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第二部-失意の先の楽園
68. 冷たく暗い場所
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千尋は炎が燃え盛る中を、フレディに力強く腕を掴まれ進んでいた。
辺りは煙黒い煙が充満し、燃え盛る炎で息苦しくて仕方がない。
そんな状態であるにもかかわらず、フレディは歩みを緩めることなく進んでいた。
空気の薄さに意識が朦朧とする中、途端にひやりとした風が肌を撫で、千尋は薄く開けていた目をしっかりと開く。
いつの間にか裏口から外に連れ出され、暗い森の中を進まされていたのだ。
ばちばちと燃える音を背後に聞きながら、フレディに引っ張られるままに森を進む。
燃える炎の強い光に当てられていたせいで、暗闇が一層暗く感じてしまい、今どこをどう歩いているのか分からないかった。
何度か振り切ろうと試みたが、強く掴まれた手は離されることも緩むこともない。
「死にたくなかったら、大人しくしなきゃだめだよ千尋君」
一体いつから持っていたのか。
不意に胸に突き付けられたハンドガンの銃口に、千尋は驚愕に目を見開いた。
ぐっと押し付けられた銃口に、恐怖が増して冷や汗が垂れる。
この距離で引き金を引かれたら弾は逸れることなく、確実に千尋の心臓を貫いてしまう。
そうなってしまえば、例えレオが助けに来たとしてもその時には千尋は命を落としたあとだろう。
ぐっと唇を噛みしめフレディを睨みつければ、彼は愉快そうに笑うのだった。
どれ程歩いたのか、背の高草を掻き分け歩き続けた先にあったのは、この場に似合わないコンクリートでできた建物だった。
鍵を開け、金属でできた分厚く頑丈な扉を開けたフレディは、窓もなく明かりが一切入らない場所を難なく進んでいった。
目を凝らしても一切明かりがないので千尋には何も見えないのだが、フレディは道を覚えているのか、はたまた夜目が効くのか、迷いがないしっかりとした足取りで道を進んでいる。
外からは分からなかったが建物の中は相当広いらしく、時間の感覚が分からないがかなりの距離を歩いたような気がした。
外の新鮮な空気とは違い、この場所の空気は酷く淀んでいた。
重たく埃っぽい空気。外の光も音も遮断され、静まり返ったこの場所で千尋とフレディの足音が反響して、より不気味さを醸し出していた。
何度か角を曲がり、ドアが開かれる音が聞こえ、そして階段を引っ張られながら下る。
そうして漸く目的の場所に辿り着いたらしい場所で、千尋は背中を強く押されて床に倒れ込んだ。
ガチャンと鈍い音を立てて扉が閉まる音が聞こえる。不安と恐怖心が顔を覗かせ、心臓が痛いくらいに脈打ち体が僅かに震えだした。
――恐怖に呑まれてはいけない。冷静さを保たなければ……
そう自身に言い聞かせながらじりじりと体を動かし後ずさっていれば、パチンという音と共に辺りが途端に明るくなった。
突如もたらされた光に目が眩む。暫くして光に目が慣れた千尋は、薄く目を開いて辺りを視線だけで素早く確認する。
何かの実験に使われているのか、様々な器具や、置かれている棚や机には無数の薬品などが無造作に並べられていた。
「はは、ここまでくれば奴らはそう簡単には辿り着けない。残念だったね千尋君」
千尋を見下ろしながら、にたりと笑みを浮かべたフレディの顔が、逆光でさらに不気味さを増していた。
背筋を悪寒が駆け上がり、千尋は本能的に立ち上がってこの場から逃げようと体が咄嗟に動く。
しかしその行動はフ、レディが躊躇いなくハンドガンの引き金を引いたことによってあっけなく阻止された。
「大人しくしなくちゃ駄目だと言っただろう?」
放たれた銃弾が顔のギリギリの距離で掠め、立ち上がろうとした体勢から再び床に座り込んでしまう。
じりじりとまるで小動物を追い詰める肉食獣のように迫りくるフレディに、千尋はゆっくりと後退するしかできなかった。
*完結まであと少し……!!
