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第3章 白薔薇を赤く染めて
3-5.喪えないから怖くなる
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失ってしまう……またこの手から、最愛の存在を奪われるのだ。
国王という地位が災いを呼び寄せるなら、捨ててしまいたいのに…。
涙が溢れて潤んだ蒼瞳を天井へ向ける。零れ落ちないように気を張って、震える拳を握り締めた。
最初に失ったのは、姉。続いて両親。まるでユリシュアン王家の根絶やしを狙うように、次々と近しい親族は殺されていく。そして初めての友人も、俺を狙った刺客の手で果てた。
心を閉ざした俺を包んでくれたウィリアムは、公にしていないが従兄弟に当たる。近しい親族であると同時に、誰より愛する半身だった。
彼を失ったなら、もう歩く先に途は存在しない。
「……ウィル」
唇だけで呟いた。吐息は溶けて声にならず、乾きかけた涙が再び滲む。
カタン……人払いした謁見の間に響いた物音に、親衛隊の6名が武器を向けた。
荘厳な雰囲気を齎そうと、吹き抜けにして教会のような高い天井を持つ謁見の間は、いつにない緊迫した空気に満たされる。
入り口に立つ2つの人影が一歩進み、目を凝らした護衛の親衛隊員が誰何の言葉を向けた。
「誰だ?!」
「……エリヤ」
吐息に混じって消えそうな声に、エリヤは目を瞠る。
目の前に立ちはだかる壁のような護衛を押しのけ、信じられないと語る蒼い瞳で食い入るように見つめた。
「ウィリアム?」
震える唇が吐き出した名は小さくて、普段なら物音にかき消されただろう。しかし緊迫した空間の静寂を破って、確かに目指す人物の耳に届いていた。
「陛下……」
言い直された呼び名に、くしゃりと顔を泣き崩して走り出す。
執政本人だと判断した護衛が止めることはなく、人の壁を擦り抜けた少年は広間を駆け抜けた。
勢いのまま抱きつき、呻くウィリアムの汚れた服に顔を押し付けてしゃくり上げる。
「ゴメンな……心配かけた」
隣のラユダが一瞬目を瞠るが、何も言わなかった。
2人の関係をどう捉えたのか、もしかしたら『男色の噂』を思い出したのかも知れない。
不敬罪に問うべき口調と言葉遣いを、国王自身が咎めないのなら誰も口出しは出来なかった。
「……んだ、と……思っ、た…っ」
倒れこんだ白い薔薇が血を吸って赤く染まる錯覚に、エリヤは恐ろしさを覚える。
己の心臓に剣を突き立てられるより怖くて、ウィリアムを奪われるかも知れないと心は激痛に泣き叫んだ。
両手で掴んだ礼服は血で汚れ、湿っている。しかし触れた手は温かかった。
「……よ…か、った」
安心した途端に気を失って崩れ落ちる体を抱こうと、我が身を支えるラユダの腕を払ってウィリアムは腕を伸ばす。
かくんと崩れる膝が床につき、最愛の主を抱き締めて座り込んだ。
「……大丈夫、おまえを置いて死んだりしない」
耳元で囁いて、黒髪に唇を押し当てる。
触れるだけのキスで顔を上げ、ウィリアムは親衛隊に指示を出した。
犯人の死体から黒幕を洗い出す手順、オズボーンの使者への対応、貴族達の動向の監視、さまざまな事項を手配し終えると溜め息を吐く。
ふと思い出して見上げれば、国王の小柄な体を抱き締めたウィリアムの背を守るように一歩下がって立つラユダがいた。
口出しすることなく、押し付けがましい態度に出ることもない。ただ当然のように背を守る姿に、ふっと肩の力が抜けた。
「……ラユダだっけ? サンキューな」
静かに首を横に振る彼の制服が親衛隊のものでないことに、今更ながらに気づく。
考えてみれば、12名の親衛隊はすべてウィリアム自身が選んだメンバーだ。その中にラユダが居れば、あの場で名を尋ねることもなかった筈……。
「所属は?」
「第三師団、第一大隊のA小隊」
驚きに目を瞠る。
第三師団は傭兵部隊だ。他国から住み着いたり流れ込んだ者を中心に構成される部隊で、ほぼ外へ派遣されている。
間違っても国王に接する機会がある中庭や回廊付近に配置されることはなかった。
だから顔も知らなかったのかと納得する反面、不審に思う。
なぜ、回廊にいた?
