札と等価とは……祭り恐るべし!
「二人で使ってもいいよ。だが遅延行為は注意させてもらうからね」
「はい」
既にいろんな事が起こってるらしい。
空気銃の先端にコルクを嵌め込み、リンカは一度コッキングを引く。それによって銃身内の空気が締まるのだ。
「狙い撃つ」
某、ロボットアニメのパイロットの名台詞はこんな場面でしか言えないだろう。
浴衣少女に狙撃銃。アニメでしか見たことの無いシチュエーションだ。
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