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第9章 支配者の見る景色

251.共通点は歩み寄りに役立つ

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 ウラノスと打ち合わせた魔法陣の設置を終え、クリスティーヌは森の動物を数匹捕まえた。近づいてきたリスや小鳥など、見た目の愛らしいどこにでもいる動物ばかりだ。

「また増やすの?」

 少しリリースしてからにしたらいいのに。そんなククルの呟きの意味が理解できず、クリスティーヌは首を傾げた。増やす方法は教わったし、常に維持することで魔力が消費されるのも知っている。何が問題なのか。

「うん。増やさない方がいいのかな」

 今までのウラノスの教育しか知らない子供は、不安に駆られた。俯く姿の幼さに、ククルは苦笑いする。双子を含めた自分達も子供の外見をしているが、中身は数万年を生きた化け物だった。彼女は本当に見た目通り幼いのだろう。

「増やしてもいいけど……必要ないやつ、切り離したら?」

「切り離す――やり方、知らない」

 なんとも片手落ちの教育に、天を仰いでしまった。ククルは使役や魅了を持たないが、アースティルティトが両方使う。彼女は必要な時に必要な分だけ使役し、普段は放逐していた。一度繋いだ個体は、容易に選別が付くのだと聞いたが……この世界は理が違うのだろうか。

 あまり妙なことは言わない方がいい。そう判断して、話を逸らした。

「そう。それより戦う間、リスティを守れない」

「平気。ヘルハウンド呼ぶ」

 城内から転移する前に森方向へ放っておいたので、あと1時間もすれば駆けつけてくる。護衛には最適だ。クリスティーヌの説明に、ククルが目を輝かせた。

「ヘルハウンド! 私も飼ってた」

「本当!? じゃあ、お姉ちゃんと一緒だ」

「お姉ちゃん?」

「うん、名前知らないから」

 まだきちんと名乗られていないから、聞いて覚えたけど呼ばない。意外と礼儀に関しては躾けられているのだと感心しながら、ククルは名乗った。

「ごめん。私はククル、翼ある蛇で古代の堕天神だよ。仲良くしようね」

 かつて堕とされた神だと告げ、握手をする。少し先から駆け寄る複数の魔力を感じて顔をあげた。茂みから飛び出したのは魔狼達、群れの頭なのか銀狼が混じっている。

『魔王サタン様配下、マーナガルムだ』

 与えられた領地内を見回り中に、強大な魔力に気付いて様子を見にきたと告げる狼に、ククルはどかっと地面に座って視線を合わせた。

「丁寧な挨拶痛みいる。私は翼ある蛇、ククルだ。ここで作戦を行う」

 魔王軍の将を務めるククルは、仲間に対して礼儀を尽くす。相手の能力や種族の別で態度を変えない。だから侮られやすい見た目ながら、強者を尊ぶ魔王軍で受け入れられてきた。ぐるると喉を鳴らしたマーナガルムは、さっと伏せる。後ろの狼達もボスの動きに倣った。

『サタン様の作戦か』

「ああ。私が戦う、この子を守ってもらえないか」

 簡略化された説明に、マーナガルムは承知した。深い理由は必要ない。主従契約した魔王の命令とあれば、一も二もなく協力するのが彼の立場だ。魔法陣を維持する役目を負ったクリスティーヌは、以前に会ったことがある。

 疑う理由はなかった。
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