「ショーンの指示で、回廊に配置された」
青紫の瞳があらわした感情に苦笑し、ラユダは先回りして答える。そこに出た名は、ウィリアムにも馴染みある人物のものだった。
チャンリー公爵家――エリヤと祖父を同じくするユリシュアン王家の分家だ。
ショーンは公爵家を継いだばかりの新当主で、エリヤより2つ年上だった。
鋭い黒曜石の瞳は母親の血筋だろう。曲がったことが許せない真っ直ぐな気質は、好感が持てる。
「詳しくはショーンに聞いてくれ」
彼の指示で配置されたというなら、ラユダはショーンの私兵に近い。にも関わらず、名を呼び捨てる態度は慣れを感じさせた。
どうやら長い付き合いがあるのだろう。そしてショーンの名を口にするラユダの緑瞳が和らぐ様をみれば、大まかな関係も掴めた。
そこまで計算して口にしたのか、ラユダを詳しく知らないウィリアムは判断をせず笑う。
「ああ、信用するよ」
エリヤを抱いたまま、痛みを耐えて立ち上がる。ふらついた肩を後ろからラユダが支えた。
激痛が全身を苛む。まだ止血をしただけの腹部は、激痛の温床だった。
だがエリヤを誰かの手に任せる気はない。
その執着と強さを知るが故に、親衛隊の誰も手を出さなかった。
一歩踏み出すことに喚き散らしたくなる痛みを噛み殺し、国王の私室までの数十メートルを歩き続ける。
一度でも足を止めたら歩けなくなると知っているウィリアムは、結局誰の手も借りずにエリヤをベッドに横たえた。
真っ白なシーツに赤が染みていく。
「おまえも手当てを……」
隣室へ移動するように促すラユダに首を横に振り、医者をこの部屋に呼べと命じた。
「目が覚めた、とき……いな、いと……」
蒼い瞳に自分が映らなくては意味がないのだ。
決意を秘めた強い眼差しに、呆れたと笑ったラユダは肩を竦めた後に頷いた。
漆黒の世界で、突然目の前を塗り替える赤。
生臭さが広がって、吐き気が襲ってきた。
「嫌だっ!」
叫んで伸ばした手を、何かが包み込む。
温かくて柔らかい感触にほっとして……強く縋りついた。握り締めたモノが手だと知り、反射的に力を込める。
薄布が目に映った。見慣れた天蓋の絹だと判断するまで、少し時間がかかる。
ぼんやりした目を瞬きして周囲へ廻らせた。
「……ィル?」
「陛下、ここに……」
すぐ返った声に身を起こし、左手を握る温もりの主を確かめる。
悪夢の中から救い出してくれた手は、最愛の存在だった。
優しい色を宿した青紫の瞳を見るうちに、ゆっくり経緯を思い出す。
飛び出した刺客が狙っていたのは――ウィリアムじゃない。
国王である自分を殺そうとしたのだろう。目の前に立つウィリアムを刺したのは、おそらく2人とも亡き者にするつもりだったのだ。
「……ケガの状態は?」
ありきたりなことしか聞けない。
震える声に微笑んで、ウィリアムは首を横に振った。汚れた正装は着替えたのだろう、手当てされた包帯がシャツの下に透かし見える。
上着に袖を通さず羽織った様は不敬に当たるのだろうが、逆にエリヤは安心した。
大丈夫だ、ただのケガに過ぎないと……。
ウィリアムはその視覚的効果を狙って、上着を肩に羽織っただけに留めたのだろう。
エリヤのことになると、妙なくらい気を配る男なのだ。
「陛下が気に病まれるケガではありません」
丁寧な敬語を使うウィリアムに一瞬眉を顰め、すぐに周囲を取り巻く親衛隊に気づいて表情を引き締めた。
「ご安心ください、お側におりますから」
