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【 番外編 SS 】
変わらぬ距離、変わる距離
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*レオが千尋の物になって少し後のお話。
「今日はいつも以上に忙しかったな」
パーティー会場からの帰り道、少しばかり疲労の色を滲ませた千尋は、レオの言葉に同意する様に苦笑した。
その日の二人はとある国の王族の即位十周年を祝う席に呼ばれていて、各国から集まって来た知り合いやパトロンであるα達と千尋は忙しく話をしていった。
α達の方から千尋の元へ来る為に、動き回る事は無いが、立ったまま忙しなく行き交う会話に優雅な表情で応じていく千尋に疲労の色は見えない。
しかし、足に掛かる重心を時折変えながら、僅かに上がった口角が震えていると言う小さな変化をレオは見逃さなかった。
さり気なくアイコンタクトを取れば一瞬千尋の瞳が揺れたのを見ると、レオは主催へ離脱する旨を伝え、千尋をその場から離し会場を出たのだった。
ホテルの部屋に戻るとレオはすぐ様千尋を抱き上げ、広い室内を歩き大きなソファーに千尋を下ろし、千尋の前に膝をつく。
「体調が悪いのだろう?」
熱を測る様に額に手を当てられた後は手を取られ脈を測られる。
「レオには隠せませんね」
部屋に戻り女神の仮面を外した千尋は、力なく笑う。気が抜けたのか顔色も幾分か悪くなっていた。
レオは千尋の頬をひと撫ですると、ミネラルウォーターとピルケースを取り千尋の元へ戻る。
「いつからだ?」
「新しい人をパトロンから紹介されたでしょう?その時からですね……香水とあの方のフェロモンの混ざった匂いが余りにも合わなくて」
千尋はレオから受け取ったピルケースから、即効性の高い頭痛薬を取り出し飲み下し一息つけば、レオが千尋の手を取り少し力を込めて握ってきた。
「もっと頼ってくれ千尋。それとも……抗っただけでは足りないか?」
ぽつりと漏らされた言葉に千尋は困った様に笑む。頼りにしていないわけでは無いが、仕事とプライベートを完全に分ける千尋にとって、仕事中の些細な事でレオを頼る事は出来なかった。
「ごめんなさいレオ。仕事の時はどうしても……」
「それはわかっているつもりなんだが……」
レオが自身の運命に抗い、千尋を自身で選び取ったからと言って、二人は明確に”恋人”と定義される物になったかと言えばそうでは無かった。
二人はお互いの立場上決して番う事が出来ないし、千尋に至っては争いの種になりかねない為に恋人を作る事も許されない。
普通であれば窮屈で仕方がないであろうその決まり事は、仕事にストイックな二人にとってはそうでは無かった。
しかしそれでも……とレオは思ってしまうのだ。
「心配しなくても、レオの事は信頼していますしこれでも頼ってるんですよ?」
するりと伸びた千尋の冷えた手がレオの頬に添えられ、ゆっくりと唇を食まれる。
対外的な距離は確かに女神とその護衛で、決して縮まる事は無いが、二人きりになればその距離は以前よりグッと縮まっていた。
スキンシップは以前よりも甘さを増した事は言うまでもなく、時折肌を重ねる事もある。
しかしそれはあくまでも二人での空間での話だ。
「……お互いに面倒な立場だな?」
「ふふ、そうですね?」
額を合わせて苦笑しながらレオがそう呟けば、千尋はころころと笑ういながら再びレオに自身の唇を重ねた。今度は先程よりも深く長い物だ。
「……ねぇレオ」
肌に赤みが戻り、目元を微かに潤ませた千尋が小さく言葉を発する。
だが続きを言い始める前にレオは溜息をつくと、千尋を再び抱き上げベッドルームへと向かい、ゆっくりと千尋を下ろした。
「具合が悪いんだろう? 大人しく休んでくれ。仕事に穴を開けるのは本意じゃ無いはずだ」
「冗談ですよ」
わかっているでしょう? とくすくすと笑う千尋にレオは困った様に笑う。
こうした気安いやり取りも日々増えていく。だが一度手に入れてしまえばもっと、もっとと欲が出てしまうのは仕方がない事だろう。
「一緒に寝るだけならいいでしょう?」
レオは千尋に誘われるままベッドに入り、千尋を抱き込むように横たわる。
