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第28話 地方大会準決勝

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 何て言うか、試合はもう無茶苦茶だった。

 初球決め球と言う奇策を問答無用でダイキにバックスクリーンへ運ばれた相手バッテリーのリズムはガタガタで、その後連打を浴び、6得点。

 一回裏。ランナーを二塁へ送られ、ショートへヒット級の当たりが飛ぶが、超反応を見せたダイキのアクロバットキャッチと、トス連携によってゲッツー。その後三振。

 二回表。ツーアウトからのダイキの打席。警戒するバッテリーに対し、ダイキはバントをすると言う奇策で出塁。その後、あっさり盗塁。焦ったバッテリーの甘い球を後続がきっちり捉え、ホームへ帰還。その後再度連打。ダイキに再び打順が回った所で投手交代。ダイキ、二塁打。士気が上がり続ける白亜高校。下がり続ける相手高校はそれでも維持を見せてその後は無得点。この回6得点。

 二回裏。相手の士気は地に落ちているが何とか鼓舞。しかし、端から見てもショートは抜けそうにない。三者凡退。

 三回表。ヒットは出るもののダイキまでは打順も得点も回らず。

 三回裏。ショートを避けたヒット。もはや本能がダイキを避けている様な相手高校の動き。しかし、良い当たりはショートに飛んでしまい・・・・・・、覚醒ダイキによって止められる。得点はゼロ。

 四回表。ダイキの打席から。ボール球を多めの配球で牽制するバッテリーだが、ダイキは数少ないストライク球を狙い打ち、流したバッティングで球をライトの壁に叩きつける。三塁打。その後、後続のヒットで悠々と帰還。その後は三者凡退。1得点。

 四回裏。そろそろ尻に火がついてきた相手高校はせめてコールドは避けようとするが、そこは甲子園常連校。今日のダイキ程ではないにしろ、他の選手も甘くない。三者凡退。

 五回表。ヒットとアウトを繰り返し、ツーアウト、一三塁でダイキの打席。上がる歓声。汗が止まらない相手バッテリー。そして敬遠。しかし、そこは古豪。キッチリと二番以降は連打を決め、五番の主将によるホームランで塁はスッキリした。もう、ぐずぐずに崩れる相手高校。その後、ダイキにまた回りそうになるも、チェンジとなった。8得点。

 五回裏。三者凡退。五回コールドのゲームセット。

 白亜高校21
 相手高校0

 これ地方の準決勝だよな? と言われる蹂躙っぷり。
 そして、記者陣は白亜高校の主将と、MVPのダイキへインタビューを行う。
 お手本通りの返答するダイキ。馴れてるなぁ、と見ていると。

「凄まじい活躍でしたね、音無君。やはり、レギュラー陣で唯一の一年生と言うのはプレッシャーが?」
「無いと言えば嘘になりますが、条件は皆同じです。試合では本来は自分の思ってる六割程しか出せないけど、僕たち白亜高校はそれを八割にするように練習しています」
「なるほど。今日の試合は八割のモノだと?」
「先輩達はそうです。でも僕は今までで最高にコンディションが良かったです」
「それでは、この勝利を言いたい人へ一言」

 と、閉めの言葉を貰おうと記者達はマイクとカメラを向ける。

「やっほー、ヒカリちゃん。おかげで勝てたよー」





「ぶー!」

 カメラ目線で少年のように昔の笑顔でそんなことを言うダイキに、ヒカリちゃんは飲んでいた緑茶を吹いた。

「やっぱり、ヒカリのあれが……」
「ラブパワーやべぇ……」
「実名出すんじゃ無いわよ……」

 試合時の凛々しさと少年のような笑顔のギャップに全国の『ヒカリ』名の女子達はダイキのファンになったらしい。
 肝心の伝えたかった当人は、はぁ……もー、と呆れて少し恥ずかしそうにしていた。





 時間は夕方になり、貴重な夕焼けを背景にした撮影が開始。
 先ほどまではコテージの近くだったが、少し下った所にある小川は程よくオレンジ色の光が良いステージを作り出していた。

「ここよぉん!」

 と言う、西城さんの一声により足首程の水位がある小川での撮影となった。
 衣装は涼しげな薄着よりも、薄いガウンを羽織った様がマッチするモノへと変わる。また、違った雰囲気でも二人の魅力を損なわないコーディネートだ。

「ふむ」

 哲章さんが撮影の様子を見ててくれる様なので、オレは危険な生物が周りに居ないかだけを少し見て回る。

 遠くに他のキャンプも見えた。川辺にテントが一つで、アウトドア道具と小さな火おこしコンロが火をつけており、すぐ近くで川釣りをしている。
 そのキャンパーが上半身裸で釣りをしているのは気になったが、まぁ上流なのでこちらは迷惑にならないだろう。

「きゃっ!」

 と、唐突にヒカリちゃんが転んだ。哲章さんが、靴が濡れるのも構わず川へ入って行く。

「どうしました?」
「たぶん、魚が足の近くを通ったのだろう」

 もー濡れちゃった。と、ヒカリちゃんは衣装が濡れた事に申し訳なさそうに川から出るが西城さんは、気にしなくて良いわぁん! 渇くまでリンカちゃんのターンよぉ! と今度はリンカがサンダルを脱いで入って行く。

「うわ……お尻まで完全に濡れた」
「はい」

 そう言って哲章さんは持って来ていたタオルを渡す。

「転んだようだが、大丈夫かな?」

 すると、上流で川釣りをしていた半裸グラサンのキャンパーが釣竿を肩に担いで心配そうに話しかけてくる。

「あ、いえ。問題はありま……せ――」

 オレはそのガタイの良いキャンパーを見てだんだんと声が消えて行く。

「ん? お、なんだ! 鳳か!」
「く、国尾さん……」

 グラサンをシュッと取ったソレは、あまり会いたくないヒトだった。

「鳳」
「ひっ」

 いつの間にか背後に回り込んだ国尾さんは、帰ってるなら4課にも顔を出せよなっ! とオレのケツを叩く。
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