それは臣下の言葉に聞こえる。しかし中に含まれた意味を正確に読み取り、エリヤは安堵の息をついた。
側に居るということは、重傷ではないという意味。
「皆ご苦労であった、下がれ」
国王の命令に顔を見合わせた親衛隊が、「しかし…」と反論を試みる。だが一瞥する蒼い眼差しの鋭さに、息を呑んで頭を下げた。
命を狙われたばかりの国王を部屋に残す不安はあるが、周囲をきちんと固めれば守ることは可能だろう。
冷静な判断を下した部下が頭を下げるのを待って、ウィリアムは立ち上がる。
膝を着いてベッド脇に控えていた体を起こせば、眩暈に視界が揺らいだ。
軽く目を伏せ、大きく息を吸い込むことで誤魔化して笑みを浮べる。
「では失礼いたします」
親衛隊の敬礼に頷いたエリヤが、ウィリアムを呼び止めた。
「ウィリアムは残れ、話がある」
淡々と言われた命令に親衛隊は疑問を持たず、部屋を辞した。
残るウィリアムが再びベッド脇に膝をつく。息を止めて痛みをやり過ごした様子を見逃さず、エリヤはやっと2人きりになれた安堵から手を伸ばした。
ベッドの端から滑るように床に座り込み、最愛の存在へ抱きつく。首に手を回し背を抱くようにして、必死で縋りついた体は……確かに温かかった。
「エリヤ……心配させてゴメンな」
謝罪する必要などないのに……。
目の奥が熱くなった。じわりと滲む涙を瞬きで誤魔化す。
「無事で……良かった」
「エリヤを残して死ぬことはないから」
額に接吻けるウィリアムの唇が、普段より熱く感じた。
国王という地位が災いを呼び寄せるなら、捨ててしまいたいのに…。
涙が溢れて潤んだ蒼瞳を天井へ向ける。零れ落ちないように気を張って、震える拳を握り締めた。
最初に失ったのは、姉。続いて両親。まるでユリシュアン王家の根絶やしを狙うように、次々と近しい親族は殺されていく。そして初めての友人も、俺を狙った刺客の手で果てた。
心を閉ざした俺を包んでくれたウィリアムは、公にしていないが従兄弟に当たる。近しい親族であると同時に、誰より愛する半身だった。
彼を失ったなら、もう歩く先に途は存在しない。
「……ウィル」
唇だけで呟いた。吐息は溶けて声にならず、乾きかけた涙が再び滲む。
カタン……人払いした謁見の間に響いた物音に、親衛隊の6名が武器を向けた。
荘厳な雰囲気を齎そうと、吹き抜けにして教会のような高い天井を持つ謁見の間は、いつにない緊迫した空気に満たされる。
入り口に立つ2つの人影が一歩進み、目を凝らした護衛の親衛隊員が誰何の言葉を向けた。
「誰だ?!」
「……エリヤ」
吐息に混じって消えそうな声に、エリヤは目を瞠る。
目の前に立ちはだかる壁のような護衛を押しのけ、信じられないと語る蒼い瞳で食い入るように見つめた。
「ウィリアム?」
震える唇が吐き出した名は小さくて、普段なら物音にかき消されただろう。しかし緊迫した空間の静寂を破って、確かに目指す人物の耳に届いていた。
「陛下……」
言い直された呼び名に、くしゃりと顔を泣き崩して走り出す。
執政本人だと判断した護衛が止めることはなく、人の壁を擦り抜けた少年は広間を駆け抜けた。
勢いのまま抱きつき、呻くウィリアムの汚れた服に顔を押し付けてしゃくり上げる。
「ゴメンな……心配かけた」
隣のラユダが一瞬目を瞠るが、何も言わなかった。
2人の関係をどう捉えたのか、もしかしたら『男色の噂』を思い出したのかも知れない。
不敬罪に問うべき口調と言葉遣いを、国王自身が咎めないのなら誰も口出しは出来なかった。
