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45.二度目のお祭りは串肉から
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着替えたレオンのシャツは柔らかなピンク色、半ズボンは青だった。空色とも違う、やや紫がかった深い青はピンクとの相性も最高だ。
リリーの提案で、まさかのピンクワンピースを着用することになり、なんとなく人目が気になる。年齢的には十八歳なので、若いと思うけれど……子供のいる既婚者な訳だし。ドレスなら夜会に合わせてとか言い訳ができる。でも私服のワンピースだと、ちょっと……ね?
そんな言い訳も、レオンの「おなし!」の一言で吹き飛んだ。ええ、レオンのためならピンクも問題なし。柔らかい桜色なので、おかしくないはず。結い上げた金髪は、キラキラ感がない。シュミット家は全員、色褪せた金髪だった。
お母様は綺麗な金髪だったのに、家族は誰も受け継がなかったのよね。非常に残念だわ。お母様が絹糸の髪なら、私達は綿糸って感じだ。赤い宝玉の付いた髪留めで纏めた。レオンは、自分のシャツの赤いボタンを指差す。
「おかあ、しゃま! おなじ!」
ゆっくり区切って話すレオンは、心から幸せそうに笑う。揺れる馬車で転がらないよう、抱っこしての移動だった。今日も馬車置き場で降りて、護衛に囲まれたまま歩く。レオンは歩きたいと言わないので、そのまま抱っこだった。
すれ違う中に、貴族夫人や貴族令嬢の華やかな一行もいる。互いに目配せして軽い会釈、その後は挨拶せず離れた。事前にフランクに言われた通り、こういった場では見なかったことになるのね。
知り合いなら言葉を交わすのかもしれない。貴族社会に知り合いはほぼいないので、気軽だった。公爵夫人としては問題かしら。
何軒か出店を覗き、いくつか指示を出す。同行したベルントが注文をまとめて、料理を手配した。よくあるお忍びなら、買い食いも出来るんでしょうけれど。公爵家御一行様と看板を掲げたような状況では、さすがに無理だったわ。
経験させてあげたいけれど、公爵家の面目を潰す事態は避けたい。護衛以外についてきた侍従が、手早く場所を整えた。広場にあるテーブルや椅子は自由に使える。その一角に、クッションやテーブルクロスを使用した豪勢な野外食堂が現れた。
やり過ぎじゃないかしら。そう思ったけれど、見回すと他にも同様の場所がある。ベルントに尋ねると、伯爵令嬢御一行だったり、子爵家のご家族だったりした。問題なさそうね。テントを張られないだけ、よかったわ。
手配された料理が届くと、順番に味見……ではなく、毒見がされる。私達シュミット伯爵家だけなら必要ないけれど、ケンプフェルト公爵家には省けない手順ね。大人しく待つレオンの黒髪を撫でた。
温かいうちにと急がせたベルントのお陰で、串焼きが皿に並んだ。丁寧に串を抜かれ、カトラリーを添えて提供される。変な顔をしているのはエルヴィンと双子達。今までなら「気をつけるのよ」と串ごと渡されたのに。
「いただきましょう」
微笑んで、一口サイズにカットした肉を、レオンへ運ぶ。ぱくりと口に入れ、もぐもぐと咀嚼する。考え事をするように斜め上を見ながら、右へ左へ、頬が膨らんだ。噛み切れないんでしょう? ふふっと笑い、私も口に入れた。思ったより硬いわね。切る時はあまり感じなかったけど……。
同様に家族も無言になり、必死に咀嚼する。周囲は騒がしいのに、テーブルは静まり返った。
リリーの提案で、まさかのピンクワンピースを着用することになり、なんとなく人目が気になる。年齢的には十八歳なので、若いと思うけれど……子供のいる既婚者な訳だし。ドレスなら夜会に合わせてとか言い訳ができる。でも私服のワンピースだと、ちょっと……ね?
そんな言い訳も、レオンの「おなし!」の一言で吹き飛んだ。ええ、レオンのためならピンクも問題なし。柔らかい桜色なので、おかしくないはず。結い上げた金髪は、キラキラ感がない。シュミット家は全員、色褪せた金髪だった。
お母様は綺麗な金髪だったのに、家族は誰も受け継がなかったのよね。非常に残念だわ。お母様が絹糸の髪なら、私達は綿糸って感じだ。赤い宝玉の付いた髪留めで纏めた。レオンは、自分のシャツの赤いボタンを指差す。
「おかあ、しゃま! おなじ!」
ゆっくり区切って話すレオンは、心から幸せそうに笑う。揺れる馬車で転がらないよう、抱っこしての移動だった。今日も馬車置き場で降りて、護衛に囲まれたまま歩く。レオンは歩きたいと言わないので、そのまま抱っこだった。
すれ違う中に、貴族夫人や貴族令嬢の華やかな一行もいる。互いに目配せして軽い会釈、その後は挨拶せず離れた。事前にフランクに言われた通り、こういった場では見なかったことになるのね。
知り合いなら言葉を交わすのかもしれない。貴族社会に知り合いはほぼいないので、気軽だった。公爵夫人としては問題かしら。
何軒か出店を覗き、いくつか指示を出す。同行したベルントが注文をまとめて、料理を手配した。よくあるお忍びなら、買い食いも出来るんでしょうけれど。公爵家御一行様と看板を掲げたような状況では、さすがに無理だったわ。
経験させてあげたいけれど、公爵家の面目を潰す事態は避けたい。護衛以外についてきた侍従が、手早く場所を整えた。広場にあるテーブルや椅子は自由に使える。その一角に、クッションやテーブルクロスを使用した豪勢な野外食堂が現れた。
やり過ぎじゃないかしら。そう思ったけれど、見回すと他にも同様の場所がある。ベルントに尋ねると、伯爵令嬢御一行だったり、子爵家のご家族だったりした。問題なさそうね。テントを張られないだけ、よかったわ。
手配された料理が届くと、順番に味見……ではなく、毒見がされる。私達シュミット伯爵家だけなら必要ないけれど、ケンプフェルト公爵家には省けない手順ね。大人しく待つレオンの黒髪を撫でた。
温かいうちにと急がせたベルントのお陰で、串焼きが皿に並んだ。丁寧に串を抜かれ、カトラリーを添えて提供される。変な顔をしているのはエルヴィンと双子達。今までなら「気をつけるのよ」と串ごと渡されたのに。
「いただきましょう」
微笑んで、一口サイズにカットした肉を、レオンへ運ぶ。ぱくりと口に入れ、もぐもぐと咀嚼する。考え事をするように斜め上を見ながら、右へ左へ、頬が膨らんだ。噛み切れないんでしょう? ふふっと笑い、私も口に入れた。思ったより硬いわね。切る時はあまり感じなかったけど……。
同様に家族も無言になり、必死に咀嚼する。周囲は騒がしいのに、テーブルは静まり返った。
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