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第4話 ローキック
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祭りの花形である花火。
その打ち上げが祭り会場のピークである。しかし、今宵は別の形で祭り会場は盛り上りを見せる。
「仮面ライ○ーぁ?」
リンカへ絡んでいたピアス、ロン毛、タトゥーの男達は現れた仮面○イダー(ケンゴ)を見て声を上げて笑う。
「うはは。キチガイかよ!」
「一体いくつだ? テメー」
「恥ずかしくねぇのか!?」
注目も集めて若干恥ずかしい。しかし、リンカの表情が少しだけ安心した様子だったので、このままの設定行く事にした。
「その子から手を離せ! ショッ○ーめ!」
「あああ?!」
沸点の低いピアスの男が少しだけイラついて前に出る。
野次馬はどんどん集まり、スマホなんかで動画を撮ったりする者もちらほら。
「うぜーなアイツ」
「やっちゃえよ、がんちゃん」
「秒殺よろ」
タトゥーとロン毛に言われてピアスの男が前に出る。
場の注目をものともせず、喧嘩慣れしている様子だった。
「フッ」
そんなピアスを見てオレは不適に笑う。
それが、火に油を注いだのかピアスはぶっきらぼうに殴りかかって来た。
「てや!」
オレは単調な拳を潜りながらかわし、ピアスの身体を掬い上げるように肩を使って全身で持ち上げると、勢いをそのままに空中で一回転させて、背中から地面に落とした。
「うぐ?!」
背中を強打し、悲鳴にならない声を上げるピアス。
見事な掬い投げに周りから、おーと言う声が上がる。
「テメェ!」
「よっしゃ! 来い!」
オレは思ったより上手く決まった事に、若干設定を忘れて興奮しているとロン毛がタックルをかましてきた。
それは素人のやる体重任せの一撃ではなく、こちらの腰を掴むように低い。
こいつ! 素人じゃないな!
なんて達人ぶってタックルを受けるオレ。しかし、重心を斜め後ろにしたことで倒れる事はなくロン毛の勢いは停止した。
「は?!」
あっさり倒してマウントを取ると言う勝利の方程式が崩れたロン毛の腰を背中から掴むとそのまま逆さに持ち上げて、パワーボムを決める。
「おご!?」
ケツを天に突き出す様な形でロン毛は停止。壁に立て掛けたモップのような様に少しだけ笑った。
「見たか! アメリカ帰りのラ○ダーサンボを!」
残りはタトゥーだけ。しかし、タトゥーは三人の中で一番、体格が良くどう見ても暴力担当と言った感じだ。
ピアスとロン毛が戦闘員なら、タトゥーは怪人の枠だろう。
どうやってリンカちゃん連れて逃げようかなぁ。つーか誰か通報しろよ。
タトゥーの男は、へっと笑いながらオレを見る。殴り合いなら負けちゃうよ、とポーズを決めながら内心焦っていた。
「いい加減に離せよ!」
そこで正義の一撃が炸裂。なんとリンカちゃんが男の命に膝を入れたのだ! oh……ありゃ痛い。
タトゥーの男はリンカを掴んでいた手を離し、このガキ……と情けなく内股で股間を抑える。
わかるぞ。どんだけ鍛えてもそれは耐えられん。
「お前ら! なにやってんたゴラァ!」
そこでようやく警備の人がやってきた。しかも不良三人よりもイカツイ見た目の方々。間違いなく堅気じゃない。
「わ?!」
オレは迷いなくリンカを米俵の様に抱えてダッシュ。そのまま祭り会場を後にした。
その後、仮面ラ○ダーのお面だけ異常に売り切れたり『地元の祭りで仮面ライ○ーが出現』と言うニュースが地元に流れるのは別のお話。
「ハァ……ハァフ……」
とにかく力の限り走って会場から離れると、お面効果もありオレは酸欠気味に電柱を相棒にしていた。
「なに? 格闘技でもやってんの?」
「ハァ……ハァ……ちょっと待って」
会話をするのもキツイ。すると、お面が外れた。
「お面くらい取れよ」
リンカはそう言ってオレのお面を取ると、少しだけ呼吸が楽になった。
「ふー」
ようやく息が整い、一度大きく息を吐く。
「で? 何かやってんの?」
再度の質問。不良二人を戦闘不能にした動きは素人目にも、まぐれで無いと理解できたのだろう。
「向こうでさ。格闘家の友人がいて、少し習った」
マックスは同僚でコマンドサンボの使い手だった。彼はアマチュアだったが、選手としてはかなり強い部類だったらしい。
「自己防衛程度だけど」
「あっそ」
ケンゴはセンスええやん~。試合出てみんか?