掴んだ幸せは此処にある、そう幸せを噛み締めながら毎夜二人は目を閉じるのだった。
「今日はいつも以上に忙しかったな」
パーティー会場からの帰り道、少しばかり疲労の色を滲ませた千尋は、レオの言葉に同意する様に苦笑した。
その日の二人はとある国の王族の即位十周年を祝う席に呼ばれていて、各国から集まって来た知り合いやパトロンであるα達と千尋は忙しく話をしていった。
α達の方から千尋の元へ来る為に、動き回る事は無いが、立ったまま忙しなく行き交う会話に優雅な表情で応じていく千尋に疲労の色は見えない。
しかし、足に掛かる重心を時折変えながら、僅かに上がった口角が震えていると言う小さな変化をレオは見逃さなかった。
さり気なくアイコンタクトを取れば一瞬千尋の瞳が揺れたのを見ると、レオは主催へ離脱する旨を伝え、千尋をその場から離し会場を出たのだった。
ホテルの部屋に戻るとレオはすぐ様千尋を抱き上げ、広い室内を歩き大きなソファーに千尋を下ろし、千尋の前に膝をつく。
「体調が悪いのだろう?」
熱を測る様に額に手を当てられた後は手を取られ脈を測られる。
「レオには隠せませんね」
部屋に戻り女神の仮面を外した千尋は、力なく笑う。気が抜けたのか顔色も幾分か悪くなっていた。
レオは千尋の頬をひと撫ですると、ミネラルウォーターとピルケースを取り千尋の元へ戻る。
「いつからだ?」
「新しい人をパトロンから紹介されたでしょう?その時からですね……香水とあの方のフェロモンの混ざった匂いが余りにも合わなくて」
千尋はレオから受け取ったピルケースから、即効性の高い頭痛薬を取り出し飲み下し一息つけば、レオが千尋の手を取り少し力を込めて握ってきた。
「もっと頼ってくれ千尋。それとも……抗っただけでは足りないか?」
ぽつりと漏らされた言葉に千尋は困った様に笑む。頼りにしていないわけでは無いが、仕事とプライベートを完全に分ける千尋にとって、仕事中の些細な事でレオを頼る事は出来なかった。
「ごめんなさいレオ。仕事の時はどうしても……」
「それはわかっているつもりなんだが……」
レオが自身の運命に抗い、千尋を自身で選び取ったからと言って、二人は明確に”恋人”と定義される物になったかと言えばそうでは無かった。
二人はお互いの立場上決して番う事が出来ないし、千尋に至っては争いの種になりかねない為に恋人を作る事も許されない。
普通であれば窮屈で仕方がないであろうその決まり事は、仕事にストイックな二人にとってはそうでは無かった。
しかしそれでも……とレオは思ってしまうのだ。
「心配しなくても、レオの事は信頼していますしこれでも頼ってるんですよ?」
するりと伸びた千尋の冷えた手がレオの頬に添えられ、ゆっくりと唇を食まれる。
対外的な距離は確かに女神とその護衛で、決して縮まる事は無いが、二人きりになればその距離は以前よりグッと縮まっていた。
スキンシップは以前よりも甘さを増した事は言うまでもなく、時折肌を重ねる事もある。
しかしそれはあくまでも二人での空間での話だ。
「……お互いに面倒な立場だな?」
「ふふ、そうですね?」
額を合わせて苦笑しながらレオがそう呟けば、千尋はころころと笑ういながら再びレオに自身の唇を重ねた。今度は先程よりも深く長い物だ。
「……ねぇレオ」
肌に赤みが戻り、目元を微かに潤ませた千尋が小さく言葉を発する。
だが続きを言い始める前にレオは溜息をつくと、千尋を再び抱き上げベッドルームへと向かい、ゆっくりと千尋を下ろした。
「具合が悪いんだろう? 大人しく休んでくれ。仕事に穴を開けるのは本意じゃ無いはずだ」
「冗談ですよ」
わかっているでしょう? とくすくすと笑う千尋にレオは困った様に笑う。
こうした気安いやり取りも日々増えていく。だが一度手に入れてしまえばもっと、もっとと欲が出てしまうのは仕方がない事だろう。
「一緒に寝るだけならいいでしょう?」
レオは千尋に誘われるままベッドに入り、千尋を抱き込むように横たわる。
掴んだ幸せは此処にある、そう幸せを噛み締めながら毎夜二人は目を閉じるのだった。
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