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第3章 表と裏
52.首輪の代わりを与えよう
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契約を終えた2人を連れて倉庫に戻る。中に放り出していた品から指輪が入った宝石箱を見つけ、彼女らに与えることにした。能力の高い魔族が死ぬと、魔石と呼ばれる宝石を残す。正確には封印されても宝石状態になるので、封魔石と呼称されることもあった。
「綺麗、すごい」
覗き込んだリリアーナが目を丸くする。彼女達の足りない言葉を総合して判断した結果、この世界でも魔族が死んだり封印されると宝石になることが判明した。そういった宝石は自然発生した鉱石と違い、魔力を強く帯びているので一目で判断がつくことが多い。
「これ、魔力ぴかぴか、する」
食い入るように見つめる先に、美しい琥珀色の指輪があった。魅了眼を持つバンパイアの石だったと思うので、リリアーナと相性がいいのだろう。よほど眩しく見えるようで、瞬きを何度も繰り返すが目を逸らそうとしなかった。
「ならば、これをリリアーナにやろう」
摘まんで差し出すと、嬉しそうに左手の薬指を指さす。一番心臓に近い指で、もっとも魔力が強く影響するとアースティルティトも口にしていた。その指を指定するとは、リリアーナも上位魔族の娘ということか。納得して魔力で指輪の地金を調整した。嵌めてから指輪のサイズを合わせるため、簡単に抜けない。
目を輝かせて左手の薬指の指輪を喜ぶ。羨ましそうにしながらも、大人しく選ぶ順番を待っていたクリスティーヌが宝石箱から選んだのは、深色の蒼玉だった。夜空の色と表現すればロマンチックだが、透明度が低い宝石だ。記憶にないので受け取って鑑定してみる。
シードラゴンの封魔石と表示されたため、納得した。死した後に残される魔石と違い、封魔石はやや濁って色が濃くなる傾向がある。このシードラゴンも死んだ後に結晶化したなら、もっと透明度が高いサファイヤだっただろう。
「これがいい」
金色の地金はオリハルコンだったか。リリアーナに倣って、同じ指を希望したので嵌めて調整してやる。満足そうに見せ合って笑う少女達は愛らしかった。いくら愛玩動物でも人型タイプの魔族に首輪は付けられないと迷っていたが、これで褒美を兼ねた魔力補強も出来てひとつ悩みが片付いた。
「なくさない、ありがとう」
頬を染めてお礼を口にするリリアーナを撫でて、倉庫に並べていた品を確認しながら仕舞うことにした。すべて取り出した収納だが、開くと中に手紙が入っている。前回と同じ薄緑の封筒だった。おそらくアースティルティトだ。
倉庫を片付け終えると、残しておいた家具を丁寧に並べ直す。使わなかったベッドや棚、家具を配置して魔法で浄化すれば、倉庫内は見違えるほどきれいな部屋になった。クリスティーヌに後宮の余った部屋を使わせようとしたのだが、寝ている昼間に人が入れる建物は恐いと泣かれる。
なにやらトラウマもありそうなので触れずに慰め、本人の希望通りに部屋を整えた。吸血蝙蝠のジンも一緒に暮らすようなので、倉庫は確かに向いているかも知れない。あとはこの場所に目くらましをかけて、ドワーフなどの精霊や他の魔族が近づかない結界を張ればいい。
準備を終えて一度外へ出ると、夕暮れ近い空が赤く染まっていた。
「……大変です、サタン様!!」
案内のドワーフに付き従い、乳母に支えられたロゼマリアが駆け寄ってくる。彼女の大変はどの程度なのかわからぬが、騒動が大きいのは人間の特徴だった。そのため大した問題ではないと悠長に構えていたオレに、とんでもない言葉が飛び込む。
「先ほど離宮に賊が入り……料理番と侍女が数人殺されました……っ」
「綺麗、すごい」
覗き込んだリリアーナが目を丸くする。彼女達の足りない言葉を総合して判断した結果、この世界でも魔族が死んだり封印されると宝石になることが判明した。そういった宝石は自然発生した鉱石と違い、魔力を強く帯びているので一目で判断がつくことが多い。
「これ、魔力ぴかぴか、する」
食い入るように見つめる先に、美しい琥珀色の指輪があった。魅了眼を持つバンパイアの石だったと思うので、リリアーナと相性がいいのだろう。よほど眩しく見えるようで、瞬きを何度も繰り返すが目を逸らそうとしなかった。
「ならば、これをリリアーナにやろう」
摘まんで差し出すと、嬉しそうに左手の薬指を指さす。一番心臓に近い指で、もっとも魔力が強く影響するとアースティルティトも口にしていた。その指を指定するとは、リリアーナも上位魔族の娘ということか。納得して魔力で指輪の地金を調整した。嵌めてから指輪のサイズを合わせるため、簡単に抜けない。
目を輝かせて左手の薬指の指輪を喜ぶ。羨ましそうにしながらも、大人しく選ぶ順番を待っていたクリスティーヌが宝石箱から選んだのは、深色の蒼玉だった。夜空の色と表現すればロマンチックだが、透明度が低い宝石だ。記憶にないので受け取って鑑定してみる。
シードラゴンの封魔石と表示されたため、納得した。死した後に残される魔石と違い、封魔石はやや濁って色が濃くなる傾向がある。このシードラゴンも死んだ後に結晶化したなら、もっと透明度が高いサファイヤだっただろう。
「これがいい」
金色の地金はオリハルコンだったか。リリアーナに倣って、同じ指を希望したので嵌めて調整してやる。満足そうに見せ合って笑う少女達は愛らしかった。いくら愛玩動物でも人型タイプの魔族に首輪は付けられないと迷っていたが、これで褒美を兼ねた魔力補強も出来てひとつ悩みが片付いた。
「なくさない、ありがとう」
頬を染めてお礼を口にするリリアーナを撫でて、倉庫に並べていた品を確認しながら仕舞うことにした。すべて取り出した収納だが、開くと中に手紙が入っている。前回と同じ薄緑の封筒だった。おそらくアースティルティトだ。
倉庫を片付け終えると、残しておいた家具を丁寧に並べ直す。使わなかったベッドや棚、家具を配置して魔法で浄化すれば、倉庫内は見違えるほどきれいな部屋になった。クリスティーヌに後宮の余った部屋を使わせようとしたのだが、寝ている昼間に人が入れる建物は恐いと泣かれる。
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準備を終えて一度外へ出ると、夕暮れ近い空が赤く染まっていた。
「……大変です、サタン様!!」
案内のドワーフに付き従い、乳母に支えられたロゼマリアが駆け寄ってくる。彼女の大変はどの程度なのかわからぬが、騒動が大きいのは人間の特徴だった。そのため大した問題ではないと悠長に構えていたオレに、とんでもない言葉が飛び込む。
「先ほど離宮に賊が入り……料理番と侍女が数人殺されました……っ」
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