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第1章
31.ぐるぐる
しおりを挟む「もう帰ってくれ」
そう言った俺に「そうか」とだけ返すとやつは天界へ帰っていった。あっさり帰ったことにも驚いたが、最後に見たエメラルドグリーンの瞳は揺れていてひどく印象的だった。
カマエルがいなくなった部屋はシンとしていて静かすぎるのが逆に気味が悪い。
また、ひとりになった。
いずれはひとりになる。
ずっと一緒なんて言葉はありえない。
ずっと一緒……僕にそう言った誰かは僕の前にもういない。もう顔も覚えてないんだけど
信じなければ、いずれくる別れに傷つくことはない。
カマエルは天使で本来の居場所は天界なんだ。わざわざ魔界に来てくれている今は気まぐれでいずれは来なくなるんだろう。
わかってはいるけど、割り切れないな…
いつのまにかカマエルにかなり心を許していた。だからここで踏みとどまったのはある意味良かったのかもしれない。
これ以上は引き返せない。
離れられなくなってしまう。
幸せはなれちゃダメなんだ。
ずっと続くものじゃないから。
カマエルと一緒にいることはとても安心した。それが他の誰かだったらと考えてみる。
他の誰でもいい、天使や悪魔が僕におはようと言ってキスして……イヤ、キモチワルイ
おえぇ……
無理だ、他の誰かなんて
気持ち悪い…
おはようの挨拶はカマエルじゃなきゃやだ………
どうしてかわからないけど。
あいつじゃないとって咄嗟に思ってしまった。
離れたくないな…
あんなことを言った手前都合がいいのはわかってるでも……
「はぁ…」
僕はどうしたらいいんだろう
ぐるぐる考えてしまって結局考えはまとまらなかった。答えが出ないまま、気づけばソファーで寝落ちていて朝を迎えた。
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