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70 決定事項
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呆れかえったフェルナンドに淡々と、これがどれだけの事態なのか諭されたテオドールとフェリチアーノは、安堵しながらも改めてリンドベルと言う魔術師がどれ程凄い人物なのか改めて実感していた。
テオドールから受け取ったリンドベルがサインしてある書面にざっと目を通したフェルナンドは目を細め、婚姻を白紙にする事をサライアスに言いに行くと部屋から出ていく際にテオドールの肩を軽く叩きながら、よくやったと褒めて行った。
残されたシルフィアはすっかり冷めてしまったお茶を入れ直すように指示を出すと、王妃として纏っている空気をガラリと変える。
「フェルナンドが言いたい事は全て言ってしまっているから、私からは何も言わないけれど、全く貴方達には驚かされました。特にフェリチアーノさんに至っては嬉しい誤算ね。恋人ごっこを後押しした私の目は狂って居なかったと言う事ね」
くるくるとティースプーンをカップの中で回しながら、満足そうに微笑むシルフィアにテオドールは誇らしげに胸を張った。
その様子をシルフィアは可笑しそうに笑う。部屋の中の張り詰めていた空気は無くなり、暖かい物になっていた。
「それで、何だったかしら。あぁフェリチアーノさんの御家族への処罰のお話だったわね。その前にフェリチアーノさんの体は大丈夫なのですか? ディッシャーがついていると聞きましたよ」
「先程見せた魔道具があったでしょう母上。あれはリンドベルが作った体内の毒を吸い出す物です。ディッシャーからも体内を整える為に色々と処方されていますし、完全に元通りとはいかないまでも、普通に生活するぐらいには戻るだろうと言われていますね」
「そうなのね、それは良かったわ。それなら貴方達の婚姻は何の問題は無いわね」
「こっ婚姻!?」
「何を驚いているの、当たり前の事でしょうに」
突然出た婚姻と言う話にフェリチーノとテオドールは目を丸くする。
「協定の為の婚姻白紙もそうですけど、リンドベルは貴方達二人の為に動いて居るのですから、貴方達が婚姻を結ぶのは当たり前でしょう? それとも恋人のままでいるつもりではないでしょうね?」
「いや、あの……それは、ゆくゆくはフェリとそうなりたい思っていましたけど……」
「そうよね? ふふ、忙しくなるわね。息子が増える事は嬉しいわ。フェリチアーノさん、うちの子をどうぞよろしくお願いしますね」
「王妃殿下っ」
「まぁフェリチアーノさん、他人行儀ですよ。もっと気軽に呼んで貰って構わないのよ?」
「母上、フェリが困ってます」
「ふふふ、ゆっくり慣れて頂戴な。婚姻に関してはまだ内密にしておくのですよテオドール。これはフェリチアーノさんの御家族の罰にも繋がりますからね」
「母上はどうすれば良いと思いますか?」
誓約魔法に触れない様にテオドールはシルフィアへ考えを言うように促した。
「そうね、取り敢えず近々フェリチアーノさんは内密にグレイス家と養子縁組してしまうのが妥当でしょう。あの御家族との縁も切れますからね。後はそうね、フェリチアーノさんの体調を見ながら貴方達は社交に出るのがいいでしょう。世論を味方につけておく事に越した事はないですからね。ほら何だったかしら、貴方とミリアが好きだった恋愛小説によくあったでしょう? シンデレラストーリーと言うやつよ」
それを聞いたテオドールはあぁ! と大きく声を出し、一人納得したようにうんうんと頷き何やら考え込み、シルフィアにあれこれと聞き意見を言い合っていた。
シルフィアはそれから暫くしてサライアスに呼ばれ、お茶会はお開きになる。二人だけとなった部屋の中、未だ婚姻と言う言葉を実感できないフェリチアーノはテオドールに突然抱きしめられる。
「フェリ、これで一緒に居られる」
「テオ……」
戸惑いを含んだフェリチアーノの言葉にテオドールはどうしたのかと顔を覗き込んだ。
「まさか……嫌だった?」
「そんなわけないじゃないですか! あまりに話が突然で……驚いていて、その……現実味が無いと言うか」
なるほどとフェリチアーノの戸惑いの原因が分かったテオドールは、心得たとばかりにフェリチアーノから離れると、椅子から立ち上がり片膝を着いた。
「フェリチアーノ、一生大切に守り抜くと誓います。どうか俺と婚姻して一生を共にしてください」
真剣な顔つきで手を取り見上げて来るテオドールに、フェリチアーノは顔を真っ赤にさせて息を呑んだ。
「ねぇフェリチアーノ、返事は?」
するりと手に頬を摺り寄せられ、甘える様にしかし否と言わせない力強さを感じさせる問いに、フェリチアーノの体をむず痒さが駆け上る。