「……んだ、と……思っ、た…っ」
倒れこんだ白い薔薇が血を吸って赤く染まる錯覚に、エリヤは恐ろしさを覚える。
己の心臓に剣を突き立てられるより怖くて、ウィリアムを奪われるかも知れないと心は激痛に泣き叫んだ。
両手で掴んだ礼服は血で汚れ、湿っている。しかし触れた手は温かかった。
「……よ…か、った」
安心した途端に気を失って崩れ落ちる体を抱こうと、我が身を支えるラユダの腕を払ってウィリアムは腕を伸ばす。
かくんと崩れる膝が床につき、最愛の主を抱き締めて座り込んだ。
「……大丈夫、おまえを置いて死んだりしない」
耳元で囁いて、黒髪に唇を押し当てる。
触れるだけのキスで顔を上げ、ウィリアムは親衛隊に指示を出した。
犯人の死体から黒幕を洗い出す手順、オズボーンの使者への対応、貴族達の動向の監視、さまざまな事項を手配し終えると溜め息を吐く。
ふと思い出して見上げれば、国王の小柄な体を抱き締めたウィリアムの背を守るように一歩下がって立つラユダがいた。
口出しすることなく、押し付けがましい態度に出ることもない。ただ当然のように背を守る姿に、ふっと肩の力が抜けた。
「……ラユダだっけ? サンキューな」
静かに首を横に振る彼の制服が親衛隊のものでないことに、今更ながらに気づく。
考えてみれば、12名の親衛隊はすべてウィリアム自身が選んだメンバーだ。その中にラユダが居れば、あの場で名を尋ねることもなかった筈……。
「所属は?」
「第三師団、第一大隊のA小隊」
驚きに目を瞠る。
第三師団は傭兵部隊だ。他国から住み着いたり流れ込んだ者を中心に構成される部隊で、ほぼ外へ派遣されている。
間違っても国王に接する機会がある中庭や回廊付近に配置されることはなかった。
だから顔も知らなかったのかと納得する反面、不審に思う。
なぜ、回廊にいた?
「ショーンの指示で、回廊に配置された」
青紫の瞳があらわした感情に苦笑し、ラユダは先回りして答える。そこに出た名は、ウィリアムにも馴染みある人物のものだった。
チャンリー公爵家――エリヤと祖父を同じくするユリシュアン王家の分家だ。
ショーンは公爵家を継いだばかりの新当主で、エリヤより2つ年上だった。
鋭い黒曜石の瞳は母親の血筋だろう。曲がったことが許せない真っ直ぐな気質は、好感が持てる。
「詳しくはショーンに聞いてくれ」
彼の指示で配置されたというなら、ラユダはショーンの私兵に近い。にも関わらず、名を呼び捨てる態度は慣れを感じさせた。
どうやら長い付き合いがあるのだろう。そしてショーンの名を口にするラユダの緑瞳が和らぐ様をみれば、大まかな関係も掴めた。
そこまで計算して口にしたのか、ラユダを詳しく知らないウィリアムは判断をせず笑う。
「ああ、信用するよ」
エリヤを抱いたまま、痛みを耐えて立ち上がる。ふらついた肩を後ろからラユダが支えた。
激痛が全身を苛む。まだ止血をしただけの腹部は、激痛の温床だった。
だがエリヤを誰かの手に任せる気はない。
その執着と強さを知るが故に、親衛隊の誰も手を出さなかった。
一歩踏み出すことに喚き散らしたくなる痛みを噛み殺し、国王の私室までの数十メートルを歩き続ける。
一度でも足を止めたら歩けなくなると知っているウィリアムは、結局誰の手も借りずにエリヤをベッドに横たえた。
真っ白なシーツに赤が染みていく。
「おまえも手当てを……」
隣室へ移動するように促すラユダに首を横に振り、医者をこの部屋に呼べと命じた。
