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第二部-失意の先の楽園
08 安心できる場所
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レオは千尋の望み通りに動き、ライリーの件が表沙汰になることはなかった。
あまりの泥酔具合に記憶が混濁し、ライリー自身が起きた出来事を覚えていなかったことも大きいだろう。
最後に大きな爆弾を落とされた気分だったが、これで纏まった休暇となるので千尋の心は左程落ち込んではいなかった。
夕方。数か月ぶりに自宅へと戻ればやっと緊張感が解け、体が一気に重たくなる。
仕事をする上で泊まるホテルは全て一流で、細やかな配慮も行き届き快適ではあるのだが、やはり自宅とは違う。
増える護衛の数と、常に誰かに見られ続ける気の抜けない生活は心身ともに疲れてしまうのだ。
リビングに足を踏み入れ、ジャケットも脱がずに思わずソファに横たわった千尋に、レオが苦笑しながら労うようにさらりと髪を撫で額に唇を落としてくる。
「漸く帰ってきたな」
「暫くは、ゆっくり休暇を楽しみましょうねレオ」
「そうだな。流石の私も今回は疲れた」
疲労の色を見せ目元を揉みながら千尋の横に深く腰掛けたレオに、千尋は労うように頬に口づける。
本来専属の護衛は数人での交代制が一般的だ。しかし千尋の特殊性から、護衛はレオただ一人。
国を出れば護衛は増えるが、それでレオが休めるかと言われたら答えは否だ。その護衛達を纏める立場になるし、海外での行動は特に気が抜けない。
「ここに帰ってくると安心する」
「それはそうでしょう。私達の家ですから……お帰りなさいレオ」
そう千尋が囁けばレオは一瞬目を丸くさせてから、嬉しそうに目を細めた。
「あぁ、ただいま千尋」
伸ばされた腕に抱き込まれれば、そのままぽすんとソファに二人で倒れ込む。座面が広いソファは体格の良いレオと千尋が二人で横たわっても余裕がある。
抱きしめられることは海外に出ている時もあるのだが、こうして一緒に寝ることは警護の関係上そう多くはない。
一番リラックスしている時や、ベッドの中で休む時が一番危険なのだとレオは言う。
久しぶりにゆっくりと感じるレオの体温に、千尋はすぐに眠気に誘われた。心地の良い睡魔に誘われながらレオを見れば、余程疲れていたのか既に寝息を立て始めていた。
レオもこの家に帰って来て気が抜けたのだろう。
安全な国の、心が休まる帰る場所。そして何より、大切な存在だけしか居ない空間。
仕事でつらいことは多々あれど、千尋はレオが傍に居れば何でも耐えられる気がしていた。
レオの胸元に耳を寄せ、規則正しい鼓動を聞いていればそれが子守歌のように更に眠りに誘う。
隙間なく抱きしめ合った二人は、そのまま翌日の昼まで目が覚めることはなかった。
カーテンの隙間から差した日の光が千尋の顔に当たり、その眩しさに目を覚ます。ぼうっとする頭で壁にかかる時計を見れば、時間は正午を少し過ぎた頃だ。
千尋が体を動かしたことでレオも目が覚めたようで、低く掠れた声を出した。
「まさかこんな時間まで起きないとは……」
「お互いかなり疲れてましたからね」
「流石に腹が減ったな、何か食べよう」
「そのまま寝ちゃいましたから、ご飯の前にお風呂に入りたいです」
しわくちゃになってしまったジャケットを脱ぎながら、千尋が立ち上がろうとすればレオに阻止され、浮いた腰が再びソファに戻された。
「一緒に入るか?」
「ふふ、どうしたんですかレオ」
まるで甘えるように千尋の背後から肩口に頭を乗せられ、呟くように言ったレオの普段とは違う雰囲気に、千尋は不思議そうに背後を見やる。
「仕事でずっと忙しかっただろう? それに最後はライリーに良い所を邪魔された」