ということで、毎日更新に切り替えたいと思います。
最後まで完走していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
辺りは煙黒い煙が充満し、燃え盛る炎で息苦しくて仕方がない。
そんな状態であるにもかかわらず、フレディは歩みを緩めることなく進んでいた。
空気の薄さに意識が朦朧とする中、途端にひやりとした風が肌を撫で、千尋は薄く開けていた目をしっかりと開く。
いつの間にか裏口から外に連れ出され、暗い森の中を進まされていたのだ。
ばちばちと燃える音を背後に聞きながら、フレディに引っ張られるままに森を進む。
燃える炎の強い光に当てられていたせいで、暗闇が一層暗く感じてしまい、今どこをどう歩いているのか分からないかった。
何度か振り切ろうと試みたが、強く掴まれた手は離されることも緩むこともない。
「死にたくなかったら、大人しくしなきゃだめだよ千尋君」
一体いつから持っていたのか。
不意に胸に突き付けられたハンドガンの銃口に、千尋は驚愕に目を見開いた。
ぐっと押し付けられた銃口に、恐怖が増して冷や汗が垂れる。
この距離で引き金を引かれたら弾は逸れることなく、確実に千尋の心臓を貫いてしまう。
そうなってしまえば、例えレオが助けに来たとしてもその時には千尋は命を落としたあとだろう。
ぐっと唇を噛みしめフレディを睨みつければ、彼は愉快そうに笑うのだった。
どれ程歩いたのか、背の高草を掻き分け歩き続けた先にあったのは、この場に似合わないコンクリートでできた建物だった。
鍵を開け、金属でできた分厚く頑丈な扉を開けたフレディは、窓もなく明かりが一切入らない場所を難なく進んでいった。
目を凝らしても一切明かりがないので千尋には何も見えないのだが、フレディは道を覚えているのか、はたまた夜目が効くのか、迷いがないしっかりとした足取りで道を進んでいる。
外からは分からなかったが建物の中は相当広いらしく、時間の感覚が分からないがかなりの距離を歩いたような気がした。
外の新鮮な空気とは違い、この場所の空気は酷く淀んでいた。
重たく埃っぽい空気。外の光も音も遮断され、静まり返ったこの場所で千尋とフレディの足音が反響して、より不気味さを醸し出していた。
何度か角を曲がり、ドアが開かれる音が聞こえ、そして階段を引っ張られながら下る。
そうして漸く目的の場所に辿り着いたらしい場所で、千尋は背中を強く押されて床に倒れ込んだ。
ガチャンと鈍い音を立てて扉が閉まる音が聞こえる。不安と恐怖心が顔を覗かせ、心臓が痛いくらいに脈打ち体が僅かに震えだした。
――恐怖に呑まれてはいけない。冷静さを保たなければ……
そう自身に言い聞かせながらじりじりと体を動かし後ずさっていれば、パチンという音と共に辺りが途端に明るくなった。
突如もたらされた光に目が眩む。暫くして光に目が慣れた千尋は、薄く目を開いて辺りを視線だけで素早く確認する。
何かの実験に使われているのか、様々な器具や、置かれている棚や机には無数の薬品などが無造作に並べられていた。
「はは、ここまでくれば奴らはそう簡単には辿り着けない。残念だったね千尋君」
千尋を見下ろしながら、にたりと笑みを浮かべたフレディの顔が、逆光でさらに不気味さを増していた。
背筋を悪寒が駆け上がり、千尋は本能的に立ち上がってこの場から逃げようと体が咄嗟に動く。
しかしその行動はフ、レディが躊躇いなくハンドガンの引き金を引いたことによってあっけなく阻止された。
「大人しくしなくちゃ駄目だと言っただろう?」
放たれた銃弾が顔のギリギリの距離で掠め、立ち上がろうとした体勢から再び床に座り込んでしまう。
じりじりとまるで小動物を追い詰める肉食獣のように迫りくるフレディに、千尋はゆっくりと後退するしかできなかった。
*完結まであと少し……!!
ということで、毎日更新に切り替えたいと思います。
最後まで完走していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
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