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113.素敵すぎて見せたくない
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会食のいいところは、夜会と違って主賓がはっきりしていること。後はパートナーを誰かに奪われる心配がないことか。先ほど咄嗟の判断で、ナーリスヴァーラ大公であるニルスやシュルストレーム女公爵ソフィと一緒の会食があると言った。
謁見の大広間という公式の場で口にしたため、これは正式な行事として認識される。つまり、会食のホストは僕とトリシャだけれど……もてなされる側はニルスとソフィだった。その場に、アースルンドの新国王ヨアキムが合流する。トリシャがもてなす相手はソフィであり、ヨアキムではない。
夜会や舞踏会と違い、ダンスを踊るために他の男の手をとる必要もなかった。反射的にでた牽制の言葉が、こんなに使えるなんて。用意を終えた僕は、廊下でそわそわしながら待つ。着替えを終えたトリシャが、ゆっくりと姿を見せた。
「エリク、待たせてしまいましたか?」
「綺麗だね、トリシャ。すごく素敵だ。もったいなくて、このまま部屋に二人で閉じこもりたいくらいだよ」
褒められ慣れないトリシャの頬が赤く染まる。ハーフアップの髪には、花ではなく蔦を絡めていた。ドレスのミントグリーンに映える。それに琥珀の耳飾りが、花のように見えるね。センスのいい彼女の髪飾りは、首元から肩にかけてブローチのように大きな物が使われていた。
僕の瞳の色である蒼玉が輝く飾りは、緑柱石や金剛石も使われた豪華なものだ。この一点だけで小国の財政が傾くほどの宝石だった。身につけたトリシャの美しさに見惚れながら、膝をついて手を差し伸べる。
「これほどの美女なら、僕を待たせるくらいでちょうどいいね」
ウィンクして彼女の手を受け、絹の手袋に隠された手の甲に口付ける。紳士的に振る舞う僕に、トリシャは嬉しそうに笑った。以前は謙遜ばかりだったけど、最近は僕の言葉を受け止めて照れる。どちらも愛らしい。
「ニルスとソフィも準備が終わったと思うから、先に行こうか」
彼女達は主賓だ。そう伝えると驚いた顔をしたものの、追加の客の存在も知らせた。新しい隣国の王と知り、トリシャの表情が引き締まる。かつて王太子妃教育を受けた彼女の礼儀作法は、宮廷のマナー講師お墨付きの出来栄えだった。だから心配はいらないんだけどね。
エスコートして歩きながら、本宮の前でひとつだけ……大切な注意をしておかないと。
「トリシャ、アースルンドの国王だけど……女好きで有名らしいから近づいてはいけないよ」
「お客様ですよね?」
「客だけど、客じゃないから」
子どもみたいに頬を膨らませた僕に、くすくすと笑うトリシャの口元が笑みを湛える。いつもより濃い紅の色が印象的だった。
「ご安心ください。私はエリクのものですわ」
「わかってても心配なんだよ。だから触れられそうになったら扇で叩いていい。僕が許す」
そんな状況になったら、先に護衛の双子が動くと思うけどね。目配せした後ろのマルスとアレスが頷くのを確認し、僕は開かれた扉の奥へ足を踏み入れた。
謁見の大広間という公式の場で口にしたため、これは正式な行事として認識される。つまり、会食のホストは僕とトリシャだけれど……もてなされる側はニルスとソフィだった。その場に、アースルンドの新国王ヨアキムが合流する。トリシャがもてなす相手はソフィであり、ヨアキムではない。
夜会や舞踏会と違い、ダンスを踊るために他の男の手をとる必要もなかった。反射的にでた牽制の言葉が、こんなに使えるなんて。用意を終えた僕は、廊下でそわそわしながら待つ。着替えを終えたトリシャが、ゆっくりと姿を見せた。
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「綺麗だね、トリシャ。すごく素敵だ。もったいなくて、このまま部屋に二人で閉じこもりたいくらいだよ」
褒められ慣れないトリシャの頬が赤く染まる。ハーフアップの髪には、花ではなく蔦を絡めていた。ドレスのミントグリーンに映える。それに琥珀の耳飾りが、花のように見えるね。センスのいい彼女の髪飾りは、首元から肩にかけてブローチのように大きな物が使われていた。
僕の瞳の色である蒼玉が輝く飾りは、緑柱石や金剛石も使われた豪華なものだ。この一点だけで小国の財政が傾くほどの宝石だった。身につけたトリシャの美しさに見惚れながら、膝をついて手を差し伸べる。
「これほどの美女なら、僕を待たせるくらいでちょうどいいね」
ウィンクして彼女の手を受け、絹の手袋に隠された手の甲に口付ける。紳士的に振る舞う僕に、トリシャは嬉しそうに笑った。以前は謙遜ばかりだったけど、最近は僕の言葉を受け止めて照れる。どちらも愛らしい。
「ニルスとソフィも準備が終わったと思うから、先に行こうか」
彼女達は主賓だ。そう伝えると驚いた顔をしたものの、追加の客の存在も知らせた。新しい隣国の王と知り、トリシャの表情が引き締まる。かつて王太子妃教育を受けた彼女の礼儀作法は、宮廷のマナー講師お墨付きの出来栄えだった。だから心配はいらないんだけどね。
エスコートして歩きながら、本宮の前でひとつだけ……大切な注意をしておかないと。
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「お客様ですよね?」
「客だけど、客じゃないから」
子どもみたいに頬を膨らませた僕に、くすくすと笑うトリシャの口元が笑みを湛える。いつもより濃い紅の色が印象的だった。
「ご安心ください。私はエリクのものですわ」
「わかってても心配なんだよ。だから触れられそうになったら扇で叩いていい。僕が許す」
そんな状況になったら、先に護衛の双子が動くと思うけどね。目配せした後ろのマルスとアレスが頷くのを確認し、僕は開かれた扉の奥へ足を踏み入れた。
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