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15.ご心配をおかけしました
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お父様の到着が知らされ、王妃様にご用意いただいたドレスを纏います。まだ本調子ではないこともあり、ドレスは柔らかなエンパイアラインでした。胸のすぐ下からスカートになっているので、腹部の締め付けがありません。コルセットなしで着用できるよう手配してくださったのでしょう。
胸や腰を締め付けないだけで、とても楽になりました。立ち上がっても貧血のような症状はありませんし、息苦しさも感じません。国王陛下も同席なさるそうですが、謁見の間は利用しないと聞きました。私的な集まりという形を優先し、客間のひとつを使うのだとか。
「失礼いたします。王太子殿下パトリツィオ様がお見えです」
侍女の声に、スカートを摘まんで一礼します。第二王子であられたパトリツィオ様は、このたび王太子殿下になられました。この時点で、私は婚約者候補です。そのためエスコートを申し出てくださったのですが、また身長が伸びたのでしょうか。今までより背が高く感じました。
軽く触れ合わせた手はレースの手袋で覆っています。肩を出したドレスですが、胸元にレースを配して、首周りのチョーカーと一体化させました。屋外へ出るならハーフコートが必要ですが、窓越しの日差しは暖かく感じます。
「よろしくお願いいたしますわ、王太子殿下」
「出来たらパトリツィオと呼んで欲しいのですが、そのためには婚約者の地位を勝ち取らねばなりませんね」
くすっと笑うパトリツィオ様の言葉の意味が理解できず、首を傾げました。私は王家に嫁ぐことが決まっています。王太子になられたパトリツィオ殿下以外に、誰が私を娶ってくださるのでしょうか。すでに一度婚約を破棄された傷物ですのに。
パトリツィオ様にも、別の婚約者候補が用意されるはずです。義弟になる予定だったお方にしがみ付いて、嫌われるのも嫌でした。曖昧に微笑んで会釈で会話を打ち切ります。パトリツィオ様は完璧なエスコートで、顔を上げた私を案内してくれました。
お礼を言って部屋に入ると、お父様が泣きそうな笑顔で立ち上がります。泣き顔を我慢して、無理に笑顔を作ったような……そんなに心配させたのですね。お父様もお母様も、私と離れて暮らすことに反対しておられました。今回は一緒に帰ろうと言われたら頷く覚悟があります。
王妃様を筆頭に、王家の方々は優しかった。私はそれに甘えていたのです。ですが、その期間に両親はどうしていたのか。大切な公爵領の人々や分家の方々の心労を思えば、私は公爵家のため尽くす貴族家との結婚を考えなければなりません。
「お父様、ご心配をおかけしました」
王妃様や国王陛下が不在の部屋で、まずお父様にご挨拶を。それからパトリツィオ様に勧められてソファに腰掛けました。ここでなぜかひと悶着あり、私だけが腰掛ける形で待ちます。隣に誰が座るか、やっと決まったのは侍女がお茶を淹れ終えた頃でした。
親であるお父様が隣に並び、王族であるパトリツィオ様が向かいです。王妃様や国王陛下がおいでになった時のことを考えると、こちらの方が正しい気がしました。まだ婚約者でもないのに、私が王太子殿下の隣に腰掛けるのはおかしいんですもの。
「ルーナ、今回は大変だったね。ティナも心配しているから帰ろう」
「はい、お父様」
久しぶりの帰郷となりますが、お母様や弟のダヴィードは元気でしょうか。お父様は離れていた時間を埋めるように、私の手を握ってくださいました。温かく大きな手です。
何か言いたそうなパトリツィオ様でしたが、そのタイミングで国王夫妻がお見えになられたので立ち上がります。跪礼を行ってお迎えし、王族の方々の着座を待って再びソファに腰を下ろした私は、お父様と王妃様の話に驚くこととなりました。
胸や腰を締め付けないだけで、とても楽になりました。立ち上がっても貧血のような症状はありませんし、息苦しさも感じません。国王陛下も同席なさるそうですが、謁見の間は利用しないと聞きました。私的な集まりという形を優先し、客間のひとつを使うのだとか。
「失礼いたします。王太子殿下パトリツィオ様がお見えです」
侍女の声に、スカートを摘まんで一礼します。第二王子であられたパトリツィオ様は、このたび王太子殿下になられました。この時点で、私は婚約者候補です。そのためエスコートを申し出てくださったのですが、また身長が伸びたのでしょうか。今までより背が高く感じました。
軽く触れ合わせた手はレースの手袋で覆っています。肩を出したドレスですが、胸元にレースを配して、首周りのチョーカーと一体化させました。屋外へ出るならハーフコートが必要ですが、窓越しの日差しは暖かく感じます。
「よろしくお願いいたしますわ、王太子殿下」
「出来たらパトリツィオと呼んで欲しいのですが、そのためには婚約者の地位を勝ち取らねばなりませんね」
くすっと笑うパトリツィオ様の言葉の意味が理解できず、首を傾げました。私は王家に嫁ぐことが決まっています。王太子になられたパトリツィオ殿下以外に、誰が私を娶ってくださるのでしょうか。すでに一度婚約を破棄された傷物ですのに。
パトリツィオ様にも、別の婚約者候補が用意されるはずです。義弟になる予定だったお方にしがみ付いて、嫌われるのも嫌でした。曖昧に微笑んで会釈で会話を打ち切ります。パトリツィオ様は完璧なエスコートで、顔を上げた私を案内してくれました。
お礼を言って部屋に入ると、お父様が泣きそうな笑顔で立ち上がります。泣き顔を我慢して、無理に笑顔を作ったような……そんなに心配させたのですね。お父様もお母様も、私と離れて暮らすことに反対しておられました。今回は一緒に帰ろうと言われたら頷く覚悟があります。
王妃様を筆頭に、王家の方々は優しかった。私はそれに甘えていたのです。ですが、その期間に両親はどうしていたのか。大切な公爵領の人々や分家の方々の心労を思えば、私は公爵家のため尽くす貴族家との結婚を考えなければなりません。
「お父様、ご心配をおかけしました」
王妃様や国王陛下が不在の部屋で、まずお父様にご挨拶を。それからパトリツィオ様に勧められてソファに腰掛けました。ここでなぜかひと悶着あり、私だけが腰掛ける形で待ちます。隣に誰が座るか、やっと決まったのは侍女がお茶を淹れ終えた頃でした。
親であるお父様が隣に並び、王族であるパトリツィオ様が向かいです。王妃様や国王陛下がおいでになった時のことを考えると、こちらの方が正しい気がしました。まだ婚約者でもないのに、私が王太子殿下の隣に腰掛けるのはおかしいんですもの。
「ルーナ、今回は大変だったね。ティナも心配しているから帰ろう」
「はい、お父様」
久しぶりの帰郷となりますが、お母様や弟のダヴィードは元気でしょうか。お父様は離れていた時間を埋めるように、私の手を握ってくださいました。温かく大きな手です。
何か言いたそうなパトリツィオ様でしたが、そのタイミングで国王夫妻がお見えになられたので立ち上がります。跪礼を行ってお迎えし、王族の方々の着座を待って再びソファに腰を下ろした私は、お父様と王妃様の話に驚くこととなりました。
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