熱がこもる目に見つめられれば、どちらからともなく唇を合わせた。深くなる口づけは激しさを伴い、静かなリビングに音が響いていった。
あまりの泥酔具合に記憶が混濁し、ライリー自身が起きた出来事を覚えていなかったことも大きいだろう。
最後に大きな爆弾を落とされた気分だったが、これで纏まった休暇となるので千尋の心は左程落ち込んではいなかった。
夕方。数か月ぶりに自宅へと戻ればやっと緊張感が解け、体が一気に重たくなる。
仕事をする上で泊まるホテルは全て一流で、細やかな配慮も行き届き快適ではあるのだが、やはり自宅とは違う。
増える護衛の数と、常に誰かに見られ続ける気の抜けない生活は心身ともに疲れてしまうのだ。
リビングに足を踏み入れ、ジャケットも脱がずに思わずソファに横たわった千尋に、レオが苦笑しながら労うようにさらりと髪を撫で額に唇を落としてくる。
「漸く帰ってきたな」
「暫くは、ゆっくり休暇を楽しみましょうねレオ」
「そうだな。流石の私も今回は疲れた」
疲労の色を見せ目元を揉みながら千尋の横に深く腰掛けたレオに、千尋は労うように頬に口づける。
本来専属の護衛は数人での交代制が一般的だ。しかし千尋の特殊性から、護衛はレオただ一人。
国を出れば護衛は増えるが、それでレオが休めるかと言われたら答えは否だ。その護衛達を纏める立場になるし、海外での行動は特に気が抜けない。
「ここに帰ってくると安心する」
「それはそうでしょう。私達の家ですから……お帰りなさいレオ」
そう千尋が囁けばレオは一瞬目を丸くさせてから、嬉しそうに目を細めた。
「あぁ、ただいま千尋」
伸ばされた腕に抱き込まれれば、そのままぽすんとソファに二人で倒れ込む。座面が広いソファは体格の良いレオと千尋が二人で横たわっても余裕がある。
抱きしめられることは海外に出ている時もあるのだが、こうして一緒に寝ることは警護の関係上そう多くはない。
一番リラックスしている時や、ベッドの中で休む時が一番危険なのだとレオは言う。
久しぶりにゆっくりと感じるレオの体温に、千尋はすぐに眠気に誘われた。心地の良い睡魔に誘われながらレオを見れば、余程疲れていたのか既に寝息を立て始めていた。
レオもこの家に帰って来て気が抜けたのだろう。
安全な国の、心が休まる帰る場所。そして何より、大切な存在だけしか居ない空間。
仕事でつらいことは多々あれど、千尋はレオが傍に居れば何でも耐えられる気がしていた。
レオの胸元に耳を寄せ、規則正しい鼓動を聞いていればそれが子守歌のように更に眠りに誘う。
隙間なく抱きしめ合った二人は、そのまま翌日の昼まで目が覚めることはなかった。
カーテンの隙間から差した日の光が千尋の顔に当たり、その眩しさに目を覚ます。ぼうっとする頭で壁にかかる時計を見れば、時間は正午を少し過ぎた頃だ。
千尋が体を動かしたことでレオも目が覚めたようで、低く掠れた声を出した。
「まさかこんな時間まで起きないとは……」
「お互いかなり疲れてましたからね」
「流石に腹が減ったな、何か食べよう」
「そのまま寝ちゃいましたから、ご飯の前にお風呂に入りたいです」
しわくちゃになってしまったジャケットを脱ぎながら、千尋が立ち上がろうとすればレオに阻止され、浮いた腰が再びソファに戻された。
「一緒に入るか?」
「ふふ、どうしたんですかレオ」
まるで甘えるように千尋の背後から肩口に頭を乗せられ、呟くように言ったレオの普段とは違う雰囲気に、千尋は不思議そうに背後を見やる。
「仕事でずっと忙しかっただろう? それに最後はライリーに良い所を邪魔された」
熱がこもる目に見つめられれば、どちらからともなく唇を合わせた。深くなる口づけは激しさを伴い、静かなリビングに音が響いていった。
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