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妹の想い

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私には幼い頃から慕っている人がいる。

それは私の兄様。

血の繋がりはない。

だけど仮に私と彼が同じ想いであっても両親はきっとこの恋を許さないだろう。

だって、多分、恐らく、それは家にとって何の利点もないから。

そんなことを思いながら今夜もまた眠れぬ夜を過ごす。

エミリー・バレンシア。

伯爵家の娘。

両親が結婚して数年、懐妊の兆しを見せないお母様とお父様が、伯爵家の存続の為に兄様を迎えた翌々年に生まれたのが私。

兄様を迎えた翌年に幸か不幸か母様は懐妊した。

それでも伯爵家を継ぐのは当然ながら私の想い人で、とても優秀な兄様だ。

ウィリアム・バレンシア。

ウィル兄様はお父様の弟の男爵家から養子にきた、本当なら私の従兄。

闇に溶けるような濃紺の髪に蜂蜜色の瞳、細身なのに逞しい身体。

私は兄様を形容している全てが愛しい。

そして何より、私を見る優しい瞳と笑顔、頭を撫でる手にこれ以上ないほどに恋焦がれている。

こんなこと兄様が知ったらどう思われることか。

そんな悩みを抱えながらこっそりと月明かりを頼りに屋敷の庭に出る。

眠れぬ夜の密かな気分転換だ。

夜闇に包まれ月明かりに照らされた花を兄様に抱きしめられている自分になぞらえながら見つめる。

気分転換のはずなのに今夜は胸が締め付けられる。

理由は簡単。

噂で兄様に好きな人がいると聞いたから。

私はその本当か嘘かも分からない噂にを想像して涙を溢れさせる。

そしてその涙が頬をつたった時ーー

驚いた顔の兄様が私の目の前に立っていた。
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