「目が覚めた、とき……いな、いと……」
蒼い瞳に自分が映らなくては意味がないのだ。
決意を秘めた強い眼差しに、呆れたと笑ったラユダは肩を竦めた後に頷いた。
漆黒の世界で、突然目の前を塗り替える赤。
生臭さが広がって、吐き気が襲ってきた。
「嫌だっ!」
叫んで伸ばした手を、何かが包み込む。
温かくて柔らかい感触にほっとして……強く縋りついた。握り締めたモノが手だと知り、反射的に力を込める。
薄布が目に映った。見慣れた天蓋の絹だと判断するまで、少し時間がかかる。
ぼんやりした目を瞬きして周囲へ廻らせた。
「……ィル?」
「陛下、ここに……」
すぐ返った声に身を起こし、左手を握る温もりの主を確かめる。
悪夢の中から救い出してくれた手は、最愛の存在だった。
優しい色を宿した青紫の瞳を見るうちに、ゆっくり経緯を思い出す。
飛び出した刺客が狙っていたのは――ウィリアムじゃない。
国王である自分を殺そうとしたのだろう。目の前に立つウィリアムを刺したのは、おそらく2人とも亡き者にするつもりだったのだ。
「……ケガの状態は?」
ありきたりなことしか聞けない。
震える声に微笑んで、ウィリアムは首を横に振った。汚れた正装は着替えたのだろう、手当てされた包帯がシャツの下に透かし見える。
上着に袖を通さず羽織った様は不敬に当たるのだろうが、逆にエリヤは安心した。
大丈夫だ、ただのケガに過ぎないと……。
ウィリアムはその視覚的効果を狙って、上着を肩に羽織っただけに留めたのだろう。
エリヤのことになると、妙なくらい気を配る男なのだ。
「陛下が気に病まれるケガではありません」
丁寧な敬語を使うウィリアムに一瞬眉を顰め、すぐに周囲を取り巻く親衛隊に気づいて表情を引き締めた。
「ご安心ください、お側におりますから」
それは臣下の言葉に聞こえる。しかし中に含まれた意味を正確に読み取り、エリヤは安堵の息をついた。
側に居るということは、重傷ではないという意味。
「皆ご苦労であった、下がれ」
国王の命令に顔を見合わせた親衛隊が、「しかし…」と反論を試みる。だが一瞥する蒼い眼差しの鋭さに、息を呑んで頭を下げた。
命を狙われたばかりの国王を部屋に残す不安はあるが、周囲をきちんと固めれば守ることは可能だろう。
冷静な判断を下した部下が頭を下げるのを待って、ウィリアムは立ち上がる。
膝を着いてベッド脇に控えていた体を起こせば、眩暈に視界が揺らいだ。
軽く目を伏せ、大きく息を吸い込むことで誤魔化して笑みを浮べる。
「では失礼いたします」
親衛隊の敬礼に頷いたエリヤが、ウィリアムを呼び止めた。
「ウィリアムは残れ、話がある」
淡々と言われた命令に親衛隊は疑問を持たず、部屋を辞した。
残るウィリアムが再びベッド脇に膝をつく。息を止めて痛みをやり過ごした様子を見逃さず、エリヤはやっと2人きりになれた安堵から手を伸ばした。
ベッドの端から滑るように床に座り込み、最愛の存在へ抱きつく。首に手を回し背を抱くようにして、必死で縋りついた体は……確かに温かかった。
「エリヤ……心配させてゴメンな」
謝罪する必要などないのに……。
目の奥が熱くなった。じわりと滲む涙を瞬きで誤魔化す。
「無事で……良かった」
「エリヤを残して死ぬことはないから」
額に接吻けるウィリアムの唇が、普段より熱く感じた。
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