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第1章

41.ただいま

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カマエルに逢いたい。


逢って、ちゃんと僕の気持ちを伝えるんだ。


この先のことなんて考えてもしょうがない。
なるようにしかならない。

正直、天使と悪魔の恋愛なんて前代未聞で前例を聞いたことはない。
だから先を不安がっていたけど、今はなによりもカマエルがそばにいない。これが僕の不安になっていた。

未来なんてわからないから今を全力で生きる。


僕とカマエルと。二人で。


ベルはもう死んで逢えないと思っていた母と会えたことで今まで悪い方にしか考えられなかった思考が少し前向きになっていた。


そのことによりどこか寂しさを思わせる表情は少し色を取り戻しやわらいでいた。



カマエルに
逢いに行くにはここから出ないといけない。


どうやって出ればいい…


お母さんに聞こうと思ったけど、思いとどまる。その答えはもう僕が持ってる。
そうだよね、お母さん。


そう思い上を見上げると、どこからか光が差し込んでいた。


『ふふふ、そうだね』


空間に母の笑いが響く。


意識を集中させ、体の中を巡る魔力の流れをつかむ。
そこから徐々に腹のあたりに魔力を集めて練っていく。集まる魔力を意識すると集まった量にびっくりする。
今まで僕にこんなに魔力があったなんて気づかなかった。


違う。


知らないふりをしていただけだ。
本当は知っていた。


押さえつけていた魔力の解放と共に思い出した記憶。
決して楽しい物でも面白い物でも幸せな物でもない。


でもその忌まわしい記憶は魔力の使い方を思い出させてくれた。


魔法の使い方を


僕の力を





練った魔力が背中に集まる。
魔力がだんだんと形をかたど


僕は悪魔なのに翼がなかった。
いや、出せなかっただけだ。


悪魔にとっての象徴な翼は実は魔力で出し入れ可能な器官の一部。
僕はしまったまま出す方法を忘れていた。


記憶を思い出した僕の背中には、


黒くてしなやかに伸びる黒い羽。


飛び方は知ってる。


バサリと広げて羽ばたき地面を力一杯蹴る。


地面を蹴って高く高く高く
一筋の光を目指して飛び立つ。


『いっておいで、また逢える時を楽しみにしてるよ』


「はい、また逢える日を」


家族で過ごせる時を…


最後口にすることはなかった僕の想い。
いつか叶うだろうか。


ただ、今はひたすらに前を向くだけだ。
振り向いてはいけない。光を見失ってしまうから。

母は声しか聞こえなかったけど、振り向きたくなる。だってそこに確かに母がいるからだ。


でも、母は僕を送り出してくれた。
もう後戻りはできない。


頬に流れた一筋のしずくは一体なんだったのだろうか。



まだ完全とはいかない飛行に少し疲れが浮かんで来た時、

だんだんと光と距離が縮んでいき、
光を掴んだ!と思ったその時この世界にヒビが入りはじめ


パキパキパキ

パリンッ


砕けた


その刹那視界が真っ白に覆われた。
眩いばかりの光に覆われて目を開けていられない。少しずつ光が弱まっていったのを感じ恐る恐る目を開ける。


再び目をゆっくりと開いた僕の視界に映ったのは、衣服がボロボロの状態で心配そうに僕を見るカマエルだった。



「ベル?」


ああ、やっと逢えた。
じわっと浮かぶモノで視界がぼやける


小さく深呼吸して、ふっと微笑む


「うん、僕だ。ただいまカマエル」

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