「答えなんて、一つしか無いじゃないですか」
気恥ずかしさが占める中で、フェリチアーノは返事の変わりにテオドールを引き寄せて抱き着くと、その唇に口付けた。
テオドールから受け取ったリンドベルがサインしてある書面にざっと目を通したフェルナンドは目を細め、婚姻を白紙にする事をサライアスに言いに行くと部屋から出ていく際にテオドールの肩を軽く叩きながら、よくやったと褒めて行った。
残されたシルフィアはすっかり冷めてしまったお茶を入れ直すように指示を出すと、王妃として纏っている空気をガラリと変える。
「フェルナンドが言いたい事は全て言ってしまっているから、私からは何も言わないけれど、全く貴方達には驚かされました。特にフェリチアーノさんに至っては嬉しい誤算ね。恋人ごっこを後押しした私の目は狂って居なかったと言う事ね」
くるくるとティースプーンをカップの中で回しながら、満足そうに微笑むシルフィアにテオドールは誇らしげに胸を張った。
その様子をシルフィアは可笑しそうに笑う。部屋の中の張り詰めていた空気は無くなり、暖かい物になっていた。
「それで、何だったかしら。あぁフェリチアーノさんの御家族への処罰のお話だったわね。その前にフェリチアーノさんの体は大丈夫なのですか? ディッシャーがついていると聞きましたよ」
「先程見せた魔道具があったでしょう母上。あれはリンドベルが作った体内の毒を吸い出す物です。ディッシャーからも体内を整える為に色々と処方されていますし、完全に元通りとはいかないまでも、普通に生活するぐらいには戻るだろうと言われていますね」
「そうなのね、それは良かったわ。それなら貴方達の婚姻は何の問題は無いわね」
「こっ婚姻!?」
「何を驚いているの、当たり前の事でしょうに」
突然出た婚姻と言う話にフェリチーノとテオドールは目を丸くする。
「協定の為の婚姻白紙もそうですけど、リンドベルは貴方達二人の為に動いて居るのですから、貴方達が婚姻を結ぶのは当たり前でしょう? それとも恋人のままでいるつもりではないでしょうね?」
「いや、あの……それは、ゆくゆくはフェリとそうなりたい思っていましたけど……」
「そうよね? ふふ、忙しくなるわね。息子が増える事は嬉しいわ。フェリチアーノさん、うちの子をどうぞよろしくお願いしますね」
「王妃殿下っ」
「まぁフェリチアーノさん、他人行儀ですよ。もっと気軽に呼んで貰って構わないのよ?」
「母上、フェリが困ってます」
「ふふふ、ゆっくり慣れて頂戴な。婚姻に関してはまだ内密にしておくのですよテオドール。これはフェリチアーノさんの御家族の罰にも繋がりますからね」
「母上はどうすれば良いと思いますか?」
誓約魔法に触れない様にテオドールはシルフィアへ考えを言うように促した。
「そうね、取り敢えず近々フェリチアーノさんは内密にグレイス家と養子縁組してしまうのが妥当でしょう。あの御家族との縁も切れますからね。後はそうね、フェリチアーノさんの体調を見ながら貴方達は社交に出るのがいいでしょう。世論を味方につけておく事に越した事はないですからね。ほら何だったかしら、貴方とミリアが好きだった恋愛小説によくあったでしょう? シンデレラストーリーと言うやつよ」
それを聞いたテオドールはあぁ! と大きく声を出し、一人納得したようにうんうんと頷き何やら考え込み、シルフィアにあれこれと聞き意見を言い合っていた。
シルフィアはそれから暫くしてサライアスに呼ばれ、お茶会はお開きになる。二人だけとなった部屋の中、未だ婚姻と言う言葉を実感できないフェリチアーノはテオドールに突然抱きしめられる。
「フェリ、これで一緒に居られる」
「テオ……」
戸惑いを含んだフェリチアーノの言葉にテオドールはどうしたのかと顔を覗き込んだ。
「まさか……嫌だった?」
「そんなわけないじゃないですか! あまりに話が突然で……驚いていて、その……現実味が無いと言うか」
なるほどとフェリチアーノの戸惑いの原因が分かったテオドールは、心得たとばかりにフェリチアーノから離れると、椅子から立ち上がり片膝を着いた。
「フェリチアーノ、一生大切に守り抜くと誓います。どうか俺と婚姻して一生を共にしてください」
真剣な顔つきで手を取り見上げて来るテオドールに、フェリチアーノは顔を真っ赤にさせて息を呑んだ。
「ねぇフェリチアーノ、返事は?」
するりと手に頬を摺り寄せられ、甘える様にしかし否と言わせない力強さを感じさせる問いに、フェリチアーノの体をむず痒さが駆け上る。
「答えなんて、一つしか無いじゃないですか」
気恥ずかしさが占める中で、フェリチアーノは返事の変わりにテオドールを引き寄せて抱き着くと、その唇に口付けた。
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