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24.契約にないので関わりません
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旦那様が帰宅した。家令フランクは出迎えに玄関へ向かい、伝えた執事ベルントも後を追う。見送って、私はレオンの口元をハンカチで拭った。
小さな子って、すぐに鼻水や涎を垂らすのよね。絹のハンカチではなく、綿のハンカチを用意してもらった。硬くて使いづらいですよ、と侍女のリリーは忠告する。もっともな意見だけれど……。
「煮てから揉むのよ、それで……こう」
これは街の商店の奥さんに教えてもらった知恵だ。一度煮てから干す。二度目に酢を混ぜた液体に浸し、濯いでまた干すらしい。実際に試してみたら、ゴワゴワだった家族の服が柔らかくなった。
吸水性も良くなると聞いているから、汗や涎を拭き取るのに最適だわ。準備した大量のハンカチを、次々と交換しながら使う。すっごい贅沢! 同じように感じたのか、エルヴィンは裏返したり折ったりして使用する。
途中で侍女に見つかり、交換するよう説得されていた。ふふっ、私もつい先日叱られたばかりよ。
「おかあしゃま! こえ!!」
庭に咲く花を指差して呼ぶレオンに近づけば、綺麗な白い花を見せてくれた。
「綺麗ね」
「うん」
嬉しそうに笑うのは、同じ気持ちを分かち合いたいのね。微笑んで眺めていると、庭師が声をかけてきた。
「花を摘んでご用意しましょうか」
「いいえ。このままにしてちょうだい」
摘んだら可哀想だわ。レオンもそう感じたから、手を伸ばさなかったんだと思う。可愛いレオンの黒髪を撫でて、手を繋ぐ。一緒に立ち上がって、庭師にお礼を言った。いつも綺麗に整えてくれて、ありがとう。
「あぃあと!」
真似してぺこりとお辞儀するレオンに、感動した庭師が深く頭を下げた。皺だらけで小さな切り傷も残る指先は、泥がついている。その手は、仕事に誇りを持って生きる人の宝だわ。
レオンにはこういった教育も必要よね。いままで情緒教育が足りていなかったんだもの。それでもこんなに素直で明るいのは、天使だから? 抱き上げたレオンは、温かな手で首に触れる。
ぎゅっと掴まる可愛い息子を抱いたまま、くるりと回った。
「きゃぁ!」
大喜びで声を上げる。駆け寄ったエルヴィンや双子と一緒に、部屋へ戻った。そういえば、誰も邪魔しにこないわね。旦那様が帰ったから顔を出せ、なんて言われるかと思ったけれど。
あの方との契約に、夫婦らしい交流や触れ合いは記載されていなかった。屋敷内なら、社交の場ではないから問題なし。何か言われたら、そう返しておこうと考えていた。関わらないでいてくれるなら、楽でいいわ。
絵本を読みたいと騒ぐ双子に、レオンが意思表示した。
「ぼくも、ほん」
「いいわ、カッコいい英雄の出てくるお話を読みましょうね」
大喜びする双子が絡むようにスカートを握り、エルヴィンがそれを叱る。騒がしくお部屋に戻り、土足禁止にした居間に座った。用意されたタオルで、子供達の手足や顔を拭く。綺麗になったのを確認し、絵本を一冊広げた。
膝に座るレオン、後ろから覗き込む双子。エルヴィンは読みたい本があるようで、自分で開いて文字を目で追っている。
「あるところに、悪い魔法使いがいました……」
魔法使いに妹を連れ去られ、倒しに行くお話。抑揚をつけて感情豊かに語れば、子供達は釘付けだ。いつの間にか、エルヴィンも加わった子供達は「幸せに暮らしましたとさ」で終わる物語に目を輝かせていた。
小さな子って、すぐに鼻水や涎を垂らすのよね。絹のハンカチではなく、綿のハンカチを用意してもらった。硬くて使いづらいですよ、と侍女のリリーは忠告する。もっともな意見だけれど……。
「煮てから揉むのよ、それで……こう」
これは街の商店の奥さんに教えてもらった知恵だ。一度煮てから干す。二度目に酢を混ぜた液体に浸し、濯いでまた干すらしい。実際に試してみたら、ゴワゴワだった家族の服が柔らかくなった。
吸水性も良くなると聞いているから、汗や涎を拭き取るのに最適だわ。準備した大量のハンカチを、次々と交換しながら使う。すっごい贅沢! 同じように感じたのか、エルヴィンは裏返したり折ったりして使用する。
途中で侍女に見つかり、交換するよう説得されていた。ふふっ、私もつい先日叱られたばかりよ。
「おかあしゃま! こえ!!」
庭に咲く花を指差して呼ぶレオンに近づけば、綺麗な白い花を見せてくれた。
「綺麗ね」
「うん」
嬉しそうに笑うのは、同じ気持ちを分かち合いたいのね。微笑んで眺めていると、庭師が声をかけてきた。
「花を摘んでご用意しましょうか」
「いいえ。このままにしてちょうだい」
摘んだら可哀想だわ。レオンもそう感じたから、手を伸ばさなかったんだと思う。可愛いレオンの黒髪を撫でて、手を繋ぐ。一緒に立ち上がって、庭師にお礼を言った。いつも綺麗に整えてくれて、ありがとう。
「あぃあと!」
真似してぺこりとお辞儀するレオンに、感動した庭師が深く頭を下げた。皺だらけで小さな切り傷も残る指先は、泥がついている。その手は、仕事に誇りを持って生きる人の宝だわ。
レオンにはこういった教育も必要よね。いままで情緒教育が足りていなかったんだもの。それでもこんなに素直で明るいのは、天使だから? 抱き上げたレオンは、温かな手で首に触れる。
ぎゅっと掴まる可愛い息子を抱いたまま、くるりと回った。
「きゃぁ!」
大喜びで声を上げる。駆け寄ったエルヴィンや双子と一緒に、部屋へ戻った。そういえば、誰も邪魔しにこないわね。旦那様が帰ったから顔を出せ、なんて言われるかと思ったけれど。
あの方との契約に、夫婦らしい交流や触れ合いは記載されていなかった。屋敷内なら、社交の場ではないから問題なし。何か言われたら、そう返しておこうと考えていた。関わらないでいてくれるなら、楽でいいわ。
絵本を読みたいと騒ぐ双子に、レオンが意思表示した。
「ぼくも、ほん」
「いいわ、カッコいい英雄の出てくるお話を読みましょうね」
大喜びする双子が絡むようにスカートを握り、エルヴィンがそれを叱る。騒がしくお部屋に戻り、土足禁止にした居間に座った。用意されたタオルで、子供達の手足や顔を拭く。綺麗になったのを確認し、絵本を一冊広げた。
膝に座るレオン、後ろから覗き込む双子。エルヴィンは読みたい本があるようで、自分で開いて文字を目で追っている。
「あるところに、悪い魔法使いがいました……」
魔法使いに妹を連れ去られ、倒しに行くお話。抑揚をつけて感情豊かに語れば、子供達は釘付けだ。いつの間にか、エルヴィンも加わった子供達は「幸せに暮らしましたとさ」で終わる物語に目を輝かせていた。
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