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城の秘密Ⅰ①

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執事の足音が、明かりの落ちた城内を巡る。
最後に玄関ホールを通り、使用人が寝起きする、半地下まで戻ってきた。
ドアの木板の隙間から、ろうそくの明かりがよぎっていくのを、ベッドで見送る。
突き当りの、執事専用の部屋のドアが閉まる音から、数えて三十。
ついでに二十数えたところで、音を殺して起き上がり、床に足を下す。
靴は履かなかった。
目指すは、西棟だ。
そこに、おれの知りたいことがある。
忍び足で底冷えのする玄関ホールを抜けると、ホール正面の階段を一段一段、上がる。
途中、踊り場で、左右に分かれたところを左へ。
目当ての部屋は上層にあるから、あと何回かは階段を上がることになる。
途中、薄暗い廊下を行く中、ふと目が合った。
と言っても、人間とじゃない。
昼日中ひるひなかでなら、きっとはっきり見えただろう―。
白い日傘に、薄黄クリームのドレスを着飾った、陽だまりの中、溌剌はつらつと微笑む…。
いつだったか、執事が、
——その絵は、旦那様のお母君を、若かりし頃、有名な画家に描かせたものですよ。
と、話していた。
絵の中の貴婦人レディに、おれは心の中で、問う。
——あんたの息子は、本当は、いったいどんなやつなんだ?…と。
当然、絵が答えるわけもなく…、おれは、額縁を手で撫でてから、吹き抜けの外回廊に足を踏み入れた。
反対側にある階段で、上まで行くために、回廊を突っ切る。
外の景色が目に入る。
山も谷も、白く、寝静まる、ちょうどその時、空を覆っていた分厚い雲に切れ間ができた。今にも折れそうなほど細い、三日月。
それも、すぐに雲で見えなくなる。
深く積もった、雪明りだけを頼りに回廊を渡って、最後の階段に足をかけた。
三階の廊下に出る。
目的の部屋があるのは、廊下の突き当りだ。
雪明りも届かない暗闇の中、手探りで部屋のドアを探り当てる。
この部屋だ。
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