関西弁にハマっていたマックスには悪いがオレは格闘家には向いてない。
咄嗟に自分を守るのは生物の本能だとしても進んで殴り合いの場に出向くのは別の種族なのだ。
オレはその他大勢で良い。あ、獅子堂課長でも紹介しよっかな。
「ごめんな」
「何が?」
「夏祭り、行けなくなっちまって」
流石に祭り会場に戻る気にはなれない。結構撮られてたし、今日は大人しくしておくのが懸命だろう。
すると、花火が上がった。
祭りの始まりと終わりに打ち上がる花火は三年前と何も変わってない。
「おー、やっぱ夏はこれだよな」
風鈴と並ぶ夏の風物詩。アメリカではあまり見かける事の無いソレは、ようやく日本に帰ってきたのだと自覚できた。
「……部屋」
「ん?」
リンカが何か言っているが花火の音で途切れ途切れだった。
「お前の部屋でなんかやるぞ」
表情を下に向けて声を出すリンカの提案にオレも昔に良く遊んだ事を思い出し、
「よし、今日は徹夜でゲームでもすっか!」
と、返すと何故かローキックを貰った。
その打ち上げが祭り会場のピークである。しかし、今宵は別の形で祭り会場は盛り上りを見せる。
「仮面ライ○ーぁ?」
リンカへ絡んでいたピアス、ロン毛、タトゥーの男達は現れた仮面○イダー(ケンゴ)を見て声を上げて笑う。
「うはは。キチガイかよ!」
「一体いくつだ? テメー」
「恥ずかしくねぇのか!?」
注目も集めて若干恥ずかしい。しかし、リンカの表情が少しだけ安心した様子だったので、このままの設定行く事にした。
「その子から手を離せ! ショッ○ーめ!」
「あああ?!」
沸点の低いピアスの男が少しだけイラついて前に出る。
野次馬はどんどん集まり、スマホなんかで動画を撮ったりする者もちらほら。
「うぜーなアイツ」
「やっちゃえよ、がんちゃん」
「秒殺よろ」
タトゥーとロン毛に言われてピアスの男が前に出る。
場の注目をものともせず、喧嘩慣れしている様子だった。
「フッ」
そんなピアスを見てオレは不適に笑う。
それが、火に油を注いだのかピアスはぶっきらぼうに殴りかかって来た。
「てや!」
オレは単調な拳を潜りながらかわし、ピアスの身体を掬い上げるように肩を使って全身で持ち上げると、勢いをそのままに空中で一回転させて、背中から地面に落とした。
「うぐ?!」
背中を強打し、悲鳴にならない声を上げるピアス。
見事な掬い投げに周りから、おーと言う声が上がる。
「テメェ!」
「よっしゃ! 来い!」
オレは思ったより上手く決まった事に、若干設定を忘れて興奮しているとロン毛がタックルをかましてきた。
それは素人のやる体重任せの一撃ではなく、こちらの腰を掴むように低い。
こいつ! 素人じゃないな!
なんて達人ぶってタックルを受けるオレ。しかし、重心を斜め後ろにしたことで倒れる事はなくロン毛の勢いは停止した。
「は?!」
あっさり倒してマウントを取ると言う勝利の方程式が崩れたロン毛の腰を背中から掴むとそのまま逆さに持ち上げて、パワーボムを決める。
「おご!?」
ケツを天に突き出す様な形でロン毛は停止。壁に立て掛けたモップのような様に少しだけ笑った。
「見たか! アメリカ帰りのラ○ダーサンボを!」
残りはタトゥーだけ。しかし、タトゥーは三人の中で一番、体格が良くどう見ても暴力担当と言った感じだ。
ピアスとロン毛が戦闘員なら、タトゥーは怪人の枠だろう。
どうやってリンカちゃん連れて逃げようかなぁ。つーか誰か通報しろよ。
タトゥーの男は、へっと笑いながらオレを見る。殴り合いなら負けちゃうよ、とポーズを決めながら内心焦っていた。
「いい加減に離せよ!」
そこで正義の一撃が炸裂。なんとリンカちゃんが男の命に膝を入れたのだ! oh……ありゃ痛い。
タトゥーの男はリンカを掴んでいた手を離し、このガキ……と情けなく内股で股間を抑える。
わかるぞ。どんだけ鍛えてもそれは耐えられん。
「お前ら! なにやってんたゴラァ!」
そこでようやく警備の人がやってきた。しかも不良三人よりもイカツイ見た目の方々。間違いなく堅気じゃない。
「わ?!」
オレは迷いなくリンカを米俵の様に抱えてダッシュ。そのまま祭り会場を後にした。
その後、仮面ラ○ダーのお面だけ異常に売り切れたり『地元の祭りで仮面ライ○ーが出現』と言うニュースが地元に流れるのは別のお話。
「ハァ……ハァフ……」
とにかく力の限り走って会場から離れると、お面効果もありオレは酸欠気味に電柱を相棒にしていた。
「なに? 格闘技でもやってんの?」
「ハァ……ハァ……ちょっと待って」
会話をするのもキツイ。すると、お面が外れた。
「お面くらい取れよ」
リンカはそう言ってオレのお面を取ると、少しだけ呼吸が楽になった。
「ふー」
ようやく息が整い、一度大きく息を吐く。
「で? 何かやってんの?」
再度の質問。不良二人を戦闘不能にした動きは素人目にも、まぐれで無いと理解できたのだろう。
「向こうでさ。格闘家の友人がいて、少し習った」
マックスは同僚でコマンドサンボの使い手だった。彼はアマチュアだったが、選手としてはかなり強い部類だったらしい。
「自己防衛程度だけど」
「あっそ」
ケンゴはセンスええやん~。試合出てみんか?
関西弁にハマっていたマックスには悪いがオレは格闘家には向いてない。
咄嗟に自分を守るのは生物の本能だとしても進んで殴り合いの場に出向くのは別の種族なのだ。
オレはその他大勢で良い。あ、獅子堂課長でも紹介しよっかな。
「ごめんな」
「何が?」
「夏祭り、行けなくなっちまって」
流石に祭り会場に戻る気にはなれない。結構撮られてたし、今日は大人しくしておくのが懸命だろう。
すると、花火が上がった。
祭りの始まりと終わりに打ち上がる花火は三年前と何も変わってない。
「おー、やっぱ夏はこれだよな」
風鈴と並ぶ夏の風物詩。アメリカではあまり見かける事の無いソレは、ようやく日本に帰ってきたのだと自覚できた。
「……部屋」
「ん?」
リンカが何か言っているが花火の音で途切れ途切れだった。
「お前の部屋でなんかやるぞ」
表情を下に向けて声を出すリンカの提案にオレも昔に良く遊んだ事を思い出し、
「よし、今日は徹夜でゲームでもすっか!」
と、返すと何故かローキックを貰った。
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