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本編
第39話 準備は万全でした(1)
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ピクニック計画を聞くなり、リオ兄様のお頬が緩みました。
「それはいい考えだよ、フランカと僕も参加するね」
穏やかな表情で賛同するリオ兄様は、昨夜どこかへ出かけて朝まで戻りませんでした。でもフランカが何も聞かないなら、行き先を事前に知らされていたのね。
以前にフランカとリオ兄様は何やら不思議な話をしていた。前世の記憶、ゲームがどうの……盗み聞きするつもりはなく、すぐにその場から離れたけれど。
恋人同士の会話なら私が知る必要のないことだもの。知るべきなら、2人は教えてくれるわ。だから何も聞かないのが、私の信頼の示し方よ。
「僕が陛下をお誘いしてくるから、準備して待ってて」
明け方に戻ったばかりなのに、兄は馬を用意すると駆けだしました。公爵家の屋敷から王城までは近いですが、寝不足の身では危険では? この後もお出かけになるのだし、帰りが遅くなったら疲れがたまるのではありませんか……とても心配です。
ぐるぐると考え、思い切って提案してみました。
「ねえ、フランカ。リオ兄様は寝不足だろうから、馬車で出かけるのはどうかしら」
それなら御者がいるから、往復寝ていられます。馬から落ちる心配もありませんし。
「あら、リオなら平気よ。そうだわ! 親しくなるために、横抱きで馬に乗せていただくといいわ」
婚約者の心配より、こちらの運命の恋を優先する親友は鼻歌交じりに侍女と打ち合わせを再開しました。持っていく食事、お茶の道具、連れていく侍女や騎士の数……あっという間に準備が整っていきます。手際が良すぎて、魔法を見ているようですわ。
「ティファの服も決めなくちゃ」
「これではダメなの?」
いま着ているのはシンプルなワンピースです。先ほど着替えたばかりですし、フリルやレースは少なめでした。これならピクニックでも動きやすいと思うのですけれど。
「ダメよ。だって恋人に会いに行く服装じゃないもの」
「恋人……」
今の私とテユ様にふさわしい表現じゃないと思います。テユ様は好きと言葉をくださるけれど、私は浮かれているだけで自分の気持ちが理解できていません。
「これにしましょう」
舞踏会や宴に着るドレスとは違うけれど、普段のワンピースとも違うデザインでした。確かに外出用に作らせたけれど……本当にこれを着るの? ピクニックなのよ。抗議と疑問の声は、フランカの笑顔に飲み込まれます。
「手伝って頂戴」
公爵家のメイドをすでに掌握した未来の女夫人の命令で、私はあっという間に着替えさせられ、髪を高い位置で結ぶことになりました。
「それはいい考えだよ、フランカと僕も参加するね」
穏やかな表情で賛同するリオ兄様は、昨夜どこかへ出かけて朝まで戻りませんでした。でもフランカが何も聞かないなら、行き先を事前に知らされていたのね。
以前にフランカとリオ兄様は何やら不思議な話をしていた。前世の記憶、ゲームがどうの……盗み聞きするつもりはなく、すぐにその場から離れたけれど。
恋人同士の会話なら私が知る必要のないことだもの。知るべきなら、2人は教えてくれるわ。だから何も聞かないのが、私の信頼の示し方よ。
「僕が陛下をお誘いしてくるから、準備して待ってて」
明け方に戻ったばかりなのに、兄は馬を用意すると駆けだしました。公爵家の屋敷から王城までは近いですが、寝不足の身では危険では? この後もお出かけになるのだし、帰りが遅くなったら疲れがたまるのではありませんか……とても心配です。
ぐるぐると考え、思い切って提案してみました。
「ねえ、フランカ。リオ兄様は寝不足だろうから、馬車で出かけるのはどうかしら」
それなら御者がいるから、往復寝ていられます。馬から落ちる心配もありませんし。
「あら、リオなら平気よ。そうだわ! 親しくなるために、横抱きで馬に乗せていただくといいわ」
婚約者の心配より、こちらの運命の恋を優先する親友は鼻歌交じりに侍女と打ち合わせを再開しました。持っていく食事、お茶の道具、連れていく侍女や騎士の数……あっという間に準備が整っていきます。手際が良すぎて、魔法を見ているようですわ。
「ティファの服も決めなくちゃ」
「これではダメなの?」
いま着ているのはシンプルなワンピースです。先ほど着替えたばかりですし、フリルやレースは少なめでした。これならピクニックでも動きやすいと思うのですけれど。
「ダメよ。だって恋人に会いに行く服装じゃないもの」
「恋人……」
今の私とテユ様にふさわしい表現じゃないと思います。テユ様は好きと言葉をくださるけれど、私は浮かれているだけで自分の気持ちが理解できていません。
「これにしましょう」
舞踏会や宴に着るドレスとは違うけれど、普段のワンピースとも違うデザインでした。確かに外出用に作らせたけれど……本当にこれを着るの? ピクニックなのよ。抗議と疑問の声は、フランカの笑顔に飲み込まれます。
「手伝って頂戴」
公爵家のメイドをすでに掌握した未来の女夫人の命令で、私はあっという間に着替えさせられ、髪を高い位置で結ぶことになりました。
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